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Channel: 感染症診療の原則
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啓発 と 販売プロモーション の 距離 その2

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その1につづき、もうひとつワクチンでの事例です。

HPVワクチンの販売促進活動として、大学や病院へのアプローチが行われています。

これは2価だけのときもありましたし、4価認可後にも行われています。

(この関連の相談を複数受けています)

持ちかけられた方はご存知でしょうが、知らない方もいると思いますので解説。

みなさんの施設だったらどのような問題がおきるのか、あるいはまったく問題なしなのか。配慮がいるのかどうか。考えてみてください。


まず、製薬会社が特定の医師・教員に話を持ちかけます。

「職員/学生の勉強会をお手伝いしたい」

これはつまり、HPVワクチンについて知ってもらう機会をつくりたい、ということです。
啓発といえば啓発です。

誰が、どのような目的で、どのような内容を伝えるのかが問われるわけです。
しかも直接その製品を扱う企業によるアプローチです。


「職業はさておき、女性の健康として学ぶ意義はある」そう思うことはできます。

組織のファーストレスポンスはいろいろで、病気に熱意があって詳しいがゆえに、あるいは、関連事項に詳しくないがゆえに「あー、いいよ」というかもしれませんし、「委員会にはからねば」というかもしれません。それは組織によります。

いろいろな意見を聞きました。

「何はともあれ勉強はよいことだから、別にいいんじゃない?」
(他のことだってやってるじゃん、とか)
「企業の目的が販促なのだから、院内や学内で特定の製品だけ説明するのはよくないのではないか?」(他の競合品も含めてニュートラルな設定で説明すべきだ)
などです。

「本当にそれが重要、必要なら、製薬会社は抜きで独自にやるべきだ」

確かにそのとおりです。

取次をした(OKを出した)人が企業から謝礼を受け取るような場合はどうでしょうか。

逆に、受け取らなければOKでしょうか。

職員だけ特別価格! これはどうでしょうか。
それでOKとして人は問題ですか? ラッキーといって受ける方に何か問題はあるでしょうか?

「え〜私だけじゃなくてうちの家族も特別にして〜」

法律でダメとは書いてありません。(その意味ではなにしたっていいじゃないかという人もいます)
決まりはありません。社員や家族優遇策というのは多くの企業で採用されています。

どう見えるのかという問題は残りますが。




日本でも諸外国でも公費で接種をしているのは中1前後の年齢ですので、学生や職員は自費で接種をする人たちです。

3回接種で5万円前後になるので、強い動機づけが必要です。

そもそも、定期的な婦人科検診(かかりつけ医)で、成人女性に接種を勧めている婦人科医師はどれくらいいるでしょうか。

実は、各国で承認されたときの接種対象年齢がちがっています。

米国では2価は10-25歳、4価は9-26歳に承認されています。
製薬会社はこの年齢幅を広げようと努力していますが、FDAがずっと却下しています。

日本ではなぜかこれより高い年齢でも接種OKになっていますが、臨床試験で年齢が上の女性のデータは何人分くらいあるのかご存知でしょうか。
あるいはそれをサポートするような疫学データがあるのかどうか。

ルチンの制度と個別検討(ハイリスク因子があるかどうか)は目的や予算のでどころもちがいますが、evidenceやガイドラインが明確ではないところで、また、データの蓄積もあまりないところで、強く推奨というのは難しいことなのではないかと思います。

業界には自主的な指針があるので、製薬会社の関わりが妥当性を欠いていないか、この文書を読んで判断しましょう。
「医療用医薬品プロモーションコードの解説」


何かと話題の絶えないHPVワクチンですが、日本ではなぜだか水痘やムンプス、B型肝炎ワクチンよりも上位に位置づけられています。疫学データ上もその優先順位根拠は不明です。
(来週〜あたりに開かれる会議で最終的な法案をきめる話し合いがあるのでその議論に注目を)


海外の動きをみてみましょう。どこまでが公衆衛生で、どこからが啓発で、どんなかたちでマーケティングが動いているのか。(連携や連動もあります)

3日前のニュースでは、「キティ」がNYでも子宮頸がん検診とワクチン啓発活動!のニュースがありました。
※写真のキティちゃん足ながすぎrです(^^;)

記事をみると国連人口基金(UNFPA)関連ですが、複数の「日本企業」のキャンペーンをNYで展開です。

啓発最優先!な人には、使えるものはなんだって使うのかもしれませんし、実際にそのプロジェクトで検診や早期診断につながる人もいるわけです。


下記は4月10日のカナダのグラクソスミスクラインの報道発表です。

News Release - April 10, 2012
Cervarix selected as vaccine for British Columbia's new cervical cancer prevention program for young women


これは思春期でのルチンのHPVワクチン接種は4価(ガーダシル)が基本ですが、年齢が上の女性群でサーバリックスを接種することになりました、、、、という発表です。

これは背景の説明があまり出回っていません。他の州が追随するか注目中です。



世界のシェアの8割近くが4価ワクチンで、今年中に9価ワクチンが申請されようかというときに、4価や2価はどのような位置づけになるのだろう、ということも、関係者は考えていることです。

PCV7→13はそのまま途中で切り替えOKとなりました。
HPV4価の人は最後だけ9価でもいいのか。+2回なのか、4価ではじまったら4価で終わるのか。
そういった話題が出てきます。
9価導入が遅くなれば、「日本は在庫処分に使われている!」という陰謀ネタも出てくるでしょう。



話を戻したいと思います。

保健医療におけるワクチンの啓発そのものは必要です。公衆衛生マターとしてです。

製薬会社は営利を追求する組織ですので(利益がなければつぶれます)、そのことじたいは出発点なので「儲けている」ことが問題なのではありません。
だったら、原価100円程度の飲料を600円で売る飲食店はどうなのかです。健康や治療目的といったことではなくても人はお金を払いますし、その原価や中間コストに納得しています。
価格が不適正だ、と思うなら交渉の余地はあるとおもいます。
しないのは、消極的でも同意をしているということです。


営利目的での情報発信と啓発の情報発信では何がちがうのか。

また、どのようなルールのもとに行うべきなのか。

情報を受け取る側は、どの点に注目すればリスク管理ができるのか。

グレーゾーンが大きければ大きいほど、abuseされていくので、第三者組織の設置や原則公開が採用されているのは、こうした問題への対処のひとつです。

日本では会議がセミクローズドですし、議事録は公開されていますが、いろいろなことが決まった後なのでそのインパクトが小さいのが課題。

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