間がだいぶあきましたが、9月17日に久々に厚労省の関連の会議が開かれ、資料も公開されたので、日本と世界の2015年9月の状況のサマリーをつくりたいとおもいます。
今回の会議で注目されていたのは、副反応の調査の結果がやっと公開される、ということと、それをふまえて現況が変わるのか?つまり、「接種勧奨の差し控え」が終わって、接種勧奨が元の状態にもどるのか?ということです。結論としては現状維持でしたが。
接種じたいは、止まっていないので、定期接種として自己負担なく接種できる人たちはしていたわけですが、以前に比べるとその数はとても少ない状況にあります。
今回はその中でのデータのため、全体の数の多くはそれ以前の報告となっていました。
国としてどこかの時点で以前の状態に戻したいわけですが、専門団体が熱心に意見表明をしているなかで、なかなか状況はかわりません。医師の団体があれこれいうくらいでは変わらないのだといういい事例だと思いますが(それゆえ、このワクチンの導入初期の異様さが際立ちます。予防接種に消極的な学校をつかってまで接種にいかせるプロモーションがありましたので)
いずれにしても、、、当の2つのワクチンはいろいろなことに巻き込まれてしまい、本来接種のチャンスのあった人たちはうやむやになり(後に公費で接種できるように配慮されると各会議で話は出ていますけれども)、
疫学データが不足している脆弱さ、コミュニケーションのマズさが2015年9月にしてもなお、うまくいかない状況をつくっていますので、長期的な展望を現場も国も考えた方がいいですね・・・。
前置きはこれくらいにして。
まず、準備として、これまでの話し合いの流れがわからないと今回の会議の内容やニュースの理解が難しいので、配布資料に目を通します。
まず、参考資料1 子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの副反応に関する論点整理 (平成26年1月20日開催副反応検討部会・安全対策調査会 資料1)
を読みます。
そして、このワクチンについて12月10日に専門家が意見交換する場がありましたので、そこでの配布資料(スライド)を見ると医学的な見地の整理を理解できるとおもいます。
参考資料2 日本医師会・日本医学会合同シンポジウム プログラム
上記2点は先に読んでおくと状況がわかりやすいです。
平成27年8月には日本医師会と日本医学会が作成した資料が公開されています。これは後で読んでもOKです。
参考資料3 HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き
平成26年4月1日から平成27年6月30日までの報告データと、それ以前のものでの追加情報を確認します。
積極的接種勧奨の差し控えから接種数が減っていますので全体の副反応報告もとても減っています。
数字や症例リストやについては下記の資料が上記リンクからダウンロードできますので、副反応について語りたいかたはお読み下さい。
資料1 子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス)の副反応報告状況(PDF:1,221KB)
資料2 子宮頸がん予防ワクチン(ガーダシル)の副反応報告状況(PDF:2,004KB)
資料3 子宮頸がん予防ワクチン接種後の失神関連副反応について(PDF:634KB)
全部読むのは無理無理!というかたも、これがどのような資料なのかは知っておいたほうがよいとおもいます。
資料の概要を説明してみましょう。
まず「子宮頸がん予防ワクチン」というワクチンは存在しません。2価と4価の2種類の別会社の製品が存在します。いっしょくたに論じられませんので、数字もわけて提示されます。
新聞記事等ではこれがごちゃまぜになっていることにご注意ください。
そういったことが妥当なのか?という検討は取材チームやジャーナリストには疑問がないのか?ということも一つのポイントでありますが・・・いずれ、日本のHPVワクチン騒動レビュー等がおこなわれる際に、記事の記載内容も検証されるでしょう。
全体の数字はこのようなかんじです。
