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Channel: 感染症診療の原則
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その1 予防接種の「広域化」と「キャッチアップ」

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予防接種は市町村が実地主体であり、住んでいる地域によってさまざまなローカルルールがあります。

多くの場合、会計年度は3月までのため、3月31日をこえると、それまで無料だったワクチンが突然有料になったりもします。

いろいろな事情で接種もれはおきます。

諸外国では、標準的な接種スケジュールにおいつくため「キャッチアップ」のための支援が行われています。

この場合、『支援』なのであって、「期間中に接種しなかったあなたのミスでしょ。だから自費でもしかたないんじゃないですか?」的な冷たいしうちとはちがいます。

もっともお役所の窓口ではそんな逆なでするような会話はない(と願いうわけ)ですが、早く気づいてよかった。なるべく早く接種したほうがよいものはしましょう、という話にもならないのが現実。

日本にACIPのような制度ができて、製薬会社やもにょもにょ。。。の影響を受けない中立機関ができたら、ぜひこういったことにも配慮できる仕組みをつくってほしいです。


その他のローカルルールとして、広域化の話があります。

任意接種のインフルエンザワクチンなどでは広く行われているようです。

「相互乗り入れ」と表記されてたりします。


これは、居住地域以外の医療機関で接種をした場合に、居住地と同じ条件で接種ができることをめざしたものです。

市町村の境に住んでいる人や交通機関の事情によってはそのほうが現実的だったりもします。

福岡県の定期予防接種の広域化について

「予防接種広域化は、予防接種対象者の身体状況等を日頃から把握されているかかりつけ医による予防接種を推進し、被接種者が安心して接種を受けられる体制を整備することで、予防接種機会の拡大を図るために行われるものです」

なんですが、この実地内容は自治体によってことなっています。

たとえば青森県。

青森県内広域予防接種実施要領

3 対象予防接種
(1)三種混合
(2)二種混合
(3)MR混合
(4)日本脳炎
(5)BCG

となっています。 他の地域も同じような実施要項をみかけます。

現在、一部公費化されている肺炎球菌、Hibワクチンはどうなるんでしょうか?

地元で接種できなくて困っている例としては、

東日本大震災や東電原発事故の関係で、自宅やもとの地域から避難している人たちがいます。
母子手帳の記録がない場合もあります。

これに該当するお子さんたちの予防接種は、別の地域で受けることになります。

また、先天性の基礎疾患がある、未熟児で初期に専門医療機関にかかっているような場合。

近医が接種、同時接種をしてくれないことがあります。

お母さんは小さな赤ちゃんをつれて遠方の小児専門医療機関を受診することになるのですが、この場合も居住地以外なので自費となってしまう事態がおきています。

支払いの手続きや病院や自治体との契約はとても複雑で現場の負担となるそうなのですが、このような制度のはざまで、経済的な負担によって保護者が困ったり、それによって接種できなくなったりといった不利益や格差が生じてよいわけがありません。

また、どうしよう、とためらっているうちにHibや肺炎球菌など本来予防できたはずの感染症で子どもが重症化してしまうようなことがないよう、医療や保健に関わる人たちは改善をする必要があります。

再び福岡県。

福岡県は広域の設定があります。


広島県福山市の場合。17 他市町村に住民票がある者への接種について(7ページ)

-----------------
他市町村に住民票がある者が,福山市内の実施協力医療機関において接種する場合は,原則全額自己負担となる。

ただし,次の場合は公費助成が受けられることもあるため,詳細については,接種希望者の住民票がある市町村に確認するよう保護者に説明する。

? 広島県内の他市町に住民票がある者
「広域予防接種券」が発行される場合があるため,接種希望者の住民票がある市町に確認するよう保護者に説明する。
また,広島県内の他市町が発行する「広域予防接種券」を広島県内広域化予防接種受託医療機関に持参した場合は,接種後に「広域予防接種券」を回収し,接種券に記載された公費負担額について,予防接種請求書に予診票と「広域予防接種券」を添えて広島県国保連合会に提出する。
? その他の者
依頼書を発行することなどにより,公費助成が受けられる場合もあるため,詳細については,接種希望者の住民票がある市町村に確認するよう保護者に説明する。
-------------------

Hibと肺炎球菌とHPVワクチンだけが突然期間限定で公費支援の対象となり、その経緯は検討をしていた委員の人たちも知らないまま現在にいたりますが、

あまりに唐突だった制度で自治体の事務的な混乱が懸念され、厚労省との質疑のやりとりもありました。

Q&Aはこちら

この資料はとても興味深かったです。

例えば質問40。
「市境での医療機関や出産後の里帰り等により一時的に居住している市町村で接種する場合、当該医療機関での契約が困難であるが、このような場合は助成対象とならないのか。」

回答:市町村が委託契約している医療機関で接種することが原則ですが、定期の予防接種に準じて、市町村間で依頼書を取り交わす等の方法により、必ずしも委託契約を行っていない場合でも補助の対象とすることは可能です。

なお、補助の対象となるためには、保険給付の対象となっていることが前提となりますので、ご留意ください。全国市長会及び全国町村会がとりまとめている保険においては、市町村間で取り交わす依頼書等において、その対象者に健康被害が生じた場合は○○市が健康被害救済の責任を負う等の条項が明記されていれば、保険給付の対象になる旨確認しておりますが、その他の保険の場合には、保険給付の対象とならない可能性がありますので、保険会社にご確認いただきますようお願いいたします。

--------------

質問41:
「医療機関と委託して行う方法が対象となっているが、新型インフルエンザワクチンのように、被接種者が他の市町村において接種を受けた場合の接種費用を、被接種者が居住する市町村の接種費用とするなどの合意を複数の市町村間で行う場合にも助成の対象となるか。」

回答:貴見のとおり、助成の対象となります。
なお、補助の対象となるためには、保険給付の対象となっていることが前提となりますので、ご留意ください。全国市長会及び全国町村会がとりまとめている保険においては、近隣の市町村間
での相互契約において、その対象者に健康被害が生じた場合は○○市が健康被害救済の責任を負う等の条項が明記されていれば、保険給付の対象になる旨確認しておりますが、その他の保険の場合には、保険給付の対象とならない可能性がありますので、保険会社にご確認いただきますようお願いいたします。

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臨床現場もたいへんですが、事務方の苦労や作業量もはんばない。

はやくすっきりと、余計な負荷なく、皆が幸せになる形の制度が整いますように。




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