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Channel: 感染症診療の原則
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若セミ 12月2日(金)金城先生 Q&A

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2016年12月2日 の金城先生の市中肺炎Lecture Q&Aが出来ました。

質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 外来で見ることのできる範囲だけかもしれませんが、X線で肺炎像が確定できず、CTで肺炎像があったとしても、酸素化を含むバイタルが安定し、喀痰グラム染色で起因菌が推定できれば、治療方針は変わらないのではないでしょうか。
解答: 良質の痰が採取でき、たとえば肺炎球菌が白血球と共に見えれば肺炎球菌性肺炎の確率は上がるでしょう。問題はインフルエンザ桿菌(H flu)が見えた場合です。肺に疾患を持たない場合には肺炎であることが強く示唆されますが、COPDや気管支拡張症など慢性呼吸器疾患の既往がある場合には気道にH fluが定着することも多く、患者の症状がウイルス性の上気道炎、H fluによる上気道炎(この2者はレントゲンは陰性)なのか、H fluの肺炎だがレントゲンが偽陰性なのか痰の情報だけでは判別困難であろうと思います。


質問者 : 内科 20代
質問内容 : 小児では定着菌でも肺炎球菌抗原陽性になるとのことですが、成人にて肺炎球菌は常在していないけど、小児では常在しているということでしょうか。
解答:肺炎球菌は鼻腔に定着することが知られています。生後6ヶ月までに約半数が肺炎球菌を鼻に獲得しますが、その後年齢と共に減少すると言われています。
例えば最近の報告ですが、2010年11月から2011年9月まで英国テムズ川地方の子供(22ヶ月~55ヶ月)とその親、65歳以上の成人の鼻腔の肺炎球菌の定着率を調べた研究では、子供は47%、親は9%、65歳以上は2.2%で肺炎球菌が検出されています(Medicine 2015; 94: e335)。


質問者 : 医師 救急科20代
質問内容 : 肺炎球菌抗原は肺炎球菌ワクチンで偽陽性はありますでしょうか。
解答:PCV23ワクチン接種後48時間程度尿中肺炎抗原が陽性になることがあるとされています。例えばJ Am Geriatr Soc. 2008;56:170


質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 比較的急性経過が多い市中肺炎ですが、抗酸菌の検査をした方が良い場合はどのような経過でしょうか。沖縄中部病院では、どのくらいの割合で抗酸菌検査も併用されているでしょうか。
解答:若いリスクに乏しい肺炎患者では抗酸菌染色・培養はしていないことが多いですが、高齢者では行うことが多いです。ときに一般培養でH fluが検出されたが、その後抗酸菌培養で結核菌陽性がわかるケースは経験したことがあります。入院中はH flu肺炎として抗菌薬治療され、熱も下がって退院しましたが、もともとの状態も悪い高齢者でしたのでH fluは気道もしくは咽頭の定着菌で本当の犯人は結核菌であったのだろう。抗菌薬治療で良くなったように見えるのはバイタルサインが当てにならない(熱がもともと出ない)高齢者だからだろうと判断しました。


質問者 : 医師 40代 内科
質問内容 : レスピラトリーキノロン(GRNXやMFLX)が効かないのにペニシリン系経口薬(AMPC)が効く症例を経験したことがあります。起炎菌は同定できませんでした。
このような場合、起炎菌としてどのような菌が考えられますか。
解答:キノロンの耐性はMRSA、VRE、淋菌などに広がってきています。肺炎の文脈では肺炎球菌のキノロン耐性がすでに報告され、香港などでは数%にまで耐性を認めるとのことです。一方ペニシリン耐性肺炎球菌は、耐性のカットオフ値の変更により髄膜炎以外ではほとんどないとのことですので、肺炎球菌であったかもしれません。
講演でお話したとおり、肺炎の効く・効かないの指標(バイタルサインや熱)は必ずしも殺菌の成功・失敗していると相関しているわけではないですので、耐性が本当に「効く・効かない」の原因だったとするのは要注意であると思います。

質問者 : 医師 内科 40代
質問内容 : 肺炎球菌に対する第1選択薬はペニシリン系薬ですが、CTRXのほうが投与回数が少なく経済的です。CTRXのほうが患者も病棟看護師も喜びます。それでもやはり肺炎球菌にはペニシリン系を使うべきなのでしょうか。
解答:ご質問を置き換えると、いかなる時にも狭域抗菌薬を使うべきか、ということでしょう。原則はYesです。広域抗菌薬は経験的治療、すなわち起因菌が不明である状況(初診時)には可能性の高い複数の菌をカバーする必要性があり、選択されますが、起因菌が確定されればde-escalateすることが標準的とされています。それはカバーする必要のない菌をターゲットする理由がないこと、耐性菌出現・偽膜性腸炎を抑制するなどの理由があげられます。とはいうものの、この原則を守るために医療従事者の手間暇、患者の負担、コストを全く無視してよいわけではありません。中部病院でも入院できない事情のある患者には外来で連日セフトリアキソンを点滴して治療することもあります。


質問者 : 医師 小児科 50代
質問内容 : 小児科では今年は、RSウイルス感染+マイコプラズマ感染が多い様ですが如何でしょうか
解答:小児科診療をしていないのでお答えが難しいです。中部病院の小児科医に聞いたところ、合併例は見ていないそうです。


質問者 : 薬剤師
質問内容 : 抗癌剤などでの クラリスロマイシンの併用注意は どの程度 考慮されますか?
解答:クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンいずれもQT延長、Torsadeのリスクがあるとされます。抗腫瘍薬にはQT延長を起こすものがありますので併用には注意が必要でしょう。