症例リストは今回は少ないので全例みるのもそうたいへんではないとおもいます。
リストは2種類あって、製造販売者からの報告と、医療機関からの報告があります(だぶっている症例が含まれていることもあります)。
一番左に通し番号、そして接種時の年齢、接種日、基礎疾患、でた症状(副反応)、症状が出た日、転帰日、転帰と整理されます。
症状をベースに検討する話なので、いつ接種して発症日がいつで、どのような症状がどう経過したのか?が重要になります。接種した人の年齢も接種日も発症日もわからない場合は検討が難しいのと、接種後におきたネガティブなイベントを集めると【有害事象】、ワクチンとは直接関係がないものもまぎれこんでくる、さらに分母が広がると、直接関連していないものも入ってくるという問題があります。
いっぽう、副反応が軽度ですんだ場合、すぐ治って医療機関にはこない場合、きていたけれど治ったので来院しなくなった場合はカウントできなくなったり、フォローのできない不明事例になります。また当事者や医療者がワクチンとの関連性を全く考え帰れば検討もされません。
このように数字はもともと不確実な要素を含みます。
検討できるのは、医師の診察や診断が行われるようになった(それが必要となった)事例という前提の理解が必要です。
製造販売業者が把握した情報をもとに表の読み進め方を確認したいとおもいます。
今回は、2価ワクチンが75例、4価ワクチンが13例の報告となっていました。
2価ワクチンの1〜75例のうち、最初の10例をみてみましょう。
接種した人は全員女性で、年齢には14歳から46歳と幅があります。10代とわかっていますが実年齢が分からない症例が2例。この1〜10例では、接種した日にちがわかっています。若年層が接種対象年齢ではありますが、基礎疾患がある人も入っています。
副反応をみてみましょう。まず、症例9の「ウイルス性髄膜炎」は、HPVワクチンの直接の副反応というよりは、有害事象であるとおもわれますが、このような事例も「重篤な」「副反応」事例に入ってきます。
回復事例のため、その後の大きな問題にはなりません。
次の症例はどうでしょうか。
医療者と、報道関係者では認識に違いがでてきそうでしょうか?
症例9は「失神」とあります。
HPVワクチンのみならず思春期では採血やワクチン接種等に関連した迷走神経反射で短時間の意識消失がおこりやすいことがわかっています。ただ、この場合の意識消失はすぐに回復しますし、問題の多くはその際に頭をぶつけたりして2次的な傷害につながりやすいということです。
症例9は転帰が「未回復」の失神となっています。
HPVワクチンが原因で、回復しない失神とはどのようなものを医師や報道関係者は想像するでしょうか。
症例9は発症日が接種から3年たっていますが、これはHPVワクチンとの因果関係をうたがうような副反応とイメージしやすいでしょうか?
このような事例も「重篤な」「未回復の」症例にはいってきます。
以上は、最初10例での確認でした。
次に、今回75例、2価格HPVワクチンの製造販売業者が把握した事例のうち、「未回復」のものをみてみたいとおもいます。75例のうち22例ありました。
その後が不明が28例。25例は軽快または回復となっています。
次に4価HPVワクチンの製造販売業者からの報告13例のうちの最初の10例です。
異なるワクチンですが、2価と同じような症状もならんでいます。
発症日が不明など、検討が難しい要素が残っていることが、こうした報告の課題です。
次に、今回注目されていた、副反応についての調査結果の公開です。
配布資料は、この2つをみます。
資料4-1 副反応追跡調査結果について(PDF:164KB)
資料4-2HPVワクチンの接種後の症状の追跡調査の方法について(PDF:74KB)
これは、HPVワクチンの接種後に生じる「症状の内容」「程度」「治療」等について情報を充実させるために、すべての副反応疑い報告を対象として実施(すでに因果関係の結論が出ているものや、死亡例、発症後7日以内に回復したと報告される症例は除いている)
調査票に記入をしたのは医師。市町村からの連絡で転院先が分かった場合はそこでの症状の調査を実施。
