Quantcast
Channel: 感染症診療の原則
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3238

日本のHIV/AIDS 2018年3月

$
0
0
患者さんの血液から肝炎ウイルスに感染して病床にあった編集長が読んでいたのはMMWR

そこにあった「同性愛の男性でおきている不思議な免疫不全」。
その時はその後深く関わることになろうとはおもっていなかったHIV/AIDS。
しかし、ケンタッキー大学での研修、帰国してから日本のエイズ診療の立ち上げと深く関わることになりました。

もうあまり話題にならなくなっていますが(それはそれでいい面もあります)、あの結核でさえ、マラリアでさえWHOに専門機関はありませんが、HIV/AIDSは「UNAIDS」という機関もできて、莫大な予算が投じられ、科学と腕力によって各分野で目覚ましい進歩や取り組みの成果がみられました。

「いま、日本のHIVってどうなってるんですか?」という問い合わせはときどききます。

1980年代 混乱:医療機関での受診拒否なども問題でした
1990年代 希望と負担:新しい治療薬が開発されましたが副作用や服用の継続はとても厳しいものでした
2000年代 長期の健康管理:HIVそのものはコントロールできても他の健康管理課題がなくなったわけではありません
2010年代 積極的な治療、治療薬を用いた予防で、さらなる感染予防につなげようという時代。

時間とお金をかけて取り組んだワクチンは完成していません。
ワクチンのない感染症は基本的にはゼロにできないのですが、ゼロにするという目標を掲げるにいたっています。(予防や対策について語る際はご注意下さい)

ワクチンは仮に「モノ」が開発されたとしてもその先も課題です。誰にどのように接種するのか。
その費用負担は誰がするのか、輸送や管理はと言ったことも含めてです。

治療が大変よくなりましたので、感染に早く気づいて薬を早く飲み始めて、健康管理をしっかりできるといいですね、というのが病気の管理の常用です。

流行状況は?


かつて「感染爆発」といった見出しが報道に並んだこともありました。
女性に必要な経口避妊薬の認可は「エイズが蔓延するかもしれない」という関係者の発言で遅れました。

幸い、2018年3月現在、日本ではそのようなじたいはおきていません。
梅毒と比べて報告率の高いHIV感染症の疫学データをみると、ここ数年の1年間のHIV感染症の発生届けは1500前後。男性と性交をする男性を中心に流行していることや、もともと感染力が強くないこと、日本人が避妊手段としてコンドームを使うこと、日本人の性的な活動が低調であること(各種調査より)などが幸いしているのかもしれません。

発生動向調査はエイズ予防財団のHPに掲載されています。
(国立感染症研究所の疫学センターHPに掲載されたほうが見手もらえると思うんですけどね)

ざっくりですが、、、

HIV感染症(感染しているけど発症していない) 日本国籍が9割(男性が97%)、外国籍が1割(男性が80%)
エイズを発症した人は日本国籍が9割(男性が95%)、外国籍が1割(男性が90%)

2017年の速報をみると母子感染が3例報告されています。

妊婦健診の前期検査でHIV陽性がわかれば感染させない方法があるので、
「健診をうけていないで出産に至った」
「前期の検査は陰性で、その後感染した」
「健診で陽性とわかっていたがその後医療介入しなかった/不十分だった」
ということがあります。

上記以外では、
「子どもが体調不良→たまたまHIV感染がわかった→母親や他の家族の感染もわかった」
という母子感染の事例もありました。

子どもにHIV検査を考える機会はあまり想像しにくいと思いますが、
たまたま分かった事例としては、術前一式など全員ルチン検査でひかかったというパターンがあります。

最近は外国ルーツの方も増えていますので、高流行国出身者だったら陽性的中率が上がる訳ですから当然検討をします。

保健所の検査をガンガン叫ぶほどには日本では流行していませんので、高リスクの人たちが安心して受けられる検査サービスの保持、放っておいたら自分では気づかない系の人たちのためには、人間ドックや会社の健診にオプションで入れるなども選択肢ですが。その結果(個人情報)がどこまで共有されるのかが悩ましいです。

今後は保健所に来所するのではなく、在宅(郵送/宅配)検査がいいのではないでしょうか。
あれこれ質問されたくない、でも1回くらい受けておきたいという人は新しいパートナーに切り替わるたおきなどにいるでしょうから。

英国でもSELF TESTに切り替えています。
今度ご結婚される王子も、毎年HIV検査キャンペーンに協力しています。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3238

Trending Articles