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山口県で把握された新しいダニ媒介感染症

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えー、感染症フリークなみなさん。
チャレパウイルス、ルジョウイルス、ブンディブギョエボラウイルスって知ってます?聞いたことあります?
検査室の人と食堂で一緒になったら質問してみてください。

(いやー、3番目のウイルスはきゃりーぱみゅぱみゅと同じくらい発音が難しいですね。誰ですかこんな名前つけたの)

編集長、知りません。あったかいところの感染症はあまり好きじゃないそうです。(私は遺伝子的に東北人だからな、、、、という根拠レスな説明)。

この解説は、日本語で国立感染症研究所のIASRが紹介をしています。2011年7月です。

「続々と出現する出血熱ウイルス等」IASR2011年7月号

日本では出血熱は感染症法上1類に位置づけられています。疑った時点で保健所や専門家に相談をしますし、患者背景として流行地に行っているのかという情報が重要です。(うたがった時点では検査も出来ない状況ですが〜。)


この3つのウイルスのあとに「発熱を伴う血小板減少症候群ウイルス」として、1月末に厚労省が報道発表した感染症が紹介されています。

新しい感染症とは、それまで特定の病気の原因とは認知されていなかったものが、「それが原因らしい」と疑われ、研究され、病原体がつきとめられたときに話題になります。今把握されているものよりももっとたくさんあるはずです。

病原体をつきとめるためには、その検査が確立しなくてはいけないわけです。
あれでもない、これでもない、と検討するためには、「おかしいな」と思う医師や研究者が協力をすることが必要ですし、適切な検体(血液や尿、組織など)が必要になります。

昨年の秋に山口でこの中国で流行していたダニ由来の感染症での死亡例については、よく診断(原因究明)にまでいたったなあと思ったのが最初の感想です。現場の医師や検査室、地方衛生研究所、国立感染症研究所の協力の成果だと思います。
また、騒動にしない(過剰な反応につなげない)で、情報を準備してから報道発表をした厚労省のマネジメントの良さをみました。


探すのはちょっとたいへんだったんですが。
厚生労働省トップページ→報道クリック→1月クリック→1月30日クリック、でみつけた報道発表。
1月30日頃だったなーと記憶があったのでみつかりました。

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「中国で近年報告されている新しいダニ媒介性疾患の患者が国内で確認されました」

今般、中国において2009年頃より発生が報告され、2011年に初めて原因ウイルスが特定された新しいダニ媒介性疾患「重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)」の症例(患者1名:昨秋に死亡。最近の海外渡航歴なし。)が、山口県において確認されました(別添1)。
これを受けて、厚生労働省では、本疾患に関する資料(別添2、3)を作成し、都道府県等に情報提供を行うとともに、医療機関に対して、同様の患者を診察した際は情報提供するよう、自治体を通じて協力を要請したところです(別添4)。厚生労働省では、引き続き、本疾患に関する情報収集や調査研究を実施し、適切な対応を行ってまいります。
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で、例によって報道ですが、、、
「山口でダニ媒介新感染症 詳細「言えぬ」 不安残る会見」

タイトルが はあ ですが。

「山口県は30日、記者会見を開き、ウイルスを媒介するマダニへの注意を呼びかけた。しかし「昨年秋に成人が亡くなった」以外の情報は「言えない」「分からない」と繰り返すばかりで不安の残る記者会見となった。」

毎日新聞は女性と報じていますから、会見で話があったんじゃないでしょうか。
別の産経の記事では男性となっていますが・・。

感染症の情報を調べれば、あまりまだ詳しいことが分かっていないのだとわかりますし、「分からない」というのは誠実だとおもいます。対策に不要な情報まで語ったら問題です。医療機関が遺族の意向をくむのは当然です。許可なく(法的根拠なく)口外できません。

「報道陣からは「詳しい症状など予防に必要な情報は公開してほしい」という声が相次いだが、県健康増進課の原田弘之課長は「配布資料は厚労省から提供されたもので、われわれもこれ以上のことは分からない」と説明。「マダニにかまれないよう草地に入らない。手足の露出をなくすなどの対策をしてほしい」と呼びかけるにとどめた。」

とどめたもなにも、それくらいしかないですし。
ダニ予防に必要な情報は一般的に同じですし、症状は配布資料に書かれています。
記者の不満がもりこまれたタイトルですが、記者会見は妥当な内容だと思います。

