続報は、再びNHKの記事から。昨夜のもの。
「予防接種で死亡 冷静対応呼びかけ」10月19日 20時45分
"岐阜県美濃市で、日本脳炎の予防接種を受けた子どもがその後死亡した問題で、岐阜県内では、予防接種を一時的に見合わせる動きが出ていますが、各地の医療機関では保護者に冷静に対応するよう呼びかけています。"
"警察は19日午後、男の子の遺体を詳しく調べましたが、死因の特定には至らず、引き続き死因の特定を進めることにしています。警察によりますと、男の子の体にはアレルギー反応による腫れなど明らかな異常はなかったということで、引き続き、血液などの検査を行って死因を調べることにしています。
今のところ、予防接種の手順やワクチンの量に問題はなく、警察は子どもが服用していた薬の種類や量などについて保護者から話しを聞いて、予防接種との関連を調べるということです。"
死亡の原因が何かを検討できる人はごくかぎられています。
個人情報にアクセスできる直接関わった人や、解剖等の検証結果に関われる人です。
現時点では2次情報であるメディア情報をもとに、詳しくない人含めた推測情報の方が量的には多い。
ですが、
1)医師以外の人がテレビやネットレベルの情報を元に臨床推論をしても、何かに役立つほどの情報の質か不明
2)医療者でも、ワクチン接種に全く関わった事がない人たちと、日々たくさんのワクチン接種をしている医療者ではもっている情報や経験知が違うので、評論家的なコメントと、プロフェッショナルのコメントの「差」が生じうる
さらに起きている問題として、
3)ワクチンそのものの話(一般論)と、個別性(個体差がある、基礎疾患や服薬等の状況が異なる)の話を混同している人がいる(非専門家)
4)事件報道化しようとしているメディアがある(産婦人科の事例、多剤耐性菌での事例同様)
5)なぜか警察関与が先行している(と、報道されている)
6)個人が特定されかねない情報まで公開されている(医療機関名や医師名の報道や、クリニックの写真は不要です)
一番の問題は、独立した専門機関が平時からのリスクコミュニケーション含めて対応のマネージができてないことではないかとおもいます。報道で、「実は厚労省は7月にも死亡例を知っていたらしい」とか、「厚労がメーカーに調査を要請」といった記事が五月雨式に出てくると、そもそも予防接種制度でケアされるべき「信頼」がゆらぎます。
都合が悪い事は隠しているんじゃないか、ふだんから品質管理をチェックしていないんじゃないか、といった憶測につながります。この反ワクチンの確証バイアスとか論理飛躍といった認知の歪みが加わると、「人が死ぬようなワクチンは要らない」とか、疫学とか感染症の事じたいを知らない人からは「日本脳炎はもう日本では流行していないからワクチンは要らないのだ」といった情報になる可能性があります。(流行予測事業の毎年のデータをみるかぎり、日本で接種をやめてみるという選択肢は現実的なのかどうか、は別の高度にテクニカルな検討事項)
「専門家」の定義は難しいですが、国の審議会や検討会に並んでいる人たちと、現場で日々ワクチン接種をしている人たちでは持っている情報や状況が異なります(その詳しい人が委員ということはあるとおもいますが)。
開業医の先生のコメントはとても参考になりました。 トントン先生 ワクチン広場
医療機関には、もともと緊急対応の準備があります。(緊急時に使う薬剤も学びますし、基本対応も訓練されています)。
医療者じゃない、こういった場面に遭遇したことがない「詳しくない人たち」にとっては、緊急対応を適切にしたのに死亡することがあるのか?という疑問もあると思いますが(医療機関に落ち度があったんじゃ?という推測は常にあります)可能性はいろいろあるわけです。網羅的な情報はemergency関連の成書参照。
そこを踏まえないで警察介入報道だけ注目すると今後もミスリードにつながるように思います。
事例によっては他の因子(外傷など)があったり、超高齢者だったり、いろいろな条件が加わってきます。
一つとして同じ状況はないので一般化はむずかしいですが、
例えば、緊急時に使う薬と、そもそも、禁忌となっている薬を使用している場合などもその一例。
救急カートの薬剤の相談などでも話題になります。
今後ワクチンに関わる医療者は増えて行くと思いますので、研修の中でこういった情報の共有も大切とおもいます。
ボスミン(R)添付文書
