Unknown diseasesの原因が感染症とは限らないですが、感染症は最初に検討される案件であり、(既知のものではないかも、な)病原体をつきとめるという基礎分野のせめぎあいとはべつに、公衆衛生や臨床としては、「どれくらい他の人にうつっているのか?」情報が重要になります。
今回のカンボジアの症例は、発症・死亡も年少の子どもであり、看病している同居家族に拡大していないことなども手掛かりになっています。
あわせてWHOと政府がコラボして対策をとっていますよ、、というアナウンスをすることは地域の人へのリスコミとしても重要ですね。
このようなときは「かもしれない」情報もとびかうのですが、MLなどのopen source以外に、クローズドのメーリングリストやデーターベースがありますので、各国の危機管理担当者はメディアに流れる手前の情報をもっています。
必要があれば公衆衛生上のアクションは出てきます。
自分で新しい情報を探すほどでもないが、進捗状況や全体像は感染症の専門として知っておきたいなあ、というかたにはCIDRAPのチェックをお勧めします。Twitterアカウントもあります。
Officials make break in baffling disease killing Cambodian children
CNN July 8, 2012
"The Institut Pasteur in Cambodia tested samples taken from 24 patients and found 15 had tested positive for Enterovirus Type 71 -- a common cause of hand, foot and mouth disease that can also cause severe neurologic complications, mainly in children."
(まだ確定していないでしょうが)エンテロウイルス71型だと説明がつく状況がありますね。アジア地域における流行のパターンや歴史を知っている人は特に。
WHOやメディアが不用意に恐怖をうえつけてないか?という批判はすでにあります。
"WHO was telling whole the world: New mystery killer disease in Cambodia! This was causing unnecessary panic in Cambodia," Richter wrote.
このCNNの記事の中でも指摘がありますが、このような場合、メディアは分子情報にとびつきます「〇人が死んだ!」子どもの死亡は悲劇ですので、小さくても社会や関係者の痛みであることには変わりはありません。
しかし、感染症や疫学を勉強した人なら、その数字の意味をよく考えることができます。
「分母はいったいどれくらいの規模?」
CFR( Case fatality rate)を考えるときに、超重症→受診→入院した人が分母で、死亡例が分子だと、すごい高い致死率になります。
しかしワクチンもなく子どもに流行しやすいこのウイルスは、実はもっと分母が大きいのではないか?という検討が必要なわけです。
メディアが広報すると保護者や医療者の関心も高まり、軽症者が受診したり報告率も上がる可能性があります。
検査体制に影響を受けますが、疫学チームが検討する全体像がつかめるとまたニュースの内容も変わってくるかもしれません。
(あるいは突然途中で新型ウイルスだというような別の話になるの「かも」ですが)
カンボジア帰国で、同様の症状があるようでしたら保健所→地方衛生研究所→国立感染症研究所といったルートで相談や検体の精査が可能です。早めにご相談を。
フランスの症例 Fatal Case of Enterovirus 71 Infection, France, 2007
EID Volume 15, Number 11―November 2009
日本「手足口病(エンテロウイルス71)ワクチン開発の現状」IASR 2012年3月
日本「東アジア地域で分離されるエンテロウイルス71型の分子疫学」 IASR
日本「エンテロウイルス71型による脳炎死亡例を含む手足口病の流行−兵庫県」 IASR 2000年
台湾 80名が死亡したアウトブレイク時の、死亡例と死亡にいたらなかった例の遺伝子レベルの比較
Genetic analysis of enterovirus 71 isolated from fatal and non-fatal cases of hand, foot and mouth disease during an epidemic in Taiwan, 1998.
Virus Res. 2000 Jul;68(2):127-36.
