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セフトリアキソン効かないNeisseria gonorrhoeae

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歌舞伎町近辺で外来をしている身でCTRX耐性Gonoに対する準備を怠っては不作為となる編集長。
早速、MGHの師匠に聞きました。

編集長:CTRX耐性Gono。診た? 来たらどうする?
Ryan先生:診たことない。来たら・・・「I guess I would give 2 grams azithromycin and test for cure 7 days later???」
編集長:そうだよね・・やっぱ・・
Ryan先生:マラソン、爆発、沢山の四肢切断で忙しいんだ・・。そちらも無事で・・。
編集長:(事件を知らずに)ああ、長丁場の仕事が爆発的に続いてるんだね・・ご苦労様。ところで英語で忙しい事を切断というのかな・・。それに無事でとは大げさな・・

翌日、TVを見て初めてボストンの事件を知った世間知らずの編集長でした。

ちなみに耐性Gonoの話をTriggerしたのは下記の文献

Ann Intern Med. 2013 Mar 5;158(5 Pt 1):321-8.
Neisseria gonorrhoeae antimicrobial resistance among men who have sex with men and men who have sex exclusively with women: the gonococcal isolate surveillance project, 2005-2010.


2012ICAACで紹介されたGonoに活性のあるKetolideとして
Solithromycinがありました。(Azithromycinの本来の相手に対して8-16倍強力)

stay tuned

Anti Vaccine、Anti-Anti Vaccine と その周辺

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On Twitter, Anti-Vaccination Sentiments Spread More Easily than Pro-Vaccination Sentiments

元の論文は
The dynamics of health behavior sentiments on a large online social network EPJ Data Science 2013, 2:4

インターネットを見ていたら興味深い記載がありました。そして、それは時間の経過とともにトレンドが変わっていきました。

まず、「風疹と放射能が関係する」という話。「チェルノブイリ事故のあとも風疹が流行した"らしい"」

で、「風疹が流行しているのは放射能のせいだ」それは「免疫不全のせいだ」

そもそも医学用語の理解度は不明。なぜ、免疫不全の人に風疹だけ?とか根本的なつっこみどころはおいといて、
この時点で、症例がどのような人かというような発生動向調査データの吟味はないようで、なぜに男性が8割で、東京、大阪、兵庫に多いのかという説明がありません。というか知らないのかも。

このあたりの細かい検討がたいへん丁寧におこなわれているブログが参考になりますよ。

Blog うさうさメモ 「風疹とワクチンにまつわる流言(1) 風疹はなぜ流行しているの?放射能のせい?」

といっているうちに、今度は「風疹なんて流行っていない!」という人もでてきました。

・・・。

どんな感染症が流行っているかは自分の半径数メートルではわかりません。居住地域のデータを見ることが基本です。
例えば国全体の報告は国立感染症研究所のIDWR(感染症週報)に載るこのような表がわかりやすいです。

見方が分からない場合は統計や図表の基本的な本を読むことをお勧めします。こういった概念がわからないまま、感染症の多い少ない、トレンドを語るのは不可能ですので。

医師の届け出ではつかみきれないので補完的に行われているのは、インフルエンザですと、抗インルエンザ薬の処方がどれくらいあるかという薬局サーベイランス、こどもたちがどれくら欠席しているかの学校サーベイランスです。Twitterでの書き込みをみるFlu trendサーチなどもあります。(流行トレンドとだいたい同じ動きをすることが把握されています)

流行っていない!の根拠は「私のまわりにいないし、私のフォロワーにきいてもほとんどいない」では評価できない感染症もあります。

風疹はeliminationを目標に取り組みが続けられていますが、その目標は1年間の発生件数が100万分の1より少ない( <1 case per 1,000,000 )、そして、もちこまれても地域で伝播しない(ヒトヒトヒトと、感染が広がらない)という条件があります。そのレベルにおさえないといけないのに、(お金がないという)自治体がワクチンの費用補助に動かなければいけないほどに報告があります。

しかし、<a href="http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/f02debda98296a31b1433c33debb1b1c">その報告も「過小評価」ですから、実際にはどれくらい感染が広がっているのだろうということが理解のポイントです。

ちなみに、水虫(真菌症)は、あまりに症例数が多いのと、命に関与しない、母子感染しないためにあまり関心をもってもらえない冷や飯感染症です。(その方が病原体はsurviveできていいわけですが)それをエピデミックとかアウトブレイクとかはいいません。エンデミックとさえいってもらえません。当事者はそれなりに困っていますが。


話を元にもどしましょう。
そもそもTwitterは自分でフォローする人を決める、自分と同じような意見を持つ人とつながるという傾向がもともとあるので、同意形成とそれが「世界観」になりやすいことが知られています。わかりやすいところでは「確証バイアス」

確証バイアス(Wikipedia);確証バイアス(かくしょうバイアス英: Confirmation bias)とは社会心理学における用語で、個人の先入観に基づいて他者を観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて、それにより自己の先入観を補強するという現象である。

確証バイアス confirmation bias:信念に反することがらを探すのではなく黙殺したり、あるいは低い価値しか与えなかったりもする

単純に「えー私のまわりにはいないよー」です。そんなに皆の周りにいたら、この国は終わっています。風疹以前に、病原体ごとに対応が異なるという基本的なことから学んだほうがいいですね。


ワクチンは、ワクチン全部否定、反対という人と、特定のワクチンが嫌(例えばHPV)というひとと、感染症やワクチンなんかどうでもよくて、製薬会社がワクチンで利益を得るのがいやとか。
(製薬会社が医薬品で儲けるのは別にいいのではないでしょうか。関係ない企業がやったら別ですがー。魚屋は魚、八百屋は野菜)
ある宗教によっては「病気は神様からのギフト」という発症に意味有りという語りがあります。(周囲に感染を拡大させるのもよいことになる?)

臨床試験をして安全性や有効性を検証している薬やワクチンは嫌いで、そういった検証はしていない健康被害補償制度なんてまったくないアヤシいサプリや、信頼性の検証もない検査に誘うサイトに誘導されていったりするのをみるとどっちが悪質なんだよ、ということでもあります。面白いのでリンク先をたどっていってみるといいとおもいます。

Anti-vaccineサイトの分析などは海外では研究レベルでいろいろおこなわれています。



実際問題、アンチ活動で接種率が下がり、その後感染症が流行というパターンも把握されています。結果として本来よりも何倍ものお金をかけて対応に追われることになります。



ワクチンだけじゃなくて、自然に反するものはなんでも嫌い!、ナチュラルは好き♪という人もいます。いろいろです。
怖いのは、Natural好きな方は大自然で子どもを遊ばせたり、土いじりなどもさせて、しかし三種混合ワクチンをしていなかったりするので、破傷風などのリスクに子どもがさらされることです。
実際に(学会発表がありましたが)都内では、ワクチンを一切しなかった3歳の子が破傷風になりICU入院、、というような事例がありました。怖いです。自然って素敵なことばかりじゃない。

こちらは海外の事例:6歳の破傷風
Philosophic Objection to Vaccination as a Risk for Tetanus Among Children Younger Than 15 Years

保護者が悪いというよりは、影響を与えるような情報は周囲にたくさんありますよ、という事実認知が先。






編集長も編集部もFacebookをやらないので、細かく見たことは無いのですが、Social Mediaで反ワクチン言説が広がったりもしますし、
Antiに対するAntiのサイトもあったりで、サイエンス・コミュニケーションを学ぶ際に参考になる材料がネットにはたくさんあります。


例えば(英語ですが)

Anti-Vaccine Liberals
Anti-Vaccine Movement
The Truth About Vaccines
National Vaccine Information Center

Natural Newsをソースにする人が一定数います。

ということ受けて(Nature ではなく)Natural Newsを読んだ人がこういってたよねーという会話の写真あり
Refutations to Anti-Vaccine Memes

Anti-Anti-Vaccine Campaign
Myths of the Anti-Vaccine Movement
Stop the Australian (Anti)Vaccination Network

(Twitterとかホームページはもっとたくさんあるようです。日本語のサイトはまとめをつくってHPやブログで紹介している方が複数いますので、別記事でまた紹介させていただきます)


海外の場合は、保育園や小学校、大学入学の際に接種証明を出さなくてはいけない場合もあり、「個人の自由のはずだ」的論争もあります。
集団生活におけるリスク管理として99%の人が理解をしても、100%にはなりません。
保護者や社会のルールのところで熱い話題になりますが、本来の健康や病気の影響を受ける当事者は子どもです。
子ども達を守るためには、未接種の選択をするならば、妊婦や乳幼児に近寄らない、アウトブレイクしたら3週間の自宅待機といった注意が提示されますし、接種したくない親のためにはhome schoolingの選択肢があるとか、かなり複雑です。
Need help responding to vaccine-hesitant parents?
Science-based materials are available from these respected organizations


信頼を得ることが何より大事。
信頼ってどうやって獲得するんだろう、は伝える側が常に問わなければいけないこと。正しいことを連呼するだけじゃ不足。

QT / √RR

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この式は毎日皆様がご使用の補正QTを求める式でございます。
編集長:ぬはははは!!

