日本では水痘とムンプスのワクチンが定期ではないため、接種率は20−30%といわれています。
このため、現在各地で流行をしています。
一般の人の感染症の理解は、麻疹なら「ぶつぶつと熱」、ムンプスなら「顔がはれる」といったところです。
治るんだしどうせならなっちゃった方が安くすむ(?)といった誤解もあります。
医療者の考えるリスクは麻疹なら急激な免疫不全、それに伴う肺炎等を考えますし、治癒したあと数年後に発症する脳炎のリスクもあります。水痘なら帯状疱疹、ムンプスなら髄膜炎や難聴も考えます。
ワクチン接種の際に検討すべきリスクは、ワクチン接種での副反応と自然感染での健康被害なのですが、後者の問題は情報としてうまく伝わっていません。というか、専門家は伝えようとしているのか?が問われています。
今年の5月のIASR(国立感染症研究所と厚生労働省結核感染症課が発行)にも関連レポートが掲載されています。
幼児期のムンプス罹患が増えていることへの警鐘
−聴性脳幹反応から診断されたムンプス難聴2歳男児例を経験して−
このような情報を、小児科、感染症、公衆衛生の専門家はどれくらい認知していたでしょうか。
認知していたとして、何かactionをとっているでしょうか。
皆さんの地域に公費助成はありますか?ない場合、なぜないのか知っていますか?
議員は感染症やワクチンに詳しくありませんから、自発的に予算をつけようとは考えません。
朝日新聞がムンプス難聴の連載をしています(全文はリンク先でお読みください)。
12月7日 感染症 ムンプス難聴:1 「イヤホン、聞こえない」
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「左耳、だめになっちゃっているね」と耳鼻科医が言った。カルテで3カ月前におたふく風邪(ムンプス)にかかっていることを確認し、さらに言った。
「おたふく風邪による難聴ですね」。よくあることだという口ぶりだった。「でも、大丈夫。片方が残っているから。はい、次の人」。耳鼻科医の言葉に、女性はぼうぜんとした。
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難聴の話もさることながら、医療者の対応がショッキングであります。
こういったつらい話を記事にすることを了解してくださった方がいるから、今回、記事を通じて学べる人がたくさんいるのだとおもいます。
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娘たちには、出来る限り予防接種を受けさせてきたが、おたふく風邪のワクチンは受けさせていなかった。娘が4歳のころ、予防接種の相談をした小児科のかかりつけ医には「有料なのに効果が低い」「ワクチンで無菌性髄膜炎の問題もある」などと説明され、「受ける意味がない」と受け止めていた。
薬はもらわなくていいの? これからの治療はどうなるの? 疑問を口に出す前に、耳鼻科の診察室を出された。窓口で尋ねると、事務の女性が答えた。「うちでは何もすることはありません」
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医療者の提供する情報、数字もさることながら、どういったスタンスで語るのか。
保護者にそれはどう伝わるのかとても考えさせられるエピソードです。
12月8日 感染症 ムンプス難聴:2 異変見逃し、自分責める
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だが、わかったのは、ワクチンの接種率が低い日本では、おたふく風邪の流行が繰り返されるが、ワクチンが広く使われているほかの先進国では、患者が確実に減っていることだった。
流行がなければ、合併症のムンプス難聴の患者も極めて少ない。研究対象にならないのか、情報自体が少ないのだった。日本は「世界標準」だと思っていたが、そうではなかった。
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「日本の医療は進んでいるのでワクチンも当然世界の最高レベルだと思っていました」という保護者のコメントはよくききます。
VPDにお子さんがなった親御さんは、医療機関で、またネット検索等を通じて「実は予防ワクチンがあった」ことを知ります。
なぜ知り得なかったのか、なぜ教えてくれなかったのか。
健康被害に加えて別の苦悩がはじまります。
感染症 ムンプス難聴:3 予防接種なぜ勧めなかった
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十分調べずに、「おたふく風邪の予防接種をしない」と判断した自分を責めた。寝ないでパソコンに向かってばかりいる女性を、夫は「自分を追い込みすぎて、心身を壊してしまう」と心配した。