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1.次の薬剤を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
(1)ブチロフェノン系・フェノチアジン系等の抗精神病薬、α遮断薬
(2)イソプロテレノール等のカテコールアミン製剤、アドレナリン作動薬(ただし、蘇生等の緊急時はこの限りでない。)
2.狭隅角や前房が浅いなど眼圧上昇の素因のある患者(点眼・結膜下注射使用時)[閉塞隅角緑内障患者の発作を誘発することがある。]
話が予防接種からそれますが、、、せっかくなので関連の緊急対応の話も。
アレルギー反応の場合、抗菌薬や造影剤などの薬剤では使用してからでないとわからないことが多いですが、もともとアレルギーの多い「食べ物」関連ではどうか。千葉県のHPに参考になる情報がありました。
食物アレルギーによる致死的アレルギー・死亡について(平成22年7月)
日本でも昨年エピペンが薬価収載となりました。
第 3 編 学校の管理下における食物アレルギーへの対応
アポネットR研究会 「エピペンとAED、どこまで設置が必要か」は大変参考になりました。
学校保健が紹介する毎日新聞の記事「エピペン:普及に弾み アナフィラキシー緊急治療薬、保険適用_
エピペン(R)の添付文書
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】 次の薬剤を投与中の患者
1.ハロタン等のハロゲン含有吸入麻酔薬
2.ブチロフェノン系・フェノチアジン系等の抗精神 病薬、α遮断薬
エピペンを携帯するような人口がどれくらい国内にいるのかというデータがあります。併用禁忌となる薬をどれくらいの人が服用しているのかはわかりませんが、現場では個別に確認するしかありません。
どんな稀な事象も起こるリスクはゼロではないですが、基礎疾患や服用している薬の情報等は重要ですね。
自分の事を伝えられない年齢の場合は特に問診票は丁寧に読み、書き漏れがないか保護者に確認。
思春期になったら、既往やアレルギー、ワクチン接種歴が自分でいえるように伝え、記録も二重に保管(当事者と親)。
「予防接種で死亡 冷静対応呼びかけ」10月19日 20時45分
"岐阜県美濃市で、日本脳炎の予防接種を受けた子どもがその後死亡した問題で、岐阜県内では、予防接種を一時的に見合わせる動きが出ていますが、各地の医療機関では保護者に冷静に対応するよう呼びかけています。"
"警察は19日午後、男の子の遺体を詳しく調べましたが、死因の特定には至らず、引き続き死因の特定を進めることにしています。警察によりますと、男の子の体にはアレルギー反応による腫れなど明らかな異常はなかったということで、引き続き、血液などの検査を行って死因を調べることにしています。
今のところ、予防接種の手順やワクチンの量に問題はなく、警察は子どもが服用していた薬の種類や量などについて保護者から話しを聞いて、予防接種との関連を調べるということです。"
死亡の原因が何かを検討できる人はごくかぎられています。
個人情報にアクセスできる直接関わった人や、解剖等の検証結果に関われる人です。
現時点では2次情報であるメディア情報をもとに、詳しくない人含めた推測情報の方が量的には多い。
ですが、
1)医師以外の人がテレビやネットレベルの情報を元に臨床推論をしても、何かに役立つほどの情報の質か不明
2)医療者でも、ワクチン接種に全く関わった事がない人たちと、日々たくさんのワクチン接種をしている医療者ではもっている情報や経験知が違うので、評論家的なコメントと、プロフェッショナルのコメントの「差」が生じうる
さらに起きている問題として、
3)ワクチンそのものの話(一般論)と、個別性(個体差がある、基礎疾患や服薬等の状況が異なる)の話を混同している人がいる(非専門家)
4)事件報道化しようとしているメディアがある(産婦人科の事例、多剤耐性菌での事例同様)
5)なぜか警察関与が先行している(と、報道されている)
6)個人が特定されかねない情報まで公開されている(医療機関名や医師名の報道や、クリニックの写真は不要です)
一番の問題は、独立した専門機関が平時からのリスクコミュニケーション含めて対応のマネージができてないことではないかとおもいます。報道で、「実は厚労省は7月にも死亡例を知っていたらしい」とか、「厚労がメーカーに調査を要請」といった記事が五月雨式に出てくると、そもそも予防接種制度でケアされるべき「信頼」がゆらぎます。
