昨年のIDSAはフィラデルフィアで開催され、編集長、編集部、そして新潟の齋藤先生のチームとともにフィラデルフィアこども病院を訪問し、Offit先生とお話する機会がありました。
誰だろう?と思う方も、Offit先生、Plotokin先生の編集された「Vaccine」は予防接種について学ぶ際のバイブル的教科書はご存知の方も多いでしょう。
Offit先生は、保護者向けの本を出したり、一般メディアのインタビューに応えたりと、「伝える」努力や姿勢が保護者や医療者からの信頼につながっています。そのOffit先生が2013年に出した本をナカイ サヤカさんが翻訳をされ、地人書館から日本語で出版されました。
予防接種だけでなく、他の医療でのコミュニケ—ションについても大いに参考になります。
ナカイさんが「ぜひとも日本語にしたい本があるのだ」と時々Twitterでつぶやいていますが、出版社や著者との交渉など、そんなに簡単なことではありません。また、訳者にそこまで思わせるほどの本との出会いは人生でそうたくさんあるわけではないのでは?とも思います。
地域の小児科のスペースを借りてサイエンスや子育てのカフェを開催するナカイさんとその仲間の皆さんたちの活動は大変魅力的です。
専門家が科学的に正しいことを言うだけではコミュニケーションになりません。
専門家が対象としている人たちは間違っているわけでも愚かなわけでもなく、困っている人たちであり、困っているが故にはまっていく危険に、どのような問いかけができるのだろうか、を考えさせられる1冊です。
訳者あとがき(p299〜)
"(略)さて、中高年になり、周囲の人々からサプリや鍼をすすめられたオフィットは、健康ショップへと出かけ、サプリを買うが、飲む前に本当に効くのかと気になって、論文を調べ始める。
「現代の医学ではわからない、医学界は我々を無視している」は代替医療の常套句だが、実は多数の研究があって論文にまとめられている。論文を読み進めるうちにオフィットは身近な代替医療の愛用者の話と研究結果がだいぶ違っていることに気がつき、さらに研究を続けていいく。
(略)訳者の私はニセ科学やデマに興味を持つうちに代替医療の問題に遭遇した。数年前に欧米で代替医療が大きな問題になっていると聞いた時には、健康保険システムによって主流医療が安く手軽に受けられて、加えて医師が漢方を処方し、国家試験を受けた針灸師の治療も医療の一部として使える日本では大きな問題とならないと考えたのだが、その後、代替医療の問題に注目してニュースを追うようになって、この見込みが全く甘かったことを思い知った。
本書が解き明かすように、ビタミンもサプリもとりあえず飲んでおけば健康に役立つというような気軽さで使うべきものではない。どんなものにも副作用はあるし、瓶入りの錠剤は食品扱いであっても食品ではない。悪質な代替医療は慢性疾患を抱えた「標準医療では治らない患者」を標的にする。被害を被った人々はあえて代替医療を選んだ自分を責めることはあっても告発の声を上げることは少ない。
膨らむ医療費に悩む政府が代替医療の活用で国民の健康が維持できるとの主張に耳を傾け、現代医療に不満を持つ人々が医療を否定する本を手に取り、こうした主張がメディアに登場しているその中で本書が出版される意義は大きいはずである。"
ナカイ サヤカさん
Twitter @sayakatake
note ページ
※10月24日には、小児科医、管理栄養士の方とトークセッションが毎日メディアカフェで開催されます。
詳細はこちら
※以下のリンクは読みながらチェックをした編集部メモです
///////////////////////////////
はじめに――代替医療概観
序章 少年を救え
Limiting Parents' Rights in Medical Decision Making
【第一部】現代医療への不信
1章 過去の再発見――メフメット・オズと彼のスーパースターたち
Recite Your Mantra and Call Me In the Morning
The Doctor OZ Show
【第二部】ナチュラルなものの魅力
2章 ビタミン狂――ライナス・ポーリングの皮肉な遺産
Vitamins and Vitamin Supplements: Use Increases in America
Should You Take a Multivitamin?
ライナス・ポーリング(Wikipedia)
【第三部】小さなサプリメーカー 対 巨大製薬会社
3章 サプリ業界、フリーパスを手に入れる-FDAを無毒化する
Snake Oil, Hustlers And Hambones: The American Medicine Show
4章 5万1000の新サプリ ―― 効くのはどれ?
The Alternative Health Controversy
【第四部】代替医療にスターは輝く
5章 更年期とアンチエイジング――スザンヌ・サマーズ参戦
『代替医療のトリック』
6章 自閉症の笛吹き誘導者――ジェニー・マッカシーの正義のキャンペーン
Jenny Mccarthy Autism
7章 慢性ライム病――ブルーメンタール事件
Science, Politics, and Values
The Politicization of Professional Practice Guidelines
【第五部】希望ビジネス
8章 ガン治療――スティーブ・ジョブス、サメ軟骨、コーヒー浣腸などなど
Alternative therapies: what’s the harm?
9章 病気の子どもたちと追い詰められた親たち-スタニスラフ・ブルジンスキーの尿療法
アンチネオプラストン
【第六部】カリスマ治療師には抵抗しがたい
10章 21世紀の魔法薬――ラシッド・ブッタールと人格の魅力
ラシッド・ブッタール
【第七部】代替医療に実際に効くものがあるのはなぜか?