近所に住み、娘たちの面倒を見てきた実家の両親も悲しみ「自分の耳を移植できないか」と申し出てきた。娘が寝た後、皆で集まっては泣いた。
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「予防接種をしない」という判断は、何をもとにできるのか。
「なったほうがいい」とグループもあります。
最近、米国で問題になりましたが、「なったほうがしっかり免疫がつく。ワクチンはお金がかかる。なった子どもにうつしてもらおう」と麻疹Party、水疱瘡Partyだけでなく、水疱瘡になったこどもの唾液を綿棒やキャンディにして販売するという人まであらわれました。
そこまで極端ではなくても、なるならなったで大丈夫だろうという人は想像以上にいます。
その人に真剣に熱意をもって予防接種のメリットを伝える人がいなければ、自然感染のリスクを伝える人がいなければ。
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娘が4歳のころ、おたふく風邪の予防接種について相談したときには、積極的に勧められなかった記憶があった。おたふく風邪により難聴になる確率もまれだと聞かされ、結局、予防接種を受けなかった。
「娘がムンプス難聴になりました」。女性が伝えると、医師は驚き、気の毒がった。しかし、予防接種の相談を受けたことは、覚えていないようだった。「ワクチンの効果と副作用は、医者任せではなく、母親自身が勉強して決めるべきだ」と医師は考えていた。
ただ医師は、自分の子どもには予防接種をしていた。「自分の子には打つのに、何で人には勧めないの」。腹立たしさでいっぱいになった。
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不活化ポリオのときにも指摘を受けました。
医療者は自分の子には生ワクチンを接種せず不活化ポリオを選んでいるのは「ずるい」「自分たちだけ」「他の子のリスクをどう考えるのか」。
ある保健所で聞いたことは、任意接種のワクチンの情報をHPにのせるとクレームがつくということ。
「国が積極的に推奨していないワクチンの情報をのせるな。何かあったときにどうするのか」と。
かかりつけ医でも説明されず、公的な情報源でもその重要性、感染リスクを知る機会がないとしたら、保護者はどのように情報を知ればよいのでしょうか。
感染症 ムンプス難聴:4 10回聞き返し「悲しい」
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「ふうん、治るんならいいんだけどね」。耳を心配するあまり、時々、おなかや頭が痛くなるという。口には出さないけれど、不安だったんだ――。娘を抱きしめ、背中越しに泣いた。「ずっと聞こえないまま」とは、まだ言えない。「大きくなって耳の腫れがひいたら、少しずつ聞こえるようになるよ」と、願望も込めて言い聞かせた。
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親が子どもの難聴を知るのは、子どもの様子の変化から。
「電話が聞こえない」と気づいた子のエピソード
ムンプス難聴調査をした先生方がいます。
活動を知るホームページはこちら
2009年にPlotkin先生はこう書いています。 Is Japan Deaf to Mumps Vaccination?
このため、現在各地で流行をしています。
一般の人の感染症の理解は、麻疹なら「ぶつぶつと熱」、ムンプスなら「顔がはれる」といったところです。
治るんだしどうせならなっちゃった方が安くすむ(?)といった誤解もあります。
医療者の考えるリスクは麻疹なら急激な免疫不全、それに伴う肺炎等を考えますし、治癒したあと数年後に発症する脳炎のリスクもあります。水痘なら帯状疱疹、ムンプスなら髄膜炎や難聴も考えます。
ワクチン接種の際に検討すべきリスクは、ワクチン接種での副反応と自然感染での健康被害なのですが、後者の問題は情報としてうまく伝わっていません。というか、専門家は伝えようとしているのか?が問われています。
今年の5月のIASR(国立感染症研究所と厚生労働省結核感染症課が発行)にも関連レポートが掲載されています。
幼児期のムンプス罹患が増えていることへの警鐘
−聴性脳幹反応から診断されたムンプス難聴2歳男児例を経験して−
このような情報を、小児科、感染症、公衆衛生の専門家はどれくらい認知していたでしょうか。
認知していたとして、何かactionをとっているでしょうか。
皆さんの地域に公費助成はありますか?ない場合、なぜないのか知っていますか?
