薬剤師のためのベッドサイドティーチング2014
第2回「薬剤師に役立つ画像診断」
杏林大学呼吸器内科 皿谷健先生からご回答を頂きました。
以下、ご覧下さい。
ちなみにタイトル写真は皿谷先生が身体所見の講義をしているところ。
///////////////////////////////////////////////////
Q1. CT やレントゲン等の画像から、誤嚥性肺炎の診断をつけることは可能でしょうか?
画像上の診断はある程度可能です。気管分岐角が急峻である右の気管に異物が詰まりやす
いのと同様で、右側の肺に誤嚥は起こりやすいとされています。特に右上葉の背側や右下
葉には誤嚥が起こりやすいためまずは影の部位が右肺にあるかどうかを確認します。陰影
は浸潤影や気道散布性の陰影(誤嚥に関わった気管が支配している領域に一致)を認めま
す。ただし、誤嚥は必ずしも右肺だけではなく、肺のどの部位にも生じて良いとされてい
ますので臨床症状と合わせての判断が必要になります。
Q2.すりガラス影と浸潤影の違いが画像でみても良く分からない時があります。見分けるコ
ツはありますか?
すりガラス影:すりガラスの原因となる間質や肺胞腔内の滲出物は軽度であるため
背景にある血管影が見える
浸潤影:肺胞腔内が炎症による液体で満たされており、背景にある血管影が見えない。
肺の影の背景にある血管影が見えるかどうかで鑑別してください。
Q3. 無気肺と呼ばれる状態がよくカンファレンスであがりますが、画像上で特徴はありますか?
無気肺の理解にはセミナーでご説明した肺の大きな分類(右は3葉、左は2葉)に加えて
それぞれの葉を形成する区域の理解が必要になります(例えば右上葉なら3つの区域に分
かれています)が今回はそこまではご説明しておりません。それぞれの区域が無気肺にな
ることによる特徴的な画像所見がありますが、それが分からなくても左右の肺動脈の関係
(右が低く左が高い位置にある)を見てください。たとえば左右の肺動脈が同じ高さにな
ってしまったら、それは右上葉の無気肺(右肺門部が拳上)や左下葉の無気肺(左肺門部
の下降)が存在することになります。同時に横隔膜の位置も変化しているかどうかを確認
します。状態が良くなった時と悪いときの画像の比較も無気肺の理解に役立ちます。
Q4. 結核と結核痕の違いについて
肺結核は上葉や下葉に陰影を呈すことが多いのでまずはそれを確認します。
結核と結核痕は厳密には胸部CTまで撮影しないと分からないこともありますが、空洞性
陰影、浸潤影、気道散布影(衛星病巣または娘結節と呼ばれます)を疑わせる粒状影はactive
な結核を常に考慮します。結核痕は石灰化を伴い周囲に気道散布影を伴わない結節影であ
る場合が多くX-p でも“硬い印象”があります。
Q5. レントゲン、CT等の画像における酸菌(MAC)の診断方法について
これはセミナーの際にお示しした中葉と舌区に気管支拡張を伴う粒状影をみたら常に考え
られる疾患です。中年女性に多く湿性咳嗽を伴い、副鼻腔炎も合併することがあるので
臨床症状も大事になります。大雑把に非定型抗酸菌症の6割はMAC,2割はM. kansasii
(これは肺尖部にも空洞を良く形成しますので画像上の結核との鑑別はしばしば困難です)
と考えると良いと思います。
以下の写真は”放送スタジオ”でStandbyしている皿谷先生と編集長
第2回「薬剤師に役立つ画像診断」
杏林大学呼吸器内科 皿谷健先生からご回答を頂きました。
以下、ご覧下さい。
ちなみにタイトル写真は皿谷先生が身体所見の講義をしているところ。
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Q1. CT やレントゲン等の画像から、誤嚥性肺炎の診断をつけることは可能でしょうか?
画像上の診断はある程度可能です。気管分岐角が急峻である右の気管に異物が詰まりやす
いのと同様で、右側の肺に誤嚥は起こりやすいとされています。特に右上葉の背側や右下
葉には誤嚥が起こりやすいためまずは影の部位が右肺にあるかどうかを確認します。陰影
は浸潤影や気道散布性の陰影(誤嚥に関わった気管が支配している領域に一致)を認めま
す。ただし、誤嚥は必ずしも右肺だけではなく、肺のどの部位にも生じて良いとされてい
ますので臨床症状と合わせての判断が必要になります。
Q2.すりガラス影と浸潤影の違いが画像でみても良く分からない時があります。見分けるコ
ツはありますか?
すりガラス影:すりガラスの原因となる間質や肺胞腔内の滲出物は軽度であるため
背景にある血管影が見える
浸潤影:肺胞腔内が炎症による液体で満たされており、背景にある血管影が見えない。
肺の影の背景にある血管影が見えるかどうかで鑑別してください。
Q3. 無気肺と呼ばれる状態がよくカンファレンスであがりますが、画像上で特徴はありますか?
無気肺の理解にはセミナーでご説明した肺の大きな分類(右は3葉、左は2葉)に加えて
それぞれの葉を形成する区域の理解が必要になります(例えば右上葉なら3つの区域に分
かれています)が今回はそこまではご説明しておりません。それぞれの区域が無気肺にな
ることによる特徴的な画像所見がありますが、それが分からなくても左右の肺動脈の関係
(右が低く左が高い位置にある)を見てください。たとえば左右の肺動脈が同じ高さにな
ってしまったら、それは右上葉の無気肺(右肺門部が拳上)や左下葉の無気肺(左肺門部
の下降)が存在することになります。同時に横隔膜の位置も変化しているかどうかを確認
します。状態が良くなった時と悪いときの画像の比較も無気肺の理解に役立ちます。
Q4. 結核と結核痕の違いについて
肺結核は上葉や下葉に陰影を呈すことが多いのでまずはそれを確認します。
結核と結核痕は厳密には胸部CTまで撮影しないと分からないこともありますが、空洞性
陰影、浸潤影、気道散布影(衛星病巣または娘結節と呼ばれます)を疑わせる粒状影はactive
な結核を常に考慮します。結核痕は石灰化を伴い周囲に気道散布影を伴わない結節影であ
る場合が多くX-p でも“硬い印象”があります。
Q5. レントゲン、CT等の画像における酸菌(MAC)の診断方法について
これはセミナーの際にお示しした中葉と舌区に気管支拡張を伴う粒状影をみたら常に考え
られる疾患です。中年女性に多く湿性咳嗽を伴い、副鼻腔炎も合併することがあるので
臨床症状も大事になります。大雑把に非定型抗酸菌症の6割はMAC,2割はM. kansasii
(これは肺尖部にも空洞を良く形成しますので画像上の結核との鑑別はしばしば困難です)
と考えると良いと思います。
以下の写真は”放送スタジオ”でStandbyしている皿谷先生と編集長