英語メディア、特に米国ではしょっちゅうアウトブレイク報道があります。
食べ物関係の記事は特に多く、この背景には、早期の警告・拡大防止阻止の他に、訴訟がからむので弁護士業界がわきたつということもあるんだよ、と以前おしえてもらったことがあります。
ホームページや広告をみると「食中毒専門弁護士オフィス」ってのがあるんですね。
陰謀論が好きな人たちは、「訴訟を起こして仕事を増やすために、弁護士たちが食中毒の菌をまいているやつがいるにちがいない」と書いてたりします。
どの国でも、同じような発想はあるんですね〜。
まあ、感染症の事故に、悪意ある人の介在がゼロということではないですが。
ときどき「よくそんなに感染症の話題がありますね!」といった声がブログ編集部に届くのですが、だって、毎日英語メディアの感染症ニュースをみていたら、書ききれないほどですよ・・・・というのが実際。
しかし(ここからはマニアックで真面目な話ですが)、それが社会や個人にどれほどのリスクなのか、またインパクトが日本や自分の地域にどれくらいあるのかを考えないとただの羅列になり、かえってミスリードになることがあります。なので、記事にするときはそれなりに、理解や意図をもってしているわけであります。
インフルエンザを研究している人たちは、現在米国で豚由来のインフルエンザに罹ったひとが〇〇人いる!ということも気になるでしょうが、当ブログでは、とりあえず様子見。受診して検査してわかった人たちだけでの数字なのと、遺伝子レベルでの話をしている人たちと一般診療に関わる私たちの間では、「え?で、現場的に他のものと何か対応がかわるんですか?」ということとでの温度差があります。
逆に、食べ物系で感染をおこす菌はどこにでもいるといえばいますけれども、食品ルートは拡大しやすく、子どもや高齢者での重症化も多いので、最近ですとメロンやマンゴーのアウトブレイク事例などは常時時系列でおいかっけています。
何事も、さじ加減なのでありますが〜。
そんななか、これは!と思ったのは米国の国立ヨセミテ公園でのハンタウイルスのアウトブレイク。
Hantavirus outbreak at Yosemite considered 'unprecedented'(8月29日 ロサンジェルスタイムス)
公園→多くの人が曝露するリスクあり。
ハンタウイルス→かかりたくないですよね。治療法もないし。
"After learning that a Pennsylvania visitor's death was caused by hantavirus, Yosemite officials sent emails Monday evening to those who stayed in the "signature tent cabins" in Curry Village between mid-June and late August, said park spokesman Scott Gediman. Letters were sent to visitors whose email addresses were not on record."
ペンシルバニア州で死亡した症例がハンタウイルスによるものだったと判明。そのあと、同じようなところに滞在した人への注意喚起がおこなわれました。
(このような初動をとらないとたいへんなことになるのはいずこも同じ)
There have been 587 cases of human infection from hantavirus recorded between 1993, when the virus was first identified in the Four Corners area, and 2011, according to the CDC. About one-third have been fatal.
米国内での記録は、1993年からの報告では587例と、規模としては少ない感染症。
8月28日の時点で、「専門家」が対策を支援。
The National Park Service has dispatched a top Colorado-based epidemic specialist and a Washington-based public health official to investigate とのことです。こちらのニュースには、米国の国立公園全体で年間におきる"インシデント"の詳細などもあって勉強になります。
ところで。日本での対策はどうなっているのかご存知ですか?
"ハンタウイルスによる感染症が日本で注目されたのは1970 年代半ばから。 各地の医学系動物実験施設においてラット取扱い者の間に不明熱の患者が相次いで発生した時で、当時は病因が不明であった(1984 年まで発生が続き、合計127 例、うち1例死亡)。それに先立ち1960 年代、大阪梅田の居住環境の悪い地区において、不明熱の発生が報告されていた(119 例うち2 例死亡)。"
"わが国では、1982 年に感染研と北大獣医学部により札幌医科大学のラットから原因ウイルスが国内で初めて分離された。その後の研究の進展に伴い、ブニヤウイルス科の5 番目の新しい属としてハンタ(hanta)ウイルス属と命名された"
"日本では1984 年の実験室感染患者の後はでていない。"
"診断にあたっては、ネズミとの接触があったかどうかを必ず聞く" →これは難しい・・・・
(以上、2000年の国立感染症研究所の記載)
最初は不明熱・・・・でくるかもしれませんね。
ときどき感染症ニュースをちら見して、頭の隅っこにいろいろな名前を保存しておくことにしましょう。
ネズミはどこから?ですが・・・・海外から着いた港のコンテナの中によくまぎれていて、コンテナあけたとたんにサーッと草むらに駆け込んでいくという話を聞くのであります。(きゃ−怖い!)
