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Channel: 感染症診療の原則
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再び【麻疹の注意喚起】 全国に広がるリスクのある事例

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(報道発表内容・連絡文書をもとに加筆修正)

日本、念願の麻疹排除!やったー!という輝かしいニュースからそう時間はたっていませんが、

「え?また麻疹が流行?」

と背筋がぞぞっとする情報が2件。

(そういえば~、この前の大規模アウトブレイクは2007年ごろでした。そろそろ来るかも、だって感受性者はたくさん残っている、ぼそぼそ)


1つは千葉県の松戸中心に広がっている事例。

7月22日が発端例ですが、千葉県の注意喚起が8月22日。


もうひとつは本日、注意喚起メールのあった大規模コンサートに関連している事例。

報道発表は昨夜とのことですが本日はまだHP掲載がありません。


注意喚起のあったメールは8月14日に幕張メッセに参加した人の中に麻疹の人がいた、というものです。

8月14日に曝露したとして、えーと、潜伏期間は・・・・おおおお!

皆さま、今日明日あたりから発熱やカタル症状で受診するような人には注意が必要です。
(移動中や宿泊先でも曝露者がいます)


夏休み中ですから海外渡航歴でのトリアージも重要ですが、東京・千葉・神奈川にでかけたというのも要注意ですね。

直接診察にこないよう、時間を指定したり、駐車場についたら電話をするよう(車の中で待機するよう)説明が必要かもしれません。

1回しか接種ししていない人が発症する「修飾麻疹」も注意が必要です。

救急外来を担当する研修医や看護師に、臨時ミニレクチャー「麻疹の診断」をしましょう。

お子さんの場合は小児科に行くので慣れたドクターが早めに対応できますが、大人の場合はいろいろな科にいくことになります。
発疹が出る前は「かぜ」にしかみえません。内科や夜間外来に来ます。
目がうるうる赤よ?といわれると眼科に行く人がいます。
発疹が出ると皮膚科に行く人が多いです。


麻疹の対応は迅速性が求められます。症状や周辺情報から麻疹かもしれない!?となったら保健所にまず一報を。

発症から診断までに数回受診することがあります。待合室で曝露するリスクがあるのはこのためです。
なかなか診断されないのは、受診時の症状が必ずしも教科書に載っているような状況ではないためです。
発熱や発疹の症例では必ずワクチン接種歴をたずねましょう。


【参考情報】
2016年7月21日 オーストラリア バックパッカーが持ち帰った麻疹
Measles outbreak among Perth backpackers

2016年8月9日 イギリス 音楽イベントでひろがった麻疹 Public Health England: music festivals 'are measles hotspots'

2008年 2008年千葉県における高校柔道大会に起因した麻しん集団発生

2008年 沖縄県 ライブコンサート(屋内)での集団感染

2007年 日本人選手が発端の国際野球イベントでの麻疹アウトブレイク Multistate Measles Outbreak Associated with an International Youth Sporting Event --- Pennsylvania, Michigan, and Texas, August--September 2007


皆さま。ふだんからできることをやりましょう。

皆さんの地域のMRワクチン接種率を少しでも高めましょう。
1歳のときは高いのですが就学時(小学校に入るとき)の2回目が高くありません。
中学、高校、大学など進学時には接種歴の確認を。

2回接種になったのは2006年ですので、その前の人は接種していても1回です。
1回しか接種していない人たちは、その後に免疫がさがって発症する人もいます。

救急外来などで2次感染させないよう、スタッフが発症しないよう、院内でアウトブレイクしないよう(潜伏期間に入院したあとに発症します)、免疫不全の患者さんが重症にならないよう、妊婦さんや赤ちゃんが命をあやうくしないよう、取り組みをしていきましょう。


資料
麻しんの検査診断の考え方 厚生労働省 2012年
麻疹の病態と診断法小児感染免疫 Vol. 22 No. 1 2010年

  

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