危険なQT延長を生じる薬剤は抗精神薬、抗菌薬、胃腸薬・・と多岐にわたり、その数なんと200種類を越える。
そのため「全科の医師が補正QTを求める本式:QT / √RRを知っておく必要がある」檄を飛ばされるのが、かの有名な香坂先生であります。

同時に循環器専門医の中で正確にQT間隔を測定できるのは半分に満たない・・という理不尽な統計も・・?。

その彼の、とんでもなく実用的な心電図の本を読了しました。
本Blogで繰り返しご紹介している「もしも心電図が小学校の必修科目だったら」であります。

これ、本当に読みやすいし、使える。心電図には大量のIgEを出してきた編集長さえ以下のようなコメントを・・・

21世紀の感染症医師はHaemophilus influenzaeを更に細かく、βラクタマーゼ無し、有り、BLNAR、の3種類に分けて考えるように
心筋梗塞も単なる前壁(V1,2,3)、後壁(?、?、aVF)と分けず、前壁の上下(LADの近位・遠位)、後壁の右左(RCA・LCX)まで細分するのだ・・と言うようになる!!!

本当に良い本でした。心電図が嫌いな人(≒健康な精神を宿す医師)にお勧めです。

Macrocyclic antibiotics - Fidaxomicin

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ええ、本日のお題は「Macrocyclic antibiotics」でございます。

このGroupにはMacrolide, Glycopeptice, Rifamycin, Fidaxomicinなどが含まれるそうです。(知りませんでした・・)

本日は、そのMacrocyclic antibioticsのうちFidaxomicinについて。

Fidaxomicin:
これは腸管で作用します。
そして何よりもC.difficileに対するMICが低くて、更にC.difficileの毒素産生を抑制するのです。更にEarly stationaly phase(恐らく芽胞にならんとし始める最初の時期)に作用すると芽胞化を抑制するらしい。実際、臨床的にもVCMよりも良い結果を得ている・・との事。

CID 2012;55(S2):S162-
NEJM 2011;364:422-
Lancet ID 2012;12:251-

Cancer patient、CKDにも有効。既存の芽胞には聞きませんが・・これにはダイナマイトかな。
CID2011:53:440-

(写真は佐賀大学で活躍中の弟、Youske @昔のICAAC。この冗談を信じた人がかなり居ました・・昔 (笑)

【5月7日 開講】NCGM 感染症レビューコース

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国立国際医療研究センター 国際感染症センターの先生方が中心となり、感染症レビューコースを公開です。
もともとは院内の研修医向けに開いていたものを、外部の方の枠もつくって、、、ということでアナウンスしたところ、院外からの申し込みが殺到したため、検討中であったUstream中継も確定となりました。

これで「東京遠いなあ、毎回いけないなあ、飛行機代たかいなあ」とせつない思いをする人が減ると期待。
(当直にあたったら涙)

医師向けですが、医学生も他の職種も聴講できます。
週末に講演会企画は多いものの、基礎から体系的に学べる「教育」プログラムは少ないので、今後、定番のプログラムとして展開されたらいいなとおもいます。

各施設でこれだけの内容を自前でやるのはたいへんだとおもいますので、研修プログラムに併用できるといいですね。

プランナーはくっつん、こと忽那先生です。


各ナショナルセンターで、専門テーマを体系的に学べるようなコースがあったらいいですね〜

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NCGM 感染症レビューコース

期日:毎週火曜日19時から(5月7日より開始)
場所:国立国際医療研究センター 外来棟3階 総合医局 会議室
参加費:無料

★Ustream中継します。

視聴希望の方にはURLとパスワードをお知らせします。→ULRとパスワードをどこかにコピペしておくことを忘れずに
フォームからお申込みください(無料)。
http://www.dcc-ncgm.info/seminar/

【プログラム】(予定)
5月07日 感染症診療のロジック 国際感染症センター 大曲貴夫
5月14日 病院内での発熱患者のアプローチ 国際感染症センター 早川佳代子
5月21日 グラム染色を診療に活かそう!血液培養を取ろう! 国際感染症センター 忽那賢志
5月28日 ケースカンファレンス1 総合感染症コース 山元佳
6月04日 抗菌薬の使い方1 抗菌薬の基本 国際感染症センター 大曲貴夫
6月11日 抗菌薬の使い方2 1時間で覚える!各抗菌薬の使いどころとスペクトラム 国際感染症センター 忽那賢志
6月18日 HIV感染症 総論 エイズ治療開発センター 塚田訓久
6月25日 ケースカンファレンス2 国際感染症センター 馬渡桃子
7月02日 リスクファクターの考え方 国際感染症センター 大曲貴夫
7月09日 臨床的に重要な微生物1 グラム陽性球菌 国際感染症センター 忽那賢志
7月16日 不明熱の診療 総合診療科 國松淳和
7月23日 地域/ 世界の感染症流行情報の捉え方 国際感染症センター 堀成美
7月30日 ケースカンファレンス3 総合感染症コース 谷崎隆太郎
8月06日 カテーテル関連血流感染症 国際感染症センター 大曲貴夫
8月13日 ワクチン総論 国際感染症センター 客員研究員 氏家無限
8月20日 海外帰国後の発熱アプローチ 国際感染症センター 竹下望
8月27日 ケースカンファレンス4 総合感染症コース 杉原淳
9月03日 感染性心内膜炎 国際感染症センター 大曲貴夫
9月10日 Clostridium difficile感染症 エイズ治療開発センター 渡辺恒二
9月17日 臨床的に重要な微生物2グラム陰性桿菌 エイズ治療開発センター 石金正裕
9月24日 ケースカンファレンス5 総合感染症コース 上村悠

10月以降の予定は後日アナウンスいたしますが、第1火曜日のレクチャーは毎回国際感染症センター長の大曲が担当し、月の最後の火曜日は毎回ケースカンファレンスを行う予定です。
参加者への配布資料もご用意しております。

Facebookページでも随時情報を更新いたしますので御覧ください。
https://ja-jp.facebook.com/ncgmdcc

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録画はありません。ライブ中継のみ。

【受付中】抗菌薬感受性セミナー 6/22 EBIC  6/29多摩感染症セミナー

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感受性セミナーはEBICセミナーでもやっています。東京、名古屋などで聞く機会があります。

多摩感染症セミナーのほうは杏林大学呼吸器内科がファイザーと共催で、参加無料となっています。

有料のほうは資料配布があります。

6月29日は杏林大学呼吸器内科のブログ「あんずの呼吸」(注:アダルトサイトではありません)に案内が載っていますので、関心あるかたはご覧くださいませ。

21日はEBIC研究会。武蔵野スイングホールは、武蔵境駅北口駅前にあって便利です。
詳細はこちら
今回をもって編集長の役目を終えます。

日本語の本も増えましたし、各地でセミナーも盛んです。
次世代リーダーが広く展開するフェーズに入っています。引き継いでいってくださる皆様よろしくお願いいたします。
医師だけでなく、検査技師、薬剤師と一緒に各地で勉強会が開かれていくといいですね。

いっぽうで、まだサポートを必要としている領域もありますので、地道に取り組んでいきたいと思います。




風疹対策に動かない自治体

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「絶対に補助しない」といっていた神奈川まで補助に動き、明日月曜日にはさらにいくつかの自治体が公費補助を広報します。
皆さん、ご自分の自治体のHPを(ふだんは見ないでしょーが)明日はご確認ください。

