沖縄県立中部病院の後輩で、宮崎県の県議会議員となられた清山先生のサイトに「ノロウイルス集団感染について」の記事がありました。
小さなことかもしれませんが、皆で意見をいっていく大切さをあらためて思いました。
人に任せたほうが楽ですし(人のせいにできますし)、しかし事情がわからない人たちに批判だけしていても、専門家の期待するような施策が実施されるわけではないことは経験しています。
で、編集長の仕事で一番多いのが、「感染症診療の原則」の講義です。
内容は毎年バージョンアップをしていますが、その基本的な内容は変わりません。
毎回毎回、同じことの繰り返しです。
よくお分かりの人たちからしたら、何あたりまえなことを・・・かもしれませんが、そのあたりまえを理解していただくことさえ最初はとても難しく、それは専門家のあいだでもそうだったのですから、より周辺の人にも理解してもらおうとなったら、ただひたすら愚直に繰り返すしかないのが結論だとも言えます。
(いまは、多くの先生方が同じような話を各地や病院でしていただき、たいへんありがたいです)
皆が「これが大事だ」ということのインパクトは、岩田健太郎先生が「ポリフォニー」という言葉で表現されています。
専門家が沈黙していてはダメなんですね。
その講義を聞いたこともない方もブログをご覧になっているかもしれません。
何を話しているかといいますと・・・
感染症があるのかないのか(感染症っぽくみえても、違う病気のこともあります)
感染症があるとしたら、それはどこでおきているのが(臓器の特定)
その臓器を攻撃しているのはなんなのか(病原体の特定)
これがわかったら、有効な治療薬を十分な量使いましょう。
治療やうまくいっているのか(白血球やCRPだけにふりまわされない評価)
この整理をしないで雑に感染症の治療薬を使うと、無効だと副反応だけが生じて患者さんにはデメリットだけになります。
また、雑に扱うことで耐性菌の広がりなど、皆の財産である感染症治療薬の命を縮めてしまうことになります。
・・・・なので、この話をあちこちでしている、、というわけです。
しかし、臓器が特定されて、病原菌がわかって、それにちょうどよい治療薬があれば、必ず治療はうまくいくかというとそうではありません。
(裁判関連の資料を読むと、医師がその薬を使っていれば救命できたはずだ!というような論調が多くてびっくりします)
必ずしも救命しえない原因は、患者さんが「高齢である」「基礎疾患がある」といったもともとの問題があるからです。
また、高齢であるがゆえに、若い人のように熱があがって、「なんかへんですよ」とサインを出したりしませんし(平熱のまま)、認知症や疾患の後遺症などでコミュニケーションが難し、その兆候を早期にとらえられないことがあります。
対応の遅れも治療を困難にする要因です。適切な治療をしてもうまくいかないことがあります。
どんなに素敵で最新の消防車を持っていても、119番に電話がかかってくるのが全焼5分前では、その消防車は威力を発揮できない、ということです。
最終的に重症の患者さんを引き受けているのは、どのような病院か考えるとわかります。
患者さんはその病院でお亡くなりになることが多いわけですが、その前に、その患者さんを救おうといくつかの病院ががんばりました。
どうにもならなくて、最後に引き受けている病院は、重症患者さんの最後のステージで残された可能性にかけます。
その時点ではすでに耐性菌がもちこまれていることも多いわけです。
ですので、記者会見をする病院が耐性菌を広めたり患者さんに感染させたりというシンプルな構図ではないことを、メディアには理解していただきいと思います。
もちろん、医療側にも厳しい目は向けられます。
最善をつくしたのか?ということについては、情緒的な問題ではなく、具体的にいくつか基準があります。
常識、コモンセンス、標準的とその時言われている(弁護士が調べたら、そう受け取れるような)学会の指針や、国の通知などがでており、やるべきことやっていないなかで問題がおきたら、当然責任を問われることになります。
例えば、感染管理の標準的な対応の「知識」がスタッフ全員に「なかった」とします。
それは「しかたないね」とはいってもらえません。
改正医療法(平成19年4月1日)では、「医療の安全を確保するための従業者に対する研修の実施」が明記されています。
– 医療に係る安全管理のための職員研修(年2回程度)
– 院内感染対策のための研修(年2回程度)
– 医薬品の安全使用のための研修(必要に応じて)
– 医療機器の安全使用のための研修(医療機器導入時など)
– (※ これらの研修については、一体的に対応することも可)
第26回:『改正医療法で義務づけられた院内感染対策の取り組みについて』(サラヤ 2007年5月)
※詳細は一番下に記載。
大きな病院だけでなく、小さな施設も助産所であっても、この研修は必須となっています。大きな病院は院内で開催できますが、講師の調達などが難しいような小規模施設などでは、外部研修をこの代わりにしてもよいことになっています。
