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Channel: 感染症診療の原則
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カルバペネムの使用量が6倍に増える病院も・・

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信じられない事ですが、Piperacillin/Tazobactamという重要な抗菌薬も出荷調整となります。それが引き起こす事態を編集長が信頼する感染症専門医達に伺いました。

#1:タゾピペのスペクトラムを、どの抗菌薬(or 組み合わせ)でカバーするかの問題。

・アンピシリン/スルバクタム+シプロフロキサシン
・セフメタゾール+シプロフロキサシン
・セフォペラゾン/スルバクタム
・これ結構、感染症の知識が必要です。(これらの抗菌薬も枯渇してる施設++) 
⇒ 面倒であればカルバペネムに簡単に移行してしまうでしょう ⇒ 問題#2へ


#2:カルバペネムやFQ使用圧の上昇の問題。
・カルバペネムを温存し、タゾピペで済ませられたら済ませたい状況は少なからずあるはずです。
・でもタゾピペが無くなれば「本当にカルバペネムの出番かどうか」を問うASP的な文化が弱まりカルバペネムの使用は増える。
・ESBLにしても「安心して治療できるのは」カルバペネムだけです。
・そして結局、よりカルバペネム耐性菌が増えるでしょう。

・新しいFQもスペクトラム的にはタゾピペに似ますが、副作用故にFDAではBlack box warningに入るくらいなので使用が増えることは大問題です。

#3:その他
・「またか」というASPの機運を損なうような雰囲気を現場にもたらす
・緊迫感のなさの問題:カルバペネム使用増加による耐性菌問題を皮膚温で感じることは難しいです。
きちんとした疫学的測定無く事態が漠然と悪化すれば、カルバペネム耐性菌だらけになっていることに気づいた時はtoo lateになっているでしょう。

訴求力を持たせるのが本当に難しい大問題です。

以上、専門医1人目の意見:///////////////////////////////////////////////////


・タゾピペがなくなれば、カルバペネムの使用量が必然的に増えます。
例えば2018年に当院でカルバペネムが投与された入院患者割合は1%、タゾピペは6%です。
・早期にde-escalationしていましたのでAUD比較でカルバペネム:タゾピペ=1:2まで抑えられましたが、de-escalationする薬剤もない現状ではカルバペネムの使用量が6倍に増える(!)ことさえ予測されます。
・そうなればメロペネム耐性緑膿菌、果てはCRE(CPE)の増加は必至です。

・そしてご指摘のように、代替薬の供給がありません。とくにメトロニダゾールやアンピシリンがないことにはBacteroidesやE.faecalisを含む感染症の治療薬選択が極めて難しくなります。

・代替薬の2剤以上の併用は、1日の点滴回数3回超えが許されない中小病院では難しいでしょう。これもカルバペネムに流れる一要因になりうると考えます。

・大切にカルバペネムを使っていた病院がパニックになり、もともとカルバペネムだけ使っていた病院が安心する。

・そんな逆転現象が続くようであれば苦労してまでASPを進めていこうという気持ちが削がれても非難できません。単に耐性菌が増えることよりも、このheart breakのほうが日本の将来に痛手と感じています。

以上、専門医2人目の意見:///////////////////////////////////////////////////

#1:タゾピペのスペクトラムを、どの抗菌薬(or 組み合わせ)でカバーするかの問題。
IDのいない病院では難しいでしょうし、
#2:カルバペネムやFQ使用圧の上昇の問題。
IDがいる病院でも懸念されます。

・多くの病院が、おそらく最初からタゾピペの欠乏を、どの抗菌薬でカバーするかは通り過ぎて、カルバペネムやキノロンに流れることが想定されます。

・キノロンに至っては大腸菌の感受性が悪いですし、正しい知識なくempiric therapyに使用された場合には患者さんに影響が出るかもしれません。

・そしてやはりセファゾリンの時と同じように貧乏くじを引いた病院(出荷調整となる製薬メーカーを採用していた病院)は、「はい残念!後は頑張って!」的な運命をたどります。このシステムを改善する必要があります。

・ご指摘のように「緊迫感のなさ」がこの問題に取り組む障壁になると思います。

以上、専門医3人目の意見:///////////////////////////////////////////////////


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