百日咳は、成人では重症化はまれですが、子ども、特に乳幼児では重症化しやすく、0歳児ではほとんどが入院となります。咳が激しく、嘔吐でミルクが飲めない等、生命が危うくなることも多く、入院は1−2カ月になることも。
現在、百日咳−ジフテリア−破傷風の三種混合ワクチンは2カ月からスタートしていますが、0歳児で発症/入院/死亡リスクが高いのは接種前です。
米国のデータでは感染源の半分が両親。そのほかに年長のきょうだいや祖父母等があります。
なぜ、この世代で百日咳が問題かというと、赤ちゃんのときに接種したワクチンの効果が源弱するからであり、最近、特定の国の特定の地域に特定の考え方をもってワクチンを一切接種しない人たちもいるので、地域流行がおこります。
そのアウトブレイク対策として、また、免疫を強化するためにTdapを思春期に接種する国が増えているのはこのためです。
「Tdapワクチンによる高校での百日咳集団発生のコントロール、2006年9 月〜2007年1 月―米国・イリノイ州クック郡」IASR: 2008年9月号
0歳児が死亡した地域では、再発防止にとりくんでいます。米国では新入学期までにワクチン接種証明の提出が義務づけられていたり、オーストラリアではこれから妊娠出産を迎える保護者には無料でブースターワクチンを提供しています。
2012年4月現在、日本ではブースターワクチンは未承認ですが、輸入ワクチンを扱っているクリニックなどで接種は可能です。
恵比寿のたからぎ医院、立川のナビタス立川、など、「Tdap」と皆さんのお住まいの地域名をいれて検索するとみつかるかもしれません。(世田谷区、渋谷区などは複数開業医さんをみつけることができます)
日本でも、ワクチン導入前には百日咳は毎年10万例が報告され、10%が死亡していました。
今から44年前の1968(昭和43)年から現在のコンビネーションであるDPT 三種混合ワクチンが定期接種として広く行われるようになっています。
このワクチンの普及により症例数は激減し、3年後の1971年には206 例となりました。
その後、副反応が問題となり、1975 年2 月にDPT ワクチンは一時中止。2カ月後に再開されたものの、接種率が下がり、1979 年には約13,000例規模まで増加(死亡は約20 〜30 例)。
その後、従来の全菌体ワクチン(whole cell vaccine)から無細胞ワクチン(acellular vaccine)へと変更され、DPT の接種率が回復しています。
この間に接種もれ/接種回数不足となっている人たちも存在します。うまれた年が重要です。
3月15日に百日咳についてのワクチン効果の論文が掲載されていました。
Unexpectedly Limited Durability of Immunity Following Acellular Pertussis Vaccination in Pre-Adolescents in a North American Outbreak
Clin Infect Dis. (2012)
無細胞ワクチンは、当初想定されていたよりも効果が弱いと考えられた、という話です。
ワクチン接種率の高い地域でおきたアウトブレイクを検証します。
acelluar vaccineは安全性の面で改善されましたが、whole cell vaccineと比べて効果が弱く費用が高いことがわかっています。whole cell vaccineの効果を前提としたCDC/ACIPのスケジュールでよいのか?という問題視的はこれまでにもありました。
カイザーパーマネンテ(保険システム)がケアを提供している人口は13万5千人おり、Marin群の人口40%に相当します。
2010年3月1日−10月31日にこの地域でPCR陽性の171例の百日咳症例が把握されました。48%が男性、52%が女性で、保険システムに登録されている個人属性データ、ワクチン接種歴が検討されました。
171例のうち、132例(77%)は発症時に18歳より若く、8-12歳群での増加が顕著でした。
81%がワクチン完了、11%は回数不足、8%が未接種でした。
12歳より下の103例で(60.2%)みると、85%がワクチン完了、7%が回数不足、8%が未接種でした。
このサンプルの母集団である18歳以下の22,798人全体では、ワクチン接種率は88−94%と良好でした。
検査率は新生児が最も高く、12歳まで広く検査が行われていました。
陽性の結果は0-6カ月児がもっとも低く、思春期前期(ピークは12歳)で陽性の結果が多くなっていました。
PCR陽性の思春期前期患者と他の年齢群でのワクチン接種率はほぼ同等で、
ワクチン効果(Vaccine Effectiveness)は2-7歳で 41%、8-12歳で24%、13-18歳で79%でした。
接種率が高く維持されても数年ごとに百日咳がアウトブレイクする背景には、思春期層でのリザーバーの存在があります。
現在の予防接種スケジュールと接種量(無細胞の百日咳ワクチン)では百日咳のアウトブレイク阻止には不十分と考えられました。
最後の接種から時間の経過している8-12歳群で罹患率が増加していることから、ブースターワクチン接種時期の前倒しや接種回数の増加などが検討事項と指摘されています。
