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インフルエンザ ワクチン と その周辺

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朝晩は涼しくなっている東京です。
今年もインフルエンザワクチンを考えるシーズンになりました。

日本のインフルエンザ対策の公的な情報は
厚生労働省のHPの中にあります

ポスターなどもあるので職場で活用できます・・・・が、「手を洗いグマ、お口をカバー」という駄洒落ポスターは、カバの鼻がマスクから出てしまっており、「だめじゃん!」と各地の感染症対策チームからダメだしされていますのでご注意下さい。(代理店などが提案してくる案を選ぶときに、感染管理をやっている人とかメンバーにいなかったんですかねー)
まあ、鼻が見えないとカバなんだかなんだかわからなかったのかもしれませんが。ぼそぼそ。


マスクでは「お口とお鼻をカバー」との啓発をよろしくお願いします。

日本では誰にインフルエンザのワクチン接種を推奨しているんですか?と聞かれたときはQ&AのQ28にありますので、こちらを説明することになります。
接種の際に公費支援があるのかどうかは自治体や健康保険組合によってちがいます。


インフルエンザワクチンには現在開発中のものを含めて複数の種類がありますので、どのワクチンの話をしているのかということが情報をみるときの最初の注意事項になります。
複数ある国の医療機関では、「選ぶ」(そのために説明が必要)ということから「間違えないように接種する」という現場レベルの課題もあります。

ワクチンは各国共にNational Immunization Programの中で位置づけが決まっており、
例えば麻疹(MMR)などは必須ですが、日本脳炎や髄膜炎菌のワクチンが任意任意であるように、インフルエンザワクチンの位置づけも異なっています。

各国が根拠としてみているevidenceや、元々の医療制度(経済レベル)に影響を受けていますが、

まず、
推奨対象が誰なのか(これによって費用負担がかわってきます)
どの程度推奨されているのか(集団接種が取り入れられているのかどうか)


そして、この状況によって「接種率」が大きく異なります。

つまり、皆さん接種しましょう、という政策で、かつ、公費で集団接種機会が提供されていれば接種率は高くなるでしょうし、
逆に高齢者や基礎疾患のある人に限定しており、健康な人は不要で、個人の希望ベースで接種したい人は自費でしてください、となると低くなります。

インフルエンザの認知の影響も受けます(寝てれば治るよ!的なカルチャーと、早く病院にいって薬もらいたいわ〜なカルチャーがありますね)


ヨーロッパにおけるインフルエンザワクチンがどのような位置づけになっているかみてみましょう。

DIFFERENCES IN NATIONAL INFLUENZA VACCINATION POLICIES ACROSS THE EUROPEAN UNION, NORWAY AND ICELAND 2008-2009
Eurosurveillance, Volume 15, Issue 44, 04 November 2010

2009年に行われたヨーロッパ各国対象のワクチン関連調査Vaccine European New Integrated Collaboration Effort (VENICE) は、EU加盟の27カ国とノルウェー+アイスランドを足した29カ国を対象としています。このうち27カ国から回答がありました。

27カ国のうち、全ての国が接種を推奨していたのは「高齢者」でした。

何歳からを高齢者とするかは国によりますが、例えばスイスでの推奨対象は65歳以上となっています。

6カ国は「生後6カ月から18カ月までの子ども」への接種を推奨していました。
特別、健康上の問題がない人へ接種を推奨しているかどうかの一覧

多くの国が基礎疾患のある個人への接種を推奨していました。

医療関係者への接種は必ずしも全ての国では推奨されておらず、医療機関や療養施設の職員への接種の推奨は23カ国でおこなわれていました。
外来スタッフへの推奨をしている国は22カ国でした。

2009年のサーベイでは、ワクチン接種率は各国で大きくことなっており、高齢者では1.1%から82.6%、基礎疾患のある人では32.9%ー71.7%
医療者は13.4%−89.4%でした。

現時点で、こどもにインフルエンザワクチンの接種を推奨している国は多くありませんが、
今年の7月に、英国が2014年10月から子ども(〜17歳)を対象に無料で経鼻インフルエンザワクチンを接種するように推奨するというニュースがありました。
Children to be offered annual flu vaccine
NHS Choice 2012年7月

米国のACIPにあたるJoint Committee on Vaccination and Immunisation (JCVI) が検討をしました。



製薬会社中心に構成されているInternational Federation of Pharmaceutical Manufacturers and Associations (IFPMA)のなかに、インフルエンザのタスクフォースがあり、ここが(当たり前ですが)各国の状況を熱心に調べているので、参考資料/コンテンツがたくさん掲載されています。


Prevention is better than cureなわけですが、広く接種勧奨をしている米国と比較すると、ヨーロッパでは接種勧奨対象はより限定的であることがわかります。
経鼻ワクチンや、より予防効果の高いワクチンが開発されれば、またワクチンポリシーも変わってくるのだろうと思います。

抗インフルエンザ薬の使用基準になると、もっと国によってかわってきます。
日本は世界のタミフルの80%を消費している国であり、人口規模で考えても、専門職でなくても「そりゃーずいぶん偏ってるんじゃ?」と思う話でありますので、インフルエンザ対策として、「その周辺」あたりを別記事で紹介したいと思います。なるべく使わないようにしよう、という国と、接触者にも拡大投与しよう、と考える背景の違いなど。


(補足)
免疫不全とインフルエンザワクチン
Influenza Vaccination for Immunocompromised Patients: Systematic Review and Meta-analysis by Etiology
J Infect Dis. 2012年8月16日
WHOの本シーズンに関する推奨
WHO recommendation on influenza virus vaccines for the northern hemisphere 2012-2013 season
ECDC 01 Mar 2012

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