今日の時点で補助をしている自治体:
東京都23区+いくつかの市。東京都はすべての保健所で風疹の届け出を受けているそうです。outbreakをとおりこしてepidemic状態。

なぜそんなに早く補助に動けたのか、まだ事情を把握できていないけど石川県の小松市。
神奈川は政令市の横浜市、川崎市、相模原市と、神奈川県の補助+自前の補助をするいくつかの市。神奈川県は「非常事態宣言」。

(こちらは国の結核緊急事態宣言ポスター)今の東京は結核の倍の数の風疹が毎週報告されています。


千葉は県は動いていませんが、いすみ市、浦安市、市川市。
埼玉県は和光市。
栃木は茂木市

すでに複数のCRSが報告されている大阪、兵庫、愛知はどうするのでしょう。

(補助まだ・・・?by トーマス)



努力を続ける自治体や企業の人が口をそろえていうのは、「本来これは国の仕事なのでは?」
国の予防接種政策の狭間で接種できなかった世代の男性は、「当時男性に受けさせなかったのは国の判断だったのだから、今接種しろというならなぜ公費ではないのか?」

国は一定期間、接種をよびかける策をとったのですが、多くの人がそのことを知りませんでした。
2013年に自治体が緊急で補助をはじめていますが、どうやって対象の男女にお知らせしているのでしょう?できればGW前、次の選挙前に急いで動かないと、飽きたり楽観視したり、またうやむやになって次なるアウトブレイクにつながる可能性があります。

なぜ、今、このような状況なのか?を週末に考えてみました。

先天性風疹症候群(CRS)が10例報告された年に、緊急提言が出ているのですが、それをやっていたら今のような状況は避けられたのではないか?という問いがあります。なぜそれは実践できなかったのか。提言したひと個人の問題ではなく、この国の問題解決の在り方に関連してきます。

被害に会った人からみれば「不作為」といわれてもしかたありません。

まず最初にみておきたいのはこちら。
2004年9月 「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」

ポイントがばっちり指摘されています。されていたのになぜその後につながらなかったのでしょう。

次に、国立感染症研究所/厚労省結核感染症課が出している病原微生物情報 IASR(あいえーえすあーる)の記事を順にみてみましょう。
以下、強調や色は編集部によるメモです。

2006年4月 「2004年度感染症流行予測調査事業による麻疹、風疹血清疫学調査からみた今後の麻疹、風疹対策」

"今後、CRSの発生を防ぐためには、女性の抗体保有率を監視し、低下が認められた場合は、妊娠前の追加免疫が必要と思われた。また、風疹の問題点として、24〜40歳男性に感受性者が蓄積していること、1〜4歳の予防接種率が75%と低値であることが挙げられる。"

"麻疹ワクチン、風疹ワクチン未接種者は、2006年3月31日までの間に、定期接種として受けておくよう、一層の接種勧奨が望まれていた。特に風疹においては、麻疹ワクチンのように1歳になったらすぐの予防接種が実施されていないため、2006年3月31日までの間に風疹ワクチンを受けないと、2〜4歳が感受性者として残されることになる。風疹にとって最も重要なCRS 発生予防には、小児への高い予防接種率を維持して流行を抑制することに加えて、妊娠を予定している女性が抗体を保有することが重要である。
今後は、麻疹、風疹ともに、これまでの予防接種プログラムの変遷を念頭においた、注意深い抗体保有状況および予防接種状況の監視が益々重要である。"


2006年4月「堺市の保育所における麻疹、風疹の罹患状況とワクチン接種に関する調査」

"一方、風疹のワクチン接種率は麻疹に比べて高くはない。加えて疾患の流行がないことによって、ワクチン未接種者の大半が感受性者になり、蓄積していることは、麻疹と同様であるが、麻疹と比べるとずっと多くの感受性者が蓄積していると考えられる。これらが、今後風疹流行の際の疾患発生の温床となるのみならず、将来この世代の女性達が、先天性風疹症候群(CRS)児を出産する予備軍となることが危惧される。"


2006年4月「2000〜2005年の風疹および先天性風疹症候群の発生動向とその関連性」

"2000〜2005年の感染症発生動向調査報告を見る限り、都道府県単位の風疹流行の規模と、CRSの発生とには、明確な関連は認められない。母親の風疹罹患は2003年から増加しているが、風疹の発生動向では流行規模の増加は見られなかった。すなわち、現在の感染症発生動向調査による風疹の流行監視では、妊婦の風疹罹患に伴うCRS発生リスクの十分な評価は困難であると考えられる。おそらく、理由の一つが、風疹の発生動向調査が小児科定点のみの報告によっているため、成人症例が把握できていないことであろう。年長児〜若年成人の感受性者は年々増加しており、成人の風疹感染の増加が懸念される。妊婦の風疹感染のリスク評価には、成人における風疹の発生動向監視が必要であろう。また、妊娠中に風疹感染が確認された場合、不幸にも人工妊娠中絶に至るケースは少なくないと考えられる。妊娠中の母親の風疹罹患とそれによる胎児感染は、不顕性先天性風疹感染、風疹感染に伴う人工妊娠中絶、CRS(単一障害、複数障害)の総数として評価されるべきであるが、現在のCRS発生動向では、報告基準を満たす複数障害のCRS症例しか把握できない点も考慮する必要がある。 今後、妊婦と胎児の風疹感染リスクを評価するためには、成人の発生動向が監視できるよう、サーベイランスの強化が必要であろう。
現在の感染症発生動向調査では、地域の風疹流行を探知してから対策を行っても、十分にCRS発生を予防することは不可能である。風しんワクチンの第一の目的はCRS発生予防である。平時から予防接種率を高め、風疹流行そのものを遮断することが必要である。"

日本で麻疹風疹ワクチンが2回接種になったのも2006年からでした。



2011年9月「風疹感染による胎内死亡例」(大阪)

"妊娠6週に発熱、発疹、リンパ節腫脹の三徴候を認め近医皮膚科を受診したところ、風疹を疑い血清抗体価を測定した。初診時の風疹HI抗体価は8倍未満でIgM抗体、IgG抗体は陰性であったが、2週後のペア血清では、それぞれ、風疹HI価は256倍に上昇し、IgM抗体の陽転を認め、風疹の顕性感染と確定診断された。なお、家族や周囲に風疹感染者は認めなかった。その後も近医産婦人科で経過観察されていたが、妊娠17週1日に脳室拡大を指摘され、精査加療目的に当院紹介となった。"


2011年9月「大阪府内における2011年の風疹患者発生状況」

"今後の取り組み
麻疹排除にむけた近年の取り組みに加えて、関東地方でみられた麻疹の流行を受けて、行政や医療機関、教育現場での麻疹に対する意識は非常に高くなっているが、風疹への認識が薄れている感は払拭されない。

風疹は、臨床症状から麻疹との類症鑑別が難しく、不顕性感染や典型的な症状をみない症例も多いため、麻疹を疑った際は、風疹も念頭におき医療機関でのIgM検査の実施が今後重要になると考えられる。

また、風疹は30〜50代の男性のワクチン接種率および抗体保有率が低いことが知られており1) 、大阪府内では免疫がない男性を中心に地域流行が起こったと考えられる。今後は先天性風疹症候群2) の発生が懸念されることから、風疹患者数の正確な把握を行うと同時に、妊娠可能な年齢層の女性への感染の拡大を充分監視していかなければならない。また、配偶者が妊娠する可能性も高い、風疹に免疫のない青壮年男性には予防接種も必要と考えられる。"


2012年10月23日 速報「神戸市における風疹発生状況と脳炎患者からの風疹ウイルスの検出」

"まとめ
今年の国内での風疹流行は都市部を中心に関西地方から始まり関東に広がっている。国内流行中の遺伝子型は2Bと1Eがほとんどである。神戸市では今年の3月以降より、20〜50代男性を中心に風疹の流行が見られた。"


2012年11月 「2012年の風疹ウイルスの流行状況―兵庫県」

"兵庫県内の2012年の風しん患者は、第8週以降毎週報告が続き、風しんが全数報告となった2008年以降では最大の患者数となっている。5月には患者報告数が全国最多となったため、・・・"

"一方、女性は男性に比べて患者数は少なかったものの、20代が29%、10代が26%、30代が16%となっており、風しん感染を避けるべき出産年齢に当たる年代が女性患者の71%を占めていた。"