だから海沿いのところから報告されるんじゃないかというお話が、また怖い。
青木編集長は国内で実際に、家族が次々とハンタに似た症状で死亡した事例の相談を受けたことがあります。そして米国の専門家と慌ててやりとりをしたことも。
いろいろ聞きたい人はお食事会でね。
※直近は9月14日、若手医師セミナーの林先生の正しくビビるERセミナーの後でございます。 参加申し込み情報はこちら
「ウイルス性出血熱と日本における対策」 (IASR 2011年7月号)
腎症候性出血熱
ハンタは四類感染症なので診断したら直ちに届け出ではありますが、通常の医療機関では検査はできません。悩ましい。
"病原体の取扱いはバイオセーフティレベル(BSL)3または4"ですが、「そうだった」と気づくのは後の話。
A Global Perspective on Hantavirus Ecology, Epidemiology, and Disease Clin. Microbiol. Rev. April 2010 vol. 23 no. 2 412-441
食べ物関係の記事は特に多く、この背景には、早期の警告・拡大防止阻止の他に、訴訟がからむので弁護士業界がわきたつということもあるんだよ、と以前おしえてもらったことがあります。
ホームページや広告をみると「食中毒専門弁護士オフィス」ってのがあるんですね。
陰謀論が好きな人たちは、「訴訟を起こして仕事を増やすために、弁護士たちが食中毒の菌をまいているやつがいるにちがいない」と書いてたりします。
どの国でも、同じような発想はあるんですね〜。
まあ、感染症の事故に、悪意ある人の介在がゼロということではないですが。
ときどき「よくそんなに感染症の話題がありますね!」といった声がブログ編集部に届くのですが、だって、毎日英語メディアの感染症ニュースをみていたら、書ききれないほどですよ・・・・というのが実際。
しかし(ここからはマニアックで真面目な話ですが)、それが社会や個人にどれほどのリスクなのか、またインパクトが日本や自分の地域にどれくらいあるのかを考えないとただの羅列になり、かえってミスリードになることがあります。なので、記事にするときはそれなりに、理解や意図をもってしているわけであります。
インフルエンザを研究している人たちは、現在米国で豚由来のインフルエンザに罹ったひとが〇〇人いる!ということも気になるでしょうが、当ブログでは、とりあえず様子見。受診して検査してわかった人たちだけでの数字なのと、遺伝子レベルでの話をしている人たちと一般診療に関わる私たちの間では、「え?で、現場的に他のものと何か対応がかわるんですか?」ということとでの温度差があります。
逆に、食べ物系で感染をおこす菌はどこにでもいるといえばいますけれども、食品ルートは拡大しやすく、子どもや高齢者での重症化も多いので、最近ですとメロンやマンゴーのアウトブレイク事例などは常時時系列でおいかっけています。
何事も、さじ加減なのでありますが〜。
そんななか、これは!と思ったのは米国の国立ヨセミテ公園でのハンタウイルスのアウトブレイク。
Hantavirus outbreak at Yosemite considered 'unprecedented'(8月29日 ロサンジェルスタイムス)
公園→多くの人が曝露するリスクあり。
ハンタウイルス→かかりたくないですよね。治療法もないし。
"After learning that a Pennsylvania visitor's death was caused by hantavirus, Yosemite officials sent emails Monday evening to those who stayed in the "signature tent cabins" in Curry Village between mid-June and late August, said park spokesman Scott Gediman. Letters were sent to visitors whose email addresses were not on record."
ペンシルバニア州で死亡した症例がハンタウイルスによるものだったと判明。そのあと、同じようなところに滞在した人への注意喚起がおこなわれました。
(このような初動をとらないとたいへんなことになるのはいずこも同じ)
There have been 587 cases of human infection from hantavirus recorded between 1993, when the virus was first identified in the Four Corners area, and 2011, according to the CDC. About one-third have been fatal.
米国内での記録は、1993年からの報告では587例と、規模としては少ない感染症。
8月28日の時点で、「専門家」が対策を支援。
The National Park Service has dispatched a top Colorado-based epidemic specialist and a Washington-based public health official to investigate とのことです。こちらのニュースには、米国の国立公園全体で年間におきる"インシデント"の詳細などもあって勉強になります。
ところで。日本での対策はどうなっているのかご存知ですか?
"ハンタウイルスによる感染症が日本で注目されたのは1970 年代半ばから。 各地の医学系動物実験施設においてラット取扱い者の間に不明熱の患者が相次いで発生した時で、当時は病因が不明であった(1984 年まで発生が続き、合計127 例、うち1例死亡)。それに先立ち1960 年代、大阪梅田の居住環境の悪い地区において、不明熱の発生が報告されていた(119 例うち2 例死亡)。"
"わが国では、1982 年に感染研と北大獣医学部により札幌医科大学のラットから原因ウイルスが国内で初めて分離された。その後の研究の進展に伴い、ブニヤウイルス科の5 番目の新しい属としてハンタ(hanta)ウイルス属と命名された"
"日本では1984 年の実験室感染患者の後はでていない。"
"診断にあたっては、ネズミとの接触があったかどうかを必ず聞く" →これは難しい・・・・
(以上、2000年の国立感染症研究所の記載)
最初は不明熱・・・・でくるかもしれませんね。
ときどき感染症ニュースをちら見して、頭の隅っこにいろいろな名前を保存しておくことにしましょう。
ネズミはどこから?ですが・・・・海外から着いた港のコンテナの中によくまぎれていて、コンテナあけたとたんにサーッと草むらに駆け込んでいくという話を聞くのであります。(きゃ−怖い!)
だから海沿いのところから報告されるんじゃないかというお話が、また怖い。
青木編集長は国内で実際に、家族が次々とハンタに似た症状で死亡した事例の相談を受けたことがあります。そして米国の専門家と慌ててやりとりをしたことも。
いろいろ聞きたい人はお食事会でね。
※直近は9月14日、若手医師セミナーの林先生の正しくビビるERセミナーの後でございます。 参加申し込み情報はこちら
「ウイルス性出血熱と日本における対策」 (IASR 2011年7月号)
腎症候性出血熱
ハンタは四類感染症なので診断したら直ちに届け出ではありますが、通常の医療機関では検査はできません。悩ましい。
"病原体の取扱いはバイオセーフティレベル(BSL)3または4"ですが、「そうだった」と気づくのは後の話。
A Global Perspective on Hantavirus Ecology, Epidemiology, and Disease Clin. Microbiol. Rev. April 2010 vol. 23 no. 2 412-441