今月みかけたニュースから。
ニュースの記載だけでは分からないことが多いのが医療関連の訴訟の話。
<事実>
↓
物理的な証拠
言語化された限定的な「情報」 言語化されるものされないもの(意図的、あるいは無意識)
↓
「情報」の解釈 解釈する人のフィルターで異なってくる
↓
解釈した人による言語化 --->記者の関心、表現
↓
解釈する人の認知 --->私たちが記事として読んで受け取っている段階
医療関係者(当事者、第三者、専門分野の人、医療者だけどその分野には詳しくない人)
法曹関係者(医療にどれだけ詳しいかは人による)
報道関係者(医療や法律にどれだけ詳しいかは人による)
例えば、「感染症になっても、抗生物質を使えば治るはずだ」という誤解がよくあります。
感染症(病原体)の種類によってちがいますし、その人のステージ(初期なのかだいぶ時間がたってからなのか)、その人の年齢や基礎疾患(感染症以前の健康レベル)によっても異なる、個別性の高い高度な判断になります。
なので、裁判では別の専門家の意見を聴いたりもします。その人が専門家として妥当かどうなのか、なぜその人が選ばれるのかという問題もあります。
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「術後に女性死亡、二審も賠償命令 富山大の控訴棄却」中日新聞 4月19日
富山医科薬科大病院(当時)で2004年、手術後に20歳の長女が敗血症で死亡したのは担当医らが適切な処置を怠ったためとして、両親が約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は18日、富山大に約7500万円の支払いを命じた一審富山地裁判決を支持、病院側の控訴を棄却した。
裁判長は判決理由で「細菌の簡易的な検査をし、早期に治療薬を投与していれば死亡は避けられた」として担当医らの注意義務違反を認め、死亡との因果関係を指摘した。
判決によると、女性は2004年9月に大腸炎のため入院し大腸摘出などの手術を受けたが、同12月に腹腔(ふくくう)内感染症による敗血症で死亡した。
大学側は「予期しなかった術後感染症で、明らかな過失があったとは判断できない」とした医療事故調査委員会の調査結果を文書で両親に提出していた。
富山大は「判決文を見てから今後の対応について検討したい」とコメントしている。
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「細菌の簡易的な検査」ってなんでしょう。
もうひとつ長崎県の事例。
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「医療過誤:川棚町の遺族、国立病院機構など提訴 /長崎
毎日新聞 4月10日
関節炎治療の際の感染が原因で死亡したとして、女性(当時68歳)の遺族3人が慰謝料など約4100万円を長崎川棚医療センターを運営する国立病院機構など2病院に求める訴訟を地裁佐世保支部に起こしていたことが分かった。提訴は3月19日付。
訴状によると、女性は10年6月16日、同センターで右ひざへヒアルロン酸注射を受けた際、医師が滅菌手袋を使用せずに素手で注射したため、黄色ブドウ球菌で感染した。
その後、痛みで、町内の整形外科を受診。細菌感染の疑いは指摘されたが、痛み止めの処方だけだった。女性は同24日(※ヒアルロン酸注射から8日目)、敗血症による多発性胃潰瘍で死亡した。
原告側の代理人は「女性は高齢で糖尿病を患い、感染が非常に懸念されるのに、処置が不適切だった」と主張している。同センターは「訴状の内容を検討し、対応したい」。整形外科側は「コメントしない」としている。
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感染リスクはゼロではありませんが、本来やっておくべき準備や手順を省いたりすると問題になります。
春の新人さんの教育では念を押してください。
世の中の、医療に落ち度があるに違いないという誤った前提を修正していくことも重要ですね。
「開業つれづれ:交通事故、敗血症で救命したら医療裁判」 blog 勤務医 開業つれづれ日記 2010年8月28日
ニュースではわからないことが多いので、判例集をみたり、裁判傍聴にいったり、いろいろ努力はあります。
医療事故 弁護士法律相談センターによる「敗血症」の解説と参考文献・・・は「〜そうです」「〜ようです」と伝聞形式となっています。
あれからもう1年なんですね。ユッケ(生肉)で死亡例がでた食中毒事例も、続報が今月報じられていました。
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「えびす食中毒 肉の苦情、発覚前から続出 会社幹部も把握か」中日新聞 4月22日
昨年4月に食中毒が発生する以前、えびすの店舗が提供した牛肉を食べた客から「腐っているのではないか」との苦情が相次いでいた。捜査関係者への取材で分かった。
肉の臭いに気付いた一部の従業員から「返品した方がいいのではないか」との声が上がっていたことも判明。こうした事態をえびすの運営会社「フーズ・フォーラス」(金沢市、特別清算中)の幹部も把握していたとみられる。
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こちらの記事はタイトルだけだとよくわかりませんが、、、感染症関連です。
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「議会臨時会で県報告」中日新聞4月19日
静岡県裾野市の男児=当時(3才)=が2006年6月、腸管出血性大腸菌(O157)に感染し、後遺症で重い脳障害を負ったとして、男児の両親が診療所を運営する医療法人と幼稚園を運営する学校法人、保健所を所管する県に損害賠償約9570万円を求めた訴訟で、県は18日の県議会4月臨時会の厚生委員会で、和解が成立したと報告。
県によると、両親は09年5月、静岡地裁沼津支部に提訴していた。3月26日に医療法人が600万円、学校法人が120万円をそれぞれ支払うことで和解した。県の賠償金支払いはない。
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ニュースの記載だけでは分からないことが多いのが医療関連の訴訟の話。