この論文は、一定の規模の集団の観察データの記述として興味深いですが、詳細の検証には、血清サーベイランス等も必要かも。
また、カイザーパーマネンテの顧客データというバイアスがあり、地域流行の症例群とこのデーターベースでの症例群の因子が同等なのかがわかりません。このため断定的なことや一般化が難しい報告であり、さらに検討するためにはカリフォルニア地域で公衆衛生当局によって行われた同時期の調査結果と比較する必要があります。
この論文は一般メディアでは(目新しい話題ではないため)ほとんどとりあげられていませんでした。
すでにブースターワクチンが導入されていて、次の9月までには接種証明が必要な州も増えていますので。
ここからは余談。
しかし、一部ネットで引用されていたのと、記載内容に誤りがあったので調べてみました。
Natural News系やホメオパシーサイトでは、この論文について「ワクチンを接種した人の方が発症している」という誤読をしています。データを読めない人が書いたのかどうかわかりませんが。
高い接種率が維持されている層でもアウトブレイクがおこるということは、昔の免疫が現在、アウトブレイクを抑制するほどに十分保たれていないというのが今回の論文の主旨ですが、下記のように言い換えています。論文がよめないのか、ワクチンのことがわかっていないのか、悪意なのかわかりませんが。
"New research reported by Reuters reveals that whooping cough outbreaks are HIGHER among vaccinated children compared with unvaccinated children."
元のロイター記事にもそんなことは書いてありません。
" Witt had expected to see the illnesses center around unvaccinated kids, knowing they are more vulnerable to the disease. "We started dissecting the data. What was very surprising was the majority of cases were in fully vaccinated children. That's what started catching our attention."
代替療法やサプリ商品の広告だらけのサイトなので、ぱっと見てへんだなあと気づけるとは思いますが。
勉強するならNatural NewsではなくNatureを読みましょう。
現在、百日咳−ジフテリア−破傷風の三種混合ワクチンは2カ月からスタートしていますが、0歳児で発症/入院/死亡リスクが高いのは接種前です。
米国のデータでは感染源の半分が両親。そのほかに年長のきょうだいや祖父母等があります。
なぜ、この世代で百日咳が問題かというと、赤ちゃんのときに接種したワクチンの効果が源弱するからであり、最近、特定の国の特定の地域に特定の考え方をもってワクチンを一切接種しない人たちもいるので、地域流行がおこります。
そのアウトブレイク対策として、また、免疫を強化するためにTdapを思春期に接種する国が増えているのはこのためです。
「Tdapワクチンによる高校での百日咳集団発生のコントロール、2006年9 月〜2007年1 月―米国・イリノイ州クック郡」IASR: 2008年9月号
0歳児が死亡した地域では、再発防止にとりくんでいます。米国では新入学期までにワクチン接種証明の提出が義務づけられていたり、オーストラリアではこれから妊娠出産を迎える保護者には無料でブースターワクチンを提供しています。
2012年4月現在、日本ではブースターワクチンは未承認ですが、輸入ワクチンを扱っているクリニックなどで接種は可能です。
恵比寿のたからぎ医院、立川のナビタス立川、など、「Tdap」と皆さんのお住まいの地域名をいれて検索するとみつかるかもしれません。(世田谷区、渋谷区などは複数開業医さんをみつけることができます)
日本でも、ワクチン導入前には百日咳は毎年10万例が報告され、10%が死亡していました。
今から44年前の1968(昭和43)年から現在のコンビネーションであるDPT 三種混合ワクチンが定期接種として広く行われるようになっています。
このワクチンの普及により症例数は激減し、3年後の1971年には206 例となりました。
その後、副反応が問題となり、1975 年2 月にDPT ワクチンは一時中止。2カ月後に再開されたものの、接種率が下がり、1979 年には約13,000例規模まで増加(死亡は約20 〜30 例)。
その後、従来の全菌体ワクチン(whole cell vaccine)から無細胞ワクチン(acellular vaccine)へと変更され、DPT の接種率が回復しています。
この間に接種もれ/接種回数不足となっている人たちも存在します。うまれた年が重要です。
3月15日に百日咳についてのワクチン効果の論文が掲載されていました。
