厚生労働省の作成する「Q&A」の存在はとてもありがたいです。
国が見解を述べているとういことは(内容の質の話はまたあとで)、
ああ、国の担当者や責任者がこの問題に関心をもち、国民の安全と福
祉のために取り組んでいるのだと知るひとつの指標でもあります。
(同じように毎日新聞社の なるほドリ、というのもいい企画だなあと思います)
特にこのQ&Aというのは、皆が疑問に思いやすいこと、よく受ける質問をまとめ
ているので、医療機関や自治体の人も、患者・住民対応の際の参考になります。
それから、ネット検索をする人も、「まずここをみてみよう」と確認できます。
最近は、新しいコンテンツに「NEW!」というマークと更新日が入っていてわかり
やすいですね。
(管理の悪いHPだと、その中ではNEW!かもしれませんが、よくみたら数年前に
つけたマークがつけっぱなし、ということもありますので)
ただ、作っている部署や担当者が異なるので体裁がバラバラなのが残念。
特に質問に番号が付いていないと、「この番号のところを読むとわかりやすい
ですよ」というフィードバックが難しいので。
これは感染研のものですが、風疹Q&A
にはナンバリングがありません(--;)。
最近話題になった日本脳炎ワクチンについてのQ&Aが更新されていました。
11月12日更新です。
結核感染症課の仕事はとても早くなっています(日々ケアする人たちがいる安心)。
会議資料の掲載もたいていその日のうちです。
ありがたいことです。
さて。Q&Aで思い出したのが「B型肝炎」です。以前も似たような記事を書きましたが、
今回見にいったら、変わらずそのままになっていました。
「え!!!!!」という内容があり、各方面でおかしいじゃないかという指摘を受けてい
ますが、最終更新日が平成20年。
肝炎 総合対策の推進のページ。マスコットは肝臓ちゃんです。
似ていますがGSKのマークではございませぬ。
ちなみに、健康局の疾病対策課(おなじみの結核感染症課ではない)のなかの、「肝炎対策
推進室」が作成しているページです。
ややこしいのですが、他の性感染症は結核感染症課ですが、HIVだけが疾病対策課です。
諸外国は性感染症とHIV対策の包括化、このプログラムと肝炎や結核の統合
がすすんでおり、それは様々な成果(予算合理化や重複する機能の整理)につながっている
のですが、日本では、そういった観点ではなく、諸般の事情の縦割りが維持されています。
疾病対策課ですが、の予算をみると、HIVなどはとても小さな事業で、もっと巨大な事
業を担当している部署だとわかります。
で、こちらのページで「Q&A」をさがしました。右にアイコンがあります。。
こちらをクリック。
「我が国の肝炎(ウイルス性肝炎)の持続感染者は、B型が110万人〜140万人、C型が190万人〜230万人存在すると推定されていますが、感染時期が明確ではないことや自覚症状がないことが多いため、適切な時期に治療を受ける機会がなく、本人が気づかないうちに肝硬変や肝がんへ移行する感染者が多く存在することが問題となっています。」
HIV感染症は新規患者が1年間1500程度(結核は毎週300例)と考えると、
分母としてとても大きな規模の感染症であることが分かります。
ですから、Q&Aはとっても大切です。
しかし、ここをクリックしてもあまりぱっとした内容は書いてありません。
しかたないので、「情報センター」を再度クリック。
ですが、トップページから探せません。
しかたないので、振り出しにもどって、再度Googleで検索。
財団法人 ウイルス肝炎研究財団を探し出します。
こちらに、B型、C型、E型と他の肝炎がならんでいます。(なぜかA型の記載はなく、他のところでも情報があまりない)
ここに、「B型肝炎Q&A」がありました。今日現在の最新版は<平成20年5月更新>
のものです。
製作;厚生労働省 作成協力が 財団法人 ウイルス肝炎研究財団、 社団法人 日本医師会感染症危機管理対策室
なぜ肝炎で、医師会の危機管理対策室かは知らないのですが、医師に広く普及啓発する際に
とても良いチャンネルだと思いました。
で、<平成20年の最新情報Q&A>。4年間は改訂なし。なしでいいのか。
いいのか?の視点で読んでみます。
【簡易版】
Q3:B型肝炎ウイルスはどのようにして感染しますか?