調査対象期間の副反応の疑いとしてあがってきた数字は2,584例とのことです。接種全体で見ると0.08%(のべ接種は0.03%)。
しかし、年齢や接種日、接種ワクチン、発症した日や転帰が把握できない事例は検討が難しいので、このような情報が把握できた1,739例が調査対象となりました。
異なる2つのワクチンですが、なぜか資料では合算されてしまっています。
(ワクチンそのものの評価が難しくなるのではないでしょうか)
その内訳です。テレビでセンセーショナルに映された動画とは異なる印象を受けます。
実際に接種がきっかけとなって症状が出る人も含まれますが、同時に非特異的なものがならびますので、関連性を検討する際は、バックグラウンドデータ=そもそもこのような症状はこのワクチンに関係なくふだんからどれくらいあるのだろうか?という問いがあります。
配布資料1にある、日本医師会と日本医学会合同シンポジウムの牛田先生の資料に参考情報が紹介されています。
例えば、日本の小学生、中学生、高校生は「痛み」についてどの部位でどれくらいの頻度で感じているのか。起立性調節傷害はどれくらいあるのか、月経の不順はどれくらいあるのか、等と比較することをいいます。
会議の資料6では、慢性的な経過をたどっている未回復の症例の治療について費用を支援するかたちでの救済を、接種の時期で区別せず(定期になってからとそれ以前)、事務的な便宜を図るということが提案されました。
資料4-3HPVワクチンについて報告すべき副反応(PDF:72KB)
資料5 HPVワクチン接種にかかる診療・相談体制(PDF:303KB)
資料6 HPVワクチン接種後に生じた症状に関する今後の救済に対する意見(PDF:69KB)
(どちらかの)HPVワクチンとの因果関係原因追及を最終目的にすると、不可能や無理が生じるので、発達途上にある当事者の症状改善や生活が整うための支援をしていく流れになっています。
今回の検討会の後の報道も「1割に症状が残る」ということが強調されていましたが、症例リストの情報を読んでのものかは疑問でした。NHKのニュースヘッドラインは「子宮頸がんワクチン 7割が学校生活に支障 」と、接種した人の7割に問題が出るかのような記載になっていました。わざとなのかもしれませんが。
(8割近い人に出る副反応には痛みや腫れがありますけれども)
メディアが恐怖喚起や煽り報道をすることは、本来必要なサポートの流れに反するものになっていますので残念ですね。
あまり話題になっていませんが、HPVワクチンだけ治療費支援の対象を広げるのではなく、他のワクチンや薬剤でも、因果関係の証明ができなくても、サポートする仕組みをつくる機会なのではないかとおもいます。
今回の治療費の支援の話が、積極的接種の勧奨の再開の前段階であることは容易に想像できますが。
反対している人たちの要望には、このワクチン自体をなくしてしまえ、定期枠からはずせということがあるので、次の検討会がどのようになるのか、さらに注目を集めそうです。
最後に。最近の海外の話題。
9月18日のMedscapeでも似たような話がとりあげられていました。"Case Reports of 'Syndrome' Appearing After HPV Vaccination"
オーストラリアでのワクチン接種率のページに男性の接種率が公開されました。
国の平均で3回接種が完了したのは60%。これは登録に同意した人のみのなので、実際にはこれより多いようです。
英国のワクチン接種率
2008年から2014年のHPVワクチン接種率は、全体で86%で、接種した女子の95%は学校での集団接種プログラムの中で受けていました。
男子への接種を求める声もありますが、英国では費用対効果がよくない&女子の接種率が高ければ問題ないというスタンスです。
9価のHPVワクチンは現在、31カ国で承認されていますが、公費助成は1カ国のみです(日本でも承認申請はおこなわれています)
ヨーロッパでは、7月13日にCRPSとPOTSについてのHPVワクチン接種後の安全性レビューを行うとの発表がありました。
米国は9価が導入されていますが、接種率は公衆衛生部門が期待するようにはあがっていません。