Unexpectedly Limited Durability of Immunity Following Acellular Pertussis Vaccination in Pre-Adolescents in a North American Outbreak
Clin Infect Dis. (2012)
無細胞ワクチンは、当初想定されていたよりも効果が弱いと考えられた、という話です。
ワクチン接種率の高い地域でおきたアウトブレイクを検証します。
acelluar vaccineは安全性の面で改善されましたが、whole cell vaccineと比べて効果が弱く費用が高いことがわかっています。whole cell vaccineの効果を前提としたCDC/ACIPのスケジュールでよいのか?という問題視的はこれまでにもありました。
カイザーパーマネンテ(保険システム)がケアを提供している人口は13万5千人おり、Marin群の人口40%に相当します。
2010年3月1日−10月31日にこの地域でPCR陽性の171例の百日咳症例が把握されました。48%が男性、52%が女性で、保険システムに登録されている個人属性データ、ワクチン接種歴が検討されました。
171例のうち、132例(77%)は発症時に18歳より若く、8-12歳群での増加が顕著でした。
81%がワクチン完了、11%は回数不足、8%が未接種でした。
12歳より下の103例で(60.2%)みると、85%がワクチン完了、7%が回数不足、8%が未接種でした。
このサンプルの母集団である18歳以下の22,798人全体では、ワクチン接種率は88−94%と良好でした。
検査率は新生児が最も高く、12歳まで広く検査が行われていました。
陽性の結果は0-6カ月児がもっとも低く、思春期前期(ピークは12歳)で陽性の結果が多くなっていました。
PCR陽性の思春期前期患者と他の年齢群でのワクチン接種率はほぼ同等で、
ワクチン効果(Vaccine Effectiveness)は2-7歳で 41%、8-12歳で24%、13-18歳で79%でした。
接種率が高く維持されても数年ごとに百日咳がアウトブレイクする背景には、思春期層でのリザーバーの存在があります。
現在の予防接種スケジュールと接種量(無細胞の百日咳ワクチン)では百日咳のアウトブレイク阻止には不十分と考えられました。
最後の接種から時間の経過している8-12歳群で罹患率が増加していることから、ブースターワクチン接種時期の前倒しや接種回数の増加などが検討事項と指摘されています。
この論文は、一定の規模の集団の観察データの記述として興味深いですが、詳細の検証には、血清サーベイランス等も必要かも。
また、カイザーパーマネンテの顧客データというバイアスがあり、地域流行の症例群とこのデーターベースでの症例群の因子が同等なのかがわかりません。このため断定的なことや一般化が難しい報告であり、さらに検討するためにはカリフォルニア地域で公衆衛生当局によって行われた同時期の調査結果と比較する必要があります。
この論文は一般メディアでは(目新しい話題ではないため)ほとんどとりあげられていませんでした。
すでにブースターワクチンが導入されていて、次の9月までには接種証明が必要な州も増えていますので。
ここからは余談。
しかし、一部ネットで引用されていたのと、記載内容に誤りがあったので調べてみました。
Natural News系やホメオパシーサイトでは、この論文について「ワクチンを接種した人の方が発症している」という誤読をしています。データを読めない人が書いたのかどうかわかりませんが。
高い接種率が維持されている層でもアウトブレイクがおこるということは、昔の免疫が現在、アウトブレイクを抑制するほどに十分保たれていないというのが今回の論文の主旨ですが、下記のように言い換えています。論文がよめないのか、ワクチンのことがわかっていないのか、悪意なのかわかりませんが。
"New research reported by Reuters reveals that whooping cough outbreaks are HIGHER among vaccinated children compared with unvaccinated children."
元のロイター記事にもそんなことは書いてありません。
" Witt had expected to see the illnesses center around unvaccinated kids, knowing they are more vulnerable to the disease. "We started dissecting the data. What was very surprising was the majority of cases were in fully vaccinated children. That's what started catching our attention."
代替療法やサプリ商品の広告だらけのサイトなので、ぱっと見てへんだなあと気づけるとは思いますが。
勉強するならNatural NewsではなくNatureを読みましょう。