卸の人ならワクチン流通という各論の推計値が重要ですが、感染症対策の責任者やリーダーにとって今必要なのは、中長期のシナリオであります。
2012年の風疹増加の兆候のときのリスクアセスメント(があったかどうかしりませんが)のときには迅速な対策はとられませんでした。
明確なアクションを起こしたのは東京都。2013年3月14日です。
ついで神奈川県や世田谷区では、行政の長がリーダーとして会見で風疹流行とその危機について触れ、関係者への呼びかけを行いました。
半信半疑だった各自治体が、助成などに動いたのは、大流行地域ならば背に腹は代えられずでしょうし、(すごく日本的ですが)助成がマジョリティになったときに「どうしてうちの市だけやらないんだよ!」という声に押されて、あるいは孤高の勇気(誤解)や根拠でやらないという選択もなく、東京都はみな助成となりました。
まあ。島でも報告されてしまいましたし(持ち込みですよ)。大火事のなか、ちょろりん消防車での水かけはじまったのでした。
しかし、このような流行が起きたときにどうすればいいかということは教科書的にはすごくシンプルで、感受性者の集団に対して臨時で短期間の集中的なキャッチアップを行うことであるので、それをあえてとらないとなると、科学的にも裁判的にも説明責任を求められるわけです。
ここで重要なことは、新型インフルエンザのときにそうであったように、国内の各自治体で状況が違うことです。
最後まで「報告ありません・・・・平和です」といっていた山形県と、阿鼻叫喚の図もみた兵庫県では、「自治体として」「リーダーとして」やることの順位や量も異なっていました。
1つのシナリオではやれない。地域事情にもとづかないとまずい。修正も必要だ。
そう思った現場のひとたちが自主判断をはじめてから現場の負担は少し減りました。
その意味で、先に抗体検査をしてゆっくり接種にのぞみましょう、といえる自治体と、そんなこといっているうちに発症→職場全滅みたいになる地域では、リーダーのやることがちがいます。
「地域の感染症発生動向調査に留意をして自治として取り組むべし、必要な費用は国が支援する」というのが筋です。
東京都のお役所の人が、厚労省の「お願い」を、「命令」だと誤解して(そもそも厚労省は協力の依頼をできても、指示や命令はできないんですよ)、検査を先にと口走ったりして各地でもめていますが、本来この話は「自治」ですから(厚労省がそういっています)、思考停止にならずに自分で考えないといけないんですよ。でないと、住民は守れません。
このような中でアイデアとしてエイズ検査のように夜間や土日に迅速風疹検査を無料でやったらたいしたものです。
抗体検査の負担を住民や医療機関におわせないでください。
採血して外部業者や衛研にだすくらいなら保健所でいいとおもいます。エイズ検査は今それほど数ないですから、臨時でスライドしたらどうでしょうね。
もっとも、衛研からは「そんなこと書くなよ、迷惑だよ」といわれてしまうかもしれません。
いまは本物の風疹がたくさんきていて検査依頼も増えていますので。
本題にもどりますと、中長期シナリオというのは、ワクチンの在庫の試算を机上でして「足りる」「足りない」「やっぱりあまった」「でも接種率高まっていない」というようなことを妄想するのではなく、
疫学データをていねいにみて、この先どうなるのか。ある指標をみながら、シナリオに応じて対策を準備してきりかえていくことだとおもいます。
まだ終息の気配がないところでいうのもなんですが、今回の流行は「終わり方」がたいへんクリティカルになります。
まず、7月4日の参院選告示や熱中症キャンペーンへの切り替えにともない、風疹の報道は減っていきます。
増えている(知っている)、ワクチン足りない(そうらしいね)、女性や赤ちゃんが危険な目にあっている(日本では平時から関心低いネタ。さらにがんばって産めばバッシング、産まなくても非難)。
で?何か新しことは?ぼくたち新しいネタないと記事かけませんよ?的なかんじになっていくと、地味な感染症対策への関心は落ちます。
ワクチン接種も広まっていますので、流行のスピード抑制にも貢献していますが、病気が減ってくれば「もうだいじょうぶ」と誤解する人も増えます。
成人の流行がこれだけ広がり、感受性者のケアもしないままうやむやになると、だらだら流行が続きリスクにさらされる女性や赤ちゃんは減りません。また数年後同じようなことがおこることは教科書的には基本的な事項です。
2004年の教訓を医療者や政策担当者は生かせませんでした。
2013年の学びをどうすればいいか。