つまり、事務方も含めて、職員がそのような研修を2回受けているか。記録とともに実態が問われます。
よく、「国のせいだ」と言うひとがいますが、国は医療機関に対して指針を示しており、そしてまた、(いつまで続くかは定かではない)
診療報酬の感染防止対策加算も設定されました。
つまり、医療機関が努力する素地作りは様々な人の努力で勧められているわけです。
(予算根拠や評価・遵守のための仕組みなどは不十分ですが)
いまでも、年に2回研修を受けさせる必要があるとは知らなかった、という声を聞くことがあります。
また、外国でもB型肝炎のアウトブレイクの原因として問題指摘の相次いだ「血糖測定用の穿刺ホルダーの共有」Q75を避けることも、知らずにそのまま共有している施設も存在します。
(知っていて共有を続けて事故が起きた場合はどうなるでしょうか)
血糖測定の採血器具を使い回し 全国で報告が相次ぐ(糖尿病ネットワーク 2008年6月)
あと足りないのはなんでしょうか。
現場で足りないよと思うことについて、声を上げる努力はしているでしょうか。
問題がおきたときに、できない理由だけをのべると、言い訳とか開き直りとうけとられるコミュニケーション上のリスクがあることは日々の報道記事でよくわかります。
最新情報がすぐはいる、ICNやICDが機能している、専従でいるような病院と、そのようなスタッフがいなくて情報収集や手洗い教育にも困っている施設とあります。後者をサポートしているのは誰でしょうか。
年に2回の感染対策研修を受けさせに人を出すことさえ難しい施設には、e-learningの提供や出張講義などの地域連携も広がっていくことを期待しています。
【参考】
2 医療施設における院内感染の防止について
(1)病院等における院内感染対策について
病院等の管理者は、法第6条の10及び新省令第1条の11第2項第1号の規定に基づき、次に掲げる院内感染対策のための体制を確保しなければならない。ただし、新省令第1条の11第2項第1号ロの院内感染対策のための委員会の開催についての規定は、患者を入院させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所の管理者については適用
しないこととすること。
なお、次に示す院内感染対策に係る措置については、新省令第1条の11第1項に規定する医療の安全を確保するための措置と一体的に実施しても差し支えないこととすること。
? 院内感染対策のための指針 7
新省令第1条の11第2項第1号イに規定する院内感染対策のための指針は、次に掲げる事項を文書化したものであること。また、この指針は、新省令第1条の11第2項第1号ロに規定する院内感染対策のための委員会(以下「院内感染対策委員会」という。)の議を経て策定及び変更するものであることとし、当該指針は従業者へ周知徹底すること。
ただし、患者を入院させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所においては、院内感染対策委員会の議を経ることを要しないこととすること。
ア 院内感染対策に関する基本的考え方
イ 院内感染対策のための委員会(委員会を設ける場合を対象とする。)その他の当該病院等の組織に関する基本的事項
ウ 院内感染対策のための従業者に対する研修に関する基本方針
エ 感染症の発生状況の報告に関する基本方針
オ 院内感染発生時の対応に関する基本方針
カ 患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
キ その他の当該病院等における院内感染対策の推進のために必要な基本
方針
? 院内感染対策のための委員会
新省令第1条の11第2項第1号ロに規定する院内感染対策のための委員会とは、当該病院等における院内感染対策の推進のために設けるものであり、次に掲げる基準を満たす必要があること。
ア 管理及び運営に関する規程が定められていること。
イ 重要な検討内容について、院内感染発生時及び発生が疑われる際の患者への対応状況を含め、管理者へ報告すること。
ウ 院内感染が発生した場合は、速やかに発生の原因を分析し、改善策の立案及び実施並びに従業者への周知を図ること。
エ 院内感染対策委員会で立案された改善策の実施状況を必要に応じて調査し、見直しを行うこと。
オ 月1回程度開催するとともに、重大な問題が発生した場合は適宜開催すること。
カ 委員会の委員は職種横断的に構成されること。
? 従業者に対する院内感染対策のための研修
新省令第1条の11第2項第1号ハに規定する従業者に対する院内感染対策のための研修は、院内感染対策のための基本的考え方及び具体的方策について、当該研修を実施する病院等の従業者に周知徹底を行うことで、個々の従業者の院内感染に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能やチームの一員としての意識の向上等を図るものであること。
当該病院等の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるものであること。
