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Channel: 感染症診療の原則
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過剰と過小 新型インフル/MERS対策とその周辺

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(実は)現場の感染症関係者の間ではあまり関心が高くない新型インフルエンザ関連の話題。

しかし、行政からのお手紙その他、紙はたくさんまわってくるし会議も多い。

インフルエンザ、、とわかっていればやれること、やること、やらなくていいこと、どうにもならないこと、現実的な努力の範囲は明確なので、立場上・業務上・対行政上やらなくてはならないことに、あまり時間や労力をとられずにスマートに対策をしておくことが感染症スペシャリストの課題でもあります。


定期的に新しいインフルエンザが流行するのはしかたないことなので、その影響を最小限にするためには、

1)咳・くしゃみエチケットの常識化 (じょうずな 咳くしゃみの仕方の普及啓発)
2)体調不良の人が休みやすい環境や空気づくり(無理して出勤・登校することは美しくないし危険)

このへんはお金もかかりませんし、副作用がーーーーーーーとかいう話もありません。
陰謀だ金の無駄だという人たちはぜひ咳くしゃみエチケット普及活動にいそしんでいただき、体調不良でも努力するのが美徳的な旧時代価値観をなくす運動などにも力をいれていただくとありがたいです。
呼吸器感染症が重症化するひとたちには喫煙因子がありますので禁煙運動もよろしくおねがいします。


呼吸器系の感染症はやまのようにありますし、他の感染症のコントロールを日常的にやれることはやっておく、ということも大事ですね(地味地味、しみじみ)。


流行しだしたら、発症した人への抗ウイルス薬投与などはお金もかかり、メリットデメリット、限界いろいろいろあります。(途中でワクチン、、、という話になってまた流通、供給、説明、副反応などでばたばたすることが想像できます)

ばたばたしないための備えも重要になります。

ばたばたすると、ただでさえ人手不足の現場に過剰な負担がかかります。

また、ばたばたする様子は必要以上に怖いイメージを一般の人に与えたりもします。
医療者の立ち居振る舞いからメディアや一般の人に誤解をあたえないことが重要です。


メディアなどにあおられて軽症者が病院におしかけると、インフルエンザ以外の患者さんも来ている病院の機能が疲弊します。医療者が発症することで人員不足等から脆弱性が増します。
(病院にはインフルエンザが流行していてもしていなくても常に医療を必要としている人たちが来ています)


事前にできることとして、メディアの人と机上訓練をすることも可能だと思いますがあまりそういう話はききません。デマの増幅媒体、人権侵害ファクター、その加害性やリスクをどうしたら軽減できるのかという視点でのコミュニケーションの工夫をしたらいいのでは?と思います。



実際には多くの人には直接大きなリスクは発生しないのですが、、、、医療関係者は実際にうたがい症例含めて感染症に曝露をしますので、どの医療機関でも備えは重要です。

感染予防策が迷走すると、必要なPPEの判断ができないとか、無駄が多いとか、患者さんに疎外感や苦痛を与えたり、隔離や過剰な防御など根拠がなければ人権問題にもつながります。

今はどういった情報になっているのか?を確認したい方には8月1日の南山堂の新刊『医療機関における新型インフルエンザ等対策 ミニマム・エッセンシャルズ』がおすすめです。

9章「新型インフルエンザ等の院内感染対策について」に具体的な予防策が書かれています。

医療機関における新型インフルエンザ等対策 ミニマム・エッセンシャルズ南山堂


無料の啓発資料は厚労省のホームページにもいろいろ並んでいます。

こちらのカラー6ページは院内勉強会等にも使いやすいボリューム。



ちょっとびっくりしたのはキャリアブレインの記事です。つい最近の訓練のようですが、フル装備。
冷房完備で乗り切る?

・・・。

記事には2009年に対策が問題になった、、、とありますが、具体的にはなんでしょうね。
(後出し的に言えば)過剰だったね、ということだったのですが。
いかに早く科学的な情報にもとづいて負荷を軽減していくかが重要というサマリーだったように記憶しています。

臨床の医師がサージカルマすくで咽頭スワブの検体を、頭から足先まで白い防御服で覆ったN95マスクの行政の人が受け取るというツーショット写真がよく講演会などでも提示されたりします・・・

現場の課題がよくわからない行政や病院事務方が予算をこういったものに使ってしまわないようにすることも注意が必要です。


ガラスの●●とか、●●空気●●つき●●・・・といった場当たり的に購入したものの残骸が各病院の倉庫に眠っていますよね。
買っても使われないことが多く(多くの場合もとは税金・・)、メンテナンスも誰がするのかよくわからないまま放置されるリスクが常にあります。捨てる判断をさけるために代々の担当者が見て見ぬふりをしたりします。

訓練の際には、どのレベルのPPEが妥当なのか、スタッフ参加型で話し合うと現場の力がついていきます。
少なくとも国の指針や最新の(2014年、2013年の)資料を確認しておくことは感染管理チームが最初にすることです。


エボラウイルスや未確認病原体対応が必要な施設の訓練と、その他の施設では強化するポイントもちがいます。

呼吸器感染をうたがうような症状の人に早めにサージカルマスク、他の患者さんとの距離をつくる、渡航歴や曝露歴の早期確認がプライマリケアでは重要です。

MERSうたがい、新型インフルうたがい、という情報がある程度 現実味をおびてききたときの対応が最近のガイダンスで提示されていますのでそういったことも今年の勉強会では話題にしていきたいですね

こちらは忽那先生率いる専門医師・看護師部隊の訓練風景



成田赤十字病院、りんくう総合医療センター、国立国際医療研究センターのように不明要素の多い段階でも受け入れるベッドは国内に8床

こういったベッドは使わないにこしたことはないのですが、グローバル時代にそんなぬるいこともいってられません。年に数回ある訓練の機会を大事にしましょう〜。

(タイトル写真:NASAの宇宙服 Official siteより)

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