11章 驚くほど強力でひどく過小評価されているプラセボ反応
The Rise and Fall of Placebo Medicine
12章 代替医療がインチキ医療になるとき
13章 エピローグ アルベルト・シュバイツァーと呪術医ーある寓話
訳者あとがき
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代替医療の光と闇 ― 魔法を信じるかい?地人書館
Do You Believe in Magic?: The Sense and Nonsense of Alternative MedicineHarper
誰だろう?と思う方も、Offit先生、Plotokin先生の編集された「Vaccine」は予防接種について学ぶ際のバイブル的教科書はご存知の方も多いでしょう。
Offit先生は、保護者向けの本を出したり、一般メディアのインタビューに応えたりと、「伝える」努力や姿勢が保護者や医療者からの信頼につながっています。そのOffit先生が2013年に出した本をナカイ サヤカさんが翻訳をされ、地人書館から日本語で出版されました。
予防接種だけでなく、他の医療でのコミュニケ—ションについても大いに参考になります。
ナカイさんが「ぜひとも日本語にしたい本があるのだ」と時々Twitterでつぶやいていますが、出版社や著者との交渉など、そんなに簡単なことではありません。また、訳者にそこまで思わせるほどの本との出会いは人生でそうたくさんあるわけではないのでは?とも思います。
地域の小児科のスペースを借りてサイエンスや子育てのカフェを開催するナカイさんとその仲間の皆さんたちの活動は大変魅力的です。
専門家が科学的に正しいことを言うだけではコミュニケーションになりません。
専門家が対象としている人たちは間違っているわけでも愚かなわけでもなく、困っている人たちであり、困っているが故にはまっていく危険に、どのような問いかけができるのだろうか、を考えさせられる1冊です。
訳者あとがき(p299〜)
"(略)さて、中高年になり、周囲の人々からサプリや鍼をすすめられたオフィットは、健康ショップへと出かけ、サプリを買うが、飲む前に本当に効くのかと気になって、論文を調べ始める。
「現代の医学ではわからない、医学界は我々を無視している」は代替医療の常套句だが、実は多数の研究があって論文にまとめられている。論文を読み進めるうちにオフィットは身近な代替医療の愛用者の話と研究結果がだいぶ違っていることに気がつき、さらに研究を続けていいく。
(略)訳者の私はニセ科学やデマに興味を持つうちに代替医療の問題に遭遇した。数年前に欧米で代替医療が大きな問題になっていると聞いた時には、健康保険システムによって主流医療が安く手軽に受けられて、加えて医師が漢方を処方し、国家試験を受けた針灸師の治療も医療の一部として使える日本では大きな問題とならないと考えたのだが、その後、代替医療の問題に注目してニュースを追うようになって、この見込みが全く甘かったことを思い知った。
本書が解き明かすように、ビタミンもサプリもとりあえず飲んでおけば健康に役立つというような気軽さで使うべきものではない。どんなものにも副作用はあるし、瓶入りの錠剤は食品扱いであっても食品ではない。悪質な代替医療は慢性疾患を抱えた「標準医療では治らない患者」を標的にする。被害を被った人々はあえて代替医療を選んだ自分を責めることはあっても告発の声を上げることは少ない。
膨らむ医療費に悩む政府が代替医療の活用で国民の健康が維持できるとの主張に耳を傾け、現代医療に不満を持つ人々が医療を否定する本を手に取り、こうした主張がメディアに登場しているその中で本書が出版される意義は大きいはずである。"
ナカイ サヤカさん
Twitter @sayakatake
note ページ
※10月24日には、小児科医、管理栄養士の方とトークセッションが毎日メディアカフェで開催されます。
詳細はこちら
※以下のリンクは読みながらチェックをした編集部メモです
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はじめに――代替医療概観
序章 少年を救え
Limiting Parents' Rights in Medical Decision Making
【第一部】現代医療への不信
1章 過去の再発見――メフメット・オズと彼のスーパースターたち
Recite Your Mantra and Call Me In the Morning
The Doctor OZ Show
【第二部】ナチュラルなものの魅力
2章 ビタミン狂――ライナス・ポーリングの皮肉な遺産
Vitamins and Vitamin Supplements: Use Increases in America
Should You Take a Multivitamin?
ライナス・ポーリング(Wikipedia)
【第三部】小さなサプリメーカー 対 巨大製薬会社
3章 サプリ業界、フリーパスを手に入れる-FDAを無毒化する
Snake Oil, Hustlers And Hambones: The American Medicine Show
4章 5万1000の新サプリ ―― 効くのはどれ?
The Alternative Health Controversy
【第四部】代替医療にスターは輝く
5章 更年期とアンチエイジング――スザンヌ・サマーズ参戦
『代替医療のトリック』
6章 自閉症の笛吹き誘導者――ジェニー・マッカシーの正義のキャンペーン
Jenny Mccarthy Autism
7章 慢性ライム病――ブルーメンタール事件
Science, Politics, and Values
The Politicization of Professional Practice Guidelines
【第五部】希望ビジネス
8章 ガン治療――スティーブ・ジョブス、サメ軟骨、コーヒー浣腸などなど
Alternative therapies: what’s the harm?
9章 病気の子どもたちと追い詰められた親たち-スタニスラフ・ブルジンスキーの尿療法
アンチネオプラストン
【第六部】カリスマ治療師には抵抗しがたい
10章 21世紀の魔法薬――ラシッド・ブッタールと人格の魅力
ラシッド・ブッタール
【第七部】代替医療に実際に効くものがあるのはなぜか?
11章 驚くほど強力でひどく過小評価されているプラセボ反応
The Rise and Fall of Placebo Medicine
12章 代替医療がインチキ医療になるとき
13章 エピローグ アルベルト・シュバイツァーと呪術医ーある寓話
訳者あとがき
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代替医療の光と闇 ― 魔法を信じるかい?地人書館
Do You Believe in Magic?: The Sense and Nonsense of Alternative MedicineHarper