フランスでは医療者であっても麻疹の予防接種が徹底されていないという報告を読んだことがあるので、この症例の情報を読みながら、そのあと大丈夫だったのかなあ、、、と考えました。
MEASLES AMONG HEALTHCARE WORKERS: A POTENTIAL FOR NOSOCOMIAL OUTBREAKS
Eurosurveillance, Volume 16, Issue 2, 13 January 2011
Letter to the editor. Spotlight on measles 2010: Measles in healthcare workers – vaccination should be revisited
日本でも医師や看護師は実習や入職時い確認されることが多いですが、今後多くの方が病棟で活躍するであろう薬剤師、患者さんと接点のある他の医療関係社(栄養士、PT、OT、ソーシャルワーカー)とかはどうなんでしょうね?
1月25日のブログ記事で紹介したフランスの事例が、正式にEmerging Infectious Diseases3月号に掲載されました。
ヨーロッパは日本と同じように麻疹(はしか)排除を目指していますが、途中まで順調にへっていたものの、ある時期から再び増加に転じており、重症例や死亡例も報告されています。
ワクチン接種率の低下が原因とされています。
ワクチンの普及とともに医療者の課題が生じます。
非典型的な症例の診断が難しくなる(修飾麻疹の増加)。たとえば、コプリック斑がない、発疹がない、熱がマイルドなど。
また、若い医療者は「診たことがない」人が増えます。
ヨーロッパで麻疹が増えたのは2008年以後です。
フランス、ドイツ、スペイン、ルーマニア、イタリアの5カ国からの報告が全体の90%以上。2011年に麻疹報告ゼロの国は2カ国のみでした。
フランスでは、2008年から今までに2万例を超える症例群の中で、9例が死亡(7例は免疫に問題がある症例)。
死亡野原意は、肺炎、ARDSが7例、脳炎が2例です。
1例をのぞき典型的な発疹がみられました。
発疹のない成人の1例は免疫に問題のない29歳の女性でした。
この女性は喫煙、うつ の既往がありましたがその他に問題のない人でした。
2011年に、発熱、咳、下痢等の症状と、10日で10kg近い体重減少をうったえて受診。
かかりつけ医師はエンピリカルにpristinamycinと経口ステロイド (60 mg/d for 5 d)を処方。
しかし5日後に入院となりました。
入院当日の体温は38.5°C。 血液検査と胸部レントゲン検査が行われました。
dyspnea
low body mass index of 17.5 kg/m2
Hematologic tests:nonregenerative anemia (hemoglobin concentration 9 g/dL)
leukopenia (2.2 × 109 leukocytes/L) ー lymphopenia (0.2 × 109 lymphocytes/L)
mild thrombocytopenia (135.0 × 109 platelets/L).
chest radiograph ;bilateral diffuse interstitial infiltrates
ということで(?)、レボフロキサシンとセフトリアキソンがはじまりました。
入院2日目。
医師はなんらかの免疫低下をうたがっていろいろ検査。
CT:no adenopathy or lesions suggestive of cancer.
HIV test:negative
general immunologic test:within normal limits
bone marrow biopsy:isolated erythroblastopenia with no abnormality of other cell lineages (PCR for parvovirus B19 was negative).
入院3日目。
呼吸状態が悪くなり、この女性はARDSの診断のもとICUにうつりました。
そして人工呼吸器が必要な状態となりました。
tazocillin/tazobactam, ciprofloxacin, amphotericin B, acyclovirが開始されました。
BAL:negative for bacteria, mycobacteria, fungi, and Pneumocystis jirovecii.
Cytology of BAL:acute inflammatory response with atypical epithelial cells, supporting a diagnosis of viral infection
なんらかのウイルス感染がうたがわれた・・・ですが、14種類のウイルス検査は陰性。
human herpesviruses type 1, 3, 4, 5, 6 (BALでのPCR)
Legionella spp., Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia pneumoniaeどれも陰性。
血液培養、尿培養も陰性。
入院6日目。
麻疹のIgM陽性が判明。
リバビリン、ステリド、免疫グロブリンが投与されました。
入院10日目。
呼吸状態が回復せず、このあと2週間の酸素投与が行われましたが患者は出血性のショックにより亡くなりました。
(両親は剖検を辞退)
患者の唾液をフランスの麻疹ウイルスリファレンスセンターにおくったところ、麻疹ウイルスの存在が確認されました。
追加で入院2-20日に行われた血清、骨髄、BAL検体からも麻疹ウイルスのRNAが確認されました。
遺伝子型はD4で、フランスとヨーロッパ内で循環している型と同じでした。
コプリック班や発疹はなく、麻疹ワクチン接種を証明する記録はありませんでした。
発疹のない肺炎/ARDSの死亡例は細胞性免疫に問題のある患者で報告されています。
今回の事例では、免疫低下の原因となるような理由は把握されませんでした。
患者の急激な体重減少は免疫に何らかの影響を与えた可能性は考えられました。
"This unusual case underscores the need for physicians to consider the diagnosis of measles, even in the absence of classical clinical features, during measles outbreaks. It also reemphasizes the insufficient vaccination coverage against measles in France."