HBV(B型肝炎ウイルス)は、主として感染している人の血液が他の人の血液のなかに入ることによって感染します。また、感染している人の血液中のHBVの量が多い場合は、その人の体液などを介して感染することもあります。具体的には、以下のような場合に感染が起こることがあります。
注射針・注射器をHBVに感染している人と共用した場合
HBVに感染している人の血液が付着した針を誤って刺した場合
(特に、保健医療従事者は注意が必要です。)
HBVが含まれている血液の輸血、臓器移植等を行った場合
HBVに感染している人と性交渉をもった場合
HBVに感染している母親から生まれた子に対して、適切な母子感染予防措置を講じなかった場合(ただし、高力価HBsヒト免疫グロブリン:HBIGとB型肝炎ワクチン:HBワクチンを正しく用いて母子感染予防を行えば、感染することはほとんどありません。詳しくはQ34をご覧ください。)
常識的な社会生活を心掛けていれば、日常生活の場では、HBVに感染
することはほとんどないと考えられています。
なお、以下のような場合には、HBVは感染しません。
HBVに感染している人と握手した場合
HBVに感染している人と抱き合った場合
HBVに感染している人と軽くキスした場合
HBVに感染している人の隣に座った場合
HBVに感染している人と食器を共用した場合
HBVに感染している人と一緒に入浴した場合 等
※家庭内感染、や集団生活(保育園)やスポーツ(集団)での感染が報告されているので
すからこの記載では不十分だと思います。
B型肝炎の家族内感染例 (IASR Vol. 31 p. 21- 22: 2010年1月号)
保育所におけるB型肝炎集団発生調査報告書について(平成16年 佐賀県)
Horizontal transmission of hepatitis B virus among players of an American football team. Arch Intern Med. 2000 Sep 11;160(16):2541-5.
※常識的な生活、と書くと、感染した人達は常識的ではなかったのか?という偏見につながる
可能性があります。記載をあらためていただきたいところです。
※一般向けの解説Q&Aでいきなり出てくるのが注射針・注射器の共有。おかしくないですか?
※母子感染は対策をしても感染する逸脱例が数%という単位で存在し、最近は、医療機関が
対策不十分で感染する事故もおきていますので、母子感染対策すれば大丈夫的な書き方でいい
のか疑問が残ります。
※最近の資料
B型肝炎ワクチンと母子感染防止(白木・モダンメディア 2004年)
わが国における B 型肝炎母子感染防止の経緯と
universal vaccination の必要性について(白木・小児感染免疫、2009年)
B 型肝炎ワクチンの添付文書改訂についての要望(日本小児科学会 2011年)
B 型肝炎母子感染防止不成功例の解析(乾、肝臓、2010年)
【詳細版】
Q8:B型肝炎ウイルス感染はどのようにすれば予防できますか?
他人の血液になるべく触れないことが大切ですが、常識的な社会生活を心掛けていれば、日常生活で周囲にHBV(B型肝炎ウイルス)が感染することはまずあり得ないと考えられています。
具体的には、以下のようなことに気をつけてください。
※「常識的な生活」ってなんでしょう
歯ブラシ、カミソリなど血液が付いている可能性のあるものを共用しない。
他の人の血液に触るときは、ゴム手袋を着ける。
注射器や注射針を共用して、薬物(覚せい剤、麻薬等)の注射をしない。
よく知らない相手との性交渉にはコンドームを使用する。
以上の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性が極めて高いことは言うまでもありませんが、違法行為は行わないことが基本です。
なお、現在、献血された血液はHBVのチェックが行われており、ウイルスが含まれる場合は使用されていません。
HBVに感染している場合、あるいは感染の疑いがある場合には、検査の目的での献血は決して行わないでください。
他人の血液に触れる機会が多い医療関係者は、あらかじめB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を接種しておくことをお勧めします。また、B型肝炎ウイルス陽性の血液により汚染された場合には、HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の投与により感染を予防することができます。
詳しくは、Q30、Q31をご覧ください。
Q10:B型肝炎について国が講じている施策を教えてください。
