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Channel: 感染症診療の原則
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ボストン特派員報告 ハーバード大学 成人感染症コース

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青木編集長がときどき若者をつれてボストンにでかけていました。
ハーバード大学とMGHの共催での成人感染症のコースが毎年(なぜか)GW前後に開かれています。

自分の知識や情報の刷新のために参加する人が日本からもいるわけでありまして、今回は相野田ボストン特派員からの報告をいただいています。

パンフレットはこちら(PDF)

医師は995ドル。研修医、フェロー、他の医療者は650ドル。
5日間みっちりのお値段です。

certificateももらえるので、帰ったらオフィスや医局にぜひ飾ってください(^^)
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毎年4月下旬〜5月上旬にかけて、ボストンで成人感染症のレビューコースが行われます。
今回はこのコースの参加報告です。

レビューコースは、ハーバードやMGHの先生方が中心となり講義していただくもので、内容は、抗菌薬レビュー・真菌感染症・抗真菌薬・耐性菌・免疫不全感染症・髄膜炎・骨関節感染症・皮膚軟部組織感染症・肺炎・尿路感染症・HIV・結核・非結核性抗酸菌感染症・感染性心内膜炎・消化管感染症・肝炎・ヘルペス・インフルエンザなどその他ウイルス感染症・咬傷・STD・渡航者ワクチン・ズーノーシス・耳鼻咽喉科領域感染症・画像/症例検討などでした。

いずれも1〜3時間程度でお話しされ、毎日平日の朝8時から夕方5時まで(金曜日だけ午前中で終了)多少の休憩が入りながらも、ぎっしり詰まった日程で講義を受けました。

講義は、各分野の内容をザーッとすべてをレビューしていただき、疾患の概念や疫学や関連する基礎医学から診断・治療に至るまでの話や予防についてなどを、基本的なことから最近のものまでを広くカバーし、さらに適宜論文も紹介しながら進むものでした。

よかったなと思うことは・・・

1)全体を通してのポリシーがある:診断に至るまでの流れ・検査の限界・抗菌薬の適正使用・無駄や過剰な治療はしない・単なる個人の経験だけを押し付けるようなことはしない。あくまで、現在のスタンダードは何なのかに重きを置かれている。

2)一方で、ポリシーに沿った形で現場視線が組み込まれている。:ガイドラインではこうだけど、実際にはこういうことが多いよねとか、現場の状況に応じた思考過程などを紹介する。「そうそう、そうだよね」とうなずくことも多々ありました。

3)それぞれの分野で、今わかっていること/わかっていないことを明確にさせながら話を進めていくこと: 仮説段階の話での過剰な解釈は決してせず、各々でlimitationを細かく提示するという姿勢が強く出ていました。

4)とにかく全体をカバーする:やや詰め込みなところもあり、早口ダッシュで聞き取りづらい講義もありましたが、全体の大枠をつかんで一通りもれなく勉強するにはよいと思いました。どこら辺までものが言えるのか・わかっているのかなどをつかむのによかったかなと思いました。特に、自分に苦手分野があることについてより自覚的になれたような気もします。

一方、デメリットを挙げるとすると・・・

1)時差がきつい:現地で朝8時から夕方5時は、日本時間で夜9時から朝6時と同じ時間帯に当たります。行きの飛行機であまり寝ていないので、感覚としては当直明けから連続5夜勤を座学でやっているような感じでした。時差をうまく調整し、自分の意識レベルを保つことが重要です。

2)遠い:片道13時間前後かかります。

3) 高い:ボストンのホテルは1泊1〜2万円以上することがざらです。さらに円安が進んでいるのでちとつらいですね。

4)幅広くカバーする分、1つ1つに深く踏み込んでディスカッションする時間はあまりない:もしある分野を特に深く勉強しに行こうと思って行った場合、その分野はスライド数枚で終わってしまって物足りないかもしれません。各内容について今までこんな話は全く知らなかったという内容は決して多くないかもしれませんが、しかしすでに知っている知識でも、改めてブラッシュアップできたり、それぞれがつながって全体像がつかめていく感覚は楽しかったです。

5)内容はあくまで米国国内からの参加者を想定:医療制度や入院の適応等については、米国ではそうなのか・・・という感じで、かえって違う制度の勉強にもなりましたが。

海外のレビューコースに参加する不安として、やはり英語の講義が聞き取れるのかという不安はありました。自分も英語にはまったく自信がありませんでしたが、講義はすべてスライドのハンドアウトが配布され、その内容に沿ってお話が進むので思ったよりも全体の内容を吸収することができたと思います。演者のギャグによる会場の笑いには、なかなか同時進行でついていけませんでしたが、意外とわかるものだなと思いました。

過去に参加された日本人の先生方から、英語に不慣れでも意外とわかるものだよとアドバイスをいただいていたので、思い切って飛び込んでみて良かったなと思いました。

折しも、ボストンマラソンの悲劇からまだ1ケ月経たないところであったため、爆発現場の店にまだ覆いがかかっており、町全体も落ち着かないところがありました。途中、爆破事件の追悼広場で黙とうを捧げ、犠牲者のご冥福をお祈りさせていただきました。講師の先生方も、間接的な影響も含めていろいろとまだ忙しいとのことで、その中でも時間を割いて講義していただいたことに大変感謝した次第です。

ボストンの、伝統を感じることができる街並みを見ながら1週間勉強できたことは大変貴重な機会となりました。もし、今後、こう言ったレビューコースへの参加を検討される方がいらっしゃいましたら、仮に英語が苦手でも気にせずにぜひ飛び込んでくださいとおすすめしたいと思います。

余談ですが、朝食をとっていると同じテーブルに現地のDrが座られたので、ジェスチャー交じりの片言英語で会話をしました。そのDrは毎年どこかのレビューコースに参加しているとのことでした。毎年1週間のレビューコースに参加することは負担ではないのかと質問しましたが、専門医維持する労力は必要だし、そのための1週間なんて当たり前だよと言われました。職場もそれが当たり前と思って毎年1週間の出張を認めてくれているとのことでした。日本での専門医維持は、主に学会参加と、あとは発表などの単位が主であると話すと、自分の勉強はいつしているのか、自分自身の勉強に関する質の管理はどうしているのか、あるいは自分の勉強になかなか時間が割けない忙しい状況で日本の機関は専門医の質をどう担保しているのかなど質問され、答えに窮しました。

次の日にも別のDrとお話しさせていただきましたが、同じような内容でした。いろいろと考えさせられる1週間でした。

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写真もいただきました。

一緒に参加したみなさん




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