「インフルエンザ」「かぜ」　と　その周辺

そのあとに何か特別な介入（治療など）をそもそも計画しないなら、原則として検査は不要なので、インフルエンザになったとしても抗インフルエンザ薬は不要という人に検査は不要ということになります（というか、そういう人は受診もしないでしょう。受診すると待合室で別の感染症をもらったり、他の人にインフルエンザを移すリスクもあります）。

もちろん、インフルエンザの大流行期には検査をしなくても医師の見立てだけでインフルエンザと考えるだけの「検査前確率」は高いわけでありますが。

ということで、国によっては迅速検査キットなどじぇんじぇん使われていなかったりするのですが、日本では薬は不要という方も「Ａですか？Ｂですか？」と知りたがったりする不思議な風景も診察室内にはあります。

最新のＭＭＷＲには、米国で使われている11種類の迅速検査キットの評価が掲載されていました。検査キットにちょっとうるさいよ、という方は是非お読みください。

Evaluation of 11 Commercially Available Rapid Influenza Diagnostic Tests ― United States, 2011–2012
MMWR November 2, 2012 / 61(43);873-876


「検査」は100％確実ということはなく、他のことと併せて検討するわけですが、インフルエンザの場合は特にタイミングなども影響します。また、流行しているウイルスの株でちがうのか？という視点も面白いです。
別のウイルスでも反応しないのか？

（感度と特異度の話などは学部生のうちに学んでおきたいですね）

ところで、インフルエンザは「かぜ症候群」の原因ウイルスのひとつで、最近は日本でも（東南アジアのように）夏にも流行していますけれども基本的に北半球では11-2月の間に流行をします。

同じ時期に他の「かぜ症候群」の原因となるウイルスはたくさんあるわけですが、たくさんの人の健康や命にかかわる頻度の高いインフルエンザはワクチンが開発されています。

でも誤解も多いです。今ある注射式には限界もあるのですが（別記事で書いたので詳細省略）

「ワクチンうったのに翌日からなっちゃったよ。きかないじゃん」という方は、接種から2-3週間必要なことをご存じありません。

「ちきしょー、ワクチンうったのにインフルエンザになっちまったよ！」と言っている人は、別のウイルス感染だったかもしれません。

「ワクチンの成分でインフルエンザになっちゃったよ。免疫低下だな。」と言っている人は、日本の注射式のインフルエンザワクチンは不活化であることをご存じないようですし、

「インフルエンザワクチンを接種したら翌日から下痢がとまらない。放射能の影響かもしれない」と不安になっている方は、同じ時期に流行るノロウイルスのことも思い出していただきたい、、、などとインフルエンザの話題はつきません。


では、同時期にどんなウイルスが流行っているか？ですが、こういったことを広角レンズで見ているのは公衆衛生部門。
皆さんの地域の地方衛生研究所の方々がこのような仕事をしてくださっています。検体の提供や、検査の質問その他で日頃からやりとりをすることをおすすめします。（勉強会やカンファレンスにお招きするのも手。地域のbig pictureが見えますよ）

「インフルエンザ流行期におけるアデノウイルスの分離状況−三重県」

まあ、インフルエンザならば大方の方は休養で治ります（休養しないで悪化させたり周囲にウイルスを拡散するのは問題。皆勤賞とという概念は捨てましょう。つらいのにがんばっているのも美徳ではありません）

臨床で問題になるのは、一見かぜだろう、、、、げ、ちがったの！の症例であります。

まず、現場ではどのあたりが問題になるのか、、をこちらの本で学び、
帰してはいけない外来患者医学書院

このシーズン考えなくちゃ、なわけなので山本先生のＤＶＤで「かぜ」を軸に深めます。
座学で対面と同じようにとはいきかないかもしれませんが、全体像を学ぶ際には本よりも視覚聴覚を使って学べるＤＶＤ教材はたいへんありがたいです。

“かぜ”と“かぜ”のように見える重症疾患 (ケアネットDVD)山本 舜悟ケアネット


最近発刊された岸田先生の風邪の本も好評です。

誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 重篤な疾患を見極める!岸田 直樹医学書院

それぞれの先生方の語り方や、アプローチの違い・共通点なども考えながら読んでいくとさらに興味をもてるのではないかと思います（^^）。