B型肝炎をはじめとするウイルス性肝炎は国内最大の感染症とも言われ、国民の健康に関わる重要な問題です。このため、厚生労働省では、平成14年度の「C型肝炎等緊急総合対策」など、従来から肝炎対策に取り組んでまいりましたが、今般、肝炎をめぐる新たな状況等を踏まえて、平成20年度より新たに、B型及びC型肝炎のインターフェロン治療に対する医療費助成を行うこととし、これを柱とした新たな肝炎総合対策を実施することとしました。
国の施策の概要は以下の通りです。
インターフェロン療法の促進のための環境整備
インターフェロン治療に関する医療費の助成の創設)
肝炎ウイルス検査の促進
保健所における肝炎ウイルス検査の受診勧奨と検査体制の整備
市町村及び保険者等における肝炎ウイルス検査等の実施
健康管理の推進と安全・安心の肝炎治療の推進、肝硬変・肝がん患者への対応
診療体制の整備の拡充
肝硬変・肝がん患者に対する心身両面のケア、医師に対する研修の実施
国民に対する正しい知識の普及と理解
教育、職場、地域あらゆる方面への正しい知識の普及
研究の推進
肝疾患の新たな治療方法の研究開発
肝疾患の治療等に関する開発・薬事承認・保険適用等の推進
※感染予防としてのワクチンの記載がないことはWHO関係者だけでなくとも疑問です。
国内にいるキャリアの数、若年層での新しい感染拡大兆候、予防接種制度の見直し中ですが、
全く何の記載もないというあたりすごくないですか。
Q18:血液検査でB型肝炎ウイルスに感染していることが分かったら、どうしたらよいですか?
急性肝炎を発病し、その原因ウイルスを調べるために受けた検査でHBs抗原が陽性である(HBV(B型肝炎ウイルス)に感染している)ことが分かった人を除けば、献血時や検診時の検査で偶然HBs抗原が陽性であることが分かった人のほとんどはB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)であると考えられます。
HBVの急性感染かB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)かは、IgM型HBc抗体検査(急性感染では陽性、B型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)の多くは陰性を示す)やHBc抗体力価の測定(一般にB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)では高力価を示す)、またはHBs抗原量やHBc抗体価の推移を追うことなどにより鑑別することができます。いずれの場合であっても、B型肝炎に詳しい医師による肝臓の精密検査が必要です。
詳しくはかかりつけ医にお尋ね下さい。
※パートナーや家族へのワクチン接種勧奨等の記載がありません。
予防啓発は総合対策の一部であるはずですが。
Q20:B型肝炎ウイルスはどのようにして人から人へ感染しますか?
HBV(B型肝炎ウイルス)は主にHBVに感染している人の血液を介して感染します。また、感染している人の血液の中のHBVの量が多い場合には、その人の体液などを介して感染することもあります。
例えば、以下のような場合には感染する危険性があります。
他人と注射器を共用して覚せい剤、麻薬等を注射した場合
HBV感染者が使った注射器・注射針を、適切な消毒などをしないでくり返して使用した場合
HBV感染者からの輸血、臓器移植等を受けた場合
上記の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性がきわめて高いことはいうまでもありませんが、違法な行為は行わないことが基本です。
また、以下の場合にも感染する可能性があります。
HBVに感染者の血液が付着した針を誤って刺した場合
HBV感染者と性交渉をもった場合
HBV感染者の血液が付着したカミソリや歯ブラシを使用した場合
HBVに感染している母親から生まれた子に対して、適切な母子感染防止策を講じなかった場合
常識的な社会生活を心掛けていれば、日常生活の場では、HBVに感染することはまずあり得ないと考えられています。
※この記載は平成24年度としておかしいことは確実ですが、現場の医師はどう活用しているか
というと・・・
保育園や幼稚園にキャリアのお子さんが入園する際に、誰にどこまで告げるべきか?という
相談があります。
医療者は、集団生活上の感染リスクを知っていますので、いろいろ検討するのですが、
最終的に「園には伝えない」という選択をするとします。
その際の根拠にするのがこの記載です。
国が「日常生活ではうつらないといっている」なので、偏見や差別につながるようなリスクを
個人がおってまで、感染しているという個人情報を伝える必要はない、という論理です。
偏見をなくし、かつ、皆が安全に集団生活をおくるためにはユニバーサル接種が一番効果的なのですが。
2008年のものなので、文末にある平成20年度版のため参考文献のリストも古いところで止まっています。
