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Channel: 感染症診療の原則
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感染流行のハブとしての大学 : 福岡大学の事例から何を学ぶか

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話は文科省マターにもなりつつあります。

昨日は、福岡大学内の風疹ブレイクニュースがありました。


3月にこのような辛辣なタイトルの新聞記事がありました。西日本新聞、4月12日。

広がる風疹 進まぬ予防 福岡県 低接種率のまま助成終了 医師会 大流行に危機感

たしかに。高いとはいえない福岡県。



3期4期含めて、接種し忘れている人が一定数いて、この人たちがプールされるとまた将来風疹や麻疹のアウトブレイクにつながりますので、自治体によっては「無料接種機関の延長」をしているところがあります。

たとえば千代田区。 「麻しん風しん(MR)ワクチンの無料接種の年齢を延長します」

風疹関連情報が、どこよりも充実している東京都感染症情報センターのホームページには
子供を対象とする麻しん風しん任意予防接種助成に関する問い合わせ先の一覧もあります。みなさんの地域はどうですか?3月で「はい、おしまい!」として問題なさそうでしょうか。


福岡情報はさらに続きます。
年に一度、国立感染症研究所に各自治体の感染症危機管理の責任者が集まる研修会で福岡の先生がこのような発表をしていました。


「風疹アウトブレイク」 スライド資料PDF
財団法人 福岡市健康づくり財団 健康推進課 課長 園田 紀子

東京でのアウトブレイクを前に、先に感染拡大徴候のあった福岡県ですが、昨日、県がアクションをしたそうです。しかし。

風疹への注意呼びかけ(読売新聞 6月5日)

県の職員が街頭でチラシを配って予防接種をよびかけた、です。

福岡県はこの時点で予防接種費用の助成をしていません。
受診しやすい医療機関のリストなどを渡したのでしょうか。ただ流行していますよ、気を付けてください、的なチラシをくばったのでしょうか。(チラシを入手された方の速報をおまちしております)。

今朝の時点では福岡大学のHPトップにも、メディア対応コーナーにもアナウンスがありませんが、昨日のニュースでは、学長のコメントも発表されており、保健管理センター等が中心となって対応をすでにされているということです。

事例は、運動部を中心に風疹が同時期に広がってたようです。

NHK 6月4日

福岡市にある福岡大学は、先月から野球部の男子学生を中心に風疹にかかる学生が相次いでいるため、対策を強化中。
先月からこれまでに、野球部の男子学生5人と、テニス部の男子学生1人、それに柔道部の女子学生1人の合わせて7人が、発熱や発疹の症状が出て、相次いで風疹と診断された。
大学は37度5分以上の熱や発疹が出た学生には、健康管理センターに必ず連絡をするよう、学内の掲示板や学内のイントラネットを通じて全学生に周知を図っていて、こうした学生には外出しないよう指導。
野球部は、今月、東京で行われる全国大会に出場することになっているが、出場選手はすでに全員ワクチンを接種。

学長コメント:、「集団で行動することが多い運動部の学生を中心に広まったと考えている。福岡でも流行すると危機感を持っていたので、大変深刻に受け止めている。風疹に関する正しい知識やワクチンの重要性について、授業の前などさまざまな時間を使って周知を徹底し、感染の拡大を防いでいきたい」


もともと、濃厚接触機会の多い学生では、感染症は広がりやすいことはデフォルトであります。
しかも移動範囲もすごいです。

アルバイト休んだらお金がなくなっちゃう・・・
試験休んだら再試になっちゃう・・・・
ライブ中止したくない・・・
計画した旅行はキャンセルしたくない・・・

会社員のように、会社の上司が「しばらく家にいなさい」的に指示をするような人がいません。

インフルエンザの5倍ひろがりやすい風疹は、そこに感受性者がいれば広がっていくことは想像に難くありません。

今回話題になったのは福岡大学ですが、すでに保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、養護施設、介護施設などで集団感染がおきていますので、校医としてかかわる、大学併設の附属病院の感染症管理チームは大学の支援に動いたほうがよいとおもいます。
どの地域、どの大学でも集団生活があるところではおこりえますので。

まず、リーダーとなって動くべきは「保健管理センター」通称「ほけかん」です。
ここには医師や保健師・看護師がいます。大学の管理部門とここで対策を急ぎ整えることです。

今起きている問題のスクリーニング、起きている問題への対処、何も対策をしないでいたらおこりうる危機に対して早くアクションを起こしましょう。

今朝の時点で全国大学保健管理協会のホームページには注意喚起のようなものはみあたりませんが。

文部科学省には、厚労省から常に医師が出向(?)していますので、すぐに情報共有が行われるのではないかと思います。

学校の先生が風疹(や麻疹)発症していますので、文科省は生徒だけでなく、教職員についても何らかの指針をだしてほしいですね。

米国の大学の管理例をみますと、Student Policy on Immunization と workplace safetyとしての指針と両方ありますね。
こちらはカナダの職場の安全、という概念での予防接種指針

感染症対策がインフルエンザに偏りすぎていて日本はその他がお留守状態。だれの判断と責任でしょうね・・・。

産業医の先生方に相談してみたいとおもいます。

大学生や大学が感染症のハブになりやすい背景として、

人口密度の高い部屋や空間にいることが多い。

同世代のための共通ハイリスク因子を持っている(その世代独特の)。

濃厚接触が日常生活行動に多い(スポーツを通じての皮膚や体液の接触、性行為による接触、ペットボトルののみ回しなど食事の際の接触、寮生活、旅行や遠征など集団で同じ食事・生活行動をする)

などです。

ですから、他の対象とは異なるケアや啓発、介入が必要ということになります。

それを前提とした危機管理ができているのか?ということが問われるわけです。


麻疹の時に起きた事件

都内の私立校がカナダに麻疹を輸出 Japanese students quarantined at Vancouver airport hotel

少年野球チームがリトルリーグ世界大会に麻疹を輸出 Japan boy baseball player caused U.S. measles cases

これは米国内で3次感染まで広がりMMWRにも掲載されました。 

千葉県の柔道大会をハブに各学校に麻疹が拡散  2008年千葉県における高校柔道大会に起因した麻しん集団発生(IASR 2008年)


このほかに髄膜炎菌のアウトブレイクもありましたし、世界でも大学の寮ではMumpsのアウトブレイクなども報告されています。

2012年に書いたブログ記事もありました。麻疹とスポーツイベント

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