次のシーズンのワクチンにどれをいれるか?というのは、疫学データ等に基づいて専門家が机上で検討します。「南半球」「北半球」はシーズンが異なるのでその内容も違ってきます。
まあ、専門家でもない私どもがやったら大外れ・大博打でありますが、可能な限りの情報を駆使して考えてくださる方たちがいることはありがたいです。
インフルワクチンは麻疹ワクチン等に比べるとまだ完成度が高くないですが、対策の難しい感染症ですから予防策の1つとしてワクチンがあるのはありがたい。全くなかったらもっとたくさんの人が死亡すると推測されています。
「自分はならないし死なない」というひとはいますね。
「だから他の人にも不要だ」とまではいえませんが。
いずれにしても、その年のワクチンの有効性はシーズンがすぎたあとに評価されます。
評価が適切に行われているかを監視することは関係者皆の仕事です。
病院にいると病気になった人ばかりをみるので世の中インフルエンザだらけな印象にもなりますが(専門家バイアス)、実際には毎シーズンインフルエンザになる人の割合は一定で、多くの人はなりません。これは自分の体験や、見たり聞いたりしたことだけで語るとずれるよ、ということの一例です。
後からの評価、ですが、2004-2005年のシーズンと、2006-2007年シーズンを評価した研究があります。
2004-2005年のインフルシーズンのワクチンの抗原マッチ度は5%、2006-2007年シーズンでのマッチ度は91%でした。
その結果、ワクチン効果(VE)は2004-2005年が10%、2006-2007年が52%。
Effectiveness of inactivated influenza vaccines varied substantially with antigenic match from the 2004-2005 season to the 2006-2007 season.
Infect Dis. 2009;199(2):159
インフルエンザ薬の処方トレンドをあわせて評価を試みる研究者もいます。
The effect of universal influenza immunization on antibiotic prescriptions: an ecological study.
Clin Infect Dis. 2009 Sep 1;49(5):750-6.
疑問がある場合はデータの取り方や症例定義なども確認するとよいとおもいます。
日本には不活化ワクチンだけですが、海外には生ワクチン(粘膜ワクチン)もありますので、どの国の何のワクチンの話かということも確認が必要です。
各国にインフルエンザのトレンドの監視システムがありますが、日本の場合は感染研のHPやIDWRのサマリをみます。
ヨーロッパのような陸続きのところでは、自分の国だけでなくおとなりの情報も大切。
EuroFlu Weekly Electronic Bulletin
2012年第3週について報告する最新号のサマリーでは・・・
ヨーロッパ46か国からの報告によると、のインフルエンザのひろがりはゆっくりで、インフルエンザA(H3N2)が中心。
インフルエンザ様疾患や急性呼吸器感染症についての相談も低調。
しかし、一部の国で増加の兆しがあります。
定点調査で得られた検体のうちの29%がインフルエンザ陽性で、その95%がA型でした。
定点調査の検体352件のインフルエンザAのうち、99%が A(H3N2)でした。
42か国のうち、20か国は安定しており、19か国が増加傾向、3か国は減少傾向。
症例相談で多いのはこどもでの症例。
インフルエンザの流行把握をしている41か国のうち、12か国では、広がりなし、7か国が地域での流行、18か国は流行地域が複数発生、4か国は地域全体で広がっているという状況です(Finland, Iceland, Italy, Spain) 。
重症呼吸器感染症Severe acute respiratory infection (SARI)については、11か国で病院ベースのサベイランスを行っており( Albania, Armenia, Belarus, Georgia, Kazakhstan, Kyrgyzstan, the Republic of Moldova, Romania, the Russian Federation, Serbia and Ukraine)、カザフスタンの小児の増加をのぞき、重症の呼吸器感染症例は先週と状況はかわっていないません。
重症呼吸器感染症については、全体で122の検体が集められ、8%がインフルエンザ陽性で、タイピングをした6例はすべてA(H3N2)でした。
ウイルスのトレンドについて。
定点の外来クリニックであつめられた1469の呼吸器の検体のうち、29%がインフルエンザ陽性でした。
このうち、95%はAで、5%はBでした。
インフルエンザAの352の検体のうち、99%がinfluenza A(H3N2)で、1%が A(H1N1)pdm09でした。
累積でみたデータは、インフルエンザ陽性となった検体3226件(84%)ははAで、タイピングできた2099のうち、95%が A(H3N2) 5%が A(H1N1)pdm09でした。
さらに細かく抗原性をみると、
46件 A(H3) A/Perth/16/2009 (H3N2)-like
2 件 A(H1N1)pdm09 A/California/7/2009 (H1N1)-like
2 件 B/Florida/4/2006-like (B/Yamagata/16/88 lineage)
2 件 B/Bangladesh/3333/2007-like (B/Yamagata/16/88 lineage)
4 件 B/Brisbane/60/2008-like (B/Victoria/2/87 lineage)
どの系統樹(グループ)に属しているか、95検体を遺伝子をみると
1 件 A(H1N1)pdm09 group represented by A/Astrakhan/1/2011
1 件 A(H1N1)pdm09 group represented by A/St Petersburg/100/2011
5 件 B/Bangladesh/3333/2007 clade (Yamagata lineage)
2 件 B/Brisbane/60/2008 clade (Victoria lineage)
86件 A/Victoria/208/2009 A(H3) clade –
63件 A/Stockholm/18/2011 (group 3)
19件 A/Iowa/19/2010 (group 6)
1件 A/Johannesburg/114/2011(group 7)
となっていました。
昨シーズンの同時期と比べるとインフルエンザの活動性は低調です。AとBが流行していますが、外来や病院で検出されている多くはA(H3N2)となっています。
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ということでしたー。
まあ、専門家でもない私どもがやったら大外れ・大博打でありますが、可能な限りの情報を駆使して考えてくださる方たちがいることはありがたいです。
インフルワクチンは麻疹ワクチン等に比べるとまだ完成度が高くないですが、対策の難しい感染症ですから予防策の1つとしてワクチンがあるのはありがたい。全くなかったらもっとたくさんの人が死亡すると推測されています。
「自分はならないし死なない」というひとはいますね。
「だから他の人にも不要だ」とまではいえませんが。
いずれにしても、その年のワクチンの有効性はシーズンがすぎたあとに評価されます。
評価が適切に行われているかを監視することは関係者皆の仕事です。
病院にいると病気になった人ばかりをみるので世の中インフルエンザだらけな印象にもなりますが(専門家バイアス)、実際には毎シーズンインフルエンザになる人の割合は一定で、多くの人はなりません。これは自分の体験や、見たり聞いたりしたことだけで語るとずれるよ、ということの一例です。
後からの評価、ですが、2004-2005年のシーズンと、2006-2007年シーズンを評価した研究があります。
2004-2005年のインフルシーズンのワクチンの抗原マッチ度は5%、2006-2007年シーズンでのマッチ度は91%でした。
その結果、ワクチン効果(VE)は2004-2005年が10%、2006-2007年が52%。
Effectiveness of inactivated influenza vaccines varied substantially with antigenic match from the 2004-2005 season to the 2006-2007 season.