大きなHPVのカンファレンスがヨーロッパで開催されたので、英語メディアでは新しいニュースも流れています。
今回の会議で注目されていたのは、副反応の調査の結果がやっと公開される、ということと、それをふまえて現況が変わるのか?つまり、「接種勧奨の差し控え」が終わって、接種勧奨が元の状態にもどるのか?ということです。結論としては現状維持でしたが。
接種じたいは、止まっていないので、定期接種として自己負担なく接種できる人たちはしていたわけですが、以前に比べるとその数はとても少ない状況にあります。
今回はその中でのデータのため、全体の数の多くはそれ以前の報告となっていました。
国としてどこかの時点で以前の状態に戻したいわけですが、専門団体が熱心に意見表明をしているなかで、なかなか状況はかわりません。医師の団体があれこれいうくらいでは変わらないのだといういい事例だと思いますが(それゆえ、このワクチンの導入初期の異様さが際立ちます。予防接種に消極的な学校をつかってまで接種にいかせるプロモーションがありましたので)
いずれにしても、、、当の2つのワクチンはいろいろなことに巻き込まれてしまい、本来接種のチャンスのあった人たちはうやむやになり(後に公費で接種できるように配慮されると各会議で話は出ていますけれども)、
疫学データが不足している脆弱さ、コミュニケーションのマズさが2015年9月にしてもなお、うまくいかない状況をつくっていますので、長期的な展望を現場も国も考えた方がいいですね・・・。
前置きはこれくらいにして。
まず、準備として、これまでの話し合いの流れがわからないと今回の会議の内容やニュースの理解が難しいので、配布資料に目を通します。
まず、参考資料1 子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの副反応に関する論点整理 (平成26年1月20日開催副反応検討部会・安全対策調査会 資料1)
を読みます。
そして、このワクチンについて12月10日に専門家が意見交換する場がありましたので、そこでの配布資料(スライド)を見ると医学的な見地の整理を理解できるとおもいます。
参考資料2 日本医師会・日本医学会合同シンポジウム プログラム
上記2点は先に読んでおくと状況がわかりやすいです。
平成27年8月には日本医師会と日本医学会が作成した資料が公開されています。これは後で読んでもOKです。
参考資料3 HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き
平成26年4月1日から平成27年6月30日までの報告データと、それ以前のものでの追加情報を確認します。
積極的接種勧奨の差し控えから接種数が減っていますので全体の副反応報告もとても減っています。
数字や症例リストやについては下記の資料が上記リンクからダウンロードできますので、副反応について語りたいかたはお読み下さい。
資料1 子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス)の副反応報告状況(PDF:1,221KB)
資料2 子宮頸がん予防ワクチン(ガーダシル)の副反応報告状況(PDF:2,004KB)
資料3 子宮頸がん予防ワクチン接種後の失神関連副反応について(PDF:634KB)
全部読むのは無理無理!というかたも、これがどのような資料なのかは知っておいたほうがよいとおもいます。
資料の概要を説明してみましょう。
まず「子宮頸がん予防ワクチン」というワクチンは存在しません。2価と4価の2種類の別会社の製品が存在します。いっしょくたに論じられませんので、数字もわけて提示されます。
新聞記事等ではこれがごちゃまぜになっていることにご注意ください。
そういったことが妥当なのか?という検討は取材チームやジャーナリストには疑問がないのか?ということも一つのポイントでありますが・・・いずれ、日本のHPVワクチン騒動レビュー等がおこなわれる際に、記事の記載内容も検証されるでしょう。
全体の数字はこのようなかんじです。
症例リストは今回は少ないので全例みるのもそうたいへんではないとおもいます。