"感染経路が記入された70名(27%)の多くが家庭や職場での感染が疑われていることから、2012年の風しんの流行は抗体保有率の低い成人男性2) を中心とした職場や家族内感染が主体であったことがうかがわれた。このような風しん流行やその被害防止のためにも、ワクチン接種の徹底や妊娠前女性の抗体検査が必要である。"



2013年1月末現在 「先天性風しん症候群(CRS)の報告」



2013年4月5日 速報 「神戸市における風疹流行状況(続報)と先天性風疹症候群2症例からの風疹ウイルス検出」

"流行状況
神戸市では2012年3月から風疹患者発生届出数が増加し始め、5月をピークに2013年2月末までに風疹脳炎を含む風疹患者89名(男性66、女性23)および先天性風疹症候群(CRS)2名の発生が届けられた。CRSを除いた患者89名中20〜50代の男性が66.3%を占め、ワクチン未接種者かつ未感染者が蓄積していると考えられる年代の男性層に集中している。また、妊娠可能年齢である20〜40代の女性が12.4%を占めていた。"

"CRS症例1
母体は風疹ワクチン接種歴がなく、前回妊娠時に風疹抗体陰性を指摘されていた。2012年3月、妊娠7週5日に発疹・発熱・リンパ節腫脹を認め、風疹と診断された。児は34週4日胎児モニタリング異常を認め緊急帝王切開で出生。在胎週数に比して低体重・一過性血小板減少・動脈管開存症・脳室拡大・片側角膜混濁を認めた。風疹IgM抗体指数は7.72。日齢4に採取された咽頭ぬぐい液、尿において、風疹ウイルスのNS領域とE1蛋白質領域の増幅を認めた。両検体をVero-E6に接種し、ウイルス分離1)を実施した。接種約1週間後に回収した培養上清の抽出RNA液を10-1〜10-6階乗希釈し、NS遺伝子のRT-PCR法による検出を実施したところ、first stepにおいて10-5〜10-6希釈までNS遺伝子が検出され、ウイルスが分離されたことを確認した。遺伝子型は2Bであった。

CRS症例2
母体は風疹ワクチン接種歴あるも、前2回妊娠時に風疹抗体低値を認めていた。2012年3月、妊娠5週時に発熱を1週間認め、妊娠10週時に風疹HI抗体高値(256倍)を認めていた。妊娠34週時に胎児発育遅延および胎児先天性心疾患を指摘された。児は37週6日出生。出生体重2,078gと低出生体重であった。大血管転位2型を認めた。出生時より体幹の紫斑と血小板減少、高IgM血症(159mg/dl)、片側先天性白内障を認めた。出生時血清の風疹IgM抗体指数は9.38であった。日齢5に採取された咽頭ぬぐい液、尿、血漿において風疹ウイルスのNS領域とE1蛋白質領域の増幅を認めた(血漿はNS領域のみ実施)。咽頭ぬぐい液と尿において症例1と同方法においてウイルスが分離されたことを確認した。遺伝子型別は2Bであった。

まとめ
風疹ウイルスが妊娠初期の女性に感染すると出生児にCRSを引き起こす可能性があり、ワクチン接種が急がれてきた。神戸市では2012年3月から風疹が流行し、10月と11月に計2名の兵庫県内のCRS患者から風疹ウイルスを検出した。2013年になり、再び風疹の届出が急増している。今後も警戒が必要であるとともにワクチン接種を今まで以上に促進することが重要である。 "

兵庫県、促進プリーズ。

あと少ししかありませんが、ゴールデンウイークまでにできることをがんばりましょう。

「麻疹対策」会議はあるのに、「風疹対策会議」は国にも東京にも無いそうです。
2013年3月に終わってしまった3期4期の麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)。一部の自治体は自主的に延長措置をとっています。


1万円近くするワクチンを、指定期間内にこなかったひとたちがうちにくるのか?という問題もあり。


(まだかなあ・・Byトーマス)

【受付開始】7/4(木)KIDS(感染症に興味を持つ医療従事者のための京都感染症セミナー)

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開催のご案内をいただきました。
ブログでも紹介させていただきます。

毎回チャレンジングな勉強会のひとつです。

感染症コンサルタントがムム〜と眉間に皺をよせ、藤田先生が「にやり」とする、その間合いも楽しんでください。

症例検討会の展開のしかたも学べます。

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会名:第15回感染症に興味を持つ医療従事者のための京都感染症セミナー(KIDS)
日時:2013年7月4日(木) 18:50 〜
場所:財団法人 青蓮会館 会議室301号室

18:50− 製品説明 ファンガード アステラス製薬の担当者

19:00- ケースディスカッション

座長 京都府立医科大学附属病院 感染対策部・臨床検査部  
                             部長 藤田 直久 先生
症例 「 多様な症状を呈した多形紅斑の1例 」

コメンテーター
感染症コンサルタント/米国感染症専門医  サクラ精機株式会社 学術顧問   青木 眞先生


研究会参加費:500円 軽食あり
事前登録:下記フォームにて6月21日(金)17:00までに「電子メール」でお申し込みください。
     定員になり次第締め切り。
*1メールでの申し込み人数は2名までです。
*事前登録が無い場合は入場できないことがあります(毎回ほぼ満席です)。


E.mail 藤田直久先生 【nfujitaあっとkoto.kpu-m.ac.jp】

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【表題】第15回KIDS参加申し込み  
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【本文】研究会に参加します
     所属 京都病院
     氏名 府立太朗・府立華子 の2名
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共催: Kyoto Infectious Disease Seminar(KIDS)  アステラス製薬株式会社


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Macrocyclic antibiotics - Solithromycin

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ええ、Macrocyclic antibioticsのお話、第二弾。本日はSolithromycinでございます。

これはクラスとしは、MacrolideのいとこのKetolideのGroupでFluoro KetolideのGroupとの事です。(どうでもいいけど・・)

さて、本抗菌薬の良いところは以下のとおり

#1:Azithromycinが相手にするやつに対する効果がX8-16倍 強い
#2:GPC(pneumo, GBS, CA-MRSA, Enterococcus)に良い
#3:Atypicalsに良い。 MAC, Legionella, Mycoplasma, Chlamydophila
#4:Malariaに活性
#5:Gonoに良い・・・来た!!
#6:GNRやAnaerobeにも良い・・だんだん嫌いになってきた・・

繰り返しになりますが・・耐性Gonoに対する当座の対策 By two Authority

#1:2 grams azithromycin and test for cure 7 days later

#2:ceftriaxone 250mg IM plus 2 gms of azithromycin po in a single dose. If that is not successful, you could then use high-dose ceftriaxone (e.g. one gram IV) or spectinomycin.

(写真は旭中央病院で知り合い、10年近いつきあいのシュロッスバーグ先生。結核の権威)

ゴールデンウイークと感染症予防

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大型連休は長距離移動をする人が増えます。円安にはなっていますが、海外渡航する人も多いですし、その人たちが帰ってきたあと、総合診療や感染症のドクターはプチ忙しさUpを経験します。

ええ。

実際に、世界中で気のいい日本人が危ない目にあうのですが、そのうちの一定の人が感染症の問題をかかえます。
ですので、出発前の注意喚起から帰国後の適切な対応まで、皆で協力してとりくめたらなあと思います。

「渡航前相談」は、オランダなどではかなりメジャーな行動ですが、日本ではあまりききません。
駐在員になることがきまり、家族も一緒に渡航するような場合はワクチンから健康診断書作成まで(会社の負担ですし)手厚く相談を受ける方もいるのですが。

最低限、厚労省や外務省がよびかけている注意事項くらいはよんでおきたいものです。

今年の注意喚起ページはこちら

今年のページは読みやすい!レイアウトもそうですが、書いてある順番がいいですね。
リスクを想起しやすい情報もならんでいます。

そして、今年の話題もちゃんとはいっていました。

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海外に渡航する機会に、これまで受けた予防接種について確認しましょう。昨年から、首都圏や都市部を中心に風しんの流行が続いています。国内の感染症を海外に持ち出さない、または海外の感染症を国内に持ち込まないために、国内に流行がある疾患に対するワクチンで未接種のものがあれば、予防接種を検討しましょう。

