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産婦人科領域のコンタミリスク と その周辺

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診療や症例コンサルだけでなく、「感染管理」を担当されている方もいらっしゃると思います。

現在、200床以上の規模の病院には感染管理認定看護師も配置されるようになっており(派遣養成や認定者のスカウト等)、職員の手洗い指導などの教育だけでなく、血流感染や術後感染のサーベイ、アウトブレイク予防などに取り組んでいます。
医師もICD講習会に参加したり、日本環境感染学会、日本感染症学会などでも勉強する機会はあります。

医療安全/感染管理の加算をとるプロセスで、他の医療機関がどんな取り組みをし、どんな課題を抱えているのか学ぶ機会もあります。

そこで出てくる話題のひとつが産婦人科領域における感染管理、です。

日本産婦人科医会 新生児室/産科病棟感染防止策(2009)

東京産婦人科医会「有床診療所の 院内感染対策マニュアル
"5.新生児の院内感染症
新生児は免疫能が未成熟で感染を受けやすい。細菌学的には大人の易感染者 (immunocompromised host)と同じ状態と考える。新生児に初めて定着する細菌叢は母の 産道より、むしろ新生児室内に存在する細菌が主であるという。室内にMRSAが蔓延し ていれば、容易にMRSAの保菌、感染者になりうる。MRSAが有名になり、極言すれ ば現在の院内感染対策はMRSA対策といえる(中略)MRSAの感染は、主に医療従事者の手指、器材を介した接触感染であるが、飛沫感染 も発生する。またMRSAは乾燥に強い特性をもつ。"

『助産雑誌』2011年12月号 (通常号) ( Vol.65 No.12)
「特集 感染対策どうしていますか−正常妊産婦・新生児の院内感染管理」

市立小樽病院小児科「小児科領域における院内感染対策:新生児の感染対策をモデルとして」

まあ、イロイロ話題はあります。以前ブログで記事にした「はじめてのお風呂」などもそう。

体液や血液の管理を厳密に行っている感染管理の中で、24時間赤ちゃんはお風呂に入れてもらえない施設もけっこうあるそうです。10施設ほどヒアリングをしましたが、どこも医師の指示ではありませんでした。
エビデンスは不明。

あまりEBNっぽくないQ&A Evidence based practice for newborn care

Youtube Newborn First Bath Hospital
「洗わないという選択をする場合は接触感染予防策をする必要がある」

タオルでくるまれて頭を洗ってもらえる赤ちゃん(^^) youtube First Baby Bath

是非一度、どのような手順になっているかご確認下さい。



次に、外来診療で行われる検査に関連した感染管理の話です。

今年、関係者の間で話題になっていたのが、「経膣超音波」
に関連した操作とHPV感染です。
一連の作業において、いつどのように手袋手洗いをしているのか、環境や器具の表面はどのように扱われているのか。

自分は診察をしたことがない、されたことがないのでよくわからない、という方はこちらのブログの解説記事が写真入りでたいへんわかりやすいです。

まず、内診やエコー検査に立ち会う看護師に聞いてみました。「それはとても心配する案件です」という回答がかえってきました。
経膣超音波、は一つの例にすぎません。

他の領域とちょっとちがうむきが。

関連の報告自体はあります。

Transvaginal ultrasound probe contamination by the human papillomavirus in the emergency department.
Emerg Med J 3 July 2012

High Risk HPV Contamination of Endocavity Vaginal Ultrasound Probes: An Underestimated Route of Nosocomial Infection?
PLOS one October 24, 2012

Evaluation of ultraviolet C for disinfection of endocavitary ultrasound transducers persistently contaminated despite probe covers.
Infect Control Hosp Epidemiol 2010 Feb;31(2) : 165–70.

Cleaning methods for ultrasound probes.
J Coll Physicians Surg Pak. 2008 May;18(5):286-9.

Environmental contamination makes an important contribution to hospital infection
Journal of Hospital Infection (2007) 65(S2) 50–54

The Role Played by Contaminated Surfaces in the Transmission of Nosocomial Pathogens
Infection Control and Hospital Epidemiology
Vol. 32, No. 7 (July 2011), pp. 687-699


コンタミをおこすような状況がないのか?
こういった話題をきっかけに見直せるといいですね。

環境のモニタリングなどもあれば説得力もでてきます。

ところで、膣ペニス性交(性器挿入を伴う接触)をしなくてもHPV感染がおこることはこれまでにも知られていました。それは性行為に準ずる行為としての手指や器具を介した感染リスクであり、「私はレズビアンで男性との経験がないけれども子宮頸がん健診は必要でしょうか?」という相談には、「必要ですよ」と応える根拠でもありました。

Teens Who Don't Have Sex Still at Risk for HPV Infection(2012年8月 

Barriers to Infectious Disease Care among Lesbians(EID 2004 Nov)

そう考えると、器具媒介感染リスクは検討に値するのではないかとおもいます。
どのような工夫ができそうでしょうか。

泌尿器科はどうなんだろうとか、いろいろ考えるポイントが増えました。

12/21(金)  第10回 広島感染症教育セミナー

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青木編集長、2月に広島にでかけます。15日(庄原)と16日(広島大学)。

今月は青木編集長と一緒にサンドのデジタルセミナー「薬剤師のための感染症コンサルテーション力Up講座」を担当していただいている、東京女子医大の相野田先生のお話を広大できくことができます。



教育センスのある、お話の面白い先生です♪(もっと面白いのはそのあとの宴会でのリアルなお話です。ぼそぼそ)
広島大学の医学生時代に駒込病院感染症かを見学にきて、朝のカンファレンスで一番前に座り、そこで編集長と出会ったそうです。
そこから今までの紆余曲折をうかがうだけでも、医学生や初期研修医には元気が出るお話満載です。



広島大学出身の若手のリーダーを招いて、地域還元していくという構図はとてもいいですね♪

臨床感染症の勉強の核をつくってくださっている総合診療科の溝岡先生、薬剤部の畝井先生はじめ熱い方々がいらっしゃるので、今後も広島での勉強会企画は発展していくと期待しています。

今回のセミナーの対象は医療従事者(研修医・若手医師を中心に医師・薬剤師・検査技師・看護師等興味のある医療従事者など)で、事前登録不要、参加費無料とのことです。

ぜひお出かけください。

タイトルが感染症的にぞくっときますね〜

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第10回広島感染症教育セミナー

日時: 平成24年12月21日(金)19:00〜
会場: 広島大学病院医科外来棟3階大会議室(広島市南区霞1−2−3)


【症例検討】19:00〜19:40
広島大学病院研修医 「入院中の患者がまた発熱だ!」

中国労災病院救急部  京道人先生 「コントロール不良の糖尿病患者がおかしいぞ!」

【特別講演】19:40〜
「感染症診療の基本と注意点」 東京女子医科大学病院感染症科 相野田祐介先生

なお、このセミナーは広島県地域保健医療推進機構の若手医師等育成助成金の支援にて開催しております。

主催感染症セミナー広島
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スティーブ・ジョブスとビル・ゲイツとどちらが

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Preexposure prophylaxis reduced HIV-1 spread in serodiscordant heterosexual couples

というお題でNEJMにHIV感染症の予防投与がserodiscordant heterosexual couples(やさしい言葉で表現すれば、どちらか一方だけばHIV陽性というカップル)で有効という報告です。  詳細はPMID: 22784037 を見よ・・との事です。はい。

この研究はですね、KenyaとUgandaをFieldにしておりまして、5000弱のカップルを対象とした大規模なものです。

「Funded by the Bill and Melinda Gates Foundation」とありますので、Sponsorはウィンドウズのゲイツ氏ですね。

先日、シアトル在住の方に「スティーブ・ジョブスとビル・ゲイツとどちらが後年、長く記憶されるだろう?」という話をしていたら・・彼曰く・・

iPhoneの寿命は10年かそこらでしょう。iPadも似たようなもの・・。しかしビルがHIVやMalariaからRescueした子供達の子孫は何世紀にもわたって祖国を育てるでしょう・・

たしかに・・。

願わくば耐性ウイルスの問題が育ちませんように・・

(写真:編集長が沖縄で食した、ある日の昼食・・。)

注)沖縄県立中部病院の感染症専門医は編集長をレストランに案内するさい、最低でも2回はBiopsyをしてから・・という暗黙の鉄則があるため編集長は美味しくない店を経験した事がありません。

スポーツでの感染  と  その周辺

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ワクチンに関して今一番多いクレームは、医療者によっていうことが違う、です。
1980年代やら1990年代の情報と2012年の情報は大きく異なっていますので、卒業後に生涯教育単位認定のお勉強会などに参加してなければ医師も知らないかもしれませんし、学校でほとんど習っていないナースなどは、自分の子どもの予防接種の記憶だけで答えてしまうような人も残念ながらいます。

目の前の白衣を着た人の情報を信用していいのかという懐疑からの出発は、ただでさえスケジューリングに苦悩している保護者の負担となっています。

ネットにあったQ&A
「病院が肝炎ウイルスワクチン接種をしぶるのは何故ですか?」

しぶるんですか・・・

千葉県いすみ市や、茨城県の守谷市では、B型肝炎は公費補助がはじまっていますけどね。

新規感染の予防、また感染している人が偏見や不適切な扱いをされないよう安心して生活するためにもユニバーサルワクチンが重要なんですけどね。

1992年にWHOが各国に推奨しましたが、20年後の日本ではこんな状況があるわけです。
「日本のB型肝炎患者のほとんどは昔の予防接種の針のせいで感染したのだ」と社説にかいちゃうような新聞も複数あったりします(とほほ)。

IDATENで質問が流れていましたが、体液に曝露しやすいスポーツや生活環境では、血液体液由来の感染症の対策の標準化が課題となります。

スポーツの世界では、チームや団体・施設に所属している専門医や嘱託医が、その内容に責任を持っているんでしょうか?(産業医ですかね?)