対策チーム中で終息に向けてのロジをたてるひと、そして、今年度後半にたくさんうまれるであろう、風疹ウイルスの影響を受けた赤ちゃんたちを早期に必要なケアにつなげていくためのロジを、ワクチンがたりない!という中で取り組まないといけません。
誰かがやるだろう、では悲しむ人が増えます。
自分の専門領域でできることは何かを考えてください。
地域のリーダーには、「おわらせかた」についての提案をしましょう。
余談ですが・・・いろいろな方がくださるアドバイスのなかで多くを占めるのは、これからどうすればいいかということではなく(そういった話は海外の専門家のメールの中に書いてある)、なぜ今うまくいっていないかの理解として、失敗解説を読んでみろということです。
日本には戦略とかロジがないんだよ。
失敗をみとめないから、後に引けないし変われないんだよ。
まあ、そこに答えはないのですが。
子どもたちのために提案をしなくてはいけないことは何かはわかります。
そうやって自国リーダーに殺されたのは若い人たちでしたね。
いま、この国では生まれてくる子どもの数も少ない国ですから、「今このひとりを救うのだ!」という気合と責任感で風疹対策にのぞみたいとおもいます。
救う方法があるのに、何もしない。思考停止は危機発生時の一番の失敗の原因。
国がやりましょうという前に、流行地は「風疹対策会議」をつくり、関係者で連携して危機を乗り越えるほうがいいですよ。
皆で困ってワクチン流通を混乱させて対策が破たんし、1期の赤ちゃんたちが麻疹になったりしたら目も当てられません。
参考までにご紹介いただいた本。
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)クリエーター情報なし中央公論社
「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマクリエーター情報なしダイヤモンド社
戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップクリエーター情報なし日本経済新聞社
日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)クリエーター情報なし角川グループパブリッシング
危機の日本人 (角川oneテーマ21)クリエーター情報なし角川書店
2012年の風疹増加の兆候のときのリスクアセスメント(があったかどうかしりませんが)のときには迅速な対策はとられませんでした。
明確なアクションを起こしたのは東京都。2013年3月14日です。
ついで神奈川県や世田谷区では、行政の長がリーダーとして会見で風疹流行とその危機について触れ、関係者への呼びかけを行いました。
半信半疑だった各自治体が、助成などに動いたのは、大流行地域ならば背に腹は代えられずでしょうし、(すごく日本的ですが)助成がマジョリティになったときに「どうしてうちの市だけやらないんだよ!」という声に押されて、あるいは孤高の勇気(誤解)や根拠でやらないという選択もなく、東京都はみな助成となりました。
まあ。島でも報告されてしまいましたし(持ち込みですよ)。大火事のなか、ちょろりん消防車での水かけはじまったのでした。
しかし、このような流行が起きたときにどうすればいいかということは教科書的にはすごくシンプルで、感受性者の集団に対して臨時で短期間の集中的なキャッチアップを行うことであるので、それをあえてとらないとなると、科学的にも裁判的にも説明責任を求められるわけです。
ここで重要なことは、新型インフルエンザのときにそうであったように、国内の各自治体で状況が違うことです。
最後まで「報告ありません・・・・平和です」といっていた山形県と、阿鼻叫喚の図もみた兵庫県では、「自治体として」「リーダーとして」やることの順位や量も異なっていました。
1つのシナリオではやれない。地域事情にもとづかないとまずい。修正も必要だ。
そう思った現場のひとたちが自主判断をはじめてから現場の負担は少し減りました。
その意味で、先に抗体検査をしてゆっくり接種にのぞみましょう、といえる自治体と、そんなこといっているうちに発症→職場全滅みたいになる地域では、リーダーのやることがちがいます。
「地域の感染症発生動向調査に留意をして自治として取り組むべし、必要な費用は国が支援する」というのが筋です。
東京都のお役所の人が、厚労省の「お願い」を、「命令」だと誤解して(そもそも厚労省は協力の依頼をできても、指示や命令はできないんですよ)、検査を先にと口走ったりして各地でもめていますが、本来この話は「自治」ですから(厚労省がそういっています)、思考停止にならずに自分で考えないといけないんですよ。でないと、住民は守れません。