新しいevidenceをもとに書き換えていただかないと、誤解が生じますし、それに基づいて
おきた不利益についての訴訟が起きた際に、「あの時点でわかっていたはずだ」という
メディアや弁護団の指摘にあうことは確実です。
2011年 四柳先生が看護職対象にした 講義のスライドpdf
ある時期のニュースでは、「HPVワクチン、肺炎球菌、Hibワクチンだけ」を定期に入れるという話がありましたが、日本小児科学会が要望書を出している、肝臓がん予防に効果のあるB型肝炎ワクチン、HIVよりも100倍感染力が強い性感染症で、もともとのキャリアの分母も多いB型肝炎、急性肝炎100例のうち1%が劇症化するB型肝炎、そのワクチンがこの時点でが不自然なほどに除外されているのかよくわかりません。
・・・WHOが各国に導入しようといったのは20年前の1992年です。
他の国の子どもとして生まれていたら感染せずにすんだはず、、、の症例に医療者の心にも痛みます。
Long-term Outcome of Chronic Hepatitis B in Adolescents or Young Adults in Follow-up From Childhood
Journal of Pediatric Gastroenterology & Nutrition:
February 2000 - Volume 30 - Issue 2 - pp 201-206
Source of transmission in children with chronic hepatitis B infection after the implementation of a strategy for prevention in those at high risk Hepatology Research Volume 39, Issue 6, pages 569–576, June 2009
Hepatitis B virus genotypes in children and adolescents in Japan: Before and after immunization for the prevention of mother to infant transmission of hepatitis B virusJournal of Medical Virology Volume 79, Issue 6, pages 670–675, June 2007
Tears from children with chronic hepatitis B virus infection are infectious vehicles of hepatitis B virus. Experimental transmission of hepatitis B virus by tears using mice with chimeric human livers J Infect Dis. (2012, April)
↓
この論文が掲載されたときの、JIDの表紙が、キメラマウスの肝臓の細胞の写真でした。
2012年に改訂されるのか、2013年なのかわかりませんが、関係の皆様、より正確な情報への修正をお願いいたします。
国が見解を述べているとういことは(内容の質の話はまたあとで)、
ああ、国の担当者や責任者がこの問題に関心をもち、国民の安全と福
祉のために取り組んでいるのだと知るひとつの指標でもあります。
(同じように毎日新聞社の なるほドリ、というのもいい企画だなあと思います)
特にこのQ&Aというのは、皆が疑問に思いやすいこと、よく受ける質問をまとめ
ているので、医療機関や自治体の人も、患者・住民対応の際の参考になります。
それから、ネット検索をする人も、「まずここをみてみよう」と確認できます。
最近は、新しいコンテンツに「NEW!」というマークと更新日が入っていてわかり
やすいですね。
(管理の悪いHPだと、その中ではNEW!かもしれませんが、よくみたら数年前に
つけたマークがつけっぱなし、ということもありますので)
ただ、作っている部署や担当者が異なるので体裁がバラバラなのが残念。
特に質問に番号が付いていないと、「この番号のところを読むとわかりやすい
ですよ」というフィードバックが難しいので。
これは感染研のものですが、風疹Q&A
にはナンバリングがありません(--;)。
最近話題になった日本脳炎ワクチンについてのQ&Aが更新されていました。
11月12日更新です。
結核感染症課の仕事はとても早くなっています(日々ケアする人たちがいる安心)。
会議資料の掲載もたいていその日のうちです。
ありがたいことです。
さて。Q&Aで思い出したのが「B型肝炎」です。以前も似たような記事を書きましたが、
今回見にいったら、変わらずそのままになっていました。
「え!!!!!」という内容があり、各方面でおかしいじゃないかという指摘を受けてい