流血するかもしれないスポーツイベント(例えばキックボクシング)などでは、参加資格のところに次のような記載がありました。

"最寄りの医療機関でB型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)とC型肝炎ウイルス抗体(HCV抗体)の検査を受け、検査結果の伝票を郵送またはFAXにて提出してください。※既に本イベントに出場された方は免除。"

個人情報をFAXで流すってのもどうかなとおもいますが、過去に1回検査したらもういらないってのも、このような状況下ではよくわかりません(--)

心配ししている市民もいます。「学校の生徒間のB型肝炎の予防について」(県政への声)

"B型肝炎は感染力が強いため、スポーツ(空手、柔道、バスケット、ラグビー等)の際の出血による選手間の感染や、蚊(蚊に刺されても感染はしないが、蚊を潰す際の血液)等でも感染の可能性が非常に高くなります。従って、米国等では、B型肝炎ワクチンを接種していないと入学を拒否されます。
 この感染を防ぐため、WHOは、B型肝炎のワクチンを接種するように勧告していますが、知事は、B型肝炎ワクチンを接種するように県民に対して広報活動は考えていないと回答していますが、学校等のスポーツの際や蚊等による感染はどうやって防ぐのでしょうか。
 私は、WHOの勧告に従ってB型肝炎ワクチンを接種するのが、最良の方法と思いますが、それ以外に感染を防ぐ方法があるのでしょうか。"

B型肝炎は、HIVやC型肝炎に比べて感染力がとても強いですが、幸い予防ワクチンがあります。
激しいボディコンタクトのある競技に参加するような場合は、もちろん接種をしておいたほうがいいわけですが。

スポーツの世界でそれはどのような話なっているのでしょうね?

(ちなみにHIVやB型肝炎、C型肝炎に感染している医療者の業務の考え方については、2010年にSHEAが出したガイドラインなどがあり、未治療の人、治療を開始している人、業務の内容によってその対応が整理されていて参考になります)


British Journal of Sports Medicineの2004年の記事から。

Blood borne infections in sport: risks of transmission, methods of prevention, and recommendations for hepatitis B vaccination
Br J Sports Med 2004;38:678-684

IDATENでコメントがいくつかついていましたが、そこでも紹介されていた報告。


そういえば、2010年に書いたものがありました 「B型肝炎とスポーツ」



さて。ワクチンがないC型肝炎やHIVはどうしましょう。

また、学校や大会などで、周囲に伝える義務があるのかという問もあります。 「伝えなくてはだめですか?」
こういった問題は難しいのですが思考停止にならず、どうしたら皆が守られるのかを考えることが必要です。


そういえば、文科省が柔道をとりいれたのでしたっけ。
(※「武道」の中からの選択。他の武道から何を選択するかは学校が決めるらしいです)

文科省や学校はB型肝炎ワクチンの説明などもしているんですかね・・・。分母が増えると様々なアクシデントが起こりえますから、予防の選択肢があることの説明は当然ですね。
感染者探しや排除をすればいいという話ではありませんからね。


ほかには、接触でうつる皮膚の感染症などもあります。

全日本柔道連盟 「柔道選手のトリコフィトン・トンズランス感染症」知っておこう!〜その治療と予防法〜

大阪皮膚医会「柔道、レスリングをする人たちの間で流行っているカビの病気」


市中感染のMRSAの話もスポーツ関連の感染症の話題のひとつ。

Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Infections Among Competitive Sports Participants --- Colorado, Indiana, Pennsylvania, and Los Angeles County, 2000--2003
MMWR August 22, 2003 / 52(33);793-795


問診の時に、スポーツでのボディコンタクト歴などもきかねば。

[最終アナウンス] 1/19(土) 宮野セミナー (広域抗菌薬についてお話します)

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年末が近づいてきました。
来年の手帳買いました。
楽しい話題はあまりないのですが、勉強会のスケジュールはどんどんうまっていきます(^^;)。


青木編集長、1月に神戸に遠征します。その翌週は名古屋。


下記のセミナーはまだ多少受付は可能とのことです。

毎回違うテーマ、違う講師が感染管理についてお話をしているそうですが、今回の3名の話をきいておきたいな〜という方はお早めにお申し込みください。


編集長のお題は広域抗菌薬です。

メンタルに影響を及ぼすといけないので、製薬会社の人は聞きにこないほうがいいかも♪
辛口・暴言多少(多数?)ありますがご容赦ください。(もちろん録音はしないでください。ぼそぼそ。)


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第25回 宮野セミナー 感染対策の考え方 〜教えること 学ぶこと〜

開催日時 : 25年1月19日(土) 13:00〜16:50(12:00開場)

開催会場 : 神戸市産業振興センター

講 師  :『尿道留置カテーテルに関連する尿路感染症のあれこれ』
        神戸大学大学院 医学研究科 特命教授
        神戸大学医学部附属病院 感染制御部 部長
          荒川 創一 先生

      『楽しみながら取り組む感染対策』
        大阪大学医学部附属病院 感染制御部 副部長 看護師長
          鍋谷 佳子 先生

      『広域抗菌薬の問題とその周辺』
        感染症コンサルタント サクラ精機株式会社 学術顧問
          青木 眞 

参加費   : 1,000円 (テキスト含む)

主催  : 宮野医療器株式会社

協賛   : サクラ精機株式会社・ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社


※展示会場に15社メーカーの製品を展示しております。
 12時開場ですので、最新の感染対策関連の製品を是非ご覧ください。


※詳細・参加申込書は「宮野医療器株式会社」ホームページをご覧ください。
http://www.miyano.co.jp/topics/index.html

お問合せは セミナー事務局 担当/菅原  TEL:078-371-2227
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いつもは看護師が多いそうですが、今回は医師、薬剤師、検査技師の皆様からのお申し込みも増えているそうです。
ありがとうございます。

cranberriesと尿路感染症 Non antibiotic treatment

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この話題、大昔から出ては消えて・・・
今年もICAACのOral presentationにありました。発表者はSuzanne E. Geerlings先生
お題は「Do Cranberries or Other Natural Products Prevent UTIs? 」

何度「駄目・・」と言われても再度浮上してくる不思議なAgendaです。
ある発表者が良いかも・・というと、次に「駄目という論文が複数出てますが・・」というCounterが出ます。

やっかいな事に「駄目」と言われても、ある対象に、ある投与量の場合に駄目であった・・という事であらゆる可能性の全否定ではないのですね・・

そのほかEstrogen補充による、あるいは直接的なLactobacilliによる治療、バクタとの対比など。更にVitamin C、加熱不活化した大腸菌によるワクチンなど・・

要は抗菌薬を使わないで尿路感染症、特に膀胱炎という最もPrevalenceの高い、言い換えれば抗菌薬を世の中で最も消耗させる疾患のひとつを予防したいのです。

(写真:ハワイ大学事務所の前で前夜頂いたドクロと共に。今後、ドクロは毎年、1ヶずつ増える予定)

S木先生とA木先生

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−編集長、ローカーボで5kg減ったといばっていましたが、沖縄から帰ってきたらなんとなくシーサー顔になったような

「なんだと!」

−美味しいもの食べ歩いたんじゃないですか?

