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Channel: 感染症診療の原則
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怖いのはウイルスやワクチンじゃなくて

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インフルエンザで何が怖いですかっ?という質問が時々ありますが・・・・個人的に特に怖いことはありません。
インフルエンザウイルスはインフルエンザウイルスです。全く未知のものじゃありません。

あえてあげるなら無責任デマとかヒステリーが トホホってかんじでしょうか。
たとえば、今日は、国民分のワクチンの確保のニュースが「強制接種」になってたりします。


あと、内田さんが指摘しているようなメディアの問題。「腐ったマスメディアの方程式」君たちは自滅していくだろう」。その後改善されたのか不明。

"いまの報道は、「浮き足立て」、「興奮しろ」、「取り乱せ」ということを要求し、平静にやっていると、「緊張感がない」と怒り出す。冷静に物事の真相を見ようという姿勢とは程遠い"


(もちろん、メディアの中にも真摯な姿勢で感染症の記事を書く人はいますよ)


インフルエンザ怖いか?議論にもどります。

具体的な危機感としてあげるなら専門家不在のところで出てくる支離滅裂な無責任な指示。
2009年、医療をはじめとする現場は、インフルエンザじゃなくってこの五月雨式根拠効果不明の話に翻弄された部分が大きかったんですから。

”通常医療をしながら”、ああしろ、こうしろ、それはもう古い指示だ、今はこうだといわれるわけです。

お役所が悪いということばかりではなく、自分たちの問題でもありました。
批判回避/責任転嫁文化の中で判断が遅れると違う意味で怖いことになることを学習しました。

インフルエンザの後に、感染症の危機管理は強化されるのかなと思っていましたがどちらかというと逆方向に動いていますし、各国が専門部署を立ち上げて視界を広げてリサーチやアクションをしているのをみると、日本にはまったり感がただよいます。

そうか、専門家がまったりしているなら、皆もまったりすればいいのかというと違います。。

匿名のデマとかじゃなくて、2009年のパンデミック当時、霞ヶ関でがんばっていた医師の予言が怖いんですよ。
関心ある方は、MRICのサイトで「インフルエンザ」をキーワード検索してみてください。

まず、村重先生が2011年2月にこんなお話をされていますし、
「 新型インフルエンザ騒動は必ず繰り返される」MRIC 2011年2月

高山先生が出された、”本番前の「模擬試験」”は超リアルですよ。
「北朝鮮が崩壊する日 〜私たちは備えているか?」MRIC 2012年3月4日

ウイルスは怖くないとしても、こういった問題構造の中にいることが怖いですね。
地震じたいはしょうがないけど、耐震構造のヤバい建物にいるんだってことです。


いや、そんなこたーない!迅速な問題解決と合理的な意思決定はすんばらしい!という反論があったら下記の問題はなぜおきているのか?平時からこれでいいのか?という指摘はどうでしょうね。

「インフルエンザの出席停止期間延長は本当に必要か−たかが出席停止期間というなかれ−」MRIC 2012年3月2日

不条理、不合理、根拠不明、誰の何を守っているのか分からないルールに皆が苦しんでいる。(そんなヒマはないはずだ)


で、また日本独特の話がニュースになっています(下記yahoo読売)

2009年のパンデミック騒ぎの対応で、各国はそれまでの対策を見直しており、ワーストシナリオベースにいろいろなことを画一化するのはやめる、柔軟性をもたせることが重視されています。だって、国内だって地域によって流行時期とかレベルがちがうんですから(日本でも、「山形県あれ〜?」とかありましたよね?)