本研修は、病院等全体に共通する院内感染に関する内容について、年 2 回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。また、研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること。ただし、研修については、患者を入所させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所については、当該病院等以外での研修を受講することでも代用できるものとし、年2回程度の受講のほか、必要に応じて受講することとすること。
? 当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策
新省令第1条の11第2項第1号ニに規定する当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策は、院内感染の発生状況を把握するため、当該病院等における感染症の発生動向の情報を共有することで、院内感染の発生の予防及びまん延の防止を図るものであること。
また、重大な院内感染等が発生し、院内のみでの対応が困難な事態が発生した場合、又は発生したことが疑われる場合には、地域の専門家等に相談が行われる体制を確保することが望ましいものであること。
さらに、「院内感染対策のための指針」に即した院内感染対策マニュアルを整備する等、その他の院内感染対策の推進のために必要な改善策を図るとともに、それらを定期的に見直すことが望ましいものであること。
(2)特定機能病院における院内感染対策について
特定機能病院における院内感染対策については、従前より医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号。以下「省令」という。)第9条の23第1項第1号イからハに規定する体制の一環として実施されてきたところであるが、今般、新省令第1条の11において安全管理のための措置に院内感染対策のための措置が含まれることが明確化されたことを踏まえ、今後も引き続き院内感染対策のための体制の充実強化に取り組んでいただきたい。
なお、省令第9条の23第1項第1号ロ及びハに規定する安全管理の体制については、新省令第1条の11における安全管理の措置と同様に、院内感染対策に関するものを含むものであり、医療の安全を確保するための体制の整備と一体的に実施しても差し支えないが、イについては引き続き専任の院内感染対策を行う者を配置するものとすること。
小さなことかもしれませんが、皆で意見をいっていく大切さをあらためて思いました。
人に任せたほうが楽ですし(人のせいにできますし)、しかし事情がわからない人たちに批判だけしていても、専門家の期待するような施策が実施されるわけではないことは経験しています。
で、編集長の仕事で一番多いのが、「感染症診療の原則」の講義です。
内容は毎年バージョンアップをしていますが、その基本的な内容は変わりません。
毎回毎回、同じことの繰り返しです。
よくお分かりの人たちからしたら、何あたりまえなことを・・・かもしれませんが、そのあたりまえを理解していただくことさえ最初はとても難しく、それは専門家のあいだでもそうだったのですから、より周辺の人にも理解してもらおうとなったら、ただひたすら愚直に繰り返すしかないのが結論だとも言えます。
(いまは、多くの先生方が同じような話を各地や病院でしていただき、たいへんありがたいです)
皆が「これが大事だ」ということのインパクトは、岩田健太郎先生が「ポリフォニー」という言葉で表現されています。
専門家が沈黙していてはダメなんですね。
その講義を聞いたこともない方もブログをご覧になっているかもしれません。
何を話しているかといいますと・・・
感染症があるのかないのか(感染症っぽくみえても、違う病気のこともあります)
感染症があるとしたら、それはどこでおきているのが(臓器の特定)
その臓器を攻撃しているのはなんなのか(病原体の特定)
これがわかったら、有効な治療薬を十分な量使いましょう。
治療やうまくいっているのか(白血球やCRPだけにふりまわされない評価)
この整理をしないで雑に感染症の治療薬を使うと、無効だと副反応だけが生じて患者さんにはデメリットだけになります。
また、雑に扱うことで耐性菌の広がりなど、皆の財産である感染症治療薬の命を縮めてしまうことになります。
・・・・なので、この話をあちこちでしている、、というわけです。
しかし、臓器が特定されて、病原菌がわかって、それにちょうどよい治療薬があれば、必ず治療はうまくいくかというとそうではありません。
(裁判関連の資料を読むと、医師がその薬を使っていれば救命できたはずだ!というような論調が多くてびっくりします)
必ずしも救命しえない原因は、患者さんが「高齢である」「基礎疾患がある」といったもともとの問題があるからです。