ますが、最終更新日が平成20年。
肝炎 総合対策の推進のページ。マスコットは肝臓ちゃんです。
似ていますがGSKのマークではございませぬ。
ちなみに、健康局の疾病対策課(おなじみの結核感染症課ではない)のなかの、「肝炎対策
推進室」が作成しているページです。
ややこしいのですが、他の性感染症は結核感染症課ですが、HIVだけが疾病対策課です。
諸外国は性感染症とHIV対策の包括化、このプログラムと肝炎や結核の統合
がすすんでおり、それは様々な成果(予算合理化や重複する機能の整理)につながっている
のですが、日本では、そういった観点ではなく、諸般の事情の縦割りが維持されています。
疾病対策課ですが、の予算をみると、HIVなどはとても小さな事業で、もっと巨大な事
業を担当している部署だとわかります。
で、こちらのページで「Q&A」をさがしました。右にアイコンがあります。。
こちらをクリック。
「我が国の肝炎(ウイルス性肝炎)の持続感染者は、B型が110万人〜140万人、C型が190万人〜230万人存在すると推定されていますが、感染時期が明確ではないことや自覚症状がないことが多いため、適切な時期に治療を受ける機会がなく、本人が気づかないうちに肝硬変や肝がんへ移行する感染者が多く存在することが問題となっています。」
HIV感染症は新規患者が1年間1500程度(結核は毎週300例)と考えると、
分母としてとても大きな規模の感染症であることが分かります。
ですから、Q&Aはとっても大切です。
しかし、ここをクリックしてもあまりぱっとした内容は書いてありません。
しかたないので、「情報センター」を再度クリック。
ですが、トップページから探せません。
しかたないので、振り出しにもどって、再度Googleで検索。
財団法人 ウイルス肝炎研究財団を探し出します。
こちらに、B型、C型、E型と他の肝炎がならんでいます。(なぜかA型の記載はなく、他のところでも情報があまりない)
ここに、「B型肝炎Q&A」がありました。今日現在の最新版は<平成20年5月更新>
のものです。
製作;厚生労働省 作成協力が 財団法人 ウイルス肝炎研究財団、 社団法人 日本医師会感染症危機管理対策室
なぜ肝炎で、医師会の危機管理対策室かは知らないのですが、医師に広く普及啓発する際に
とても良いチャンネルだと思いました。
で、<平成20年の最新情報Q&A>。4年間は改訂なし。なしでいいのか。
いいのか?の視点で読んでみます。
【簡易版】
Q3:B型肝炎ウイルスはどのようにして感染しますか?
HBV(B型肝炎ウイルス)は、主として感染している人の血液が他の人の血液のなかに入ることによって感染します。また、感染している人の血液中のHBVの量が多い場合は、その人の体液などを介して感染することもあります。具体的には、以下のような場合に感染が起こることがあります。
注射針・注射器をHBVに感染している人と共用した場合
HBVに感染している人の血液が付着した針を誤って刺した場合
(特に、保健医療従事者は注意が必要です。)
HBVが含まれている血液の輸血、臓器移植等を行った場合
HBVに感染している人と性交渉をもった場合
HBVに感染している母親から生まれた子に対して、適切な母子感染予防措置を講じなかった場合(ただし、高力価HBsヒト免疫グロブリン:HBIGとB型肝炎ワクチン:HBワクチンを正しく用いて母子感染予防を行えば、感染することはほとんどありません。詳しくはQ34をご覧ください。)
常識的な社会生活を心掛けていれば、日常生活の場では、HBVに感染
することはほとんどないと考えられています。
なお、以下のような場合には、HBVは感染しません。
HBVに感染している人と握手した場合
HBVに感染している人と抱き合った場合
HBVに感染している人と軽くキスした場合
HBVに感染している人の隣に座った場合
HBVに感染している人と食器を共用した場合
HBVに感染している人と一緒に入浴した場合 等
※家庭内感染、や集団生活(保育園)やスポーツ(集団)での感染が報告されているので
すからこの記載では不十分だと思います。
B型肝炎の家族内感染例 (IASR Vol. 31 p. 21- 22: 2010年1月号)
保育所におけるB型肝炎集団発生調査報告書について(平成16年 佐賀県)
Horizontal transmission of hepatitis B virus among players of an American football team. Arch Intern Med. 2000 Sep 11;160(16):2541-5.
※常識的な生活、と書くと、感染した人達は常識的ではなかったのか?という偏見につながる
可能性があります。記載をあらためていただきたいところです。
※一般向けの解説Q&Aでいきなり出てくるのが注射針・注射器の共有。おかしくないですか?