「なにー。朝はホテルで持参したブランを牛乳かけて食べただけである」

−で、昼と夜は

「会食だ」 

−ほっほう。

「S木先生にいろいろご案内いただいただいた」

-(S木先生ありがとうございます) いろいろ食べ歩きの写真があるようですね〜うらやましい。

あ、こんなのもみつけました。お店のブログですね〜「感染症ご専門の先生」

「ばれたか」

・・・・お正月に向けてまたローカーボをがんばるといっていた、編集長の先日の夕食はラーメンです。ぼそぼそ。






(写真:ふちゃく という地名にある むく という名前の和食専門店の前で・・海が綺麗なレストランでした)

抗インフルエンザ薬を選択するのは誰か

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先にタイトルだけ見たので、以前話題になった、感染症学会の、利益相反の記載も何もない、唐突な委員会推奨の見直しかと思いました。

抗インフルエンザ薬 と その周辺(2012年8月26日)


これは12月21日の、New新型インフルエンザに関する記事でした。

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キャリアブレイン 2012年12月21日 「タミフルを第一選択」、GLから削除へ- 新型インフル治療で

 新型インフルエンザ発生時の抗インフルエンザウイルス薬の選択は、現場の医師の裁量に委ねられることになりそうだ。

現行のガイドラインでは、「タミフルを第一選択」とした上で、流行しているウイルスがタミフルに耐性を示した場合の治療時にのみ、リレンザを使用するよう定められているが、21日に開かれた政府の新型インフルエンザ等対策有識者会議の「医療・公衆衛生に関する分科会」では、見直しを求める意見が続出した。

 現行の新型インフルエンザ対策ガイドラインは2009年2月に策定された。抗ウイルス薬については、それ以降に承認されたラピアクタとイナビルに関する記述がなく、「タミフルを第一選択」としている。厚生労働省は分科会の中間取りまとめに当たり、こうした記述を修正すべきかどうか意見を求めた。

 その結果、ラピアクタとイナビルについて追記すべきだとの認識で一致した。一方、抗ウイルス薬の選択については、記載する必要性に疑問の声が相次いだ。

 厚労省は、インフルエンザ治療に使われている漢方薬の「麻黄湯」に関する記述が必要かどうかについても意見を求めた。しかし、「ガイドラインにはなじまない」「エビデンスがそろっていない」など否定的な声が上がった。【高崎慎也】
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議論がずれていくと、お医者さんの集まりなのか不安になります。しかも、ふだんインフルエンザやその他の鑑別などもしながら患者さんを診ている人たちなのか不安になります。

Peramivirは日本で承認された抗インフルエンザ薬(ラピアクタ)ですが、米国でのFDA承認申請は難しいだろうというニュースが今年の11月に流れました。

BioCryst Pharmaceuticals BioCryst Announces Outcome from the Peramivir Phase 3 Interim Analysis

今後も記載は増えたり減ったりするのかも。

予防接種でHBV感染? と その周辺

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2012年9月27日 いつ頃から針や注射器はディスポになったのか 1
2012年9月29日 いつ頃から針や注射器はディスポになったのか 2

という記事を書きました。

そして国の委員会の調査結果を待っていたわけですが、、、

厚生労働省健康局結核感染症課B型肝炎訴訟対策室が担当をしている、第6回集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会が12月20日に開催されました。

配布された印刷資料はこちら

ちなみに、前回の配付資料議事録。これより前の資料は、こちらにあります。


今回の会議の資料を全部見ました。以下一部抜粋。

[資料1]検証項目ごとの調査手法及び内容
      2.「日本におけるB型肝炎ウイルスの感染及び感染拡大被害の実態」
       (2)B型肝炎ウイルスの感染実態(文献調査:垂直/水平それぞれの感染拡大への寄与について検討)だそうです。

      3.「B型肝炎に関する医学的知見およびそれに対する関係機関等の認識について」
       文献調査:HBVが発見された昭和48年以降の論文や教科書などを収集
       アンケート調査:開業医、保健所長など医療・公衆衛生従事者等を対象とし、当時の認識について把握
       ヒアリング調査:関係学会や肝炎に関する有識者数名を対象とし、当時の認識及び背景等についての情報を把握。


      4.集団予防接種等によるB型肝炎感染被害発生の把握および対応
       関係学会、医療関係者による把握及び対応、自治体及び予防接種従事者による把握及び対応、邦による把握及び対応
        文献調査:昭和23−63年の文献検討

      5、諸外国における予防接種制度及び予防接種に伴う感染防止対策の実態(アメリカ、イギリスなどの諸外国)

検証項目2「B型肝炎ウイルスの感染実態」

使用したデータセットは2つ。
1)日本赤十字社の献血での、"初回供血者"のHBs抗原陽性率(全体の80%以下が40歳以下の年齢層)

  2001−2006の6年間で、3,748,422人

2)岩手県予防医学協会 節目検診受診者のHBs抗原陽性率(対象は40歳以上の年齢層)

  2002年〜2006年の6,304,276人のデータ
  1986年〜2009年の447,578人のデータ

感染を知らないまま潜在しているHBV感染者の推計数(5−74歳):79.4万人(73.5〜85.3万人)
全年齢におけるB型肝炎ウイルス感染者の推計数:90.3万人(83.7〜97.0万人) 

ピークが55ー59歳。 垂直感染以外では、全体で約41万人、男性が27万人、女性が14万人という推定値が記載されています。

資料はこの他に、海外の状況、アンケート調査用紙が公開されています。

議論は傍聴していないのでよくわかりませんが、資料がこれしかない中で、報道記事を読むといろいろ疑問が湧いてきます。

そもそも、調査担当者は、上記の推計値を書いているのみで、これが予防接種によるものだとは結論づける資料は入っていません。
会議の中でそのような結論づけるやりとりがあったのかは議事録を読まないとわかりません。

B型肝炎が家庭内で祖父母や父親から子どもに感染したり、集団生活や性行為などで水平感染することは古くから知られていることですので、田中教授の資料にある推定41万人(男性27万人、女性14万人)のなかでどこが予防接種かの説明が必要になります。

そもそも、感染症ですから性別や年齢だけでなく地理情報とのリンクも重要です。
今回のデータセットで十分なのか?


この時期の針や注射器が問題だとするなら、歯科診療での感染リスクはどう考えるのか。


なぜわからなかったんだ、なぜディスポにしなかったんだ、ということは科学的なエビデンスの発見や普及に関連する話なのでありますが(それを文献やヒアリングで検討)、1992年にユニバーサル接種をWHOが推奨したのに、キャリアの数が決して少なくない日本で今もなお導入されていないのはなぜかという話も出てきませんね・・・・これ以上感染者を増やしたくない、という軸はどこにあるんでしょうか。


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B型肝炎感染者数:最大で28万人に…厚労省の推計
毎日新聞 2012年12月20日

子どものころの集団予防接種が原因でB型肝炎に感染した人が、最大28万人に上ることが20日、厚生労働省の推計で分かった。注射器の使い回しを放置したとして、国の責任が問われた訴訟を受けて設置された同省検討会で初めて公表された。

検討会によると、B型肝炎ウイルスの感染者は全国で90万人と推計される。全感染者の少なくとも3分の1が集団予防接種が原因で感染したとみられる。ほかに、母親から出産時に子どもにうつったり、感染した人の血液を通じてウイルスが体内に入ったりして感染するケースもある。

 推計は田中純子・広島大教授(疫学・疫病制御学)が実施。1950〜89年に生まれた人について、感染率や母子感染率を求め、母子感染者以外が41万6587人(男性27万4989人、女性14万1598人)と推計した。母子感染以外の男女の共通の感染理由を予防接種と考え、女性の推計数の倍にあたる約28万人を最大値とした。

集団予防接種では、88年まで注射筒の交換が徹底されず、注射針や筒に残ったB型肝炎ウイルスに感染した人がいる。

B型肝炎訴訟の和解基本合意によると、予防接種により感染したことを証明する一定の書類や条件がそろえば、症状に応じて国が50万〜3600万円の和解金を支払う。【久野華代】

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男女共通の因子なのに男性が女性の倍の説明もどこかにないのか?。議事録をまたないとだめですかね。

(日本では新しい) B型肝炎ワクチンとMSの話題

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目下のところ、日本のB型肝炎ワクチンの問題は2つあり、

1つは、接種を希望している人が増えているのに在庫不足や流通の課題があります。
(来年の医学生や看護学生、医療者、警察の人用のも足りるのか心配になります)

もう1つは各国が公費でユニバーサルに接種しているのに、日本では任意で費用負担があること。

お子さんがB型肝炎に感染して、急性肝炎で入院したら医療費は補助がありますが(こども医療の無料化)。

水痘と同じですね。ワクチンで予防したら8千円前後の自己負担で、発症したら抗ウイルス薬は無料。
(高齢者になって帯状疱疹になったら、高額な抗ウイルス薬もペインコントロールの為の薬も自分で払いますが)


B型肝炎や水痘のウイルスは、一度感染したら体内にウイルスが潜んでおり、将来の健康リスクになることがわかっていますので、なぜ軽視されたままなのかよくわかりません。

さらに、話題が増えてきたところで、また医学的に適切ではない語りも見かけるようになりました。見ているソースや情報の質が悪いとちがうところにいいっちゃうのは、他のことと同じ。


MMRワクチンは自閉症になる!で、HPVワクチンは不妊になる!でしたが、B型肝炎ワクチンでは多発性硬化症を発症(再発)させる、という話があります。海外ではもう古い話題なので、会議案件にもあがりませんが、継続して有害事象モニタリングと安全性評価は行われています。

当事者にとっては、例えばインフルエンザの時期に感染したり発症するのが怖いですし(感染症契機に体調が悪くなる)、ステロイド剤で治療をしている人もいますので、周囲で感染症が流行するのも怖いことです。
(このような患者さん達のためにも集団免疫は重要です)

