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Channel: 感染症診療の原則
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不適切な処置による肝炎のアウトブレイク 『A Never Event』

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2008年1月、米国のネバダ州の感染症サーベイランスシステムが、急性C型肝炎のクラスターをキャッチします。

じつはそのクラスターとは「2例」なのですが、通常年間4例程度のため、担当者が調査を始めます。

この2例、ある内視鏡クリニックで同じ期間に検査を受けたということが共通していました。
そして、医療機関での不適切な手技や対応が把握され、2008年2月から、およそ5万人の患者に対してB型肝炎、C型肝炎、HIVの検査を推奨するための連絡が行われました。

調査の最終報告書はネバダ州のHPにあります。
ちなみに、43ページに、この時期のネット検索状況が掲載されています。
2008年3月、ラスベガス地域でのGoogleでの「肝炎」の検索が200%増加し5位のキーワードに。同時期「内視鏡」の検索も160%増加し7位のキーワードになっていたそうです。

米国最大規模のHCVアウトブレイク事例となりましたが、突然おきたのではなく、それ以前にもB型肝炎やC型肝炎の医療施設内でのアウトブレイク事例は報告されていました。

そして、安全な注射処置が守れない、構造的な問題を多くの関係者が指摘し続けていました。


下記は土曜日ののHAICSの研修会で、満田先生が紹介されていた本です。

米国の聴覚療法士の女性が乳がんの治療をする前は感染していなかったのに、1年後にC型肝炎に感染していたことを知ります。
本人、家族、主治医らが混乱を経験します。
その後、そのクリニックで99名が同じように感染をしていたことが発覚します。
その詳細をつづった本。

A Never Event: Exposing the Largest Outbreak of Hepatitis C in American Healthcare HistoryArbor Books

その後、著者らは“Hepatitis Outbreaks' National Organization for Reform Foundation”を設立し、CDCの医療安全施策にはたらきかけます。

その解説は満田先生のレポート「CDC による “One and only campaign” について」にあります。

この著者の経緯、CDCのキャンペーンの日本語訳つき動画(13分)は職業感染制御研究会のHPに掲載されています。医療者教育用。

医師がやろうとしている処置に対して、「それはまずいですよ・・・」という解説が入ります。


上記公開資料の中での満田先生のご指摘
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我が国には,CDC のような市民が通告可能なアウトブレイク調査機関への直接的な導線がない.
厚生労働科学研究班による透析医療における感染予防のためのマニュアルの整備と度重なる改訂にもかかわらず,肝炎ウイルスアウトブレイクは断続的に発生している.
感染症法の定める届け出には,診療器材別や特定医療施設の特定医療行為に基づく遡及的なデーターベース管理に基づく調査体制も整備されていないため小規模な肝炎ウイルスの医療関連感染の多くは見落とされている可能性がある.
感染症法による届け出を疫学動向について知るだけのためのシステムに終わらせず,アウトブレイクの監視につなげるシステムに改善することが望まれる.
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5類感染症の届け出をしなくちゃ、という意識や学習が医療者にどれくらいあるのかよくわからないので報告率も問題なのですが、、、
日本では5類の急性肝炎の報告システムが、アウトブレイクを早期に探知したり拡大を阻止するような仕組みになっていません。

不明はたいてい不明のままです。

「日本での急性肝炎の現状―感染症発生動向調査成績より―」
ウイルス肝炎[ I ]わが国におけるウイルス性肝疾患の現状 第123 回日本医学会シンポジウム


C型肝炎は予防ワクチンがありません。
医療安全上の注意義務を守らないと感染事故につながります。


2011年に岡山大学の病院の事例がニュースになりましたが、その後の報告はHP等にはありません。

日本循環器学会HP 「茅ヶ崎市立病院における心臓カテーテル検査時のC型肝炎の感染について」

学会による啓発 「心臓カテーテル検査時における圧トランスデューサー使用について」

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