Infect Dis. 2009;199(2):159
インフルエンザ薬の処方トレンドをあわせて評価を試みる研究者もいます。
The effect of universal influenza immunization on antibiotic prescriptions: an ecological study.
Clin Infect Dis. 2009 Sep 1;49(5):750-6.
疑問がある場合はデータの取り方や症例定義なども確認するとよいとおもいます。
日本には不活化ワクチンだけですが、海外には生ワクチン(粘膜ワクチン)もありますので、どの国の何のワクチンの話かということも確認が必要です。
各国にインフルエンザのトレンドの監視システムがありますが、日本の場合は感染研のHPやIDWRのサマリをみます。
ヨーロッパのような陸続きのところでは、自分の国だけでなくおとなりの情報も大切。
EuroFlu Weekly Electronic Bulletin
2012年第3週について報告する最新号のサマリーでは・・・
ヨーロッパ46か国からの報告によると、のインフルエンザのひろがりはゆっくりで、インフルエンザA(H3N2)が中心。
インフルエンザ様疾患や急性呼吸器感染症についての相談も低調。
しかし、一部の国で増加の兆しがあります。
定点調査で得られた検体のうちの29%がインフルエンザ陽性で、その95%がA型でした。
定点調査の検体352件のインフルエンザAのうち、99%が A(H3N2)でした。
42か国のうち、20か国は安定しており、19か国が増加傾向、3か国は減少傾向。
症例相談で多いのはこどもでの症例。
インフルエンザの流行把握をしている41か国のうち、12か国では、広がりなし、7か国が地域での流行、18か国は流行地域が複数発生、4か国は地域全体で広がっているという状況です(Finland, Iceland, Italy, Spain) 。
重症呼吸器感染症Severe acute respiratory infection (SARI)については、11か国で病院ベースのサベイランスを行っており( Albania, Armenia, Belarus, Georgia, Kazakhstan, Kyrgyzstan, the Republic of Moldova, Romania, the Russian Federation, Serbia and Ukraine)、カザフスタンの小児の増加をのぞき、重症の呼吸器感染症例は先週と状況はかわっていないません。
重症呼吸器感染症については、全体で122の検体が集められ、8%がインフルエンザ陽性で、タイピングをした6例はすべてA(H3N2)でした。
ウイルスのトレンドについて。
定点の外来クリニックであつめられた1469の呼吸器の検体のうち、29%がインフルエンザ陽性でした。
このうち、95%はAで、5%はBでした。
インフルエンザAの352の検体のうち、99%がinfluenza A(H3N2)で、1%が A(H1N1)pdm09でした。
累積でみたデータは、インフルエンザ陽性となった検体3226件(84%)ははAで、タイピングできた2099のうち、95%が A(H3N2) 5%が A(H1N1)pdm09でした。
さらに細かく抗原性をみると、
46件 A(H3) A/Perth/16/2009 (H3N2)-like
2 件 A(H1N1)pdm09 A/California/7/2009 (H1N1)-like
2 件 B/Florida/4/2006-like (B/Yamagata/16/88 lineage)
2 件 B/Bangladesh/3333/2007-like (B/Yamagata/16/88 lineage)
4 件 B/Brisbane/60/2008-like (B/Victoria/2/87 lineage)
どの系統樹(グループ)に属しているか、95検体を遺伝子をみると
1 件 A(H1N1)pdm09 group represented by A/Astrakhan/1/2011
1 件 A(H1N1)pdm09 group represented by A/St Petersburg/100/2011
5 件 B/Bangladesh/3333/2007 clade (Yamagata lineage)
2 件 B/Brisbane/60/2008 clade (Victoria lineage)
86件 A/Victoria/208/2009 A(H3) clade –
63件 A/Stockholm/18/2011 (group 3)
19件 A/Iowa/19/2010 (group 6)
1件 A/Johannesburg/114/2011(group 7)
となっていました。
昨シーズンの同時期と比べるとインフルエンザの活動性は低調です。AとBが流行していますが、外来や病院で検出されている多くはA(H3N2)となっています。
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ということでしたー。