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Channel: 感染症診療の原則
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検査オーダーや陰性証明書 と その周辺

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細川先生は検査関連にたいへんお強い、感染症ドクターの仲間のひとりです。

素晴らしい本を執筆されました。「検査」の意味づけ、限界や評価の仕方を学べる本です。
初期研修の間に目をとおし、検査室の技師さんなどにも実際のところを解説してもらえるといいですね。
検査室の皆様どうぞよろしくお願いいたします。

感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision Making文光堂

どの検査にも強みやや弱点、そして限界があります。検査には費用もかかりますので、医師は必要性を考慮しながら検査を出します。

まず「万能じゃない」という理解が大事です。細川先生の感度・特異度のお話は、専門職以外ではあまりなじみがないかもしれませんが、「時期」なら想像がつくのではないでしょうか。

例えばインフルエンザ。

迅速検査キットがありますが、日本ではよくつかわれていますが、海外では日本のようにはばんばんつかわれていません。

理由はいろいろありますが、まずインフルエンザでは薬は出さない、ということがあります。
寝てなおしましょう、が基本です。その後の治療方針を変えないなら検査はいりません。

しかし日本ではAですか?Bですか?と知りたがる方がいたり、なぜか医師以外の人が検査をオーダーしたりします。

(医療機関で検査してきてください、など。これに根拠はなく、そうしなさいという文書もしかるべき機関から出ているわけではないので、そう口走っている人の個人的なアイデアではないか確認をしたほうがよいです)。

しかし、このインフルエンザの検査からして、結果は100%ではありません。

感染していても(陽性なのに)、検査のタイミングがちがうと「陰性」(感染していない)と出ます。
つまり証明書には使えないということです。

医師は症状その他を総合的に判断しているのであって、100%検査に依存しているわけではありません。

結果がなんであっても方針が変わらないなら、検査は不要ですし、
間違った結果が出るかもしれない、という知識があるからこそ、検査結果だけをうのみにしないわけです。

プロですから。

ですから、検査の限界や意味がよくわからない人が、証明書を出せという(法律上の根拠もないのに)、しかも費用はその人が払うわけでもないという状況が「まじ、おかしくね?」と思えないところにトホホ感がただよいます。

このようなトホホ感は、「そういうことを言う人は他の思考も変じゃね?」という不安につながります。

(そのような一見厳重管理をしているように思い込みながら、この時期に餅つき大会などを企画して、こどもたちにおだんごをつくられて皆で食べるというようなリスクには無頓着だったりします。)


また、メディアが「下痢をしたら受診をしろ」というのもおかしな話です。

まず、基礎疾患がない幼児や学童、成人は自分で飲んだりできるなら様子見が基本です。

「ノロかどうか調べてこい」という人がいるそうですが、そもそも検査じたいが限られた人に限定されてみとめられたものであり、下痢だわね〜ノロかな〜という人全員に提供できる検査ではありません。
また結果が100%ということではありません。

個人の体調・健康ということでは、重症化どうか、もともとの基礎疾患があるのか、乳幼児と高齢者か、といったことで対応が変わってきます。

保育園〜会社・学校などの集団生活での感染拡大予防ということでは、ノロじゃなくても下痢は下痢、嘔吐は嘔吐で、感染予防策は同じです。
嘔吐の処理にしても、感染力が最も強いものを想定して、フル装備で対応をするだけのはなしで、ノロかそれ以外かで対応をわけるわけではありません。

この時期の病院は、感染性の病気が疑われる患者さんでいっぱいです。
TVみたりスマホをいじっていられるなら、おそらく自宅でなんとかなるひとです。水分をとりながら寝て治すというのが基本です。



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