特にこのような形のワクチン一斉対応などは案として重視されてないんですが(製薬会社は困りますね)、予防接種が制度的にも予算的にも軽視されてきたこの国で、効果や安全性不明の手元にまだないワクチンを誰に接種、、、なんて決めたり、そのことだけ流れてくるのはへんじゃないですか〜?。

(この時期の国の予防接種のリスコミとしてはマイナスじゃないでしょうか)

WHO/ヨーロッパが2011年末に発表したところによると、2009年当時にあったパンでミック対策をいち早く見直し発表したのは、フランスとイギリス。詳細はリンク先にあります。
関心ある方はお読みください。

2010年のEU全体でパンデミック時ワクチンをどうするかのアセスメントシート


もちろん、「ほら〜けっこう怖いインフルかもよ〜」となれば、また希望者が殺到したりするのかもしれません(お約束的な反応)。
あるいは、ふだんも接種してないしー、あまりきかないとNHKいってたみたいだしー、要らないよねーという国民も多数いるかもしれません。

でもいいんですよ(よくない)。

強制的な接種はどのみちありえないでしょう。
製薬会社にとって重要なのは支払い契約です。接種しなくて廃棄されてもちゃんと(前みたいに反古にしないで)買い上げてもらわねば、ですよ。

「なにー税金の無駄遣いじゃないか!」と怒る方もいると思います。
でもほら、すぐ「不足するなんて国の準備不足!怠慢だ!」とか、ののしるの好きな人いるじゃないですか。
そういうのと裏腹です。


現在の製造法や工場のキャパだと、事前の約束としてこれくらいつくってくれる(売ってくれる)?お金払うからさ、と約束をしておかなければ不足するだろうことはわかっており、2009年のとき「輸入のなんてやだ」騒ぎもありましたから、そこからの学習なのかもしれません。

記事の書き方はどうかなと思いますけど、そういう前提じゃないと予算計上はできませんしね。

タイトルは明らかにミスリードだと思います。「国民全員が予防接種をする」と受け取られそうです。
「国民分のワクチン確保へ」じゃないでしょうかね。


ニュースを読む前に、まず経緯を学んだほうがいいです。
「予防接種法改正(新たな臨時接種の創設等)の概要」IASR 2011年11月

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強毒性新型インフル予測時、全国民に予防接種へ
読売新聞 3月6日(火)14時36分配信
 政府は、強い毒性と感染力を持つ新型インフルエンザの国内流行が予想される場合、国民の安全確保のため、原則として全国民に予防接種を行う方針を固めた。国内の医薬品メーカーなどと連携し、2013年度に1億3000万人分のワクチン供給体制の確立を目指す。9日の閣議で特別措置法案を決定し、今国会に提出する予定だ。
政府は、強毒性の新型インフルが流行すれば、国内で最大64万人が死亡すると推計している。
特措法案では、新型インフルの流行時に、首相が本部長を務める政府対策本部を設置すると明記。予防接種は、対策本部が「新型インフルエンザが国民の生命・健康に著しく重大な被害を与え、国民生活・経済の安定が損なわれないようにするため緊急の必要がある」と判断した場合に実施する。接種対象者や期間は対策本部がその都度検討するが、深刻な流行が予想される場合、持病が悪化する恐れがある患者などを除き、全国民への接種を想定している。
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この記事で注目すべきは「メーカーと連携して供給体制の確立」ってところでしょうか。ワクチン産業ビジョンをみているかぎり、研究や工場新設稼働のための予算をつける根拠にはなりますよね。
国内でそういった技術が進歩することそれ自体に反対する人はいないと思いますが、優先順位とか公益性とか、いろいろ議論はされるべきでしょう。



話はとびますが、インフル騒動のときに「よかったこと」がひとつだけありました。
それは手洗い意識があがったこと。結果として他の感染症も減ってたんですよね。

でも、
だいじょうぶじゃね?みたいな慣れのムードが広まるとまた洗わなくなる。
人間の本質でございます。
記事にならないですしね。

感染予防はまことむずかしー。

子どもの予防接種含めて平時から出来ることを地道にやりましょう。

・・青木編集長はインフルエンザにあまり(ほとんど)興味ないようでのってきません。抗ウイルス剤も出したことないそうですし(ぼそぼそ)

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