都合が悪い事は隠しているんじゃないか、ふだんから品質管理をチェックしていないんじゃないか、といった憶測につながります。この反ワクチンの確証バイアスとか論理飛躍といった認知の歪みが加わると、「人が死ぬようなワクチンは要らない」とか、疫学とか感染症の事じたいを知らない人からは「日本脳炎はもう日本では流行していないからワクチンは要らないのだ」といった情報になる可能性があります。(流行予測事業の毎年のデータをみるかぎり、日本で接種をやめてみるという選択肢は現実的なのかどうか、は別の高度にテクニカルな検討事項)
「専門家」の定義は難しいですが、国の審議会や検討会に並んでいる人たちと、現場で日々ワクチン接種をしている人たちでは持っている情報や状況が異なります(その詳しい人が委員ということはあるとおもいますが)。
開業医の先生のコメントはとても参考になりました。 トントン先生 ワクチン広場
医療機関には、もともと緊急対応の準備があります。(緊急時に使う薬剤も学びますし、基本対応も訓練されています)。
医療者じゃない、こういった場面に遭遇したことがない「詳しくない人たち」にとっては、緊急対応を適切にしたのに死亡することがあるのか?という疑問もあると思いますが(医療機関に落ち度があったんじゃ?という推測は常にあります)可能性はいろいろあるわけです。網羅的な情報はemergency関連の成書参照。
そこを踏まえないで警察介入報道だけ注目すると今後もミスリードにつながるように思います。
事例によっては他の因子(外傷など)があったり、超高齢者だったり、いろいろな条件が加わってきます。
一つとして同じ状況はないので一般化はむずかしいですが、
例えば、緊急時に使う薬と、そもそも、禁忌となっている薬を使用している場合などもその一例。
救急カートの薬剤の相談などでも話題になります。
今後ワクチンに関わる医療者は増えて行くと思いますので、研修の中でこういった情報の共有も大切とおもいます。
ボスミン(R)添付文書
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1.次の薬剤を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
(1)ブチロフェノン系・フェノチアジン系等の抗精神病薬、α遮断薬
(2)イソプロテレノール等のカテコールアミン製剤、アドレナリン作動薬(ただし、蘇生等の緊急時はこの限りでない。)
2.狭隅角や前房が浅いなど眼圧上昇の素因のある患者(点眼・結膜下注射使用時)[閉塞隅角緑内障患者の発作を誘発することがある。]
話が予防接種からそれますが、、、せっかくなので関連の緊急対応の話も。
アレルギー反応の場合、抗菌薬や造影剤などの薬剤では使用してからでないとわからないことが多いですが、もともとアレルギーの多い「食べ物」関連ではどうか。千葉県のHPに参考になる情報がありました。
食物アレルギーによる致死的アレルギー・死亡について(平成22年7月)
日本でも昨年エピペンが薬価収載となりました。
第 3 編 学校の管理下における食物アレルギーへの対応
アポネットR研究会 「エピペンとAED、どこまで設置が必要か」は大変参考になりました。
学校保健が紹介する毎日新聞の記事「エピペン:普及に弾み アナフィラキシー緊急治療薬、保険適用_
エピペン(R)の添付文書
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】 次の薬剤を投与中の患者
1.ハロタン等のハロゲン含有吸入麻酔薬
2.ブチロフェノン系・フェノチアジン系等の抗精神 病薬、α遮断薬
エピペンを携帯するような人口がどれくらい国内にいるのかというデータがあります。併用禁忌となる薬をどれくらいの人が服用しているのかはわかりませんが、現場では個別に確認するしかありません。
どんな稀な事象も起こるリスクはゼロではないですが、基礎疾患や服用している薬の情報等は重要ですね。
自分の事を伝えられない年齢の場合は特に問診票は丁寧に読み、書き漏れがないか保護者に確認。
思春期になったら、既往やアレルギー、ワクチン接種歴が自分でいえるように伝え、記録も二重に保管(当事者と親)。