読売新聞「発表によると、女性は昨秋、熱や嘔吐などで入院したが、血小板と白血球が大幅に減少、血尿や血が混じった下痢が続き、約1週間後に死亡した。原因が判明せず、国立感染症研究所で調べた結果、女性の臓器などからウイルスの遺伝子が検出され、今月29日にSFTSと断定された。」 詳細だと思いますが。

さて。
ある病気が同時期に、同じ地域に複数発生したときに、それが「感染症かどうか」はすぐにはわかりません。
(食べ物や水の汚染かもしれませんしね)
ギセック先生の『感染症疫学』17章「ある疾病が感染症か否か、どうすればわかるのだろう」p193-203をおすすめします。

初期対応としてリスクアセスメントがあります。

ECDCによるアセスメント発表:Fever with Thrombocytopenia associated with a novel Bunyavirus in China 2011年5月

今すぐ国や地域、人々にに感染の危機をもたらすか?
迅速に、具体的に行うべき介入があるか?
渡航制限や輸入制限がいるのか?

といったことが検討されます。(そうでなければ、準備をていねいにできます)

公衆衛生上の危機!となったらIHRにもとづいて、WHOなどに一報が必要になります。
日本の窓口は厚生労働省 大臣官房厚生科学課。


で、感染症かどうかを知るためのカギのひとつ。検査について(2012年)
Early diagnosis of novel SFTS bunyavirus infection by quantitative real-time RT-PCR assay.
J Clin Virol. 2012 Jan;53(1):48-53.

感染経路について(2012年)とくにヒトヒト感染するか、は対策上とても大事な情報。
接触感染予防をします。
特定の家畜とのコンタクトがあるとか、症例に特徴があると、特定の動物由来がうたがわれるようになります。

Person-to-person transmission of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus.
Vector Borne Zoonotic Dis. 2012 Feb;12(2):156-60.


致死「率」については、分母と分子の情報が必要です。

その病原体は、曝露したらどれくらい感染するのか、感染したらどれくらいで発症するのか(潜伏期間)、
例えば、医療へのアクセス状況はどうか、等が影響します。

発症して重症化してきた人が分母になると致死率は高くでます。

地域の人の血液検査をして抗体(感染したかどうかの経歴)をみると、実際の感染の規模や影響がわかります。

つまり、300人感染して、発症は30人で、重症化してはこばれてきたのが10人で死亡が5人とみるのと、重症化を分母にして致死率50%とみるのでは異なります。

Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus, Shandong Province, China
EID Volume 18, Number 6―June 2012

この論文では、健康な住民237人を調査したところ、2名が感染しており(0.8%)ヤギ134頭を調べたところ111頭(83%)が感染していたとのことです。

臨床医が知りたいのは、症例の臨床経過ですね。

Clinical progress and risk factors for death in severe fever with thrombocytopenia syndrome patients.
J Infect Dis. 2012 Oct 1;206(7):1095-102.

厚労省の資料:血小板減少(10 万/mm3 未満)、白血球減少、血清電解質異常(低 Na 血症、 低 Ca 血症)、血清酵素異常(AST、ALT、LDH、CK 上昇)、尿検査異常(タ ンパク尿、血尿)

検査は国立感染症研究所ウイルス第一部に依頼することになります。医師→保健所/地方衛生研究所経由で連絡するのが通常。


発症する人としない人の差はなんでしょう?また、重症化する人としない人の差は?

Host cytokine storm is associated with disease severity of severe fever with thrombocytopenia syndrome.
J Infect Dis. 2012 Oct 1;206(7):1085-94.


日本で再び同じような症例がでるか?ですが、、、感染源だろうといわれているダニが国内にどれくらいいて、ウイルスをどれくらい媒介しているのか、間にはいるかもしれない動物がどのような状況なのかわかっていませんし、わからなくても、ダニにかまれないにこしたことはないので、皮膚を露出しない服装とか準備が大事ですね。

うたがったら報告してくださいというのが30日の厚労省からのお願い通知でした。

ところで・・・・新興再興感染症については各国が危機管理をしていますが、米国はその豊富な予算と人材を国外にも配置しています。中国は上海にCDCのセンターがありますし、その前から人材派遣として中国語を理解するスタッフが入っていました。
アフリカも、国立のラボと連携というかたちでCDCの存在感は大きいです。
その国の感染症対策の支援というスタイルでありますが、病原体や検体の確保、迅速な解析などに大きく貢献しています。
Special Pathogens Branch








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