感染症関係のニュースをみたときに、まず各国のリスクアセスメント担当者が考えるのは、「これは自国に影響をするのか(すぐに、中長期的に)」です。
食べ物や薬剤のコンタミネーションが問題だということになれば、それは自国に輸入・流通しているのか?ということが問題になります。
最初は「疑い」の段階で、次にラボで確認してそうだった、、、ということになるのですが、被害を最小限にするためには、どこかの段階で先回りして判断する必要があり、これをするかしないかは、リスコミにおける信頼獲得にも影響します。
つまり、「自分の国の感染症の責任者は常に問題をモニターしており、国民のために考え、迅速に行動をしているのだ」という姿勢が伝わるということです。
実際とメディア報道にはギャップがあるのですが、なんか対応が遅いよねとか、なぜこのリスクを放置している(ように見える、だけで問題)んだろう、と思われると、それ以外のことも「だいじょうぶかなあ」と不安になってきます。
メディアも同じで、○○新聞が「???」な記事を書いたとすると、次のときも、ほら、また○○新聞だし、的なバイアスが入ります。
最近は記名記事も増えましたので、誰が書いているかも注目するとよいのではないかと思っています。
さて。当初より規模が大きいことがわかった髄膜炎アウトブレイクの続報です。
10月7日付のロイター
Deadly meningitis outbreak increases to 91 cases
ペインクリニックでステロイド剤注射の処置を受けた人たちに髄膜炎を発症する人が複数(同時期に2人以上)いることがわかり、そこからactive case finding(積極的な新規症例探索)がはじまりました。
10月7日の時点では、感染したのは91例、死亡が7例です。
ひと、とき、ばしょ、の症例定義としては、
○○クリニックで、○年○月○日から○年○月○日までに、○○という処置を受けて、○○の症状のある人/○○検査で確定された人
という探し方になります。
単なる手技の問題なのか(ヒトの因子)
汚染された薬品なのか(今回うたがわれているのはこれ)
特定の日のイベントなのか(受診日による偏りがあるのか)
ですし、
薬品だとしたら、それが納入されている他の医療機関でも問題になるはず、という仮説がたちます。
会社名は既に公表されており、New England Compounding Center Inc in Framingham, Massachusettsです。
23の州に7-9月の間に17676バイアル出荷。
トルコのようにバーコードシステムで、出荷から卸、処方、販売の各時点をリアルタイムで把握でき、さらに患者には個別に連絡も可能な国もありますが、平時から準備している「トレーサビリティ」が重要になってきます。
フロリダ、インディアナ、メリーランド、ミシガン、ミネソタ、のーすかろらいニア、オハイオ、テネシー、バージニアで報告されており、一番多いテネシーは32例(3例死亡)、ミシガンは20例(2例死亡)。
複数同時多発アウトブレイクなので、各州の調査チームやCDCから派遣されてきた応援部隊などが一緒に対応しているようです。
米国にはEIS(Emerging Intelligence services)というプログラムがあり、毎年80名前後が養成され、このような事例他欧をOJTでやり、MMWRレポートを書き、そして最終的には多くの人が各州に採用されていきます。
ですので、問題の考え方や処理についての基本概念やスキルが一定レベルに保たれれているのと、すでに顔見知りの人がいるということが迅速対応時の強みです。
日本には現場や行政に必ずしも専門の人はいませんし、自己学習される熱心な方も多いのですが、お互い協力してやろうというときの認知や考えのずれなどが生じて、ヒューマンな因子で問題が生じることもままあります。
FETPの2年間の訓練を終えた人の数はとても少なく、また上記のようなポジションは日本にはありませんので、おかないならおかないで、どうするのかは今後の課題(青森県のAIRISなどはよいモデルかも)。
ところで、リアルタイムで、平時より多い感染症報告があるかどうか、はアウトブレイク探知の基本ですが、発端を誰がいつ気づくかということが重要です。
日本では、医師が保健所に電話や報告をするまでは、「院内の話」にとどまっています。
同じように「おかしいな」と気づいた医師が複数電話をしていれば、保健所の方で「何かおかしい」と気づきます。
各病院の電子カルテと、地域の感染症サーベイランスが同期している国では、
特定の診断名や薬剤処方がいちじきに増えていないかをモニタリングが可能になっています。
これなら電話より早い。
日本は、医師が保健所に報告をして(紙で)、そして保健所がNESIDに入力をしてはじめて、その先の「感染症情報センター/地方衛生研究所」や県市の担当者、その先の国が知ることになります。
食べ物関連では、体調を崩した人や家族が、販売店や製造メーカーに直接電話(抗議)をしたりもするので、その時点で把握することも可能です。(製品や検体の確保も大事)
過去におきた事例を学んでおくと、パターン認知力もあがるので、新しいニュースをみたら、過去の同様の事例がないかなども確認すると勉強になります。