質問者 : 理学療法士
質問内容 : 再入院の理由で心血管疾患が挙がっています。もともと、心血管系は歯周病で発症しやすいと言われており、何らかの炎症によって惹起されやすいのではないかと思います。つまり肺炎といった炎症によって心血管疾患が生じているのではないかと思うのですが如何でしょうか
解答:肺炎回復後に心血管イベントが増える病態生理については色々な仮説が提唱されています。肺炎の炎症による血小板の凝集促進などが代表的なものです。詳しくはChest 2015; 148: 523などを参照ください。


質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 今年はマイコプラズマ感染症が多い年でした。平成24年にも多い年があったのですが、その時にはMLが明らかに効かない症例を多く見ました。そのため8歳以上ではDOXYを使用することが多かったのですが、今年はAZMで十分治療できた症例がほとんどでした。地域差はあるのかもしれませんが、耐性に変化は出てきているのでしょうか。一部の先生はNQを使う症例が増えて、MLの感受性がスペアされたとお話しされていましたが、そういう現象があるのでしょうか。
解答:マクロライド耐性マイコプラズマは、日本の小児患者の調査では(培養もしくはPCRで耐性を検証した)、耐性率50~90%と報告しています(Antimicrob Agents Chemother. 2013;57:4046-9)。年によっても耐性率は変動があり、抗菌薬処方量の多い地域では耐性が多いとしていますが、ご質問のようにキノロンの使用によりマクロライド使用率が下がったためにマクロライド耐性が少なくなったというデータをわたしは把握していません。

質問者 : 28歳 感染症内科 医師
質問内容 : ウイルス性肺炎の比率が想像以上に多いということが分かりました。肺炎診療においてCRPはどの程度参考にされていますか(一般的にはウイルス性肺炎ではCRPの上昇の程度は軽いと考えているのですが。)?
解答:CRPが低いから細菌性肺炎は否定できる、と考えたいところですが、それほどCRPもプロカルシトニンも高い精度で細菌性、ウイルス性の判別はできないと考えています。とくに初診時にはCRPやプロカルシトニンを参考にするよりも全身状態見た目の悪さやバイタルサインなどの異常が強ければ現時点では細菌性として抗菌薬治療するしかないと思います。たとえウイルス性肺炎で重症化していた(たとえば新型インフルエンザ肺炎やSARS、MERS)としても、細菌性の重症肺炎のカバーはせざるをえないと思います。問題は講演でもお話した軽症肺炎で、抗菌薬がいらないかもしれない肺炎の存在です。近い将来、咽頭や喀痰のPCRでウイルスも細菌も迅速に検査できるようになれば、結果をみて抗菌薬を投与しない軽症肺炎の患者を安全にスクリーニングできるようになるかもしれません。


質問者 : 薬剤師 30代
質問内容 : 抗菌薬のstewardshipを行っています。
心不全vs市中肺炎の症例でレントゲンでの見逃しもあるから、各種培養を取って、医療暴露歴があり広域抗菌薬を投与される症例が多いです。
投与2日目位に、肺炎を除外出来つつ、喀痰培養が常在菌のみであれば狭域化や抗菌薬中止を相談するのですが、血液培養の結果まで待ちたいと返答されます。やや、最後の肺炎の除外を培養結果に頼ってるような印象があるのですが、培養も取ってるし、医療暴露等のリスクも考慮してるので適正使用と判断するのですが、正しいstewardshipでしょうか?
解答:痰のグラム染色を行っているかどうかが2日目痰培養=常在菌という結果の解釈に重要です。初日、抗菌薬投与前に良質の痰がとれて起因菌がいない場合には培養=常在菌≒培養陰性=肺炎除外が成立し、患者の状態が心不全治療(利尿)で劇的に改善したなど心不全が診断であると示唆する経過をとっていれば抗菌薬を中止できるでしょう。
一方痰が良質でない場合には培養で常在菌と言われても咽頭培養を見ている、つまり肺の中はどうなっているか不明であることもあるでしょうし、良質な痰のグラム染色で肺炎球菌が明確に見えていても培養の過程で肺炎球菌が死滅して培養結果に肺炎球菌と出てこないこともあります。これらのケースでは培養の結果でのみ肺炎除外はできていないかもしれません。
培養結果の出た2~3日目の患者のバイタルサインや呼吸状態などClinical stabilityがどうなっているかは重要です。安定していて無熱1-2日が維持できていれば抗菌薬中止のクライテリアを満たしているでしょうし、満たしていなければその時点で肺炎がまだ安定していないのか、それとも心不全が安定していないのか再検討すべきと思います。


質問者 : 医師 救急 20代
質問内容 : ウイルス性肺炎の診断はどうすればよいでしょうか。かつ抗菌薬投与しない選択はどのような場合が考えられますか。
解答:咽頭や痰のウイルスPCR検査はまだ一般的ではないと思います。現状ではインフルエンザの迅速抗原が使えるだけで、その他は時間のかかる血清検査になるでしょう。結果が戻るころには肺炎の勝負は付いているケースがほとんどと思います。現状では細菌性とウイルス性の鑑別を完璧にすることは不可能です。ただし曝露歴や典型的皮疹、白血球減少、肝機能障害、肺胞浸潤影ではなく間質性陰影であるなどはウイルス性を示唆する所見とは言えるでしょう。とはいえ、ウイルスに細菌を合併しているケースもあり、ウイルスだから抗菌薬は不要であると勇気を持って言い切る特異的所見は現時点ではないと思います。

若セミシリーズも今年の分は終わりです。
金城先生、素晴らしいLecture、ありがとうございました!


裏方の仕事は地味ですが、とても大変・・
関係の方にも御礼申し上げます。

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