多発性硬化症の発症は20〜40代に多く、性別でみると女性が男性よりも発症率が高いことが知られています。詳細な原因は解明されていません。
諸外国の研究では人種によって発病率が異なることや、地理的な偏り(北に多い)等の指摘も行われています。
ヘルペスウイルスのひとつHHV6との関連性が検討されていますが、発症した人から他の人には感染性はありません。

日本では毎年700人前後の新規症例がありますが、個人によって異なる多彩な症状について「神経内科」の医師を受診し、複数の検査を受けます(単独でわかる検査はない)
医療費については特定疾患医療費公費負担制度を使うことができます。


そして、ワクチンとの関連性についての研究ですが、まずは日本語でサマリーが読めるものから。この2つはどちらも関連性否定の結論。

MSは男性より女性での発生が多いことが知られているので、看護師対象のコホート調査がこちら↓。1976 年から 121,700 例と、1989 年から,116,671 例の比較。

発症数がとても少ない病気なので、サンプル数を大きくし、コホートで見ていかないとそもそもわかりにくいんですね。


Vaccinations and the Risk of Relapse in Multiple Sclerosis
B 型肝炎ワクチン接種と多発性硬化症のリスク(N Engl J Med 2001; 344 : 327 - 32)

患者さんにとっては症状再発も気になりますので、こちらも紹介。フランスの研究。
ワクチン接種と多発性硬化症の再発のリスク(N Engl J Med 2001; 344 : 319 - 26)
※フランスについてのその後の事情についてはこちらも参照。

研究者ではなく、患者団体はどのような見解でしょうか。

多発性硬化症の患者団体のワクチンについての記載
http://www.nationalmssociety.org/living-with-multiple-sclerosis/healthy-living/vaccinations/index.aspx

"Many people with MS have concerns about the safety of routine vaccinations. This document provides recommendations based on the best-available evidence."

まず、エビデンスを元に考えます、です。
ワクチン全体と、ワクチン個別の研究・データを検討した記載が並びます。
たとえばB型肝炎ワクチン。

"The hepatitis B vaccine is recommended for all children, adolescents, and adults who are at risk of contracting this potentially life-threatening disease.
B型肝炎ワクチンは、すべての子ども、思春期の人、リスクのある成人への接種が推奨されています。(B型肝炎は命を脅かす病気)

In 2002, after carefully examining the published, peer-reviewed scientific and medical literature addressing the possible relationship between hepatitis B vaccination and diseases of the nervous system, the National Academy of Sciences’ Institute of Medicine (IOM) determined that there is no association between hepatitis B vaccination and the onset of multiple sclerosis. "

B型肝炎ワクチンと神経系の病気が関係する可能性について、査読のある科学的、医学的な文献の検討が行なわれた結果が2002年に公表されました。
National Academy of SciencesにあるIOMは、B型肝炎ワクチンと多発性硬化症については関連性がないと結論づけました。

この問題についての論点と必読文献はCDCの関連ページにあります。
このテーマについて語る前にまず読みましょう。
FAQs about Hepatitis B Vaccine (Hep B) and Multiple Sclerosis


関連があるんだ!と主張する場合は反証となる科学的な文献の提示が必要になりますが、Youtubeとか非専門ブログとか怪しげなリンクではなく、専門的な情報にあたりましょう。


日本で多発性硬化症の治療指針を出しているのは日本神経学会です。
多発性硬化症治療ガイドライン2010

ワクチン否定主義についての全体像を理解することも参考になります。
Vaccine denialism


B型肝炎 と molecular epidemiology

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厚労省のB型肝炎会議の話の延長です。

ある特定の原因でB型肝炎が拡大したとするならば、その仮説の妥当性と検証が必要になります。

ヒアリングやアンケートなどは記述疫学を展開していく際に重要でありますが、感染症の流行についてもっとも科学的に明確な根拠となるのは「遺伝子情報」です。
これを用いての分子疫学が重要です。

日本における広がりを把握するために不可欠。

【第44回小島三郎記念文化賞】
「肝炎ウイルスの分子医学的研究とその応用」(モダンメディア 2009年)



ウイルスのタイプ、地理的に、年齢的に偏りがあるのかどうかということも図示できるようになります。全員を調べる必要はありませんが、発生動向として把握する事は可能です。

B型肝炎は遺伝子情報をもとに分類されています。
そして、地理的分布が国や大陸によって異なることもわかっています。

日本やアジアに元々多いのはBとCといわれています。
途中から欧米型といわれるAが増えてきています。

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わが国におけるB型急性肝炎の現状(IASR 2006.9)

"どの年代においてもB型急性肝炎においては2〜3割は外国型であることがわかる。
中でも特徴的なのは1995年までは稀であったHBV/Aeの割合が近年増加していることである。
一方、HBVgenotype別の感染ルートを可能な範囲で問診により調査を行ってみると、いずれも性行為による感染が主体であったが、HBV/BやCでは同性間性交渉による感染を認めず、HBV/Aでは10〜15%が同性間性交渉による感染であった。
これらの結果は従来の報告と同様であり、わが国におけるB型急性肝炎の特徴をまとめると、(1)慢性肝炎と比べ外国型の割合が高く、特にHBV/Aeが多い。(2)HBV/Aeが近年増加傾向で特に都市部でその傾向を認める。(3)同性間性交渉による感染がHBV/Aeに多い"


献血者におけるHBV陽性率の動向とB型肝炎感染初期例のHBV遺伝子型頻度(IASR 2006.9)

"NATスクリーニングで検出された遺伝子型Aのほぼ全例が男性であるのも興味深い。"
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Aそのものが増えているのか(新の増加なのか)、Aに感染する人が検査や診断を受けやすい環境にいるからなのか、その数字の特性は別途考えないといけません。

この遺伝子型を判定する検査が保険で認められたので、検査が増えて、診断数が増えたというような影響も受けやすいです。


最近はジェノタイプAが話題になっていますが、先にDをみてみましょう。

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肝炎に詳しいサイト「続・肝炎十話」より

1970年代に皮膚の発疹を主徴とする「ジアノッティ病」が松山市の小児に集団発生し、愛媛県の中心部に広がりました。
殆どの患者で血液中に日本では滅多に見られないサブタイプがaywのHBs抗原が見つかりました。
約20年後に、塩基配列を測定できるようになって、全員がゲノタイプDのHBVに感染していたことが判明しました。
現在も愛媛県を中心として千人ほどがゲノタイプDのHBVに持続感染していると考えられています。ごく最近、関東地方にも数名のゲノタイプD感染者が発見されましたので、全国的拡散に対する注意が必要です。

日本でのゲノタイプDの起源についてですが、貴重な歴史的研究の結果、意外な事実が判明しました。日露戦争(明治三十七・八年戦役と云われていますから、100年以前のことになります)で戦傷したロシアの兵士を療養する目的で、松山に専門病院が開設されました。捕虜とはいっても、かなり自由な行動が許可されていて、温泉にも浸かっていたそうです。HBVゲノタイプの系統発生学的な解析から、小児のジアノッティ病をきっかけとして松山市に広まったゲノタイプD感染は、100年以前に当地で療養していたロシア人戦傷兵が起源であろう、と推測されています。
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上記の愛媛については、厚労省科学研究補助金事業で行われた研究に詳しいです。

「本邦におけるB型肝炎ゲノタイプDの拡散速度と拡散防止に関する分子疫学的研究」

"本研究では外来株と推定されるB型肝炎ウイルスゲノタイプD(HBV/D)の四国北西部への侵入時期と拡散時期、その由来を明らかにするとともに、感染経路ならびに現在地理的にどこまで拡散しているかを明らかにし、拡散防止対策の基礎データを得ることを目的とした。

HBV持続感染者509例、初感染B型急性肝炎44例を対象にHBVゲノタイプを測定した。
更に、HBV/D感染例19例より採取された血清20検体からDNAを採取し、全塩基配列を決定し、分子進化学的手法を用いて変異速度および同地域への侵入時期・拡散時期を推定した。

同地域のゲノタイプ別頻度はA-Dの順に1.7%、6.6%、77.4%、14.3%であった。分子系統樹では、20株はclusterを形成し、ロシアと北ヨーロッパからのHBVに類縁株がみられた。

分子疫学解析により、侵入は約100年前、拡散開始は1940年台、急速な拡散は1970年台と算定された。系統樹の起点が約100年前であること、ロシア、北ヨーロッパ株に類似した配列であることと、当地域の歴史を重ねて考察すると、日露戦争に関連した人の移動がHBV/D侵入の要因と推定された。

持続感染者に占めるHBV/Dの割合は、愛媛中予で10.9%、東予で0.8%、南予で0.8%であった。急性肝炎においてはHBV/Dは全B型急性肝炎の21.7%を占めた。

感染経路はgenotypeにかかわらず、性感染が大半を占めた。

以上より、北四国のHBV/Dは約100年前に侵入し、1970年台に急速に拡散したこと、その由来はロシアからであることが推察された。HBV/D感染の拡散は、愛媛県中部が主体で、現在のところ他地区では低頻度であったが、他地区での侵淫状況についても今後検討する必要がある。感染経路は性感染が主体であり、性感染を防止する対策が必要と判断された。"

