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啓発 と 販売プロモーション の 距離 その1

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医療関連の情報は、

◆誰が書いたのか(バックグラウンド。専門家なのか非専門家なのか。実名か匿名か)
◆どのような背景の人か(所属団体によるバイアスの検討)
◆いつの記事か(古すぎたら改訂版や他の説が新たに出ていないか確認)
◆そもそもどのような目的で発信されているのか
◆どのようなバイアスがあり、それをどう差し引いて(制御して)考えるべきなのか

などに注意して読みます。

医療に関連しては、検査、治療薬などいろいろな事例がありますが、最近大きな動きのあるワクチンを例にしてみたいと思います。

5月14日の記事です。

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髄膜炎組織連合(CoMO)

◎髄膜炎ワクチンの効力理解を  髄膜炎組織連合が呼びかけ
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「髄膜炎」「髄膜炎ワクチン」関連の記事です。

まず、おさらいです。

大きくわけて感染症による髄膜炎は細菌(Hibや肺炎球菌など)によるものと、ウイルス性のものとあります。

Hibや小児肺炎球菌はこどもの髄膜炎を予防するワクチンですが、「髄膜炎菌」という名前の菌による髄膜炎を予防することはできません。別物だからです。

日本では年間把握される症例数が少なく(実際に少ないのと把握報告が少ないのは別なのですが)、「髄膜炎菌性髄膜炎」を予防するワクチンも認可されていません。
諸外国では認可、ルチン化されている国もあります。

日本人でも渡航先・目的、また留学先によっては接種証明が必要なこともあります。
この場合は輸入ワクチンとして接種します。

髄膜炎菌には複数種類がありますが、血清型が「B」の予防ワクチンはまだでいきていません。

比較的ゴールに近い現在髄膜炎「B」のワクチンを開発途上なのは2社。ノバルティスとファイザーです。


さて。このおさらいを踏まえたうえで読んでみます。

媒体が「共同通信」の一般記事ではなく、「「共同通信PRワイヤー」での広報記事です。誰かがお金を払って載せてもらっているコンテンツ、とまず理解します。

http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201205144344/

「誰が」よびかけているのかというと、「髄膜炎組織連合」です。原文ではThe Confederation of Meningitis Organisations (CoMO)
http://comoonline.org/

連合ですから、複数の関連団体が集まってできていると想像できます。

「CoMOは世界髄膜炎組織会議の閉幕にともない2004年9月に創立された。会議で共有した情報に力づけられ20代表団が、この病気の世界的な負担を強調し、新たな髄膜炎と子どもの健康組織の設立をサポートすることによって、髄膜炎に対する戦いのサポートを助けるため、CoMOを創立した」
「CoMOの現在のメンバー組織は世界20カ国の34。世界組織は世界で髄膜炎をなくし、メンバー組織を助けて髄膜炎に対する認識を高めることに集中しており、メンバー組織基盤を成長させて世界のできるだけ多くの国にサポートを提供し、この病気の破滅的な結果に立ち向かうひとびとをサポートしている」

連なっている各地域の研究団体や患者団体がHPで紹介されています。

「CoMOの会長兼理事であり、髄膜炎で大きな障害の残った子の父親であるブルース・ラングラント氏」この方はオーストラリアの団体の代表であり、この連合組織全体の代表でもあるということです。

(この人が、日常的にお金をもらっているのか、名誉職としてプライベートの時間をさいてこの活動をしているのかといったことは明記されていません)

この調査は誰がどのようにしたかというと、ノバルティスが主体となっています。

「*調査は2011年9月5日から11月1日まで行われた。
*調査は資金を提供したノバルティス・ワクチンズ・アンド・ダイアグノスティクスのためにIPSOSヘルスケアが行った。」

製薬会社が関連しているものは「すべてだめ」ということではありませんが、各国各施設、専門団体によってその「関係性の作り方」についてルールがあり、公開もされています。

この場合、公開は最低限のことであり、セミナーなども協賛団体として関連企業が関わっている場合は必ず明記が必要です。(関わっているのに公開しないのが問題)


なんでもいいじゃん!とか、全部ダメ、の両極端は思考停止になりやすいので、何が問題になるのか、どのようなバイアスや誤解を生じやすいのか、発信する側と受け手が理解をしておく必要があり、また最終評価を受けるプロセスが大事です。


例えば、企業が支援をしているセミナー。

「unrestricted educational grant」として、スポンサーがその内容に口を出さない(商業バイアスをかけない)形ですよという明記があるのかどうか。

例えば冊子の場合、
"The new booklet was made possible by an unrestricted educational grant from XXXXX Lab, Inc"といったかたちです。

また、最近では、演者はスライドの1枚目か2枚目のところで、financial disclosureと書いて、どこそこの企業のアドバイ―をしている、研究費を大学の関連部門にもらっているというようなことを開示するようになっています。