リストは2種類あって、製造販売者からの報告と、医療機関からの報告があります(だぶっている症例が含まれていることもあります)。
一番左に通し番号、そして接種時の年齢、接種日、基礎疾患、でた症状(副反応)、症状が出た日、転帰日、転帰と整理されます。
症状をベースに検討する話なので、いつ接種して発症日がいつで、どのような症状がどう経過したのか?が重要になります。接種した人の年齢も接種日も発症日もわからない場合は検討が難しいのと、接種後におきたネガティブなイベントを集めると【有害事象】、ワクチンとは直接関係がないものもまぎれこんでくる、さらに分母が広がると、直接関連していないものも入ってくるという問題があります。
いっぽう、副反応が軽度ですんだ場合、すぐ治って医療機関にはこない場合、きていたけれど治ったので来院しなくなった場合はカウントできなくなったり、フォローのできない不明事例になります。また当事者や医療者がワクチンとの関連性を全く考え帰れば検討もされません。
このように数字はもともと不確実な要素を含みます。
検討できるのは、医師の診察や診断が行われるようになった(それが必要となった)事例という前提の理解が必要です。
製造販売業者が把握した情報をもとに表の読み進め方を確認したいとおもいます。
今回は、2価ワクチンが75例、4価ワクチンが13例の報告となっていました。
2価ワクチンの1〜75例のうち、最初の10例をみてみましょう。
接種した人は全員女性で、年齢には14歳から46歳と幅があります。10代とわかっていますが実年齢が分からない症例が2例。この1〜10例では、接種した日にちがわかっています。若年層が接種対象年齢ではありますが、基礎疾患がある人も入っています。
副反応をみてみましょう。まず、症例9の「ウイルス性髄膜炎」は、HPVワクチンの直接の副反応というよりは、有害事象であるとおもわれますが、このような事例も「重篤な」「副反応」事例に入ってきます。
回復事例のため、その後の大きな問題にはなりません。
次の症例はどうでしょうか。
医療者と、報道関係者では認識に違いがでてきそうでしょうか?
症例9は「失神」とあります。
HPVワクチンのみならず思春期では採血やワクチン接種等に関連した迷走神経反射で短時間の意識消失がおこりやすいことがわかっています。ただ、この場合の意識消失はすぐに回復しますし、問題の多くはその際に頭をぶつけたりして2次的な傷害につながりやすいということです。
症例9は転帰が「未回復」の失神となっています。
HPVワクチンが原因で、回復しない失神とはどのようなものを医師や報道関係者は想像するでしょうか。
症例9は発症日が接種から3年たっていますが、これはHPVワクチンとの因果関係をうたがうような副反応とイメージしやすいでしょうか?
このような事例も「重篤な」「未回復の」症例にはいってきます。
以上は、最初10例での確認でした。
次に、今回75例、2価格HPVワクチンの製造販売業者が把握した事例のうち、「未回復」のものをみてみたいとおもいます。75例のうち22例ありました。
その後が不明が28例。25例は軽快または回復となっています。
次に4価HPVワクチンの製造販売業者からの報告13例のうちの最初の10例です。
異なるワクチンですが、2価と同じような症状もならんでいます。
発症日が不明など、検討が難しい要素が残っていることが、こうした報告の課題です。
次に、今回注目されていた、副反応についての調査結果の公開です。
配布資料は、この2つをみます。
資料4-1 副反応追跡調査結果について(PDF:164KB)
資料4-2HPVワクチンの接種後の症状の追跡調査の方法について(PDF:74KB)
これは、HPVワクチンの接種後に生じる「症状の内容」「程度」「治療」等について情報を充実させるために、すべての副反応疑い報告を対象として実施(すでに因果関係の結論が出ているものや、死亡例、発症後7日以内に回復したと報告される症例は除いている)
調査票に記入をしたのは医師。市町村からの連絡で転院先が分かった場合はそこでの症状の調査を実施。
調査対象期間の副反応の疑いとしてあがってきた数字は2,584例とのことです。接種全体で見ると0.08%(のべ接種は0.03%)。