水平感染拡大に寄与する因子が複数あるのはもはや常識でありますから、その中でどれくらい予防接種で説明がつくのか、判断根拠は何か? ということになります。



【関連情報】
Identifying a hepatitis B outbreak by molecular surveillance: a case study BMJ 2006;332:343

イギリスの代替療法クリニックでおきたB型肝炎のアウトブレイク。
自分の血液を浄化してそれを体内に戻すという方法を提案し、そこで肝炎が広がったという話。このような施設では医療機関のような最適の感染対策は行われていないリスクが啓発されました。
Molecular epidemiology of a large outbreak of hepatitis B linked to autohaemotherapy.  Lancet 2000, 356(9227):379-384
Eurosurveilanceでも報告

日本でもやっているんですね。HIVやB型C型肝炎のウイルス抑制効果やがんの補充療法と記載があります。そのようなエビデンスを見たことがありません。

B型肝炎については来年、上海で会議があります。スカラシップもあります。関心ある方はぜひチャレンジしてみてください
2013 International Meeting on Molecular Biology of Hepatitis B Viruses
October 20-23, 2013

Yoloだから・・

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セフトリアキソン耐性の淋菌(GC)の報告が日本の研究者などから出ていますね。PMID: 22547617

昔からこの分野は強いんですよね。我が国は・・

抗菌薬の乱用>>世界に先駆けて耐性菌大量産生>>世界に先駆けて耐性菌とそのメカニズムを発見>>広域抗菌薬の使用推奨

というマッチポンプ的風景はまさに「お家芸」というべきものです。

他方、市中肺炎の殆どが肺炎球菌によるものでありセファロスポリンなど使わなくてもペニシリンGで十分・・なんて言う地味なPracticeは一顧だにされず・・というのも変わらぬ風景。

そして耐性問題がアシネトバクタもGCも同じように扱われるとしたら、これも同様の風景です。

原発どGC。どちらも同じ色の風景に見えるのは編集長だけでしょうか・・

Yolo, "you only live once," だから、悔いのない抗菌薬の使い方をして人生終わりたいですね・・

(写真:「沖縄滞在中もローカーボ」の原則を初日から木っ端みじんにしたS木先生推奨のカツ丼)

Christmas Eveの日に贈ります

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もし我々の最大の必要が知識ならば、神は我々に教育者を送って下さっただろう。

もし我々の最大の必要がテクノロジーならば、神は我々に科学者を送って下さっただろう。

もし我々の最大の必要が金ならば、神は我々に経済学者を送って下さっただろう。

もし我々の最大の必要が喜び・楽しみならば、神は我々に芸人を送って下さっただろう。

しかし我々に最も必要なのは赦しだった。だから神は我々に救い主を送って下さった。

Roy Lessin

今日も医療の最前線で苦闘・奮闘する医療従事者の方に送ります。

(写真:頂いたChristmas Card)

1/26 岩手に集合!(東北若手医師ネットワーク)

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関フェデを皮切りに、各地で、自立型、ネットワーク型の勉強会や仲間をつくるチャンスが増えていますね。

IDATENにあった東北地域のイベントの広報をさせていただきます。

編集長も東北に愛たくさん(仙台生まれ、弘前大学卒業。親戚スジも東北)。

東北方面の学生さん、ぜひご注目ください(^^)。

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このたび東北地方の若手医師を対象に第3回臨床教育コラボレーション企画を開催することになりましたので,ご案内申し上げます。

「東北若手医師ネットワーク」は東北地方の医療機関で頑張っている若手医師を対象に,活発な交流とお互いの臨床能力の向上を目指して活動しております。特定の企業や医療機関に属さず,異なる医療機関から有志で集まった若手医師による,手作り感ある非営利組織です。これまで東北大学病院を会場に2回開催しており,いずれも東北各地から医学生および若手医師が20〜30名集まりました.今回は岩手県に舞台を移し,岩手県立病院医学会とのコラボレーション企画として東北地方で頑張っている若手医師の皆さんを対象に,翌日からの診療が愉しくなる企画を目指しています。

初期研修〜後期研修医を主な対象として準備しておりますが,興味のある医学生や気持ちが若い指導医の方にも広くご案内しております。

「東北若手医師ネットワーク」の紹介と,2013年1月26日企画のご案内については稚拙ながらWEBでも公開しております。詳細について参照頂ければ幸いです。
https://sites.google.com/site/tohokudr/

◆概要
東北若手医師ネットワーク 第3回臨床教育コラボレーション企画
<TWIN × 岩手県立病院医学会>

◆日時:2013年1月26日(土) 10:30〜17:00 (昼食は持参または院内の食堂を利用下さい.夜は懇親会を予定しています)

◆場所:岩手県立中央病院(岩手県盛岡市上田1-4-1 4階大ホール,WEBでも地図掲載してます)

◆内容
[前半]10:30〜13:00 TWIN企画
「これからの東北の医療を考えよう〜私たちから出来ることってなんだろう?〜」
ワールド・カフェ方式を用いて参加者全体でワークショップを開催致します.

[後半]14:00〜17:00 岩手県立病院医学会企画
14:00〜14:30 医学会雑誌優秀論文表彰式・受賞記念発表
14:30〜15:30 講演1 飯島勝矢 先生 (東京大学 高齢社会総合研究機構 准教授)
15:30〜15:40 休憩
15:40〜15:45 TWINの活動紹介
15:45〜16:45 講演2 鈴木富雄 先生 (名古屋大学医学部付属病院 総合診療科 講師)
17:00〜 懇親会

◆対象者:医学部高学年生〜医師なら誰でもOKです
◆参加費:無料 但し活発な交流をお願いいたします
◆事前登録:不要です
※詳細は決まり次第,随時WEB更新します
※一緒に準備を手伝ってくれる方も大募集中です

◆代表世話人
佐々木隆徳 山田哲也
※個人アドレスが掲載されているのですがここでは消しておきます。
連絡先は上記リンクのポスターに記載がありますので、関心ある方はそちらをご確認ください。(by編集部)


◆スタッフ
・坂総合病院 佐々木隆徳
・岩手県立中部病院 山田哲也
・岩手県立中央病院 坂本和太
・東北大学病院 田中淳一
・八戸市民病院 千葉大
・福島県立医科大学地域・家庭医療部 北村俊晴
・一関市国民健康保険藤沢病院 吉田孝司
・山形県立中央病院 鈴木有大
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実際、困ったときに助け合えるような信頼のネットワークって、こういうところからはじまります。
仲間を増やしていきましょう♪

ノロウイルス集団感染報道 

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2012年10月24日のJAMA
Hospitalizations and Mortality Associated With Norovirus Outbreaks in Nursing Homes, 2009-2010
JAMA. 2012;308(16):1668-1675

まあ、Noroですから。

この時期は英語の記事をみても、のろのろのろのろのろのろ、ときどきインフルエンザ、そして、のろのろのろのろ、であります。

英国NHS病院のように"嘔吐ウイルス"流行っぽかったら即刻 病棟閉鎖!をするところでは、入院予定だった人が延期になったり、ご家族に会えない人が増えたりとたいへんだろうなあと思いますが、閉鎖をしないとだらだらと連鎖して、スタッフも倒れて医療サービス自体が破綻しかねないことも。
症状消失から48時間は自宅にいなさいとなると、スタッフの数が減っていってしまいます。

何を最優先するか?ですが、ルールを最優先すると、症状消失から48時間以内のスタッフは自宅待機。
ナースが不足するとケアの安全性が損なわれるので、当然のことながら新規入院受け入れ中止。
これは拡大防止、流行抑止のために必要ですね。皆さんご了解ください。

でも、今病院にいる人のケアをどうしますか?
他の部署から応援に出せる大きな病院はいいですね。

もともとケアスタッフがギリギリのところはどうしましょうか。
食事と排泄、清潔など、最低限のケアはどうしても必要です。


各地の医療機関や施設内でノロは大ブレイク中です。ICNが対応におわれています。
記者会見したり報道されるのはそのごくごくごくごくごく一部です。

保健所への連絡は昨今早くなっていますが、連絡をしてもノロ拡大を抑制できるわけではありませんし、そもそも現実的ではない指導などをされても現場は困惑するだけです。


死亡例が複数報告された大阪と宮崎県の例はネットのニュースでも広く報じられていました。

まず1次情報をみてみましょう。
病院や自治体のHPに掲載されたものを最初にみます。

12月23日 宮崎県「医療機関におけるノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生について」


12月17日 病院から保健所に感染性胃腸炎の集団発生と、有症状者のうち5名でノロウイルスへの感染確認の連絡
     ※保健所は当該医療機関の調査とともに、感染拡大防止の指導を行いました。

