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Channel: 感染症診療の原則
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虐待じゃありませんぜ・・(BCGワクチン)

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今年の6月にシアトルで開かれたPacific Health Summitのテーマはワクチンでした。
各国関係者、製薬会社のトップ、最前線の研究者、ゲイツ財団はじめとする途上国への供給を支援する非営利団体が参加していました。
そこで注目されていた、pipeline上にある新しいワクチンは、マラリア、結核、HIVです。
まさにGlobal Healthの3つのターゲットでもあります。
(このほかですと、CMVやHCVが注目されています)

マラリアは50%近く症例を減らすだろうと期待されています。たった50%?と思う人もいるかもしれませんが、たくさんの子どもが命を失うこの感染症で、「50%も救えるのか」というのがコアな人たちの反応です。

HIVワクチンはブレイクスルー情報はありません。1990年代の終わりから新規症例は減っています。ワクチンで予防するしかない超ハイリスク層を対象とするのかわかりませんが、開発のための研究は続いています。

そして結核です。
結核ワクチンというと日本人はBCGを考えるわけですが、現在開発が進められているのは新しいTBワクチンです。

Tuberculosis vaccines: beyond bacille Calmette–Guérin Phil. Trans. R. Soc. B 12 October 2011 vol. 366 no. 1579 2782-2789

STOP TB Partnership http://www.stoptb.org/のなかにある、ワーキンググループのひとつに、「新しい結核ワクチン」WGがあります。

最新のファクトシートは2010年のものですが、それぞれのワクチンがなにをめざしているのか、どのフェーズにあるのかなどたいへん参考になります。

各国、いろいろな機関が開発に挑戦しているようですが、日本ではOsaka Universityがならんでいます(6ページ)。

HVJ‐Envelope/HSP65 DNA+IL‐12 DNA
(Combination of DNA vaccines expressing mycobacterial heat‐shock protein 65 & IL‐12)

がんばってほしいですね。

それぞれのワクチンのねらいも少しずつちがうんですが、今のBCGには効果や副反応などいろいろ課題があるので、新しいワクチンの開発が期待されます。

いろいろな工夫があるとおもいますが、例えば集団接種ではなく個別接種にすれば、保護者のスケジューリングがだいぶたすかります。(ポリオもそうですが)
未接種者を減らすために個別接種併用を推す小児科の先生多いです。

いろいろもめた(もめている?)「BCGの開始時期等について」平成16年12月 全国保健所長会
平成16年11月日本小児科学会


また、今のブツブツがたくさん痕として残ってしまう針ではなく、通常の注射針で皮内接種にすることです。
台湾は皮内接種です。

この剣山のような針をみて、東京駐在中のご家庭のお母さんが悲鳴を上げるシーン(接種前に見せた時点ですよ)をなんどかみています。

ヨーロッパで子育てされた方のブログ記事より。

「今日、GGDというオランダの保健所に息子を連れていったところ、最初の裸んぼ検診の際に、このBCG跡を医師が見つけ、「これは何ですか?」と若干、責めるような感じで聞かれました。うちの息子のBCG跡です。確かに痛々しいです。

医師は、私たちが息子に虐待しているものと勘違いしたらしく、焼印のようなBCG跡を見て非常に驚き、これは何だ?!!と聞いてきたのです。
BCGの跡ですが、、、、、というと、「BCG???!!!」と聞きなおしました。」このあとポリオの話もあるのでリンク先でぜひご一読ください。

日本のお母さんは、日本のワクチンがスタンダードだろうと考えている人が多いのですが、不活化ポリオの話とか、BCGも「痕が残らない方法でも接種できる」ことを知るとお怒りモードになります(そりゃごもっともで)。

2003年、このBCGの痕が日本独特であるゆえに「国籍不明の死体があったときに日本人と判別できる」、というレポートがあります。

ひー。

いろいろ情報をお持ちの保護者の個別相談では、BCGと日本脳炎について接種を迷うケースがあります。
日本脳炎については居住地域(帰省先、渡航計画)などを考慮しますし、BCGについては高齢者と同居しているのか、等をリスク因子として検討できます。

欧米では、高蔓延国出身者、その子ども(同居者)、特定高流行地域などハイリスク層に限定した接種にシフトしています。
効果については諸説あります(データを見るときはサンプルの特性や流行レベルも重要です)。


日本は今後どうなるんでしょうね。

ちょっと古いですが、「小児結核 最近の動向」2007年 結核研究所によると、

■2006 年の発病者数 は 85 名(0-4 歳 35 名、5-9 歳 18 名、10-14 歳 32 名)、人口 10 万対 0.5
■0-4 歳で重篤な結核である小児の結核性髄膜炎の発生は、2006 年に初 めてゼロに(小児全体でもゼロ)

判定や報告システムの変更時期は疫学データの解釈に注意が必要ですが、

■2003年度から小中学校の結核健診では要精密検査の選定方法が1年生対象のツベルクリン反応検査に替わって、全生徒対象の問診中心の健診が導入となった
■発見方法では、家族接触者健診とともに、その他接触者健診(家 族以外)から発見される患者の数が相対的に拡大

「全体の罹患率は、その地域の住民の過去からの結核感染状 況に加え、発病リスクの高い人の存在などを反映しているのに対し、小児の場合、周囲の感染源 の発病時の環境によるところが大きい。また、診断に地域差がある可能性も否定できない。」

とのことです。

2009年のデータですが、

■新規患者報告は約24000件。人口10万対では19。
  米国(4.3)の4.4倍、カナダ(4.7)の4.0倍、スウェーデン(5.4)の3.5倍、オーストラリア(5.5)の3.5倍
■新規症例のうち、70歳以上が半数をしめる。
■外国籍結核患者の割合は増加傾向。20歳代の新登録結核患者(約1700人)の約4人に1人は外国籍結核患者。
■人口10万対でみると、多いのは大阪市(49.6)、名古屋市(31.0)、東京都特別区(28.0)、神戸市(26.2)。
それぞれ群馬県(10.2)の4.9倍、3.0倍、2.7倍、2.6倍である。
■死亡関連データ:平成21年中の結核による死亡者数は2,155人(概数)で、前年の2,220人に比べ65人減少、死亡率は0.1低下し1.7に。死因順位は、24位。

子どものデータですが、新規症例のうち、
      0−4歳の数(全体に占める割合) 
平成17年   56(0.1%)
平成18年   35(0.1%)
平成19年   47(0.2%)
平成20年   41(0.2%)
平成21年   34(0.1%) 人口10万対0.6。

発症者のうちの医療従事者や日雇い労働者の統計が掲載されているんですが。

小児の発症者のワクチン接種状況なども掲載するとよいとおもうのですが。

ちなみに、5−9歳もこの期間、全体の0.1%程度。平成21年は人口10万対0.2です。



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