<事実>
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物理的な証拠
言語化された限定的な「情報」 言語化されるものされないもの(意図的、あるいは無意識)
↓
「情報」の解釈 解釈する人のフィルターで異なってくる
↓
解釈した人による言語化 --->記者の関心、表現
↓
解釈する人の認知 --->私たちが記事として読んで受け取っている段階
医療関係者(当事者、第三者、専門分野の人、医療者だけどその分野には詳しくない人)
法曹関係者(医療にどれだけ詳しいかは人による)
報道関係者(医療や法律にどれだけ詳しいかは人による)
例えば、「感染症になっても、抗生物質を使えば治るはずだ」という誤解がよくあります。
感染症(病原体)の種類によってちがいますし、その人のステージ(初期なのかだいぶ時間がたってからなのか)、その人の年齢や基礎疾患(感染症以前の健康レベル)によっても異なる、個別性の高い高度な判断になります。
なので、裁判では別の専門家の意見を聴いたりもします。その人が専門家として妥当かどうなのか、なぜその人が選ばれるのかという問題もあります。
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「術後に女性死亡、二審も賠償命令 富山大の控訴棄却」中日新聞 4月19日
富山医科薬科大病院(当時)で2004年、手術後に20歳の長女が敗血症で死亡したのは担当医らが適切な処置を怠ったためとして、両親が約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は18日、富山大に約7500万円の支払いを命じた一審富山地裁判決を支持、病院側の控訴を棄却した。
裁判長は判決理由で「細菌の簡易的な検査をし、早期に治療薬を投与していれば死亡は避けられた」として担当医らの注意義務違反を認め、死亡との因果関係を指摘した。
判決によると、女性は2004年9月に大腸炎のため入院し大腸摘出などの手術を受けたが、同12月に腹腔(ふくくう)内感染症による敗血症で死亡した。
大学側は「予期しなかった術後感染症で、明らかな過失があったとは判断できない」とした医療事故調査委員会の調査結果を文書で両親に提出していた。
富山大は「判決文を見てから今後の対応について検討したい」とコメントしている。
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「細菌の簡易的な検査」ってなんでしょう。
もうひとつ長崎県の事例。
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「医療過誤:川棚町の遺族、国立病院機構など提訴 /長崎
毎日新聞 4月10日
関節炎治療の際の感染が原因で死亡したとして、女性(当時68歳)の遺族3人が慰謝料など約4100万円を長崎川棚医療センターを運営する国立病院機構など2病院に求める訴訟を地裁佐世保支部に起こしていたことが分かった。提訴は3月19日付。
訴状によると、女性は10年6月16日、同センターで右ひざへヒアルロン酸注射を受けた際、医師が滅菌手袋を使用せずに素手で注射したため、黄色ブドウ球菌で感染した。
その後、痛みで、町内の整形外科を受診。細菌感染の疑いは指摘されたが、痛み止めの処方だけだった。女性は同24日(※ヒアルロン酸注射から8日目)、敗血症による多発性胃潰瘍で死亡した。
原告側の代理人は「女性は高齢で糖尿病を患い、感染が非常に懸念されるのに、処置が不適切だった」と主張している。同センターは「訴状の内容を検討し、対応したい」。整形外科側は「コメントしない」としている。
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感染リスクはゼロではありませんが、本来やっておくべき準備や手順を省いたりすると問題になります。
春の新人さんの教育では念を押してください。
世の中の、医療に落ち度があるに違いないという誤った前提を修正していくことも重要ですね。
「開業つれづれ:交通事故、敗血症で救命したら医療裁判」 blog 勤務医 開業つれづれ日記 2010年8月28日
ニュースではわからないことが多いので、判例集をみたり、裁判傍聴にいったり、いろいろ努力はあります。
医療事故 弁護士法律相談センターによる「敗血症」の解説と参考文献・・・は「〜そうです」「〜ようです」と伝聞形式となっています。
あれからもう1年なんですね。ユッケ(生肉)で死亡例がでた食中毒事例も、続報が今月報じられていました。
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「えびす食中毒 肉の苦情、発覚前から続出 会社幹部も把握か」中日新聞 4月22日
昨年4月に食中毒が発生する以前、えびすの店舗が提供した牛肉を食べた客から「腐っているのではないか」との苦情が相次いでいた。捜査関係者への取材で分かった。
肉の臭いに気付いた一部の従業員から「返品した方がいいのではないか」との声が上がっていたことも判明。こうした事態をえびすの運営会社「フーズ・フォーラス」(金沢市、特別清算中)の幹部も把握していたとみられる。
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こちらの記事はタイトルだけだとよくわかりませんが、、、感染症関連です。
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「議会臨時会で県報告」中日新聞4月19日
静岡県裾野市の男児=当時(3才)=が2006年6月、腸管出血性大腸菌(O157)に感染し、後遺症で重い脳障害を負ったとして、男児の両親が診療所を運営する医療法人と幼稚園を運営する学校法人、保健所を所管する県に損害賠償約9570万円を求めた訴訟で、県は18日の県議会4月臨時会の厚生委員会で、和解が成立したと報告。
県によると、両親は09年5月、静岡地裁沼津支部に提訴していた。3月26日に医療法人が600万円、学校法人が120万円をそれぞれ支払うことで和解した。県の賠償金支払いはない。
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