ワクチン関連の記事がありました。
4月18日の読売新聞記事、「子宮頸がんワクチン「接種ミスで関節炎」と提訴」
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市立病院でHPVワクチン（子宮頸がん）接種を受けた際、医師が接種箇所を誤ったために左肩に関節炎が発症したとして、市内の４０代の女性が１７日、市に治療費や後遺症の慰謝料など約１８００万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁小倉支部に起こした。
訴状などによると、女性は２０１０年１０月に接種を受けたが、腕を動かせないほどの痛みが出たため、別の医療機関で受診。本来よりも高い位置に注射され、ワクチンに含まれていた免疫増強剤が関節炎を引き起こした可能性があると診断されたという。女性は昨年５月に手術を受け、痛みは和らいだが、以前のように肩が動かないという。
女性は１７日、小倉北区で記者会見を開き、「国や自治体が公費負担で中高生にワクチン接種を実施しており、臨床現場の人には細心の注意を持って接種してほしい」と訴えた。市病院局は「訴状が届いていないため、コメントは差し控えたい」としている。
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はい。違和感のある点はどこですか？ 読売の記事のタイトルがミスリード調なのはいつものこととして、40代の女性？ 本人の希望があれば接種はできますので。
ちなみに、海外では2価も4価も、年齢の上限設定があるのに（自己責任でそれ以上の年齢の人が接種することは可能）、日本では年齢が上の女性も接種可能になっています。メーカーにとっては、売るためには年齢制限がないほうがいいわけですが海外ほどに十分な臨床試験サンプルがないのに、なんてリスクのある判断なんでしょうね。
（なんどもMerck社の年齢が上の女性への適応申請をしていますが、米国FDAは却下しています）
厚労省とか薬事審議・・・な会議が責任を問われるとしたらこのあたりの根拠の曖昧さでしょう。
記事に戻ります。
一番の？な記載は、別の医療機関の医師が”ワクチンに含まれていた免疫増強剤が関節炎を起こした可能性がある”と「診断」したという記載です。
これを「診断」するための根拠や鑑別はなんでしょうか？
新聞記事には2価なのか4価なのか書かれていませんが（時期的には2価）、ワクチンと関節炎の話題は古いテーマなのであり、Merck社はフェーズ4として関連性を検討はしています。
University Hospitals of ClevelandとMerck社がやっている臨床試験
"Safety and Efficacy of Gardasil in Females With Juvenile Idiopathic Arthritis (JIA)/Seronegative Arthritis (CHASE)"
関節炎についてのPhase 4トライアル
調査の対象は（当たり前といえば当たり前ですが）接種対象である9-26歳の女性。
グラクソ・スミスクラインも同様に長期安全性試験でモニタリングをしています。
Cervarix Long-term Safety Surveillance (PGRx)
今年の1月に下記のようなニュースがありました。
Study Finds No Link Between HPV Vaccine and Autoimmune Disorders
No risk seen among nearly 190,000 Gardasil recipients in company-funded review 2012年1月 Healthyday News
ニューヨークとカリフォルニアの研究者、Merck社の協力で行われた、2006−2008年にガーダシルを接種した19万人の女性（9-26歳）を対象とした事後フォロー調査。
自己免疫疾患16種類について、HPVワクチンを接種した人と接種していない人で比較検討した結果、接種群でリスクが高いという結果は得られなかったということです。
記事のソースはJournal of Internal Medicine
Volume 271, Issue 2, pages 193–203, February 2012
"Surveillance of autoimmune conditions following routine use of quadrivalent human papillomavirus vaccine"
です。
Merck社が関与というバイアスはありますが、19万人のコホートを見るには、協力は不可欠でしょう。製薬会社バイアスが気になる人は研究報告の全文を読んで判断するしかありません。
上のニュースは、一般向けの記事です。同時期に、医療関係者向けの情報サイトでも記事になっていました。
HPV Vaccine Not Linked To Autoimmune Disorders, Study Medical News Today 29 Jan 2012
ワクチン市販後（臨床試験の後）のモニタリングが重要なのですが、米国はじめ、多くの国では誰でも（本人でも友達でも主治医でも）有害事象を報告できる仕組みがあります。広く情報を得る方が漏れが無いだろうということと、公正さのためです。
ここにあげられた報告は、「ワクチン接種後に起きたイベント」ですので、転んでケガした、へんなものたべて下痢したのも全部入ります。
重要なのはワクチンとの関連性であり、Causationの検討が行われ、定期的に報告があります。2012年3月のニュースレターはこちら。
このようなレポートは、厚生労働省の担当官や製薬会社は読んでいるのでしょうけれど（編集部が読んでいるのは"趣味"です）、多忙なドクターが毎回目を通すのはたいへんです。
日本語での最新情報サマリーなどが、結核感染症課の感染症エクスプレスに月1回でも載るといいですねえ・・・（ぼそぼそ）。
DHHSのQ&Aです。長いのですがペーストしておきます。
Do vaccines cause fibromyalgia, rheumatoid arthritis, arthritis, or lupus?