(政府関係者は全くなし、が通常で、大学の基礎研究系はたいてい何かしらある、あるいは複数併記されています)

ここから先は話を聞く側の課題であり、その内容が妥当性を欠くほどに偏っていないかどうか判断をしなければなりません。

つまり、判断するためには、その人の発言や出している情報が全体としてどう位置づけられているかのOverviewができないとまずいということです。


また、問題は、「そのこと(unrestricted educational grant)だけ」で説明がつくのか?です。

セミナーでevaluation formが配られたり、あとでon-lineでその評価をさせられるのは、ここで評点と自由記載で「セミナーそのものがスポンサー寄りの内容だった(ライバル会社の製品の位置づけがフェアでなかった)」といった評価をうけないかどうか、、、が問われます。

これは第三者の教育専門団体や運営会社が行い関係者に公表をします。


企業協賛があるかないかというよりは質の評価になります。

もっとも、そんな細かいことはさておき、企業が協賛している・企業名が並んでいたらアウト、と「最初からすべてダメ」にしている組織もあります(都立病院がその例)。



連合組織の活動資金はどのように調達されているのか。通常はメンバー団体の拠出金です。
その他の努力として会費制度や寄付のよびかけ、また、企業スポンサーがわかりやすい形で公開されています。
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患者団体や保護者の団体がアピールをすれば啓発で、製薬会社がアピールをすると販売促進なのか。グレーな部分も、濃いところと薄いところがありますが、双方が誤解を受けないように努力をしなくてはいけないところです。


ちなみに、日本では製薬スポンサーが入る場合のルールとして「公開性」がまず問題になります。特定の病院にだけ特別な予算で勉強会を開いてあげる、他の人は参加できませーん、というような形は×です。

また、製薬会社が関与するときは、製薬会社が最初に製品説明時間をとります。
これ自体は入れることになっており、何らかしら入れないと、特別なメンバーの特別な団体の活動に「便宜だけはかった」ということで対等な関係になりません。(「共催」のニュアンスを考えてください)


謝金についてもルールがあります。

これはお給料と同じく、「特定の作業や労働に対する対価」です。その内容(専門性、代替性)、それにかかる時間、拘束時間等で変わってきますが、多くの場合は相場(基準)が決まっており、は職位(肩書)等で決まってきます。

短時間の日雇いとはいえ、労働だけさせて対価を払わなければ問題になります。

「製薬会社のお金をもらわない」場合は、無料奉仕のような形になり、かえってその製薬会社に便宜を図るような形になってしまいますので、対等性を維持するためにはやはり謝金を支払うのが妥当だということになります。

あとは、その額を妥当と思うのかどうかですが、これはケースバイケースです。

講師はたくさん準備をして、通常は講義2時間にだいたい3-5倍の時間がかかるといわれています。
座長はそれと比較すると軽作業のように思います。
最近は、司会がいれば座長はいらないんじゃないの?ということで、共催側の中からお当番で司会をする人がいて、座長廃止にして過剰な経費が生じないようにする努力もあります。

(しかし、過去の話を聞くと、そうしたチャンスがほしいから(アルバイトか何かと勘違い)、勉強会やろうよーと持ちかけられる場合もあったそうです。)

額の話にもどりましょう。

専門職に依頼する仕事の時間給が、コンビニエンスストアのアルバイトと同じ額ではないでしょう。しかし、クリントン元大統領のように、1回の講演料が数千万円という人もいないわけです。

直接の対価とは関係のない接待など「過剰な」部分についてはこの春から特に厳しく規制されるようになっており、その上限額からして実質的には"消える"のだと思います(自分のごはん代は自分で払えばいいだけです。自分のごはんですから)。


就職したての新人さんは、オリエンテーションでどのような説明や指導を受けたのかわかりませんが、「知らなかった」では周囲も巻き込まれて困ることになりますので、早めに「一般的なこと」と「組織のルール」を確認することをおすすめします。

<関連情報>
製薬協のホームページにいろいろな業界の自主基準がありますが、まずこの2つはマストです。

日本製薬医学会は「製薬産業と医師の関係の透明化 〜利益相反と情報公開のインパクトを考える〜」を開催。

「医のプロフェッショナリズム:企業―医師関係」京都府医大雑誌 2011年

製薬会社と患者団体についても規定があります。


また、よく問題になるのが「天下り」です。
東京電力の一件で「天上がり」というのもあると知りましたが・・・。

「製薬企業出身者の独立行政法人医薬品医療機器総合機構への就業制限の緩和に反対する意見」
薬害オンブズパーソン会議

などなど。

過去に紹介した諸外国の取り組みや医学生の取り組みなどもまた紹介したいと思います。

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