しかし、年齢や接種日、接種ワクチン、発症した日や転帰が把握できない事例は検討が難しいので、このような情報が把握できた1,739例が調査対象となりました。
異なる2つのワクチンですが、なぜか資料では合算されてしまっています。
(ワクチンそのものの評価が難しくなるのではないでしょうか)
その内訳です。テレビでセンセーショナルに映された動画とは異なる印象を受けます。
実際に接種がきっかけとなって症状が出る人も含まれますが、同時に非特異的なものがならびますので、関連性を検討する際は、バックグラウンドデータ=そもそもこのような症状はこのワクチンに関係なくふだんからどれくらいあるのだろうか?という問いがあります。
配布資料1にある、日本医師会と日本医学会合同シンポジウムの牛田先生の資料に参考情報が紹介されています。
例えば、日本の小学生、中学生、高校生は「痛み」についてどの部位でどれくらいの頻度で感じているのか。起立性調節傷害はどれくらいあるのか、月経の不順はどれくらいあるのか、等と比較することをいいます。
会議の資料6では、慢性的な経過をたどっている未回復の症例の治療について費用を支援するかたちでの救済を、接種の時期で区別せず(定期になってからとそれ以前)、事務的な便宜を図るということが提案されました。
資料4-3HPVワクチンについて報告すべき副反応(PDF:72KB)
資料5 HPVワクチン接種にかかる診療・相談体制(PDF:303KB)
資料6 HPVワクチン接種後に生じた症状に関する今後の救済に対する意見(PDF:69KB)
(どちらかの)HPVワクチンとの因果関係原因追及を最終目的にすると、不可能や無理が生じるので、発達途上にある当事者の症状改善や生活が整うための支援をしていく流れになっています。
今回の検討会の後の報道も「1割に症状が残る」ということが強調されていましたが、症例リストの情報を読んでのものかは疑問でした。NHKのニュースヘッドラインは「子宮頸がんワクチン 7割が学校生活に支障 」と、接種した人の7割に問題が出るかのような記載になっていました。わざとなのかもしれませんが。
(8割近い人に出る副反応には痛みや腫れがありますけれども)
メディアが恐怖喚起や煽り報道をすることは、本来必要なサポートの流れに反するものになっていますので残念ですね。
あまり話題になっていませんが、HPVワクチンだけ治療費支援の対象を広げるのではなく、他のワクチンや薬剤でも、因果関係の証明ができなくても、サポートする仕組みをつくる機会なのではないかとおもいます。
今回の治療費の支援の話が、積極的接種の勧奨の再開の前段階であることは容易に想像できますが。
反対している人たちの要望には、このワクチン自体をなくしてしまえ、定期枠からはずせということがあるので、次の検討会がどのようになるのか、さらに注目を集めそうです。
最後に。最近の海外の話題。
9月18日のMedscapeでも似たような話がとりあげられていました。"Case Reports of 'Syndrome' Appearing After HPV Vaccination"
オーストラリアでのワクチン接種率のページに男性の接種率が公開されました。
国の平均で3回接種が完了したのは60%。これは登録に同意した人のみのなので、実際にはこれより多いようです。
英国のワクチン接種率
2008年から2014年のHPVワクチン接種率は、全体で86%で、接種した女子の95%は学校での集団接種プログラムの中で受けていました。
男子への接種を求める声もありますが、英国では費用対効果がよくない&女子の接種率が高ければ問題ないというスタンスです。
9価のHPVワクチンは現在、31カ国で承認されていますが、公費助成は1カ国のみです(日本でも承認申請はおこなわれています)
ヨーロッパでは、7月13日にCRPSとPOTSについてのHPVワクチン接種後の安全性レビューを行うとの発表がありました。
米国は9価が導入されていますが、接種率は公衆衛生部門が期待するようにはあがっていません。
大きなHPVのカンファレンスがヨーロッパで開催されたので、英語メディアでは新しいニュースも流れています。