リンク:厚生労働省「風しんについて」
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外国のサイトにあって日本のページにはないもの。
それはSTD関連。
書きにくいですが。
厚労省のサイトには最近予防ポスターや政府公報動画、パンフレット等リソースも充実しているので、薬剤耐性の感染症になるリスク等含めてさくっとかいてもいいのかなーと思うのですが。


母子手帳がない大人の人の予防接種記録(外国語併記)は大切。
写真は国立国際医療研究センターDCCのもの。

New Oxazolidinones

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枯渇する抗菌薬・・的解説ばかりしている編集長にとって新しい抗菌薬の話はやはりつい眼がいってしまいます。

本日のお題は「New Oxazolidinones」です。まあLinezolidの仲間ですね・・
講演者はGeorgeM. Elispoulos先生
・全般にLinezolid耐性の本来Linezolidが効く筈の菌に有効な点がPoint

Linezolid
・知られざる(知ってるか・・)Spectrumには、TB、M.kansasii、M.marinum、Nocardiaなどがあります。
・利点:経口投与が注射と共に可能。
・欠点:Static、副作用:骨髄抑制、MAO阻害剤との問題(Serotonin症候群)
・問題:耐性が広がりつつある?:肺炎球菌、腸球菌(E.faecalis)、MRSA

Sotezolid:
・構造:LinezolidのOxygenMoleculeをSulfaMoleculeに置換しただけ。
・利点:菌によってはCidalに効く、Linezolidで駄目だった一部のGNRにも有効(例:Moraxella、H.flu)

Tedixolid(torezolid phosphate):
・利点:連鎖球菌、Listeriaに対する活性が向上。抗結核作用良い(Phase1)。
・現状:軟部組織感染症でPhase3まで行った

(写真:新しい感染症・総合内科専門医たち:彼らはCidalですよ・・!!)

H7N9騒動 と 人権侵害

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昨夜テレビをみていたら、中国で退院するH7N9の中年男性患者がインタビューに回答をしていました。
まあ、ご本人の同意のもとなのかもしれませんが、びっくり。

H7N9は「インフルエンザ」ですので、多くは曝露や感染をしても軽症でしょうし、一定の人は無症状でしょう。一部の人は重症になるでしょう。おそらく高齢者です。インフルエンザだからです。
免疫のない若い人には広がるかもしれませんが、回復します。インフルエンザだからです。

予防につかうPPEも基本的なことで対応できます。
処方するとしたら、あまり選択肢もありませんのでいつもと同じ薬です。インフルエンザですから。


社会にどの程度のインパクトがあるかは分母が把握されていくとわかりますし、また重症はどんな人が?といった臨床情報が大事ですね。

21日までの情報がネットであちこちで公開されています。

鳥の調査もすすんでいて、広い地域の鳥からウイルスは把握されています。



エピカーブは症例定義にもとづいてカウントした症例を図示したものです。


死亡率は診断される症例数(分母)が多くなったので下がっていっています。


年齢別でみると


想定の範囲内。

男性の高齢者が多いですね。

死亡例は


やはり、高齢者の男性が多いです。なぜ男性?ですがあるレポートには喫煙がリスク因子としてかかれていました。でもまあ、喫煙していた人が呼吸器感染症上不利なのはコモンな話でこのインフルエンザに特別関係が深いわけでもありません。


という状況のインフルエンザ。

新しい情報はWHOや米国CDCなど世界の関連機関の文書が感染研のHPにあります。
インフルエンザA(H7N9)〜新着情報〜
日本語解説つきです。ありがたいですね。


4月19日に感染研が独自の評価を発表。新しい動きのはじまり。 
「中国における鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応」
※1−2週間おきに発表するそうです…

専門家のコメントもありがたいですね。
4月22日 東北大学 押谷先生「インフルエンザA(H7N9)のリスクをどう考えるべきか」 (第二報)

岩田先生のブログ 楽園はこちら側

この時点で紹介されていますが、

"WHOは本件に関して、入国時の特別なスクリーニングを薦めてはいない。あるいは、旅行、通商の制限も推奨しない。"です。
日本はなぜか中国全土に対象を広げた健康カード配布だそうで、誰が決めたんだろう〜。





中国に直行便のとんでいる日本の空港もたくさんありますが、香港や台湾はもっと影響を受けやすい地域であり、どちらも親切に英語ページがありますので、毎日見るようにしています。

台湾CDC H7N9特設ページ 4月3日以降、23日の時点で125例の疑い例があり、118例は陰性確認。残りは結果待ち。

香港 公衆衛生部門 H7N9特設ページ 23日の時点で疑い例とかとても少ないですね。

この香港のサイトは情報がとても見やすいです。医師向け、一般向け、学校向けと整理されています

そういえば、2009年のときは通知乱発で、現場では「今何がactiveな情報なのかさっぱりわからない」状況がありました。
まあ、インフルエンザや呼吸器感染症疑いを診るのは通常の業務の範囲なので、必要な判断はできたのですが、現場状況を知らない人たちがふりまわした情報で一番迷惑をこうむったのは患者さんです。

ちょっとした咳や微熱に過剰に騒がれて、プライバシーがおかされ、入院しなくていいのに入院しろといわれたり、小学生や中学生が自宅から遠くなれた施設につれていかれてしまったり(重症でもないのに)、根拠が怪しくなった時期前それをいう人がいて周りが迷惑したのを思い出します。

飛沫感染予防、必要時に接触感染予防。吸引や検体採取のときにゴーグルやN95をつかいたいひとは使えばいいですが、重症でもない人を入院させたり、通常の病棟で対応可能なのに、病原体不明時に対応する隔離病棟などにいれたり面会制限や行動制限をかけたら当然、人権侵害になりますね。
インエンザやインフルエンザ疑いで。

世界のどの国もそんな対応をしていません。
てんぱっちゃう専門家のいないところだとやってしまいかねませんが、感染症の専門家がいたり、感染症の専門施設に指定されているところではそんな対応はしませんね。

今のところ、鳥インフルエンザですので、特別な指定を受けておらず、人権問題にふれるような制限や命令をする法的根拠がありません。
下記の法律も適応ではありませが、、、今後状況がかわったときのために復習。

法律をみると「第四章 健康診断、就業制
限及び入院」


(最小限度の措置)
第二十二条の二  第十七条から第二十一条までの規定により実施される措置は、感染症を公衆にまん延させるおそれ、感染症にかかった場合の病状の程度その他の事情に照らして、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。

根拠なく過剰にやったら違法です。

当然、苦情がでます。

(都道府県知事に対する苦情の申出)
第二十四条の二  第十九条若しくは第二十条の規定により入院している患者又はその保護者は、当該患者が受けた処遇について、文書又は口頭により、都道府県知事に対し、苦情の申出をすることができる。 2  前項に規定する患者又はその保護者が口頭で同項の苦情の申出をしようとするときは、都道府県知事は、その指定する職員にその内容を聴取させることができる。
3  都道府県知事は、苦情の申出を受けたときは、これを誠実に処理し、処理の結果を苦情の申出をした者に通知しなければならない。

感染症患者の強制隔離・長期入院の仕組みをめぐる諸問題―法律家の立場から―

新しくできたインフルエンザの特措法を知らないひとは
こちらの解説資料をよみましょう

ゴールデンウイークを挟んでの風疹とデング熱

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きれいなお水が好きな蚊・・・はマラリアを運び
都市の汚いお水でもかまわない蚊・・・・がデング熱ウイルスを運び、なのであります。


アジアのデング熱症例増加は、検査が増えたり意識が高くなったからなのか、真の増加なのかは国ごとに見ないとわかりませんが、大型連休前の「感染症流行情報」としては、シンガポールのデングの多さはちょっと気になりますね。

National Environment Agencyによりますと、4月14-20日までの1週間での報告数は515例。
その前の週も493例です。

日本の1週間の風疹のようです(自虐的)。

分母がちがいます。人口はそう多くありません。

今年に入って16週までで4850例が報告されています。

http://www.channelnewsasia.com/news/...se/648740.html

えいごでは、「でんぎ」です。

検疫FORTHの解説

潜伏期間が2から15日(通常2から7日)。

症状ですが、「38〜40℃の発熱、激しい頭痛、関節炎、筋肉痛、発疹がみられます。この発疹は風疹との同じような小さな紅斑で、痒みや痛みはありません。熱が下がったあとにうすいアザが手足やわきの下にでることもあります」