After decades of vaccine use in the U.S., current research shows no definitive evidence proving vaccines cause chronic illness.
According to the Arthritis Foundation, there is no known link between vaccines and fibromyalgia, rheumatoid arthritis, or lupus, and while the number of persons with these conditions has been rising, the statistics do not support alarm over these increases.(1) In considering the increases, it's important to remember that rheumatoid arthritis (a type of arthritis that causes systemic inflammation, as well as joint problems), arthritis, and lupus are primarily diseases of middle and older age. A very large segment of the American population--the so-called "baby boomers"--are now entering the ages when these diseases occur, so an increase in the numbers of cases is to be expected.
Perception of increases in fibromyalgia incidence may be because this disease has only recently been defined, and it is just in the past decade that physicians have known that the various symptoms of fibromyalgia (chronic muscle aches and pains, "trigger points" of pain, and chronic, sometimes overwhelming fatigue) do constitute a specific disease. Thus, it is not possible to know whether the number of cases detected these days represents an increase over that which occurred previously.
Arthritis, on the other hand, is not a "new" disease. Evidence of osteoarthritis (arthritis confined to the joints, where one bone meets another) has been found as far back as the mummies of ancient Egypt. Its incidence increases with age. In a comprehensive 1994 study of adverse events associated with vaccination, the Institute of Medicine reviewed the possibility of a link between diphtheria and tetanus vaccines--these vaccines are generally given in combination--and arthritis. The Institute found that it is biologically possible for these immunizations to be associated with arthritis, primarily because the tetanus toxoid has the potential to induce serum sickness, which is a source of a temporary form of arthritis. However, the Institute also found that the evidence available in scientific studies up to 1994 was inadequate to determine whether this biologically possible link actually occurs. Since those findings were reported, one group of researchers found a link between rubella vaccine and temporary, acute arthritis, arthralgia (joint pain) or myalgia (muscle pain) when the vaccine was administered within 12 months of giving birth.(2) Another group found no evidence of any increased risk of developing chronic arthritis, arthralgia, or myalgia within the 12 months following vaccination; the women in this study were of childbearing age.(3)
Similarly, the Institute found that a link between hepatitis B vaccine and acute or chronic arthropathy (inflamed, painful joints) also is biologically plausible, but the studies available are inadequate to accept or reject a causal link to vaccination. A link between the disease, hepatitis B, and arthropathy has been proven.(4)
反ワクチン団体の情報を見ると、B型肝炎、DTP、風疹、新型インフル、、、などでリウマチになる！という記事を見つけることができます。