12月22日 病院から保健所へ新たな患者発生の連絡。同病院において再度感染防止対策の徹底について指導。
     誤嚥性肺炎による患者6名の死亡を確認。

あまり情報はありません。第一報レベルでしょうか。

12月21日の宮崎県による注意喚起


次に2次情報(誰かの解釈入り)をみます。どのあたりに記者の解釈が加わっているか注目し、できれば複数のものを見比ましょう。


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12月23日毎日新聞 「宮崎・日南のノロウイルス集団感染:6人死亡 「ずさん衛生管理が原因」 県、報告遅れも批判」

宮崎県日南市の病院で6人が死亡していたことが23日明らかになったノロウイルスによる院内集団感染。県は「報告の遅れや汚物処理の不手際など病院の衛生管理が感染拡大の一因」と指摘した。病院側は「申し訳ない」としながらも「一医療機関では財政的に不可能」と開き直った。

病院側と県は県庁で記者会見。同会の理事長は「当初はノロウイルスを疑わなかった。患者が爆発的に増え、対応で手いっぱいだった」と強調した。

理事長によると、病院は患者や職員のノロウイルスへの感染を受け、日南保健所に報告。18日に立ち入り調査を受けたが、14-17日に3人が死亡したことは「ノロウイルスと関係ない」と判断し、その場では報告しなかった。しかしその後も死者が相次ぎ、22日に同保健所が2度目の調査を実施した際に伝えた。

更に県や病院によると、看護師らが使う感染予防対策用の医療用エプロンについて、保健所は使う度に廃棄するよう指導していたが、病院は「品薄で入手が困難だった」として、汚れがひどいもの以外は一日中使っていた。県は「汚物処理に不手際があったのが一つの原因」とした。【百武信幸、門田陽介、中村清雅】
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記事のタイトルにある「ずさん」、という言葉を県庁が使ったのかよくわかりませんが。
開き直った、は主観ですね。

インフルエンザにしてもノロにしても、同じように複数死亡での記者会見は毎年あるわけですが、現場がどう困っているかという背景の検討を自分で調べて書く記者さんはいないんですかね。

「一医療機関で財政的に不可能」
「対応でていっぱい」
「品薄で入手困難」
「汚染処理に不手際」

それはなぜなのか。どう解決すべきなのか。


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12月24日読売新聞 「ノロウイルス集団感染、宮崎の病院で6人死亡」

宮崎県は23日、病院で、入院患者や病院職員ら計44人が嘔吐や下痢などの症状を訴え、うち78〜88歳の男性患者計6人が死亡、76〜90歳の男女の患者計5人が重症と発表した。

 現在入院中の患者5人からノロウイルスが検出され、同県はノロウイルスによる感染性胃腸炎が原因とみて調べている。同県によると、ノロウイルスが原因とみられる集団感染による死者数としては、全国で今季最多という。

 発表によると、同病院では14日から22日までに6人が死亡。死因はいずれも吐いた物が誤って気管などに入ったことによる誤嚥性肺炎だった。
 この間、発症した44人の内訳は、入院患者30人、医師1人、看護師6人、介護士7人で、2階に入院、または勤務していた。
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読売は事実をたんたんと、の記事。
読売にある誤嚥性肺炎についての情報は毎日にはありません。死亡に関連する情報ですのでクリティカルですが、意図的に落としたのでしょうか。


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12月23日 NHK 「ノロウイルス集団感染で6人死亡 宮崎」

宮崎県日南市の病院で、入院患者と職員、合わせて44人がおう吐や発熱の症状を訴え、このうち70代から80代の入院患者6人が死亡しました。宮崎県はノロウイルスによる集団感染とみて調べています。

宮崎県などによりますと、日南市の病院で今月12日から22日にかけて入院患者30人と職員14人の合わせて44人がおう吐や発熱などの感染性胃腸炎の症状を訴えました。
このうち70代から80代の男性の入院患者6人が、22日までの9日間に相次いで死亡し、5人が重症だということです。
死亡した6人はいずれも吐いた物が気管に入るなどして、肺炎を起こしたということです。
病院が簡易検査を行ったところ症状を訴えた44人のうち、5人からノロウイルスの感染を示す陽性反応が出たということで、宮崎県は、ノロウイルスによる集団感染とみて調べています。
病院では、症状を訴えている人を隔離するとともに今月17日から1週間、外来の診療を休診しています。
宮崎県は県内の医療機関や福祉施設などに対して患者が吐いたものを素手で処理しないといった感染予防の対策を徹底するよう呼びかけています。
病院のホームページによりますと病院は、平成11年に開設され、内科、胃腸科などが専門の病院で、ベット数は64となっています。
病院では、ノロウイルスによる集団感染の発生と、当分の間、入院患者への面会ができないことを知らせる紙が正面玄関に貼り出されています。
病院には、時折、入院患者の家族が訪れ、インターホンで職員と話をしたり、着替えなどを渡したりしていました。
入院している夫の着替えを持ってきた女性は、「病院から夫は感染していないと説明を受けていますが、心配なので詳しく話を聞きたい」と話していました。

<病院側“患者増え報告きちんとできず”>
病院によりますと、亡くなった患者6人はいずれも高齢で体が不自由なため病院ではいつもベッドで寝ていたということです。
そして、今月14日に最初の1人が死亡したあと、22日までの9日間で6人が相次いで亡くなったということです。
最初に死亡した患者は亡くなる2日前の今月12日に発熱とおう吐の症状を示しましたが、病院側はノロウイルスの感染とは思わず、体調不良として対応したということで、その結果、ウイルスの感染を拡大したおそれがあるとしています。
また、患者が相次いで亡くなる事態について、県へ報告したのは22日が初めてだったということです。
理事長は「爆発的に患者が増えたので、対応に追われて死亡報告というのがきちんとできなかった。申し訳なかった」と話していました。
(続きはリンク先で。疫学情報も入っています)

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ノロとは思わず、、、のとこrはノロとわかっていたら減ったのに、と考えている人も、非専門家にはいるかなあ、です。
(例えば吐物処理に、ノロ用とか、それ以外ってこの時期ないですよ。検査しようがないですから)

NHKは分母情報が入っています。記者の主観は伝わらず、たんたんと述べている記事。
しかし包括的に書いているNHKでもなお、問題の背景には切り込んではいません。

クローズアップ現代とかでやってほしいですね。「疲弊する高齢者医療は今」とか。


さて。今後どうすればいいのでしょうか。

感染予防に必要な個人防御具をふんだんにつかえ、ということでしたらそれを可能にする物流やコストをどうするかという話になります。例えば、医療機関がこのような物品を買う際の消費税は免除とかいいアイデアだと思いますよ。
また、現在は医療機関が負担しているこのような防御具のコストを、入院患者や家族に必要経費として負担してもらうというアイデアを出す人もいるかもしれません。(これは避けたいですね)

今回の事例では、職員と患者を含めて44人が症例としてカウントされているようですが、職員が勤務できなくなるなかで、ケアの前後の手洗い等に困難が生じていたであろうことは想像に難くありません。

アウトブレイク対応相談にのる際に、そもそも手洗い場がない、認知症や全介助比率が高くて、日勤帯でもギリギリのケアであるというようなところで、頻回のおむつ交換などに必要な複数の手について想像がおよばないのかもしれませんね。

また、高齢者は「ノロが原因で死亡」するのではありません。毎日の記事では病院を批判する立場でその因果関係を書きたいようですが、重症化するのはノロだからじゃないです。高齢だからです。
高齢でしかも、自分で動けない食べれない飲めない、吐き出せない、伝えられないからです。

高齢者が多い病棟や施設では、動ける場合でも、認知症があったりして、手洗いや清潔の指示を守ることが難しかったり徘徊してあちこちさわったりとたいへんです。環境汚染は医療者の努力だけでは保てません。
おむつをはずしてコネコネしたりするひともいます。

そういった、家ではみきれない、急性期病院では長期に受け入れができない高齢者を看ているのは、待遇もよくない、心身ともにきつい介護の現場です。人手もたりてません。

ゼロリスク信仰はかえってシステムを崩壊させるので、病院が「悪い」んじゃね?という議論にもっていくのは逆効果。
もうやめよう、となって廃院になったら困るのは地域の人たちです。

仮に、絶対に感染させるなというなら、「24時間観察・お世話する人」を特定患者限定で準備するしかありません。
そうご提案ください。そして言うからにはその費用も責任をもって確保できるよう動いてください。
それなりの投資が必要ということです。


大阪の病院の場合は、殺人ウイルスと非科学的なタイトルがついています。(スポーツ新聞かとおもいました)
記事を書く記者は、そういったミスリードによって、より弱い立場の人たちが受け入れられなくなる社会的なリスクにも責任をとってくださいね。

韓国の病院みたいに、家族が病院にきて基本的なお世話を24時間しなさい的になったら困る人たくさんいるでしょうね。

[特別寄稿] 平成18年診療報酬改定の中小病院への影響と対策 "明確なビジョン"と"具体的戦略"が不可欠となった中小病院
(2012年7月)


自分や家族が入院(所)する施設の感染予防策

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感染対策については、一般の方向けの資料も載っているサラヤのHPはお勧めです。