また、高齢であるがゆえに、若い人のように熱があがって、「なんかへんですよ」とサインを出したりしませんし(平熱のまま)、認知症や疾患の後遺症などでコミュニケーションが難し、その兆候を早期にとらえられないことがあります。
対応の遅れも治療を困難にする要因です。適切な治療をしてもうまくいかないことがあります。
どんなに素敵で最新の消防車を持っていても、119番に電話がかかってくるのが全焼5分前では、その消防車は威力を発揮できない、ということです。
最終的に重症の患者さんを引き受けているのは、どのような病院か考えるとわかります。
患者さんはその病院でお亡くなりになることが多いわけですが、その前に、その患者さんを救おうといくつかの病院ががんばりました。
どうにもならなくて、最後に引き受けている病院は、重症患者さんの最後のステージで残された可能性にかけます。
その時点ではすでに耐性菌がもちこまれていることも多いわけです。
ですので、記者会見をする病院が耐性菌を広めたり患者さんに感染させたりというシンプルな構図ではないことを、メディアには理解していただきいと思います。
もちろん、医療側にも厳しい目は向けられます。
最善をつくしたのか?ということについては、情緒的な問題ではなく、具体的にいくつか基準があります。
常識、コモンセンス、標準的とその時言われている(弁護士が調べたら、そう受け取れるような)学会の指針や、国の通知などがでており、やるべきことやっていないなかで問題がおきたら、当然責任を問われることになります。
例えば、感染管理の標準的な対応の「知識」がスタッフ全員に「なかった」とします。
それは「しかたないね」とはいってもらえません。
改正医療法(平成19年4月1日)では、「医療の安全を確保するための従業者に対する研修の実施」が明記されています。
– 医療に係る安全管理のための職員研修(年2回程度)
– 院内感染対策のための研修(年2回程度)
– 医薬品の安全使用のための研修(必要に応じて)
– 医療機器の安全使用のための研修(医療機器導入時など)
– (※ これらの研修については、一体的に対応することも可)
第26回:『改正医療法で義務づけられた院内感染対策の取り組みについて』(サラヤ 2007年5月)
※詳細は一番下に記載。
大きな病院だけでなく、小さな施設も助産所であっても、この研修は必須となっています。大きな病院は院内で開催できますが、講師の調達などが難しいような小規模施設などでは、外部研修をこの代わりにしてもよいことになっています。
つまり、事務方も含めて、職員がそのような研修を2回受けているか。記録とともに実態が問われます。
よく、「国のせいだ」と言うひとがいますが、国は医療機関に対して指針を示しており、そしてまた、(いつまで続くかは定かではない)
診療報酬の感染防止対策加算も設定されました。
つまり、医療機関が努力する素地作りは様々な人の努力で勧められているわけです。
(予算根拠や評価・遵守のための仕組みなどは不十分ですが)
いまでも、年に2回研修を受けさせる必要があるとは知らなかった、という声を聞くことがあります。
また、外国でもB型肝炎のアウトブレイクの原因として問題指摘の相次いだ「血糖測定用の穿刺ホルダーの共有」Q75を避けることも、知らずにそのまま共有している施設も存在します。
(知っていて共有を続けて事故が起きた場合はどうなるでしょうか)
血糖測定の採血器具を使い回し 全国で報告が相次ぐ(糖尿病ネットワーク 2008年6月)
あと足りないのはなんでしょうか。
現場で足りないよと思うことについて、声を上げる努力はしているでしょうか。
問題がおきたときに、できない理由だけをのべると、言い訳とか開き直りとうけとられるコミュニケーション上のリスクがあることは日々の報道記事でよくわかります。
最新情報がすぐはいる、ICNやICDが機能している、専従でいるような病院と、そのようなスタッフがいなくて情報収集や手洗い教育にも困っている施設とあります。後者をサポートしているのは誰でしょうか。
年に2回の感染対策研修を受けさせに人を出すことさえ難しい施設には、e-learningの提供や出張講義などの地域連携も広がっていくことを期待しています。
【参考】
2 医療施設における院内感染の防止について
(1)病院等における院内感染対策について
病院等の管理者は、法第6条の10及び新省令第1条の11第2項第1号の規定に基づき、次に掲げる院内感染対策のための体制を確保しなければならない。ただし、新省令第1条の11第2項第1号ロの院内感染対策のための委員会の開催についての規定は、患者を入院させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所の管理者については適用
しないこととすること。
なお、次に示す院内感染対策に係る措置については、新省令第1条の11第1項に規定する医療の安全を確保するための措置と一体的に実施しても差し支えないこととすること。
? 院内感染対策のための指針 7