議員は感染症やワクチンに詳しくありませんから、自発的に予算をつけようとは考えません。
朝日新聞がムンプス難聴の連載をしています(全文はリンク先でお読みください)。
12月7日 感染症 ムンプス難聴:1 「イヤホン、聞こえない」
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「左耳、だめになっちゃっているね」と耳鼻科医が言った。カルテで3カ月前におたふく風邪(ムンプス)にかかっていることを確認し、さらに言った。
「おたふく風邪による難聴ですね」。よくあることだという口ぶりだった。「でも、大丈夫。片方が残っているから。はい、次の人」。耳鼻科医の言葉に、女性はぼうぜんとした。
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難聴の話もさることながら、医療者の対応がショッキングであります。
こういったつらい話を記事にすることを了解してくださった方がいるから、今回、記事を通じて学べる人がたくさんいるのだとおもいます。
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娘たちには、出来る限り予防接種を受けさせてきたが、おたふく風邪のワクチンは受けさせていなかった。娘が4歳のころ、予防接種の相談をした小児科のかかりつけ医には「有料なのに効果が低い」「ワクチンで無菌性髄膜炎の問題もある」などと説明され、「受ける意味がない」と受け止めていた。
薬はもらわなくていいの? これからの治療はどうなるの? 疑問を口に出す前に、耳鼻科の診察室を出された。窓口で尋ねると、事務の女性が答えた。「うちでは何もすることはありません」
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医療者の提供する情報、数字もさることながら、どういったスタンスで語るのか。
保護者にそれはどう伝わるのかとても考えさせられるエピソードです。
12月8日 感染症 ムンプス難聴:2 異変見逃し、自分責める
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だが、わかったのは、ワクチンの接種率が低い日本では、おたふく風邪の流行が繰り返されるが、ワクチンが広く使われているほかの先進国では、患者が確実に減っていることだった。
流行がなければ、合併症のムンプス難聴の患者も極めて少ない。研究対象にならないのか、情報自体が少ないのだった。日本は「世界標準」だと思っていたが、そうではなかった。
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「日本の医療は進んでいるのでワクチンも当然世界の最高レベルだと思っていました」という保護者のコメントはよくききます。
VPDにお子さんがなった親御さんは、医療機関で、またネット検索等を通じて「実は予防ワクチンがあった」ことを知ります。
なぜ知り得なかったのか、なぜ教えてくれなかったのか。
健康被害に加えて別の苦悩がはじまります。
感染症 ムンプス難聴:3 予防接種なぜ勧めなかった
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十分調べずに、「おたふく風邪の予防接種をしない」と判断した自分を責めた。寝ないでパソコンに向かってばかりいる女性を、夫は「自分を追い込みすぎて、心身を壊してしまう」と心配した。
近所に住み、娘たちの面倒を見てきた実家の両親も悲しみ「自分の耳を移植できないか」と申し出てきた。娘が寝た後、皆で集まっては泣いた。
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「予防接種をしない」という判断は、何をもとにできるのか。
「なったほうがいい」とグループもあります。
最近、米国で問題になりましたが、「なったほうがしっかり免疫がつく。ワクチンはお金がかかる。なった子どもにうつしてもらおう」と麻疹Party、水疱瘡Partyだけでなく、水疱瘡になったこどもの唾液を綿棒やキャンディにして販売するという人まであらわれました。
そこまで極端ではなくても、なるならなったで大丈夫だろうという人は想像以上にいます。
その人に真剣に熱意をもって予防接種のメリットを伝える人がいなければ、自然感染のリスクを伝える人がいなければ。
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娘が4歳のころ、おたふく風邪の予防接種について相談したときには、積極的に勧められなかった記憶があった。おたふく風邪により難聴になる確率もまれだと聞かされ、結局、予防接種を受けなかった。
「娘がムンプス難聴になりました」。女性が伝えると、医師は驚き、気の毒がった。しかし、予防接種の相談を受けたことは、覚えていないようだった。「ワクチンの効果と副作用は、医者任せではなく、母親自身が勉強して決めるべきだ」と医師は考えていた。
ただ医師は、自分の子どもには予防接種をしていた。「自分の子には打つのに、何で人には勧めないの」。腹立たしさでいっぱいになった。
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不活化ポリオのときにも指摘を受けました。
医療者は自分の子には生ワクチンを接種せず不活化ポリオを選んでいるのは「ずるい」「自分たちだけ」「他の子のリスクをどう考えるのか」。
ある保健所で聞いたことは、任意接種のワクチンの情報をHPにのせるとクレームがつくということ。
「国が積極的に推奨していないワクチンの情報をのせるな。何かあったときにどうするのか」と。
かかりつけ医でも説明されず、公的な情報源でもその重要性、感染リスクを知る機会がないとしたら、保護者はどのように情報を知ればよいのでしょうか。
感染症 ムンプス難聴:4 10回聞き返し「悲しい」
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「ふうん、治るんならいいんだけどね」。耳を心配するあまり、時々、おなかや頭が痛くなるという。口には出さないけれど、不安だったんだ――。娘を抱きしめ、背中越しに泣いた。「ずっと聞こえないまま」とは、まだ言えない。「大きくなって耳の腫れがひいたら、少しずつ聞こえるようになるよ」と、願望も込めて言い聞かせた。
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親が子どもの難聴を知るのは、子どもの様子の変化から。
「電話が聞こえない」と気づいた子のエピソード
ムンプス難聴調査をした先生方がいます。
活動を知るホームページはこちら
2009年にPlotkin先生はこう書いています。 Is Japan Deaf to Mumps Vaccination?