※母子感染は対策をしても感染する逸脱例が数%という単位で存在し、最近は、医療機関が
対策不十分で感染する事故もおきていますので、母子感染対策すれば大丈夫的な書き方でいい
のか疑問が残ります。
※最近の資料
B型肝炎ワクチンと母子感染防止(白木・モダンメディア 2004年)
わが国における B 型肝炎母子感染防止の経緯と
universal vaccination の必要性について(白木・小児感染免疫、2009年)
B 型肝炎ワクチンの添付文書改訂についての要望(日本小児科学会 2011年)
B 型肝炎母子感染防止不成功例の解析(乾、肝臓、2010年)
【詳細版】
Q8:B型肝炎ウイルス感染はどのようにすれば予防できますか?
他人の血液になるべく触れないことが大切ですが、常識的な社会生活を心掛けていれば、日常生活で周囲にHBV(B型肝炎ウイルス)が感染することはまずあり得ないと考えられています。
具体的には、以下のようなことに気をつけてください。
※「常識的な生活」ってなんでしょう
歯ブラシ、カミソリなど血液が付いている可能性のあるものを共用しない。
他の人の血液に触るときは、ゴム手袋を着ける。
注射器や注射針を共用して、薬物(覚せい剤、麻薬等)の注射をしない。
よく知らない相手との性交渉にはコンドームを使用する。
以上の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性が極めて高いことは言うまでもありませんが、違法行為は行わないことが基本です。
なお、現在、献血された血液はHBVのチェックが行われており、ウイルスが含まれる場合は使用されていません。
HBVに感染している場合、あるいは感染の疑いがある場合には、検査の目的での献血は決して行わないでください。
他人の血液に触れる機会が多い医療関係者は、あらかじめB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を接種しておくことをお勧めします。また、B型肝炎ウイルス陽性の血液により汚染された場合には、HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の投与により感染を予防することができます。
詳しくは、Q30、Q31をご覧ください。
Q10:B型肝炎について国が講じている施策を教えてください。
B型肝炎をはじめとするウイルス性肝炎は国内最大の感染症とも言われ、国民の健康に関わる重要な問題です。このため、厚生労働省では、平成14年度の「C型肝炎等緊急総合対策」など、従来から肝炎対策に取り組んでまいりましたが、今般、肝炎をめぐる新たな状況等を踏まえて、平成20年度より新たに、B型及びC型肝炎のインターフェロン治療に対する医療費助成を行うこととし、これを柱とした新たな肝炎総合対策を実施することとしました。
国の施策の概要は以下の通りです。
インターフェロン療法の促進のための環境整備
インターフェロン治療に関する医療費の助成の創設)
肝炎ウイルス検査の促進
保健所における肝炎ウイルス検査の受診勧奨と検査体制の整備
市町村及び保険者等における肝炎ウイルス検査等の実施
健康管理の推進と安全・安心の肝炎治療の推進、肝硬変・肝がん患者への対応
診療体制の整備の拡充
肝硬変・肝がん患者に対する心身両面のケア、医師に対する研修の実施
国民に対する正しい知識の普及と理解
教育、職場、地域あらゆる方面への正しい知識の普及
研究の推進
肝疾患の新たな治療方法の研究開発
肝疾患の治療等に関する開発・薬事承認・保険適用等の推進
※感染予防としてのワクチンの記載がないことはWHO関係者だけでなくとも疑問です。
国内にいるキャリアの数、若年層での新しい感染拡大兆候、予防接種制度の見直し中ですが、
全く何の記載もないというあたりすごくないですか。
Q18:血液検査でB型肝炎ウイルスに感染していることが分かったら、どうしたらよいですか?
急性肝炎を発病し、その原因ウイルスを調べるために受けた検査でHBs抗原が陽性である(HBV(B型肝炎ウイルス)に感染している)ことが分かった人を除けば、献血時や検診時の検査で偶然HBs抗原が陽性であることが分かった人のほとんどはB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)であると考えられます。
HBVの急性感染かB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)かは、IgM型HBc抗体検査(急性感染では陽性、B型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)の多くは陰性を示す)やHBc抗体力価の測定(一般にB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)では高力価を示す)、またはHBs抗原量やHBc抗体価の推移を追うことなどにより鑑別することができます。いずれの場合であっても、B型肝炎に詳しい医師による肝臓の精密検査が必要です。
詳しくはかかりつけ医にお尋ね下さい。
※パートナーや家族へのワクチン接種勧奨等の記載がありません。
予防啓発は総合対策の一部であるはずですが。
Q20:B型肝炎ウイルスはどのようにして人から人へ感染しますか?