このような中でアイデアとしてエイズ検査のように夜間や土日に迅速風疹検査を無料でやったらたいしたものです。
抗体検査の負担を住民や医療機関におわせないでください。
採血して外部業者や衛研にだすくらいなら保健所でいいとおもいます。エイズ検査は今それほど数ないですから、臨時でスライドしたらどうでしょうね。
もっとも、衛研からは「そんなこと書くなよ、迷惑だよ」といわれてしまうかもしれません。
いまは本物の風疹がたくさんきていて検査依頼も増えていますので。
本題にもどりますと、中長期シナリオというのは、ワクチンの在庫の試算を机上でして「足りる」「足りない」「やっぱりあまった」「でも接種率高まっていない」というようなことを妄想するのではなく、
疫学データをていねいにみて、この先どうなるのか。ある指標をみながら、シナリオに応じて対策を準備してきりかえていくことだとおもいます。
まだ終息の気配がないところでいうのもなんですが、今回の流行は「終わり方」がたいへんクリティカルになります。
まず、7月4日の参院選告示や熱中症キャンペーンへの切り替えにともない、風疹の報道は減っていきます。
増えている(知っている)、ワクチン足りない(そうらしいね)、女性や赤ちゃんが危険な目にあっている(日本では平時から関心低いネタ。さらにがんばって産めばバッシング、産まなくても非難)。
で?何か新しことは?ぼくたち新しいネタないと記事かけませんよ?的なかんじになっていくと、地味な感染症対策への関心は落ちます。
ワクチン接種も広まっていますので、流行のスピード抑制にも貢献していますが、病気が減ってくれば「もうだいじょうぶ」と誤解する人も増えます。
成人の流行がこれだけ広がり、感受性者のケアもしないままうやむやになると、だらだら流行が続きリスクにさらされる女性や赤ちゃんは減りません。また数年後同じようなことがおこることは教科書的には基本的な事項です。
2004年の教訓を医療者や政策担当者は生かせませんでした。
2013年の学びをどうすればいいか。
対策チーム中で終息に向けてのロジをたてるひと、そして、今年度後半にたくさんうまれるであろう、風疹ウイルスの影響を受けた赤ちゃんたちを早期に必要なケアにつなげていくためのロジを、ワクチンがたりない!という中で取り組まないといけません。
誰かがやるだろう、では悲しむ人が増えます。
自分の専門領域でできることは何かを考えてください。
地域のリーダーには、「おわらせかた」についての提案をしましょう。
余談ですが・・・いろいろな方がくださるアドバイスのなかで多くを占めるのは、これからどうすればいいかということではなく(そういった話は海外の専門家のメールの中に書いてある)、なぜ今うまくいっていないかの理解として、失敗解説を読んでみろということです。
日本には戦略とかロジがないんだよ。
失敗をみとめないから、後に引けないし変われないんだよ。
まあ、そこに答えはないのですが。
子どもたちのために提案をしなくてはいけないことは何かはわかります。
そうやって自国リーダーに殺されたのは若い人たちでしたね。
いま、この国では生まれてくる子どもの数も少ない国ですから、「今このひとりを救うのだ!」という気合と責任感で風疹対策にのぞみたいとおもいます。
救う方法があるのに、何もしない。思考停止は危機発生時の一番の失敗の原因。
国がやりましょうという前に、流行地は「風疹対策会議」をつくり、関係者で連携して危機を乗り越えるほうがいいですよ。
皆で困ってワクチン流通を混乱させて対策が破たんし、1期の赤ちゃんたちが麻疹になったりしたら目も当てられません。
参考までにご紹介いただいた本。
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)クリエーター情報なし中央公論社
「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマクリエーター情報なしダイヤモンド社
戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップクリエーター情報なし日本経済新聞社
日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)クリエーター情報なし角川グループパブリッシング
危機の日本人 (角川oneテーマ21)クリエーター情報なし角川書店