(担当者が短期間にコロコロかわるとこのような経験知がとぎれてしまうので、個人依存になってくるのがたいへん)
食べ物や薬剤のコンタミネーションが問題だということになれば、それは自国に輸入・流通しているのか?ということが問題になります。
最初は「疑い」の段階で、次にラボで確認してそうだった、、、ということになるのですが、被害を最小限にするためには、どこかの段階で先回りして判断する必要があり、これをするかしないかは、リスコミにおける信頼獲得にも影響します。
つまり、「自分の国の感染症の責任者は常に問題をモニターしており、国民のために考え、迅速に行動をしているのだ」という姿勢が伝わるということです。
実際とメディア報道にはギャップがあるのですが、なんか対応が遅いよねとか、なぜこのリスクを放置している(ように見える、だけで問題)んだろう、と思われると、それ以外のことも「だいじょうぶかなあ」と不安になってきます。
メディアも同じで、○○新聞が「???」な記事を書いたとすると、次のときも、ほら、また○○新聞だし、的なバイアスが入ります。
最近は記名記事も増えましたので、誰が書いているかも注目するとよいのではないかと思っています。
さて。当初より規模が大きいことがわかった髄膜炎アウトブレイクの続報です。
10月7日付のロイター
Deadly meningitis outbreak increases to 91 cases
ペインクリニックでステロイド剤注射の処置を受けた人たちに髄膜炎を発症する人が複数(同時期に2人以上)いることがわかり、そこからactive case finding(積極的な新規症例探索)がはじまりました。
10月7日の時点では、感染したのは91例、死亡が7例です。
ひと、とき、ばしょ、の症例定義としては、
○○クリニックで、○年○月○日から○年○月○日までに、○○という処置を受けて、○○の症状のある人/○○検査で確定された人
という探し方になります。
単なる手技の問題なのか(ヒトの因子)
汚染された薬品なのか(今回うたがわれているのはこれ)
特定の日のイベントなのか(受診日による偏りがあるのか)
ですし、
薬品だとしたら、それが納入されている他の医療機関でも問題になるはず、という仮説がたちます。
会社名は既に公表されており、New England Compounding Center Inc in Framingham, Massachusettsです。
23の州に7-9月の間に17676バイアル出荷。
トルコのようにバーコードシステムで、出荷から卸、処方、販売の各時点をリアルタイムで把握でき、さらに患者には個別に連絡も可能な国もありますが、平時から準備している「トレーサビリティ」が重要になってきます。
フロリダ、インディアナ、メリーランド、ミシガン、ミネソタ、のーすかろらいニア、オハイオ、テネシー、バージニアで報告されており、一番多いテネシーは32例(3例死亡)、ミシガンは20例(2例死亡)。
複数同時多発アウトブレイクなので、各州の調査チームやCDCから派遣されてきた応援部隊などが一緒に対応しているようです。
米国にはEIS(Emerging Intelligence services)というプログラムがあり、毎年80名前後が養成され、このような事例他欧をOJTでやり、MMWRレポートを書き、そして最終的には多くの人が各州に採用されていきます。
ですので、問題の考え方や処理についての基本概念やスキルが一定レベルに保たれれているのと、すでに顔見知りの人がいるということが迅速対応時の強みです。
日本には現場や行政に必ずしも専門の人はいませんし、自己学習される熱心な方も多いのですが、お互い協力してやろうというときの認知や考えのずれなどが生じて、ヒューマンな因子で問題が生じることもままあります。
FETPの2年間の訓練を終えた人の数はとても少なく、また上記のようなポジションは日本にはありませんので、おかないならおかないで、どうするのかは今後の課題(青森県のAIRISなどはよいモデルかも)。
ところで、リアルタイムで、平時より多い感染症報告があるかどうか、はアウトブレイク探知の基本ですが、発端を誰がいつ気づくかということが重要です。
日本では、医師が保健所に電話や報告をするまでは、「院内の話」にとどまっています。
同じように「おかしいな」と気づいた医師が複数電話をしていれば、保健所の方で「何かおかしい」と気づきます。
各病院の電子カルテと、地域の感染症サーベイランスが同期している国では、
特定の診断名や薬剤処方がいちじきに増えていないかをモニタリングが可能になっています。
これなら電話より早い。
日本は、医師が保健所に報告をして(紙で)、そして保健所がNESIDに入力をしてはじめて、その先の「感染症情報センター/地方衛生研究所」や県市の担当者、その先の国が知ることになります。
食べ物関連では、体調を崩した人や家族が、販売店や製造メーカーに直接電話(抗議)をしたりもするので、その時点で把握することも可能です。(製品や検体の確保も大事)
過去におきた事例を学んでおくと、パターン認知力もあがるので、新しいニュースをみたら、過去の同様の事例がないかなども確認すると勉強になります。
(担当者が短期間にコロコロかわるとこのような経験知がとぎれてしまうので、個人依存になってくるのがたいへん)