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Channel: 感染症診療の原則
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記者「日本の医療機関の感染防御レベルが知りたのですが」

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韓国のMERS-CoVの院内感染事案について、日本の医療機関は大丈夫なのか?というエボラの時と同じ質問が繰り返されています。

「日本の医療機関」といっても規模や特性がぜんぜんちがいますし、「大丈夫」の定義がわかりませんので、まずはエビデンスにあたるということで、「環境感染学会」の情報をみてはどうかと説明しています。

感染管理の人が集まる学会があり、ホームページには大会プログラム、また電話帳のように分厚い抄録集などもあって、各病院の課題の発表が並んでいるのでそのあたりから現状を考えてはどうかと説明しています。
(A病院の試み、と表現されていますがたいていは発表者の病院です)

日本には何回か講習会を受ければもらえるICD(感染管理医師)という肩書をもっている医師や薬剤師、また最低6か月以上の講義や実習、試験をこなして活躍している感染管理認定看護師がいて、そういった専門スタッフを擁するところでは加算もついており、日々アウトブレイクがおきないよう、おきたらすぐ封じ込められるようにがんばっているわけであります。

しかし、そのような病院でも感染対策チームが日々困っていることがあります。
(スタッフがそれを遵守しない、幹部や事務部門が必要な物品購入を許可しないetc.)

今回の韓国のMERSの広がりの中でみる「課題」はそのような施設でも無関係ではないので、日本の「レベル」が知りたければ現場がどう困っているのかを知り、社説などで改善につなげていただければと期待しています。


MERS-CoV独特の対策というものはないので、発熱やせきの症状がある人、渡航歴がある人をどのようにするのか、が最初に問われることであります。

渡航歴も、30分待合室の真ん中に咳をしながら居続けて、診察室に入ったところの問診で知るようではtoo lateなこともあります。どこでトリアージしているんですか?です。

また、また外来閉鎖と新規入院をストップするにいたったサムソン病院で健康観察期にあった医師や発熱等の症状があった搬送スタッフが勤務を続けていたということについて、ふだんから感染症をうたがうような職員がいたときに「それくらいたいしたことない」と働かせていたり、自己申告しづらい空気をつくっていたり(自分と周囲のために休みなさい・自宅隔離という明確なルールを出していないガバナンスの悪さ)など、学ぶところはいろいろあるわけです。

報道をみていると、現場からは遠い識者の一般論になると、感染対策のリーダーをおいていない医療機関での不安は漠然と大きくなり、一般の人も「日本の医療は大丈夫か」という懸念をもち、具体的な現場支援はないまま、症例が発生したバッシングや患者個人をおいかけまわしたりというドタバタ劇が繰り返される、、、というのが懸念されるところです。

輸入症例が発生するのはこのグローバル時代しかたがないことです。うちにはこないよ、という病院は失敗がくりかえされます。くるかもしれない、そのときどうするか、の最初の1時間を決めておくだけでずいぶんちがいます。医療機関はそこで2次感染を最小限にすることがミッションです。

「ところで、記者さんの会社ではインフルエンザのときにがんばって出社・通勤したりしていませんか?」
「発熱症状があっても取材先にマスクをつけてでかけるのはOKですか?」
とたずねたり。

優先順位としては、新しいマニュアルや指針ではなく、今後もおこるかもしれない似たような感染症含めて皆でリスクを下げるようにできることは何か、です。





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