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Channel: 感染症診療の原則
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「アメパロモ」(パロモマイシン)

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パロモマイシンの話。病院の薬剤師さんとも共有を。

熱帯病とか寄生虫の治療に必要な薬は(昔はあったけど)なくなっちゃっとか、海外ではあるけど日本にはないよ、とかいろいろ不都合があるために、治療薬の研究班がそのギリギリのところをカバーしているという状況があります。

編集長がお世話になっているのは、エイズ治療薬研究班で、東京医大の福武先生のところが運営をまかされています。
研究班事業は3年ごとに見直しや組み換えが検討されますが、薬害エイズの関係もあってか、ここはずっと固定されているようです。

国が承認していない薬を使う方法はいくつかあります。
たとえば、個人レベルでは「ネット通販」で輸入した薬剤を個人の責任において使うというリスクの高い方法があります。
何かあった時の保証はないし、ほんものであるという保証もないし(偽薬も多い)、死亡したり重症になるケースは報告もあります。

日本で承認されていない抗がん剤を使うときは、医師が輸入をして、患者同意のもとに使うということはあります。
お金はかかりますが、ドラッグラグがある状況下ではいたしかたないというところでしょうか。

研究班の問題は、まず輸入の時点で医師が個人ですると、本来はその医師が使うという条件で入手するのですが、研究班の協力メンバーやそれ以外のところから「うちにもください。うちの患者さんで使いたいのです」といわれたときに、(人道的に)いいですよとあげちゃっていいのかという問題があります。

人道的な問題、法律上の問題、保険の問題(そういったことまでカバーするのか)、実際に有害事象がおきたときにどこまでカバーされるのか、などの問題が生じます。

未承認の薬をはやく認可しろ、あるいはとれていない適応を追加しろという提案は「公知申請」(こうちしんせい)で検討されて承認や適応拡大ににつながることもありますが、実際にはその作業や申請プロセスでかかる費用がかなり高額なため、製薬会社的にはあまりうれしくない案件だろうとおもいます。市場も小さいことが多いですから(売れるなら最初からしゃかりきにやっていますよね)、

学会などのプッシュを受けて製薬会社が動いたものには、最近ですとアトバクオン(GSK)がありました。
上記のエイズ治療薬研究班が配布してくれていましたが、なにせ高額。このままエイズ発症の患者さんが増えたらどうなるんだろうと心配されていましたので一安心(しかし高額な薬であることにはかわりありませんが)。

ファイザーが間もなく発売を開始する「アメパロモ」はアメーバの患者さんにパロモマイシン、ということで一度きいたら忘れない系ネーミングですが、これはもともと熱帯病治療薬研究班が扱っていました。
そこでのデータなどをもとに承認にいたったようですね。

研究班事業は3月31日で終わりますし、アメパロモの発売日まではパロモマイシンはどこに?状態になります。
ほかにもこういった薬があり、コンサルをうける感染症専門のドクターにとっての重要な知識となっています。

ファイザー 2012年12月25日 報道発表 腸管アメーバ症治療剤「アメパロモカプセル250mg」の承認取得

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