Quantcast
Channel: 感染症診療の原則
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3238

命がけだよ研究は

$
0
0
医療には不確実性がつきものですが、安全性の追求のためにいろいろな人がリスクをおってきました。

華岡 青洲(1760-1835)は江戸時代の外科医で、1804年、世界初、全身麻酔下で乳がんの手術をした、ということで有名です。
麻酔を開発するのに、動物実験をくり返し、人体実験では実母と妻が協力。実母は死に、妻は失明。

ロンドンの科学博物館のページ
ブログ History of Medicine

華岡青洲の妻 (新潮文庫)新潮社

華岡青洲の妻 [DVD]角川ヘラルド映画 
華岡青洲の妻 [DVD]NHKエンタープライズ


先日も紹介させていただいた平成医新「死の人体実験 昭和29年(1954年)」

昭和29年4月15日2人の若い医師が、「輸血後肝炎」の患者から採血した血液1ccを自分たちの腕に注射する実験をし、注射から42日目の5月26日、ひとりは悪寒、戦慄、倦怠を覚え、3日後には意識障害から昏睡状態となり、翌30日に死亡(病理解剖で劇症肝炎)。というお話もそうです。


また、Carrion病にも逸話があります。

これは主にアンデス山脈のの渓谷で見られる、「Bartonella bacilliformis」 という細菌での観戦でおきります。
ペルーいぼ(Peruvian wart あるいは verruga peruana)とオロヤ熱(oroya fever)を総称してこの名前がつかわれています。

この病気のことをつきとめたのは当時の医学生。
そのDaniel Alcides Carrionは1885年10月5日に死亡しています。 見つけた人の名前がつけられることはよくあることです。

1885年8月27日にペルーいぼ と オロヤ熱の関係を調べるために、患者のいぼから採取した血液を自分自身に接種。
3週間後の9月17日に左足首の不快と痛みとで発病し、2日後の19日に発熱症状が出ました。
1週間後の26日には重体となり自分で記録がとれなくなり、友人が代行。

接種から39日後の1885年10月5日に死亡。 10月5日はペルー医学の日となっています。彼の名前を冠した大学も存在します。


昔と違って今は大丈夫!と思いますか?

自分の体で実験、ということはそうそうないでしょうが、
微生物の実験や検査をする人たちにも様々な曝露リスクがあります。
また、検査スペース、病理解剖を行う施設の安全基準がどうなのか。
感染症チームのメンバーの健康や安全も考えなくてはいけないことのひとつですね。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3238

Trending Articles