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ワクチンの値段の謎 その4 新しいワクチンのトリセツはどこに

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昨年の6月にはGAVIが途上国に、高額なHPVワクチン、ロタウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチンを途上国価格で提供するというニュースがありました。

"Drug firms cut vaccine prices to the developing world"
2011年6月6日 BBC

青木編集長が今参加しているPacific Health Summitは、昨年はシアトルで開かれ、ワクチンがテーマで、メインのセッションで壇上には、GSK、メルク、サノフィ、ファイザーが並びました。

フロアから「そもそもワクチンの価格はいったいどのように決まっているのだ?」という質問がありました。

(専門家とか関係者の集まる会議、ですよ・・・)

結論から言うと3カテゴリーあるのだ、ということでした。あまり明確には話したがっていませんでしたね(あたりまえか)。

お金持ちの国用、途上国用、その中間。
(例として、サノフィのプレス発表は文末にコピペしておきます)

日本は他の先進国と同じような設定になるわけです。(今はね・・)
でも、それはしかたないとしても、他の先進国よりさらに高くなるってことはなぜだかがわかりません。

「この値段にしてくれたらさあ、あとでウフフフ」みたいな会話がどこかにあるのかわかりませんが(天下る人とかいると疑われちゃいますよね!)。


2007年、ユニセフが37か国のためにワクチンを購入した総額は2億2千5百万ドルだそうです。ざっくり200億円くらい?ずいぶん安いなあと思ったら、これは途上国価格だからですね。

人口が多いから、スケールメリット(大量購入特典)として割り引いてもらうほか、
ジェネリックメーカーなどの安い製品を使うとか、
なるべく近くの工場から買うなどして、輸送費を抑ええてコスト削減の努力はあるかなとおもいます。

日本に入るワクチンが高額なのは、どんぶらこ(船?)運んでくるお金が他の国よりもたくさんかかるということでしょうか。



インドのPanacea Biotec は、OPV, Hepatitis B vaccines (Enivac HB), Easyfour (DTP+Hib) and Ecovac (DTP+HepB) を国連機関に提供する承認を得ています。
また、リコンビナントHBVワクチンをUnicefに提供しています。 (Enivac-HB)

Shantha Biotechnicsのイノベーションも注目されています。





Key Concepts: Economics of Vaccine Production
WHO資料

Pricing of new vaccines
Human Vaccines 6:8, 619-626; August 2010

Pharmaceutical policies: effects of reference pricing, other pricing, and purchasing policies.
Cochrane Database Syst Rev. 2006 Apr 19;(2):CD005979.


で、日本でワクチンの値段を交渉するのは誰と誰、いつどこで?何を基準に?ですが。
想像するに、厚生労働省のどこか、医薬品関連組織と製薬会社でしょうか。
財務省も当然出席しますよね?(しないと怖いですよね?)

価格提示について、製薬会社の倫理とかPublic Healthへの姿勢もよくみえてきます。


例えば・・・・ジャパンワクチンという会社が7月2日から稼働します。

「GSKと第一三共 国内ワクチン事業で戦略提携 合弁会社「ジャパンワクチン」設立
ミクスOnline 2012年3月5日

第一三共のHPにより詳しいことが書いてあります。
「ワクチン事業における戦略的提携について」

−日本におけるワクチンアクセス向上・普及に貢献する。
−海外先進国で勧奨接種されているワクチンを導入し、ラインナップを拡充する。
−両社のワクチン技術・製品の組み合わせにより創製された、より優れた利便性の高い混合ワクチンを提供する。
−エビデンスに基づく信頼性の高い情報提供と安定供給により、ワクチンの幅広い普及を実現する。

ブツはGSK、販売はMRがたくさんいて販売網もある第一三共の強みで、ということでつくられた会社です。

こういった会社は、方針としてかかげる「アクセス向上・普及に貢献する」際に、どのような価格を設定してくるのでしょうね。


以下、参考資料:
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2005年4月22日 英語版はwww.sanofi-aventis.comに

サノフィ・アベンティス、国民所得に準じた医薬品価格を設定する方針により、「南側諸国」において医薬品の入手機会を拡大する取り組みを発表

サノフィ・アベンティス(本社:フランス/パリ)のジャン・フランソワ・デュエック会長は、世界生命科学フォーラ
ムBioVision本会議の閉会の辞において、「南側諸国」における医薬品の入手機会を推進する方針(Policy
of Access to Medicines in the "Southern Countries")に基づいた同グループの戦略の指針を発表しました。

世界人口の80%(特に、公共医療制度が整備されていない南側諸国)が基本的な医薬品の入手機会がほとんどない現状を受けて、サノフィ・アベンティスグループは、医療の利用機会を同グループ戦略の重要課題として取り扱う、具体的な対策を講じることを約束しました。

この公衆衛生上の重要課題に対処するために、サノフィ・アベンティスは、南側諸国の人々に対し、国民所得に準じた段階的な価格で製品を提供します。
デュエック会長は、「当グループは、収益性の高い革新的な製品と大規模な製造設備を備えているので、具体的な対応策を南側諸国に提供し、この公衆衛生構想の一翼を担うことができます」と述べました。同グループは、具体的な対策が想定される6種類の治療領域、すなわち5種類の治療分野(マラリア、リーシュマニア症、眠り病、結核、および癲癇(てんかん)とワクチンによる予防分野を特定しました。

サノフィ・アベンティスグループのワクチン事業を担当するサノフィ・パスツール社は、UNICEF、GAVI(Global Alliance for Vaccine and Immunization:ワクチン予防接種世界同盟)、およびワクチン基金(Vaccine Fund)と共同で、多くのワクチン(経口ポリオワクチン、はしかワクチン、ジフテリア・破傷風・ポリオの3種混合ワクチン、髄膜炎ワクチン、麻疹・流行性耳下腺炎・風疹の新3種混合ワクチン、黄熱ワクチン、およびジフテリア・破傷風・ポリオ・ヘモフィルスインフルエンザB型菌ワクチンの4種混合ワクチン)に関して、段階的な価格設定方針を実践します。

デュエック会長は、「これらの構想は、現在のサノフィ・アベンティスグループを構成するサノフィ・サンテラボ
社、ローヌ・プーラン社、ルセル社、Mérieux社、Lepetit社、パスツール社、ヘキスト社といった長年の伝統を持つ企業に根ざす積極的な戦略の一部です」と付け加え、「またこれは同時に、何よりも、優れた革新、競争力ある製造設備を維持していこうとする決意、そして、成熟製品に対する継続的な支援に基づいた、世界第3位の製薬グループとしての当社の責務なのです」と締めくくりました。
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