台湾 Human Enterovirus 71 Disease: Clinical Features, Epidemiology, Virology,
and Management The Open Epidemiology Journal, 2008, 1, 10-16
台湾 Clinical Spectrum of Enterovirus 71 Infection in Children in Southern Taiwan, with an Emphasis on Neurological Complications CID 1999;29 (July)
香港 初の死亡例 もともと健康な2歳児
First fatal case of enterovirus 71 infection in Hong Kong
HKMJ Vol 7 No 2 June 2001
感染症研究国際ネットワーク推進プログラムにはカンボジア拠点はないですが、このようなネットワークが情報収集や迅速対応につながるといいですね。
世界の疫学調査チームがつらなるTEPHINET(てふぃねっと)は日本では国立感染症研究所FETPがメンバーとしてならんでいます。
今回のカンボジアの症例は、発症・死亡も年少の子どもであり、看病している同居家族に拡大していないことなども手掛かりになっています。
あわせてWHOと政府がコラボして対策をとっていますよ、、というアナウンスをすることは地域の人へのリスコミとしても重要ですね。
このようなときは「かもしれない」情報もとびかうのですが、MLなどのopen source以外に、クローズドのメーリングリストやデーターベースがありますので、各国の危機管理担当者はメディアに流れる手前の情報をもっています。
必要があれば公衆衛生上のアクションは出てきます。
自分で新しい情報を探すほどでもないが、進捗状況や全体像は感染症の専門として知っておきたいなあ、というかたにはCIDRAPのチェックをお勧めします。Twitterアカウントもあります。
Officials make break in baffling disease killing Cambodian children
CNN July 8, 2012
"The Institut Pasteur in Cambodia tested samples taken from 24 patients and found 15 had tested positive for Enterovirus Type 71 -- a common cause of hand, foot and mouth disease that can also cause severe neurologic complications, mainly in children."
(まだ確定していないでしょうが)エンテロウイルス71型だと説明がつく状況がありますね。アジア地域における流行のパターンや歴史を知っている人は特に。
WHOやメディアが不用意に恐怖をうえつけてないか?という批判はすでにあります。
"WHO was telling whole the world: New mystery killer disease in Cambodia! This was causing unnecessary panic in Cambodia," Richter wrote.
このCNNの記事の中でも指摘がありますが、このような場合、メディアは分子情報にとびつきます「〇人が死んだ!」子どもの死亡は悲劇ですので、小さくても社会や関係者の痛みであることには変わりはありません。
しかし、感染症や疫学を勉強した人なら、その数字の意味をよく考えることができます。
「分母はいったいどれくらいの規模?」
CFR( Case fatality rate)を考えるときに、超重症→受診→入院した人が分母で、死亡例が分子だと、すごい高い致死率になります。
しかしワクチンもなく子どもに流行しやすいこのウイルスは、実はもっと分母が大きいのではないか?という検討が必要なわけです。
メディアが広報すると保護者や医療者の関心も高まり、軽症者が受診したり報告率も上がる可能性があります。
検査体制に影響を受けますが、疫学チームが検討する全体像がつかめるとまたニュースの内容も変わってくるかもしれません。
(あるいは突然途中で新型ウイルスだというような別の話になるの「かも」ですが)
カンボジア帰国で、同様の症状があるようでしたら保健所→地方衛生研究所→国立感染症研究所といったルートで相談や検体の精査が可能です。早めにご相談を。
フランスの症例 Fatal Case of Enterovirus 71 Infection, France, 2007
EID Volume 15, Number 11―November 2009
日本「手足口病(エンテロウイルス71)ワクチン開発の現状」IASR 2012年3月
日本「東アジア地域で分離されるエンテロウイルス71型の分子疫学」 IASR
日本「エンテロウイルス71型による脳炎死亡例を含む手足口病の流行−兵庫県」 IASR 2000年
台湾 80名が死亡したアウトブレイク時の、死亡例と死亡にいたらなかった例の遺伝子レベルの比較
Genetic analysis of enterovirus 71 isolated from fatal and non-fatal cases of hand, foot and mouth disease during an epidemic in Taiwan, 1998.
Virus Res. 2000 Jul;68(2):127-36.
台湾 Human Enterovirus 71 Disease: Clinical Features, Epidemiology, Virology,
and Management The Open Epidemiology Journal, 2008, 1, 10-16
台湾 Clinical Spectrum of Enterovirus 71 Infection in Children in Southern Taiwan, with an Emphasis on Neurological Complications CID 1999;29 (July)
香港 初の死亡例 もともと健康な2歳児
First fatal case of enterovirus 71 infection in Hong Kong
HKMJ Vol 7 No 2 June 2001
感染症研究国際ネットワーク推進プログラムにはカンボジア拠点はないですが、このようなネットワークが情報収集や迅速対応につながるといいですね。
世界の疫学調査チームがつらなるTEPHINET(てふぃねっと)は日本では国立感染症研究所FETPがメンバーとしてならんでいます。