ちなみに、風疹の潜伏期間が2-3週間です。
日本で風疹ウイルスに感染して、短期間シンガポールに行って、帰ってきて、程よいころに発熱や発疹が出ると超まぎらわしいですね。

風疹が増えているので発疹をみたらうたがうドクターも増えているとおもいますが、20-40代男性で、東京や大阪だとAcute HIVとの鑑別も必要になります。発熱がーリンパ節がー、発疹が―ですから。
血小板もさがっているじゃん、、とか。

Ceftaroline  (第5世代セファロスポリン)

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これ、編集長があまり好きでない第5世代のセファロスポリンでしょう・・

まあ、一応、ご紹介します。第5世代なので当然CTRX的スペクトラム+グラム陽性球菌GPCスペクトラム持ちます。
(おー節操ない・・)

#1:スペクトラム
MRSAに効きます。(本当に。昔の日本の大御所の第3世代セファロスポリン効きますといったデマではない)
PBP2aにAffinityあるため。

MDR Pneumoに効きます。
PBP2xにAffinityあるため。

・Enterococcus faecalisにもOK.
・ESBLやPseudomonasには駄目。(やはりセファロスポリンですから・・)

ここら辺りの情報は CID 2011;52:1156-, Drugs 2012を見て下さい。

#2:認可
・FDA:Oct 2010:軟部組織感染症と細菌性市中肺炎
・Europe:Aub 2012:


#3:背景にある研究
①軟部組織
・Ceftaroline VS VCM/Aztreonam:良い成績 CID 2010;51:641-  Corey GRら
・但しGNRのみによるSSTIには負けた。(本当にGPCよりのセファロスポリンだな・・)
・編集長的には:MRSAに効くCEZかな・・

②市中肺炎
・Ceftaroline VS CTRX
・基本的にはCeftaroline勝ち。とくに血培陽性例で勝ち
・面白いのはPRSPで成績よかったのでなくて、PSSPで成績良かった。CTRXに勝った。
・編集長的には、PSSPでもPRSPでもペニシリン使えよ!!


#4:新しいFDAのEndpoint
今までと違い、Early point comparisonというので判定します。
具体的には4日目で負けてないか・・
以前の研究と単純比較できませんね・・
実際、Early endpoint VS Test of Cureでは異なる結果が出るらしい。Earlyで駄目でも結局良くなる重傷者がいるのです・・

(写真:旭中央病院のブートキャンプの様子。画面左側に軍曹や先輩二等兵)



編集長の風疹リスク 抗体価とその周辺

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本当に風疹は大変な事になっていて、その大変さに対応できてない行政その他(というよりも依然として「何それ・・」的、高齢男性指導層)が本当は日本の大変な問題なのだと怒りまくる編集部であります。

さて、そのような中、指導層ではないが高齢男性Cohortに入る編集長、ここで風疹を発症したら「首だ!!」

という事で、編集長、測定しましたよ、測定!!

編集長の風疹抗体価は高いです。

安心して連休に突入します。まあ、どこにも行きませんが・・

H7N9 と 法律 と PPE

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だんだんと英語のニュースの数も減っているH7N9。

Google Trendでみてみました。


軽視しているわけではなくて、どのレベルの対応をすればいいか基礎情報が把握され、各国が通常のモニタリングでやっていく体制がととのったからですね(整ってない国もある)。

ちょうど10年前の2003年のSARS(コロナウイルスによる感染症)のときは、感染症そのものだけでなく、中国は情報出さない、その後もいろいろ隠すなど信頼やコミュニケーション上の課題が指摘されました。
今回は、各国の研究サイトが国内にあり、人的交流もすすんでいるためか、情報は順々に出てきている印象です。
当時との比較などのまとめが4月22日にMedpage Todayにありました。
SARS Lessons: Stay Alert for Emerging Pathogens

4月23日 オーストラリア バイオセキュリティ専門家インタビュー
Australian biosecurity officials say they are closely monitoring a new bird flu outbreak in China, but remain alert and not alarmed.

オーストラリアは感染対策のレベルが高いですし、麻疹が空港で一例報告されようものなら、大騒ぎになります。食中毒対応も早い。そのような人たちの視点は参考になります。

いっぽう、風疹のワクチン費用補助が自治体でバラバラとか、検疫の人も麻疹ワクチン以外は努力目標とか(聞いてびっくり)、危機感として基本的なことが????なままGWを迎えるのはこわいんですが。

成田空港で働く人が麻疹を発症とかありましたし、GWあけに空港の人が風疹発症とかニュースなりませんように。

さて。
22日のWHO会見の説明がありましたが、日本は中国の鳥インフルエンザを本日「指定感染症」にしてはどうか?という話がニュースになっていました。

「えーそれなに?」という方は法律をよみます。
感染症の診療に関わる人にとって、いろいろ仕事に関わるようなことが書いてある法律です。
よみましょう。

--------------------------------------------------------------
(指定感染症に対するこの法律の準用)
第七条  指定感染症については、一年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより次条、第三章から第七章まで、第十章、第十二章及び第十三章の規定の全部又は一部を準用する。
2  前項の政令で定められた期間は、当該政令で定められた疾病について同項の政令により準用することとされた規定を当該期間の経過後なお準用することが特に必要であると認められる場合は、一年以内の政令で定める期間に限り延長することができる。
3  厚生労働大臣は、前二項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、厚生科学審議会の意見を聴かなければならない。
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え?日本語に思えない?
ぜひほかの法律も時間があったらよんでみてください。
読んでもよくわからないように書いてあるのがデフォルト。

新聞記事に書いてあるので一般の人も知るところとしては、
"中国で急速に感染が拡大しているH7N9型鳥インフルエンザウイルスの日本侵入に備え、厚生労働省は24日、H7N9型を感染症法に基づく「指定感染症」とし、最長2年間、入院勧告や就業制限などができるとする対策案を感染症部会に示す。承認されれば感染症法の政令や、検疫所での診察や検査を可能にする検疫法の政令を改正し、5月上旬の施行を目指す。"

GW中は各方面手薄です。医療機関はお休みなく動いていますが余計な負荷をかけたり、かんちがいなオーダーがでてきたら(ウイルスより)こわいね〜と話題になっています。

先に叫んでおきましょう。

日本中から医者を集めるようなことはもうしないでください。
日本の医療機関が日々診ているのは特殊なインフルエンザだけではありません。

続き。

"東南アジアを中心に広がっているH5N1型などが含まれる「2類感染症」と同水準の対策を取るのが目的。2類感染症とするには感染症法の改正が必要なため、期間限定で早急に決められる指定感染症の枠組みを活用するのが適切だと判断した。"

おいおい、2類ってなんだよ!?な方はさらに二類のところもよみます。
日常的にみている(日常的にはみたくないけど)結核がここに入っています。
保健所への届け出をかきますし、周囲への感染予防を保健所がお手伝いします。
人権問題にならないような配慮が必要です。

※後述しますが、PPE(感染予防)は法律ではなく病原体や症状、医療行為によってきまってきます。

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3  この法律において「二類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  急性灰白髄炎 →ポリオのことです
二  結核
三  ジフテリア
四  重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)
五  鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH五N一であるものに限る。第五項第七号において「鳥インフルエンザ(H五N一)」という。)
---------------------------------------------------------------

ところで、鳥インフルエンザと新型インフルエンザって何がちがうの?
新型インフルエンザは2009年におわっちゃったんじゃないの? 
次は新新型なんじゃないの?