ワクチンで○○になる！という場合、実際にその成分等がもともとそのような反応を起こすものかという仮説検討が行われますが、
ワクチンのように、多くの人が接種するようなものだと、一見関連性がありそうにみえるのは最初からわかっていることです。
交通事故を起こした人が、全員、朝にみそ汁を飲んでいたとしても、みそ汁が交通事故の原因とは通常考えません。
遺伝子的な差もありますが、Prevalence Of Arthritis で、各年代でどれくらいの人が関節炎になるのかを調べて考えるのも、学部生の授業の題材としていいかもしれませんね。
上の「個別の事例」のニュースは、接種部位が・・・・といったことは医療記録がないとわかりません。
しかし、背景として「一般的な情報」を知っておくことはワクチンに関わる人たちには重要なことだと思います。
関節炎の専門家たちが問題視しているのかも重要。
4月18日の読売新聞記事、「子宮頸がんワクチン「接種ミスで関節炎」と提訴」
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市立病院でHPVワクチン（子宮頸がん）接種を受けた際、医師が接種箇所を誤ったために左肩に関節炎が発症したとして、市内の４０代の女性が１７日、市に治療費や後遺症の慰謝料など約１８００万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁小倉支部に起こした。
訴状などによると、女性は２０１０年１０月に接種を受けたが、腕を動かせないほどの痛みが出たため、別の医療機関で受診。本来よりも高い位置に注射され、ワクチンに含まれていた免疫増強剤が関節炎を引き起こした可能性があると診断されたという。女性は昨年５月に手術を受け、痛みは和らいだが、以前のように肩が動かないという。
女性は１７日、小倉北区で記者会見を開き、「国や自治体が公費負担で中高生にワクチン接種を実施しており、臨床現場の人には細心の注意を持って接種してほしい」と訴えた。市病院局は「訴状が届いていないため、コメントは差し控えたい」としている。
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はい。違和感のある点はどこですか？ 読売の記事のタイトルがミスリード調なのはいつものこととして、40代の女性？ 本人の希望があれば接種はできますので。
ちなみに、海外では2価も4価も、年齢の上限設定があるのに（自己責任でそれ以上の年齢の人が接種することは可能）、日本では年齢が上の女性も接種可能になっています。メーカーにとっては、売るためには年齢制限がないほうがいいわけですが海外ほどに十分な臨床試験サンプルがないのに、なんてリスクのある判断なんでしょうね。
（なんどもMerck社の年齢が上の女性への適応申請をしていますが、米国FDAは却下しています）
厚労省とか薬事審議・・・な会議が責任を問われるとしたらこのあたりの根拠の曖昧さでしょう。
記事に戻ります。
一番の？な記載は、別の医療機関の医師が”ワクチンに含まれていた免疫増強剤が関節炎を起こした可能性がある”と「診断」したという記載です。
これを「診断」するための根拠や鑑別はなんでしょうか？
新聞記事には2価なのか4価なのか書かれていませんが（時期的には2価）、ワクチンと関節炎の話題は古いテーマなのであり、Merck社はフェーズ4として関連性を検討はしています。
University Hospitals of ClevelandとMerck社がやっている臨床試験
"Safety and Efficacy of Gardasil in Females With Juvenile Idiopathic Arthritis (JIA)/Seronegative Arthritis (CHASE)"
関節炎についてのPhase 4トライアル
調査の対象は（当たり前といえば当たり前ですが）接種対象である9-26歳の女性。
グラクソ・スミスクラインも同様に長期安全性試験でモニタリングをしています。
Cervarix Long-term Safety Surveillance (PGRx)
今年の1月に下記のようなニュースがありました。
Study Finds No Link Between HPV Vaccine and Autoimmune Disorders
No risk seen among nearly 190,000 Gardasil recipients in company-funded review 2012年1月 Healthyday News
ニューヨークとカリフォルニアの研究者、Merck社の協力で行われた、2006−2008年にガーダシルを接種した19万人の女性（9-26歳）を対象とした事後フォロー調査。
自己免疫疾患16種類について、HPVワクチンを接種した人と接種していない人で比較検討した結果、接種群でリスクが高いという結果は得られなかったということです。
記事のソースはJournal of Internal Medicine
Volume 271, Issue 2, pages 193–203, February 2012
"Surveillance of autoimmune conditions following routine use of quadrivalent human papillomavirus vaccine"
です。
Merck社が関与というバイアスはありますが、19万人のコホートを見るには、協力は不可欠でしょう。製薬会社バイアスが気になる人は研究報告の全文を読んで判断するしかありません。
上のニュースは、一般向けの記事です。同時期に、医療関係者向けの情報サイトでも記事になっていました。
HPV Vaccine Not Linked To Autoimmune Disorders, Study Medical News Today 29 Jan 2012
ワクチン市販後（臨床試験の後）のモニタリングが重要なのですが、米国はじめ、多くの国では誰でも（本人でも友達でも主治医でも）有害事象を報告できる仕組みがあります。広く情報を得る方が漏れが無いだろうということと、公正さのためです。
ここにあげられた報告は、「ワクチン接種後に起きたイベント」ですので、転んでケガした、へんなものたべて下痢したのも全部入ります。
重要なのはワクチンとの関連性であり、Causationの検討が行われ、定期的に報告があります。2012年3月のニュースレターはこちら。
このようなレポートは、厚生労働省の担当官や製薬会社は読んでいるのでしょうけれど（編集部が読んでいるのは"趣味"です）、多忙なドクターが毎回目を通すのはたいへんです。
日本語での最新情報サマリーなどが、結核感染症課の感染症エクスプレスに月1回でも載るといいですねえ・・・（ぼそぼそ）。
DHHSのQ&Aです。長いのですがペーストしておきます。
Do vaccines cause fibromyalgia, rheumatoid arthritis, arthritis, or lupus?