新省令第1条の11第2項第1号イに規定する院内感染対策のための指針は、次に掲げる事項を文書化したものであること。また、この指針は、新省令第1条の11第2項第1号ロに規定する院内感染対策のための委員会(以下「院内感染対策委員会」という。)の議を経て策定及び変更するものであることとし、当該指針は従業者へ周知徹底すること。
ただし、患者を入院させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所においては、院内感染対策委員会の議を経ることを要しないこととすること。
ア 院内感染対策に関する基本的考え方
イ 院内感染対策のための委員会(委員会を設ける場合を対象とする。)その他の当該病院等の組織に関する基本的事項
ウ 院内感染対策のための従業者に対する研修に関する基本方針
エ 感染症の発生状況の報告に関する基本方針
オ 院内感染発生時の対応に関する基本方針
カ 患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本方針
キ その他の当該病院等における院内感染対策の推進のために必要な基本
方針
? 院内感染対策のための委員会
新省令第1条の11第2項第1号ロに規定する院内感染対策のための委員会とは、当該病院等における院内感染対策の推進のために設けるものであり、次に掲げる基準を満たす必要があること。
ア 管理及び運営に関する規程が定められていること。
イ 重要な検討内容について、院内感染発生時及び発生が疑われる際の患者への対応状況を含め、管理者へ報告すること。
ウ 院内感染が発生した場合は、速やかに発生の原因を分析し、改善策の立案及び実施並びに従業者への周知を図ること。
エ 院内感染対策委員会で立案された改善策の実施状況を必要に応じて調査し、見直しを行うこと。
オ 月1回程度開催するとともに、重大な問題が発生した場合は適宜開催すること。
カ 委員会の委員は職種横断的に構成されること。
? 従業者に対する院内感染対策のための研修
新省令第1条の11第2項第1号ハに規定する従業者に対する院内感染対策のための研修は、院内感染対策のための基本的考え方及び具体的方策について、当該研修を実施する病院等の従業者に周知徹底を行うことで、個々の従業者の院内感染に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能やチームの一員としての意識の向上等を図るものであること。
当該病院等の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるものであること。
本研修は、病院等全体に共通する院内感染に関する内容について、年 2 回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。また、研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録すること。ただし、研修については、患者を入所させるための施設を有しない診療所及び妊婦等を入所させるための施設を有しない助産所については、当該病院等以外での研修を受講することでも代用できるものとし、年2回程度の受講のほか、必要に応じて受講することとすること。
? 当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策
新省令第1条の11第2項第1号ニに規定する当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策は、院内感染の発生状況を把握するため、当該病院等における感染症の発生動向の情報を共有することで、院内感染の発生の予防及びまん延の防止を図るものであること。
また、重大な院内感染等が発生し、院内のみでの対応が困難な事態が発生した場合、又は発生したことが疑われる場合には、地域の専門家等に相談が行われる体制を確保することが望ましいものであること。
さらに、「院内感染対策のための指針」に即した院内感染対策マニュアルを整備する等、その他の院内感染対策の推進のために必要な改善策を図るとともに、それらを定期的に見直すことが望ましいものであること。
(2)特定機能病院における院内感染対策について
特定機能病院における院内感染対策については、従前より医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号。以下「省令」という。)第9条の23第1項第1号イからハに規定する体制の一環として実施されてきたところであるが、今般、新省令第1条の11において安全管理のための措置に院内感染対策のための措置が含まれることが明確化されたことを踏まえ、今後も引き続き院内感染対策のための体制の充実強化に取り組んでいただきたい。
なお、省令第9条の23第1項第1号ロ及びハに規定する安全管理の体制については、新省令第1条の11における安全管理の措置と同様に、院内感染対策に関するものを含むものであり、医療の安全を確保するための体制の整備と一体的に実施しても差し支えないが、イについては引き続き専任の院内感染対策を行う者を配置するものとすること。