皆さんが入院、あるいはご家族が入院・入所するとします。

スタッフがちゃんと感染予防策をとっているか大変不安になりますね。
先進的な病院には「スタッフの手洗いが不十分と思ったらぜひご指摘ください」といったポスターが貼ってあります。
(聖路加国際病院で見かけました。優れたICPがいる病院です)

前の記事のおさらいです。

WHOが洗いましょう、といっている手洗い・手指衛生タイミング。


次の患者さん(時に隣のベッド、ときに隣の部屋)に行く前には必須です。

手洗いといっても、世の中にはトイレに入ったあとも洗わない人もいますし、指先濡らして髪の毛や洋服に水分をこすりつけて「洗ったことにする」人もいます。

病院で求められている手洗いの基準はもっと高く、
手洗い

刷り込み剤


けっこう時間がかかります。ぜひ測ってみてください。
(現場ではこの間にもナースコールがなってます)

洗えといってもそもそも洗う場所がないと困るわけです。
皆さん(ご家族)が入院するお部屋や病棟には何箇所そのような場所があるでしょうか。

そしてそこに必要物品はあるでしょうか。ペーパータオルがない病院をみかけます。特に、スタッフの流しにはあるものの、皆が使うトイレは省略されているところも。でも、感染予防が必要なのは医療者だけではないですよね。けちらないようにお願いします。
(1枚で拭いてください、というお願いはアリだとおもいます)

手洗いがわからない人もいることを想定して教育的なポスターも必要。


指輪や腕時計は外します。


感染予防策には物品もかかせません。この購入費用や大量に出る廃棄物のコストも感染予防に必要なコストです。
誰が負担すべきでしょうか。


そして、適切に使用する必要がありますので、このような具体的な指示や入所時の教育が必要です。
医療者だからわかっているよね?という思い込みはダメです。最新情報を確認しましょう。


さて。このように努力をしていても感染症のリスクはゼロにはなりません。

感染症のリスクは1つの方法だけではなく、複数を組み合わせる「バンドル」(束)として取り組みます。
全体でリスクを下げるという考え方です。

例えば、インフルエンザならばワクチン、マスク、手洗い、隔離、予防内服等があります。どれも完璧ではないですが、だからといってどれかが不要ということにはなりません。


疫学的なリンクが疑われる感染症の症例が同時期に発生した場合、いくつかとりうる策があります。
これは感染症によって異なってきますが、基本的な考え方は一緒です。ただし必ずしもそれを選択できないこともあります。

感染症の患者さん『症例』を隔離したり、同じ場所に集約します。
これは検査で○○菌だ、○○ウイルスだーと分かる前から症状ベース(下痢等)でしますので、経営者や管理者の理解が重要です。
感染管理担当者の意見をちゃんと聞けるのかどうか。
(意見がわかれたら記録を残しておきましょう。あとで誰の責任での判断かもめることがあります)


また、ケアスタッフを固定する方法もあります。


業務分担整理も、アウトブレイク対応でレベルをあげているときには必要なこともあります。


しかし、いくつか課題が立ちはだかります。
まず、ケアスタッフと患者の比率です。軽症の患者さんばかりならばよいのですが、自分では何もできないケア度の高い患者さんが増えています。また、動けるけれど、感染予防行動を守れない認知症の患者さんも増えています。

昼間でも十分とは言えない状況で夜間はどうなるのでしょうか。


上に示した手洗いや手指衛生は可能でしょうか。

また、ケアスタッフがどんなに手洗いを徹底しても、医師の手洗いが不十分で各部屋や患者をまわったら対策がぶちこわしになります。


病院や現場を批判したり叩く前に検討すべきことがあります。
ぜひ皆様一緒にご検討ください。

※上記の病院の写真は、SARS患者を受け入れたシンガポールの国立病院タン・トク・セン病院の中にあるジョンズホプキンス大学メディカルセンターの病棟(JCI取得)のもの。

※上記スライド資料を院内の勉強会などでご利用になりたい場合はご活用ください。(連絡不要)

MMRワクチン・・・の医師が Golden Duck賞 

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お正月は勤務でお忙しい方もいらっしゃると思いますが、たいがいTVは無味乾燥、大脳皮質もパリパリに乾燥しそうな内容のモノがおおいので、読書に励みたいと思います。

サイモン・シンの『代替医療のトリック』もそのひとつ。
代替医療のトリック新潮社

ニュースを見ていたら、このサイエンスライターが関わるGood Thinking Societyが選んだGolden Duck賞は、MMRワクチンと自閉症〜という騒動に関わった医師でした。

Struck off MMR doctor handed award for 'lifetime achievement in quackery'

この団体は他にもサイエンスブログなどで表彰をしているようです。

一番影響を受けたのは、麻疹で命を落としたり、感染発症によって周囲との人間関係までたいへんなことになったりでまきこまれたご家族。

賞の意図は辛辣。かつ明快。


感染症アウトブレイク時に医療機関が問われること

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沖縄県立中部病院の後輩で、宮崎県の県議会議員となられた清山先生のサイトに「ノロウイルス集団感染について」の記事がありました。

小さなことかもしれませんが、皆で意見をいっていく大切さをあらためて思いました。
人に任せたほうが楽ですし(人のせいにできますし)、しかし事情がわからない人たちに批判だけしていても、専門家の期待するような施策が実施されるわけではないことは経験しています。


で、編集長の仕事で一番多いのが、「感染症診療の原則」の講義です。
内容は毎年バージョンアップをしていますが、その基本的な内容は変わりません。

毎回毎回、同じことの繰り返しです。

よくお分かりの人たちからしたら、何あたりまえなことを・・・かもしれませんが、そのあたりまえを理解していただくことさえ最初はとても難しく、それは専門家のあいだでもそうだったのですから、より周辺の人にも理解してもらおうとなったら、ただひたすら愚直に繰り返すしかないのが結論だとも言えます。
(いまは、多くの先生方が同じような話を各地や病院でしていただき、たいへんありがたいです)

皆が「これが大事だ」ということのインパクトは、岩田健太郎先生が「ポリフォニー」という言葉で表現されています。
専門家が沈黙していてはダメなんですね。

その講義を聞いたこともない方もブログをご覧になっているかもしれません。

何を話しているかといいますと・・・
感染症があるのかないのか(感染症っぽくみえても、違う病気のこともあります)
感染症があるとしたら、それはどこでおきているのが(臓器の特定)
その臓器を攻撃しているのはなんなのか(病原体の特定)

これがわかったら、有効な治療薬を十分な量使いましょう。

治療やうまくいっているのか(白血球やCRPだけにふりまわされない評価)

この整理をしないで雑に感染症の治療薬を使うと、無効だと副反応だけが生じて患者さんにはデメリットだけになります。
また、雑に扱うことで耐性菌の広がりなど、皆の財産である感染症治療薬の命を縮めてしまうことになります。

・・・・なので、この話をあちこちでしている、、というわけです。

しかし、臓器が特定されて、病原菌がわかって、それにちょうどよい治療薬があれば、必ず治療はうまくいくかというとそうではありません。

(裁判関連の資料を読むと、医師がその薬を使っていれば救命できたはずだ!というような論調が多くてびっくりします)

必ずしも救命しえない原因は、患者さんが「高齢である」「基礎疾患がある」といったもともとの問題があるからです。

また、高齢であるがゆえに、若い人のように熱があがって、「なんかへんですよ」とサインを出したりしませんし(平熱のまま)、認知症や疾患の後遺症などでコミュニケーションが難し、その兆候を早期にとらえられないことがあります。

対応の遅れも治療を困難にする要因です。適切な治療をしてもうまくいかないことがあります。
どんなに素敵で最新の消防車を持っていても、119番に電話がかかってくるのが全焼5分前では、その消防車は威力を発揮できない、ということです。

最終的に重症の患者さんを引き受けているのは、どのような病院か考えるとわかります。
患者さんはその病院でお亡くなりになることが多いわけですが、その前に、その患者さんを救おうといくつかの病院ががんばりました。
どうにもならなくて、最後に引き受けている病院は、重症患者さんの最後のステージで残された可能性にかけます。

その時点ではすでに耐性菌がもちこまれていることも多いわけです。

ですので、記者会見をする病院が耐性菌を広めたり患者さんに感染させたりというシンプルな構図ではないことを、メディアには理解していただきいと思います。



もちろん、医療側にも厳しい目は向けられます。

最善をつくしたのか?ということについては、情緒的な問題ではなく、具体的にいくつか基準があります。

常識、コモンセンス、標準的とその時言われている(弁護士が調べたら、そう受け取れるような)学会の指針や、国の通知などがでており、やるべきことやっていないなかで問題がおきたら、当然責任を問われることになります。

例えば、感染管理の標準的な対応の「知識」がスタッフ全員に「なかった」とします。
それは「しかたないね」とはいってもらえません。

改正医療法(平成19年4月1日)では、「医療の安全を確保するための従業者に対する研修の実施」が明記されています。

– 医療に係る安全管理のための職員研修(年2回程度)
– 院内感染対策のための研修(年2回程度)
– 医薬品の安全使用のための研修(必要に応じて)
– 医療機器の安全使用のための研修(医療機器導入時など)
– (※ これらの研修については、一体的に対応することも可)

