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Channel: 感染症診療の原則
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A型肝炎 しずかにブレイク中

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1998年に都内のエイズ診療拠点病院の医師らが気づいたA型肝炎のアウトブレイクがありました。

「アウトブレイク」とわかるまでには一定の時間とプロセスがあります。

拠点病院には複数のHIV陽性者(共通の因子の)が通院していますが、ほぼ「同時期」に複数の患者が把握されている。「なぜだろう?」とおおもうかどうかです。

Partyなどで共通のメユーを食べたから? 同じツアーで旅行に行ったから?
これは一般的に考えるA型肝炎で複数の症例が把握されるパターンです。

下記の論文の書き出しで武市先生が指摘しています。

「日本では未だ食物による感染症としか認識されていない」。

男性同性愛者における急性A型肝炎の流行についての検討(感染症学雑誌74巻9号)

これは(新宿区歌舞伎町にある)大久保病院の先生方による報告です。
青木編集長、かつてはこちらの病院でも外来診療を行っていました。
(ハッテンという言葉も知らずに,「その」公園でランチを食べていた懐かしい時代)

当時、「MSMの間ではやるなんてびっくりだ〜」というのが関係者の間でのホットな話題となりました。

「カキ食べた?」と聞くだけではダメなんですね。

なんとなくとっかかりがつかめない感染症のひとつですが、保健医療関係者が手を抜いてはいけない感染症のひおっつです。
感染力が長く、さらに潜伏期間が長い感染症なので、濃厚接触者だけでなく同居者などに広がることも知られています。

例えば秋田県では5人家族に広がり1名死亡

「死ぬかもしれない系」の感染症のひとつです。
衛生状態がよくなり、免疫のない大人もたくさんいます。
日常的にとっかかりがないので、海外渡航時のトラベルワクチンとして検討する機会があればラッキーといえます。

地頭の良い人は既にお気づきだと思いますが、HAVが性感染症ならば、アメーバ赤痢もジアルジアも細菌性赤痢もノロウイルスも同じように広がるのでは??? (その通りです)

膣−ペニス性交についてはコンドームの話をすればいいかと思うでしょうが、オーラルセックスやアナルセックス、指や口での刺激となると、「いかに病気を避けて安全に行うか」というdeepな話になっていきます。


そもそも「性感染症」として学ぶ機会がある人はそう多くありません。
また性感染症のカテゴリーで予防ワクチンがあることを知らない人もいます。

アウトブレイクがおきるリスクがある対象やコミュニティにたいして、常日頃からプライマリケアとして予防接種の取り組みをすることも重要です。
gay, bisexual 男性の健康支援を行っている医療機関では、A型肝炎/B型肝炎/HPVワクチン等も接種のための情報提供をしています。
全額自己負担なので皆が皆希望するわけではないですが。感染症はなったときに「実は予防法があったらしい」ということが一番残念として語られますので。

もとより、自分はgay, bisexualですと伝えて(伝えられて)健康をともに考えられる信頼関係にあるかどうかがカギなんですが。

掲示板で探している人もいます。
Gay friendly doctor in Tokyo

HIV感染症を診ているドクターはgay friendlyかはわかりませんが、MSMの健康の話に慣れているという利点はあるかもしれません。研修会でも一大トピックスですので。

東京都やコミュニティの関係者がすでに注意喚起を行っています。

ヨーロッパ、北米だけでなくアジア地域のMSMでも広がっています。

名古屋、大阪、福岡など別の地域のコミュニティに広げないよう予防にぜひご協力下さい。

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