HBV(B型肝炎ウイルス)は主にHBVに感染している人の血液を介して感染します。また、感染している人の血液の中のHBVの量が多い場合には、その人の体液などを介して感染することもあります。
例えば、以下のような場合には感染する危険性があります。
他人と注射器を共用して覚せい剤、麻薬等を注射した場合
HBV感染者が使った注射器・注射針を、適切な消毒などをしないでくり返して使用した場合
HBV感染者からの輸血、臓器移植等を受けた場合
上記の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性がきわめて高いことはいうまでもありませんが、違法な行為は行わないことが基本です。
また、以下の場合にも感染する可能性があります。
HBVに感染者の血液が付着した針を誤って刺した場合
HBV感染者と性交渉をもった場合
HBV感染者の血液が付着したカミソリや歯ブラシを使用した場合
HBVに感染している母親から生まれた子に対して、適切な母子感染防止策を講じなかった場合
常識的な社会生活を心掛けていれば、日常生活の場では、HBVに感染することはまずあり得ないと考えられています。
※この記載は平成24年度としておかしいことは確実ですが、現場の医師はどう活用しているか
というと・・・
保育園や幼稚園にキャリアのお子さんが入園する際に、誰にどこまで告げるべきか?という
相談があります。
医療者は、集団生活上の感染リスクを知っていますので、いろいろ検討するのですが、
最終的に「園には伝えない」という選択をするとします。
その際の根拠にするのがこの記載です。
国が「日常生活ではうつらないといっている」なので、偏見や差別につながるようなリスクを
個人がおってまで、感染しているという個人情報を伝える必要はない、という論理です。
偏見をなくし、かつ、皆が安全に集団生活をおくるためにはユニバーサル接種が一番効果的なのですが。
2008年のものなので、文末にある平成20年度版のため参考文献のリストも古いところで止まっています。
新しいevidenceをもとに書き換えていただかないと、誤解が生じますし、それに基づいて
おきた不利益についての訴訟が起きた際に、「あの時点でわかっていたはずだ」という
メディアや弁護団の指摘にあうことは確実です。
2011年 四柳先生が看護職対象にした 講義のスライドpdf
ある時期のニュースでは、「HPVワクチン、肺炎球菌、Hibワクチンだけ」を定期に入れるという話がありましたが、日本小児科学会が要望書を出している、肝臓がん予防に効果のあるB型肝炎ワクチン、HIVよりも100倍感染力が強い性感染症で、もともとのキャリアの分母も多いB型肝炎、急性肝炎100例のうち1%が劇症化するB型肝炎、そのワクチンがこの時点でが不自然なほどに除外されているのかよくわかりません。
・・・WHOが各国に導入しようといったのは20年前の1992年です。
他の国の子どもとして生まれていたら感染せずにすんだはず、、、の症例に医療者の心にも痛みます。
Long-term Outcome of Chronic Hepatitis B in Adolescents or Young Adults in Follow-up From Childhood
Journal of Pediatric Gastroenterology & Nutrition:
February 2000 - Volume 30 - Issue 2 - pp 201-206
Source of transmission in children with chronic hepatitis B infection after the implementation of a strategy for prevention in those at high risk Hepatology Research Volume 39, Issue 6, pages 569–576, June 2009
Hepatitis B virus genotypes in children and adolescents in Japan: Before and after immunization for the prevention of mother to infant transmission of hepatitis B virusJournal of Medical Virology Volume 79, Issue 6, pages 670–675, June 2007
Tears from children with chronic hepatitis B virus infection are infectious vehicles of hepatitis B virus. Experimental transmission of hepatitis B virus by tears using mice with chimeric human livers J Infect Dis. (2012, April)
↓
この論文が掲載されたときの、JIDの表紙が、キメラマウスの肝臓の細胞の写真でした。
2012年に改訂されるのか、2013年なのかわかりませんが、関係の皆様、より正確な情報への修正をお願いいたします。