After decades of vaccine use in the U.S., current research shows no definitive evidence proving vaccines cause chronic illness.
According to the Arthritis Foundation, there is no known link between vaccines and fibromyalgia, rheumatoid arthritis, or lupus, and while the number of persons with these conditions has been rising, the statistics do not support alarm over these increases.(1) In considering the increases, it's important to remember that rheumatoid arthritis (a type of arthritis that causes systemic inflammation, as well as joint problems), arthritis, and lupus are primarily diseases of middle and older age. A very large segment of the American population--the so-called "baby boomers"--are now entering the ages when these diseases occur, so an increase in the numbers of cases is to be expected.
Perception of increases in fibromyalgia incidence may be because this disease has only recently been defined, and it is just in the past decade that physicians have known that the various symptoms of fibromyalgia (chronic muscle aches and pains, "trigger points" of pain, and chronic, sometimes overwhelming fatigue) do constitute a specific disease. Thus, it is not possible to know whether the number of cases detected these days represents an increase over that which occurred previously.
Arthritis, on the other hand, is not a "new" disease. Evidence of osteoarthritis (arthritis confined to the joints, where one bone meets another) has been found as far back as the mummies of ancient Egypt. Its incidence increases with age. In a comprehensive 1994 study of adverse events associated with vaccination, the Institute of Medicine reviewed the possibility of a link between diphtheria and tetanus vaccines--these vaccines are generally given in combination--and arthritis. The Institute found that it is biologically possible for these immunizations to be associated with arthritis, primarily because the tetanus toxoid has the potential to induce serum sickness, which is a source of a temporary form of arthritis. However, the Institute also found that the evidence available in scientific studies up to 1994 was inadequate to determine whether this biologically possible link actually occurs. Since those findings were reported, one group of researchers found a link between rubella vaccine and temporary, acute arthritis, arthralgia (joint pain) or myalgia (muscle pain) when the vaccine was administered within 12 months of giving birth.(2) Another group found no evidence of any increased risk of developing chronic arthritis, arthralgia, or myalgia within the 12 months following vaccination; the women in this study were of childbearing age.(3)
Similarly, the Institute found that a link between hepatitis B vaccine and acute or chronic arthropathy (inflamed, painful joints) also is biologically plausible, but the studies available are inadequate to accept or reject a causal link to vaccination. A link between the disease, hepatitis B, and arthropathy has been proven.(4)
反ワクチン団体の情報を見ると、B型肝炎、DTP、風疹、新型インフル、、、などでリウマチになる！という記事を見つけることができます。
ワクチンで○○になる！という場合、実際にその成分等がもともとそのような反応を起こすものかという仮説検討が行われますが、
ワクチンのように、多くの人が接種するようなものだと、一見関連性がありそうにみえるのは最初からわかっていることです。
交通事故を起こした人が、全員、朝にみそ汁を飲んでいたとしても、みそ汁が交通事故の原因とは通常考えません。
遺伝子的な差もありますが、Prevalence Of Arthritis で、各年代でどれくらいの人が関節炎になるのかを調べて考えるのも、学部生の授業の題材としていいかもしれませんね。
上の「個別の事例」のニュースは、接種部位が・・・・といったことは医療記録がないとわかりません。
しかし、背景として「一般的な情報」を知っておくことはワクチンに関わる人たちには重要なことだと思います。
関節炎の専門家たちが問題視しているのかも重要。