という方はさらに新型インフルエンザのところも読みます。

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7  この法律において「新型インフルエンザ等感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  新型インフルエンザ(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)
二  再興型インフルエンザ(かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)
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一般の方は通常のインフルエンザ予防策をとっていただき、さて病院ではどうしましょう、、ですが問題なくICTが決めているところと、「N95とか、つなぎ服とか、長靴もいるんでしょうか?」と困っているところとあるようです。

基本を振り返ります。CDCのレクチャースライド。


そもそも感染経路が何か、空気?飛沫?接触?でわかれるのでしたね。
そして、病原体がわかっているのかいないのか。患者さんが吐血しているのか咳をゴホゴホしまくっているのか。
私たちが何をするのか(食事を運ぶだけなのか、吸引をするのか)によって選べるようになっています。

長靴やつなぎ服、N95がいつどのようなときにいるのかは最終的に自分で判断できないと専門家とはいえません。





ではまずフル装備をしている事例。これはアフリカでときどきアウトブレイクするエボラ出血熱で、病棟へ行くとか検体を扱うとかいうときにとる対応。

通常、病原体が不明、病原性がわからない・高いと推定される場合にはフルスペックを使い、情報がわかっていたらレベルダウンをします。
この恰好を医療者がすると患者さんや家族、地域の人にどのようなインパクトがあるか考えることは大切。


左は訓練の写真。右は実際に曝露をする行為です。あえていうなら、防御は逆のほうがよかったかもしれませんね。


こちらは日本の映画の記者会見とかイベントの風景だそうです。
タイベック熱いです。こういったネタにつかわれることを苦々しくみていた感染症関係者。


現在の中国の対応


H7N9がらみで紹介されていた台湾とベトナムの検疫。
体温センサーは日本の空港にもあります。ずーっとみていて赤くなっている人を呼び止めますが、先日、空港で聞いたところ、1日あたりそれにひかっかるのが数名、半数は酔っ払ったひとだそうです。
潜伏期間がありますので、まあ、これにお金や人をどう投資するかという問題はありますね。。


医療機関には毎日、呼吸器感染症疑いのひともきますし、ほかの病気にも対応しています。
2009年のような混乱を起こさない対応をしてもらいたいです。。

ダリワル先生

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鑑別診断の神様、ローレンス・てぃあに先生の一番弟子、ダリワル先生が来日中で、明朝は湘南藤沢病院、旧茅ヶ崎徳洲会病院でのカンファレンスに臨みます。

その精緻な診断プロセスは評判で既に今年も既に音羽病院、金沢大学、亀田病院などで教育をされています。

編集長は明日は通訳、兼コメンテーターとして応援いたします。

これぞ内科・・・と思わされる場面が目白押しになるでしょう。

明日はきっと飛び入りでも参加されると良いでしょう・・。臨床研修担当の具伊さんに連絡してみて下さい。
開始は0740amです。

(写真:今晩のメニューは勿論、Indian)

seesaw effect シーソー効果・・

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院内感染症と日々戦われている臨床医の皆様に多少でもお役に立つかも知れない追加情報。

Ceftarolineですが・・

#1:MRSA
効くのですが通常、この抗菌薬に到達するまえにVancomycin駄目>Linezolid駄目>Daptomycin駄目
という順序を踏んでいる筈です。

この順序を変えるだけで(Daptomycin>Ceftaroline)効果を増強できるのでは・・というアイデアが出ています。
その心は「シーソー(遊び), ぎっこんばったん」のSeesaw effect(シーソー効果というのかな・・)
Daptomycinが駄目になるとOxacillinが強く効くようになる。(3TC駄目になるとAZTが強く効く的・・)

Yang SJ, Xiong YQ, Boyle-Vavra S, Daum R, Jones T, Bayer AS.
Daptomycin-oxacillin combinations in treatment of experimental endocarditis caused by daptomycin-nonsusceptible strains of methicillin-resistant Staphylococcus aureus with evolving oxacillin susceptibility (the "seesaw effect").
Antimicrob Agents Chemother. 2010 Aug;54(8):3161-9 PMID: 20547804

Daptomycin耐性MRSAが問題になり始めている今日、良いアイデアは何でも買います。


#2:GNR
CeftarolineにAvibactamを加えると抗MRSA効果+抗腸内細菌効果が増加!
(緑膿菌, Acinetobacterには駄目)

まだやるじゃん抗菌薬開発者よ!!

介入 と その効果(H7N9、風疹)

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感染症によって、効果のある予防介入は異なります。

鳥インフルエンザの場合は、トリとの接触を断ちましょう、なのですが、生活習慣的に難しいものや、経済保証の必要な市場の閉鎖などはなかなかムズカシイといわれています。そんなことをいっていたら広がっていってしまうので、国が制限をする仕組みをもっています。

(日本でも自治体レベルで集会の制限などもできるようになっていますね)

中国ではH7N9の流行地でのlive bird marketを閉鎖し、曝露のチャンスを減らしました。もっとも鳩や野生のトリでも広くひろがっているようなので曝露リスクはゼロにはできないでしょうが、一応もっともうたがわれたところに介入をしました。

4月23日付けのNEJM Preliminary Report: Epidemiology of the Avian Influenza A (H7N9) Outbreak in Chinaでは、症例の77%にlive bird(生きたトリ)との曝露があったとありますので、この成果が出るかどうかの評価が行われます。

いっぽう、昨日、中国に仕事で滞在していた台湾の男性がH7N9症例と把握されました(病院でstableだそうです)。会見でも強調されていましたが、「発熱しているときじゃないと体温センサーではわからないので、空港では限界がありますね」ということでした。(2009年のときも各国あまり検疫には力をいれてなかった理由でもあります)

感染症対策では何からとりくむべきか、人やお金をどこに投入すべきかがわかる2つの情報でした。

日本で生かすにはどうすればいいでしょうか。

台湾のコメントからすると、空港に医者を集めるよりは、体調不良時に安心して受診できる医療機関の体制が整っているほうが患者さんにも医療者にとってもメリットですね。

リスク行為については空港で啓発。

動物に触らないように、近寄らないようにということは常識のようでありますが、そこは海外。ふだんの危機意識がとんでしまうこともあります。

この事例はとても勉強になりますよ。怖いけどよんでください(^^;)

「東南アジアからの帰国時に急性呼吸器症状を呈した患者から分離されたオルソレオウイルス」
(Vol. 29 p. 310-312:2008年11月号)

"男性、38歳。11月8日〜21日にインドネシアに妻と旅行。"

うらやましい。

"11月19日22時頃から発熱、関節痛等の症状があった。"

帰る直前です。がんばって飛行機にのってしまいますね。

"11月21日朝帰国し、当日、関西空港経由で帰省。宮崎への機内では風邪薬を服用した。宮崎着後、直接、夜間救急センター病院を受診し、発熱39℃、咳症状、咽頭痛あるも、胸部X線検査で肺炎所見は見られず帰宅。"

インドネシア→関空です。関空の検疫で相談したら宮崎行きの飛行機に乗れないのでがんばってしまったのでしょうね、と想像。
でもつらかったのでしょう。救急センター受診です。
「渡航歴のある発熱患者」です。しかし肺炎でもないし、○○○などを処方して帰る・・・・ことになりますね。


しかし、帰宅した後に症状が悪化して別の病院を受診します。
インドネシアと言えば今問題になっている病原性不明のH7N9ではなく「高病原性H5N1」報告が多い国ですし、熱い国では年中インフルエンザ等も流行していますから、ここでキットで検査というのもわかります。でも陰性。

ここで県立病院の先生がヒットです。現地での行動歴からリスク情報を聞き出します。(すばらしい)
が、聞いた情報が「きゃあああああああああ」という内容でした。

あなたが主治医ならどうしますか。も、も、も、もしや○○ではっ?

続きをよみましょう。

"同日夜中1:00に意識が朦朧とし県立宮崎病院の救急外来を受診し、インフルエンザの迅速診断キットでは陰性であったが、聞き取り調査で、帰国2,3日前に接触した現地ガイドは咳が持続しており、11月10日にこのガイドの自宅で放し飼いの鶏を捕まえて料理したことが判明した。"

・・・・一瞬呆然とする医師(だったかどうかは不明)。
気をとりなおして保健所に相談(たぶん)。

”高病原性鳥インフルエンザの要観察例として対応したが、検査の結果陰性。23日午前2時50分、検査の結果陰性が判明。その後、26日まで発熱継続し不明熱の診断で入院継続、29日に症状改善し退院した。”

・・・で、違う病原体でしたが。

海外にお出かけの皆様!動物にはくれぐれも近寄らないように。自分でさばいたりしないようにお願いしますっ!

もっとも、ふだんの意識だからこそアブナイめにあうのも日本的。
動物がいると「きゃあ〜かわいい〜」と手を出してしまいます。
そしてがぶっとやられてしまいます。犬、ネコ、サル、なんでもありです。

「動物咬傷」(どうぶつこうしょう)というカテゴリーですね。地域や傷によって必要な対応が変わってきますので、一度どこかでまとめて勉強をしたいです。(編集長、破傷風や狂犬病対応などがスラスラいえますか?)