です。
日本は2012年に入って2011年をうわまわるペースで症例が報告されています。2012年は排除を宣言するための最後の取り組み年度なのですが。
皆さんの地域の接種率はいかがですか?
MEASLES AMONG HEALTHCARE WORKERS: A POTENTIAL FOR NOSOCOMIAL OUTBREAKS
Eurosurveillance, Volume 16, Issue 2, 13 January 2011
Letter to the editor. Spotlight on measles 2010: Measles in healthcare workers – vaccination should be revisited
日本でも医師や看護師は実習や入職時い確認されることが多いですが、今後多くの方が病棟で活躍するであろう薬剤師、患者さんと接点のある他の医療関係社(栄養士、PT、OT、ソーシャルワーカー)とかはどうなんでしょうね?
1月25日のブログ記事で紹介したフランスの事例が、正式にEmerging Infectious Diseases3月号に掲載されました。
ヨーロッパは日本と同じように麻疹(はしか)排除を目指していますが、途中まで順調にへっていたものの、ある時期から再び増加に転じており、重症例や死亡例も報告されています。
ワクチン接種率の低下が原因とされています。
ワクチンの普及とともに医療者の課題が生じます。
非典型的な症例の診断が難しくなる(修飾麻疹の増加)。たとえば、コプリック斑がない、発疹がない、熱がマイルドなど。
また、若い医療者は「診たことがない」人が増えます。
ヨーロッパで麻疹が増えたのは2008年以後です。
フランス、ドイツ、スペイン、ルーマニア、イタリアの5カ国からの報告が全体の90%以上。2011年に麻疹報告ゼロの国は2カ国のみでした。
フランスでは、2008年から今までに2万例を超える症例群の中で、9例が死亡(7例は免疫に問題がある症例)。
死亡野原意は、肺炎、ARDSが7例、脳炎が2例です。
1例をのぞき典型的な発疹がみられました。
発疹のない成人の1例は免疫に問題のない29歳の女性でした。
この女性は喫煙、うつ の既往がありましたがその他に問題のない人でした。
2011年に、発熱、咳、下痢等の症状と、10日で10kg近い体重減少をうったえて受診。
かかりつけ医師はエンピリカルにpristinamycinと経口ステロイド (60 mg/d for 5 d)を処方。
しかし5日後に入院となりました。
入院当日の体温は38.5°C。 血液検査と胸部レントゲン検査が行われました。
dyspnea
low body mass index of 17.5 kg/m2
Hematologic tests:nonregenerative anemia (hemoglobin concentration 9 g/dL)
leukopenia (2.2 × 109 leukocytes/L) ー lymphopenia (0.2 × 109 lymphocytes/L)
mild thrombocytopenia (135.0 × 109 platelets/L).
chest radiograph ;bilateral diffuse interstitial infiltrates
ということで(?)、レボフロキサシンとセフトリアキソンがはじまりました。
入院2日目。
医師はなんらかの免疫低下をうたがっていろいろ検査。
CT:no adenopathy or lesions suggestive of cancer.
HIV test:negative
general immunologic test:within normal limits
bone marrow biopsy:isolated erythroblastopenia with no abnormality of other cell lineages (PCR for parvovirus B19 was negative).
入院3日目。
呼吸状態が悪くなり、この女性はARDSの診断のもとICUにうつりました。
そして人工呼吸器が必要な状態となりました。
tazocillin/tazobactam, ciprofloxacin, amphotericin B, acyclovirが開始されました。
BAL:negative for bacteria, mycobacteria, fungi, and Pneumocystis jirovecii.
Cytology of BAL:acute inflammatory response with atypical epithelial cells, supporting a diagnosis of viral infection
なんらかのウイルス感染がうたがわれた・・・ですが、14種類のウイルス検査は陰性。
human herpesviruses type 1, 3, 4, 5, 6 (BALでのPCR)
Legionella spp., Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia pneumoniaeどれも陰性。
血液培養、尿培養も陰性。
入院6日目。
麻疹のIgM陽性が判明。
リバビリン、ステリド、免疫グロブリンが投与されました。
入院10日目。
呼吸状態が回復せず、このあと2週間の酸素投与が行われましたが患者は出血性のショックにより亡くなりました。
(両親は剖検を辞退)
患者の唾液をフランスの麻疹ウイルスリファレンスセンターにおくったところ、麻疹ウイルスの存在が確認されました。
追加で入院2-20日に行われた血清、骨髄、BAL検体からも麻疹ウイルスのRNAが確認されました。
遺伝子型はD4で、フランスとヨーロッパ内で循環している型と同じでした。
コプリック班や発疹はなく、麻疹ワクチン接種を証明する記録はありませんでした。
発疹のない肺炎/ARDSの死亡例は細胞性免疫に問題のある患者で報告されています。
今回の事例では、免疫低下の原因となるような理由は把握されませんでした。
患者の急激な体重減少は免疫に何らかの影響を与えた可能性は考えられました。
"This unusual case underscores the need for physicians to consider the diagnosis of measles, even in the absence of classical clinical features, during measles outbreaks. It also reemphasizes the insufficient vaccination coverage against measles in France."
です。
日本は2012年に入って2011年をうわまわるペースで症例が報告されています。2012年は排除を宣言するための最後の取り組み年度なのですが。
皆さんの地域の接種率はいかがですか?