第26回:『改正医療法で義務づけられた院内感染対策の取り組みについて』(サラヤ 2007年5月)

※詳細は一番下に記載。


大きな病院だけでなく、小さな施設も助産所であっても、この研修は必須となっています。大きな病院は院内で開催できますが、講師の調達などが難しいような小規模施設などでは、外部研修をこの代わりにしてもよいことになっています。
つまり、事務方も含めて、職員がそのような研修を2回受けているか。記録とともに実態が問われます。


よく、「国のせいだ」と言うひとがいますが、国は医療機関に対して指針を示しており、そしてまた、(いつまで続くかは定かではない)
診療報酬の感染防止対策加算も設定されました。

つまり、医療機関が努力する素地作りは様々な人の努力で勧められているわけです。
(予算根拠や評価・遵守のための仕組みなどは不十分ですが)


いまでも、年に2回研修を受けさせる必要があるとは知らなかった、という声を聞くことがあります。
また、外国でもB型肝炎のアウトブレイクの原因として問題指摘の相次いだ「血糖測定用の穿刺ホルダーの共有」Q75を避けることも、知らずにそのまま共有している施設も存在します。
(知っていて共有を続けて事故が起きた場合はどうなるでしょうか)

血糖測定の採血器具を使い回し 全国で報告が相次ぐ(糖尿病ネットワーク 2008年6月)


あと足りないのはなんでしょうか。
現場で足りないよと思うことについて、声を上げる努力はしているでしょうか。

問題がおきたときに、できない理由だけをのべると、言い訳とか開き直りとうけとられるコミュニケーション上のリスクがあることは日々の報道記事でよくわかります。

最新情報がすぐはいる、ICNやICDが機能している、専従でいるような病院と、そのようなスタッフがいなくて情報収集や手洗い教育にも困っている施設とあります。後者をサポートしているのは誰でしょうか。

年に2回の感染対策研修を受けさせに人を出すことさえ難しい施設には、e-learningの提供や出張講義などの地域連携も広がっていくことを期待しています。


【参考】
2 医療施設における院内感染の防止について
(1)病院等における院内感染対策について
病院等の管理者は、法第6条の10及び新省令第1条の11第2項第1号の規定に基づき、次に掲げる院内感染対策のための体制を確保しなければならない。ただし、新省令第1条の11第2項第1号ロの院内感染対策のための委員会の開催についての規定は、患者を入院させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所の管理者については適用
しないこととすること。
なお、次に示す院内感染対策に係る措置については、新省令第1条の11第1項に規定する医療の安全を確保するための措置と一体的に実施しても差し支えないこととすること。

? 院内感染対策のための指針 7
新省令第1条の11第2項第1号イに規定する院内感染対策のための指針は、次に掲げる事項を文書化したものであること。また、この指針は、新省令第1条の11第2項第1号ロに規定する院内感染対策のための委員会(以下「院内感染対策委員会」という。)の議を経て策定及び変更するものであることとし、当該指針は従業者へ周知徹底すること。
ただし、患者を入院させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所においては、院内感染対策委員会の議を経ることを要しないこととすること。

ア 院内感染対策に関する基本的考え方
イ 院内感染対策のための委員会(委員会を設ける場合を対象とする。)その他の当該病院等の組織に関する基本的事項
ウ 院内感染対策のための従業者に対する研修に関する基本方針
エ 感染症の発生状況の報告に関する基本方針
オ 院内感染発生時の対応に関する基本方針
カ 患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
キ その他の当該病院等における院内感染対策の推進のために必要な基本

方針
? 院内感染対策のための委員会
新省令第1条の11第2項第1号ロに規定する院内感染対策のための委員会とは、当該病院等における院内感染対策の推進のために設けるものであり、次に掲げる基準を満たす必要があること。

ア 管理及び運営に関する規程が定められていること。
イ 重要な検討内容について、院内感染発生時及び発生が疑われる際の患者への対応状況を含め、管理者へ報告すること。
ウ 院内感染が発生した場合は、速やかに発生の原因を分析し、改善策の立案及び実施並びに従業者への周知を図ること。
エ 院内感染対策委員会で立案された改善策の実施状況を必要に応じて調査し、見直しを行うこと。
オ 月1回程度開催するとともに、重大な問題が発生した場合は適宜開催すること。
カ 委員会の委員は職種横断的に構成されること。

? 従業者に対する院内感染対策のための研修
新省令第1条の11第2項第1号ハに規定する従業者に対する院内感染対策のための研修は、院内感染対策のための基本的考え方及び具体的方策について、当該研修を実施する病院等の従業者に周知徹底を行うことで、個々の従業者の院内感染に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能やチームの一員としての意識の向上等を図るものであること。

当該病院等の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるものであること。
本研修は、病院等全体に共通する院内感染に関する内容について、年 2 回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。また、研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること。ただし、研修については、患者を入所させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所については、当該病院等以外での研修を受講することでも代用できるものとし、年2回程度の受講のほか、必要に応じて受講することとすること。

? 当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策
新省令第1条の11第2項第1号ニに規定する当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策は、院内感染の発生状況を把握するため、当該病院等における感染症の発生動向の情報を共有することで、院内感染の発生の予防及びまん延の防止を図るものであること。
また、重大な院内感染等が発生し、院内のみでの対応が困難な事態が発生した場合、又は発生したことが疑われる場合には、地域の専門家等に相談が行われる体制を確保することが望ましいものであること。
さらに、「院内感染対策のための指針」に即した院内感染対策マニュアルを整備する等、その他の院内感染対策の推進のために必要な改善策を図るとともに、それらを定期的に見直すことが望ましいものであること。

(2)特定機能病院における院内感染対策について
特定機能病院における院内感染対策については、従前より医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号。以下「省令」という。)第9条の23第1項第1号イからハに規定する体制の一環として実施されてきたところであるが、今般、新省令第1条の11において安全管理のための措置に院内感染対策のための措置が含まれることが明確化されたことを踏まえ、今後も引き続き院内感染対策のための体制の充実強化に取り組んでいただきたい。
なお、省令第9条の23第1項第1号ロ及びハに規定する安全管理の体制については、新省令第1条の11における安全管理の措置と同様に、院内感染対策に関するものを含むものであり、医療の安全を確保するための体制の整備と一体的に実施しても差し支えないが、イについては引き続き専任の院内感染対策を行う者を配置するものとすること。

一生、頭が上がらない・・

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編集長は33年前の研修医時代、肝癌を患う患者さんの血液をふんだんに入れた試験管が手の中で割れ、C型肝炎に罹患しました。

当時はC型という名前さえ無くて、非A非B肝炎と言われていたのものです。

一睡も出来ない3連直明けの月曜、レジデントから「青木、オマエ、黄色いんじゃない?」と言われてTransaminaseが1500・・ビリルビンが6・・といった事態に気づきました。

早速、入院となり暫く安静という事になりましたが、残された研修医仲間が大変でした。なんと一睡も出来ない当直が2日に一回。これが15日間続いたのです。

昔の県立中部病院の激しさは今とは比べものにならないものでしたから、連中の苦労は並大抵のものではなかったでしょう。

そのような彼らと33年ぶりの仲間も含めてReunionしたのが今回の訪沖の成果でした。

彼らに助けられてここまでこれたのですから編集長も真剣に治療の事を考えねば・・と改めて思う昨今です。

(写真:右側の二人が一日おきの睡眠ゼロ当直を2週間やってくれたG先生とN先生。)

【チラシ完成】2月9日(土) 感染管理の何を改善できるのか

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チラシが完成しました。

ICDの認定(2単位)がとれるよう大曲先生にお願いして申請中です。
ICNの単位については確認中。
(よくわかりませんが薬剤師系の単位は難しいらしいです)


今回は、すでに全国的にもご高名な亀田総合病院の感染管理認定看護師の古谷先生と、病院疫学者(Hospital Epidemiologist)としてご活躍中の吉田先生(国立感染症研究所FETP9期)から、JCIの認定取得(日本初)と再認定(日本初)を通じて得た学びと、
ファシリティマネジメントにお詳しい、サクラ精機の鶴島先生にお話を伺います。

新しい病棟の新設や、古くなった施設の増改築の際に、いまどきは感染対策チームの意見を聞かないなんて暴挙はありえませんが、
時にスルーされて、「ええええええ、なぜこんな○○がここに?」とか、「なぜここに○○がない?」なんてハプニングがおきたりする話を聞いています。逆に言うと、聞かれた時に何か助言やリクエストをしなくてはなりません(大きな予算が付くタイミングでの最適を狙わなくてはなりません)。

終了後は意見交換会(メーカー関与なし、参加費制)を計画しています。

感染管理対策室や医療安全対策室、あるいは事務部門の担当の方にぜひご案内よろしくお願い申し上げます。

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