さて。
感染症によって有効な介入方法が違うということで、もうひとつ考えるべきは「風疹」。

もっとも有効なのはワクチン接種率を高めることです。

今日は千葉県知事が県として接種費用補助を発表しました。
これで緊急提言をだしている東京都、非常事態宣言を出した神奈川県知事についで3つ目です。
大阪と兵庫はまだ許容できるという判断なのでしょうか。埼玉県、大丈夫でしょうか。

神奈川県は県のアナウンスをうけて、各自治体が続々と助成を発表しています。群馬県の安中市も助成を発表。

で、問題です。

予防接種の助成を行政がしたら、この風疹の流行は終息していくでしょうか?

答えはNoです。実際に接種する人が増えるかどうかが問題です。その意味では、自治体が接種補助をしていることを知っている当該年齢の男女がどれくらいいるのか?その人達はどれくらい接種に動いているのか?

そして、実際にその地域での流行がとまるのか?です。

保健所に5類の報告をするのは医療機関です。さいたま市の人が新宿の病院を受診して発症すると新宿/東京でカウントされます。

流行がとまるためには接種の情報を届け受診をしてもらう必要があります。
しかし連休がすぐそこです。土日祝日に接種をしてくれる病院の情報も必要になっています。

皆さんの地域での取り組みをお願いいたします。

ゴールデンウイーク中もワクチン接種ができるクリニックが東京にはあります。
http://www.jiyugaokamp.com/
臨時で土日対応をしますという情報もいくつかきいています。

国や自治体の病院はそのような緊急の対応をしてもいいのではと思います。風疹をとめるつもりなら。

カナダからの手紙(H7N9について)

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Eurosurveillance最新号に掲載されていたカナダからの手紙。letterだから手紙。この場合のletterはお手紙とはちがいますが。

手紙は中国語ではトイレットペーパーだそうです(はい、関係ありません。横にズレてすみません)。

Eurosurveillance, Volume 18, Issue 17, 25 April 2013
VIRUS-HOST INTERACTIONS AND THE UNUSUAL AGE AND SEX DISTRIBUTION OF HUMAN CASES OF INFLUENZA A(H7N9) IN CHINA, APRIL 2013

先に掲載された論文などに、質問や意見を送ることも出来るし、編集部がこれは意味があるなあと思ったら掲載されるんですね。
科学的なジャーナルなどでも。

このところ続けて中国の新しいインフルエンザの記事がのっていますが、(日本の研究者の)遺伝子解析についての記事は、ウイルスがどこからきているのかなどを検討していますが、すでに100例を超える症例があるのだから、リスク人口のアセスメントについて疫学的なパターンも考えたらどうですか?というのが出だしです。

差出人は、バンクーバーCDCやカナダの大学の研究者。
ウイルスの細かい分析は、ラボで仕事を基礎科学の人たちのお仕事です。
実際に予防施策につなげるためには、そのラボの情報や臨床の情報から何を読み取って,何を重視し、可能な選択肢の範囲で何をするのかという検討が必要になります。

全国民向けに大号令!というのは、多くの場合無駄な動きや出費につながりますし、人権問題になりかねませんので、ケアする対象をしぼりこんでいきます。日本でもいまは、中国帰国から10日以内で肺炎症状があるというような定義があります。ないと、心配性の医療者がかたっぱしから検査をしたくなったりかえっていい人を入院させたり、(使うとしても陰圧室でいいのに)入れる理由や根拠が無いのに病原体不明症例をいれる病室を使いたくなっちゃうから「症例定義」は大事なんですね。

リスコミ的には、誰向けかわからない情報や、何をすべきか書いていない「気をつけて」「注意を」情報は何もいってないに等しいので、やはり「あ、私のための情報だ」と気づけるメッセージが重要になります。

で、基礎科学の人は日本ではレベルが高いとか充実しているという評価を得ているようでありますが、感染症の分野でも全体をみて迅速対応の軸をつくるepidemiologistという役割の人がいません。
大変不思議ですが、各国では政府、自治体、病院、保健所にいるんですが、日本にはいません。疫学者は統計学社と同じとまちがわれていたりもします。(お互いを勉強はしますが、そもそも教育ゴールもjob discriptionも違う)

数字の解釈や扱い方がわからない、リアルワールドへの適応がわからないとこの辺りの判断が遅れていく訳です。
各国のアセスメントを翻訳してそれに準じるというのも一つのアイデアではありますが(各国にはプロがいますので、それもいいのかもしれません。2009年のときも英語が読める一般市民は米国CDCのサイトを見てたという話もあり)

"Perhaps the most intriguing impression to date from available surveillance findings has been the unexpected age/sex distribution of reported influenza A(H7N9) cases. "

毎日ずーっと症例情報を見ていると気づくのはこのことです。

(インフルエンザなのに)把握されている症例の性別と年齢に偏りがあるんじゃないか?です。

日本でHIV感染がMSMに集中している、風疹が20-40代男性に多いことには、それなりに説明がつきます。
食中毒事例で、極端に女性が多い場合、それが午後のケーキバイキングだったら、女性が9割でも「なるほど」です。

仮説を考えます。
だって、生きているトリを扱う市場で働く人は9割が男性なんだもん。 とか、
あるいは、積極的疫学調査の分母が、男性が8割女性が2割と偏っているんだよ。 とか、
COPDになりそうなほどこの国の男性はヘビースモーカーが多いんだよ。 とか、

"The age range spans from 2 to 91 years but two thirds of influenza A(H7N9) cases have been 50 years of age or older and two thirds have been male ."

このお手紙の時点では2歳から91歳が症例リストにいいます。が、3分の2が50歳以上、3分の2が男性です。

このあたりは疫学のベーシックコースでも提示できそうな事例。

"Illness severity, with a substantial case fatality of 20%, shows a similar age/sex profile . Unlike the pattern observed for influenza A(H5N1), children, both boys and girls and notably the school-aged, are under-represented among influenza A(H7N9) detections.

この傾向は重症例でも同じ。

カナダの人たちはさらに指摘を続けます。

すでに「高病原性」のH5N1では、子ども、男女同じように感染が確認されているのですが、H7N9で曝露していない、発症していない、発症しても軽症で病院にまできていないので把握しきれていないのかどうか。

接触者調査で発症していないキャリアの子どもは確認されています。

" Among the first 100 adult influenza A(H7N9) cases, men and women were equally represented in the youngest age category 20–34 years, but men were 2–3-fold more frequent than women in older age groups ."

20-34歳では男女同じくらい把握されているものの、高齢グループでは男性は女性の2ー3倍。

"Furthermore, compared with women 20–34 years of age, women 50–64 and 65–79 years were each twice as frequent among influenza A(H7N9) detections. Conversely, men 50–64 and 65–79 years are each 4–5-fold more frequent among influenza A(H7N9) detections than men 20–34 years of age. While being careful not to over-interpret early surveillance data, what hypotheses might be invoked to explain that pattern?

若い女性グループと高齢女性グループ、高齢男性グループの差も大きいので、こういったことからどのような仮説がたつのでしょうか?です。
これは「記述疫学」での課題。

検査データや背景データの精度を高めておかないと、統計学的にどうなんだ?という解析疫学をするときに結果にノイズがはいってしまうので、ここを丁寧に検討することは大事、と初期にならいます。(統計データははっきりいいまして、ソフトに入れたら何か出てしまう訳で、そこの解釈が妥当なのかどうかに影響もしてきます)

ウイルスの遺伝子情報などが迅速に得られる今日現在では、上記のような情報とあわせて、以前より早く全体像が見えやすくはなっています。

しかし、それでもなお、病原体がどこからきたのか、妥当な対策は何かというところに必ずしも(期待するほどの早さや効果で)直結しないのも現実です。

それは、ヨーロッパで多数の被害者を出した、病原性大腸菌のアウトブレイクでも痛感したことですね。

カナダからの手紙、詳細はリンク先でお読みください。感染症を見る目を、診察室や院内から、地域やglobalに広げる時に役立つとおもいます。引用文献は35。このようなクリティークができるようになりたい・・・
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