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Channel: 感染症診療の原則
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国境を越える耐性菌

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ひところ日本でも話題になった New Delhi metallo-beta-lactamase 1 (NDM-1)。

Eurosurveillanceで2件報告がありました。

まず1つめ。
アイルランド初めて分離されたNDM-1産生KLEBSIELLA PNEMONIAEの報告です。

ISOLATION OF NDM-1-PRODUCING KLEBSIELLA PNEMONIAE IN IRELAND, JULY 2011
Eurosurveillance, Volume 17, Issue 7, 16 February 2012

生後6カ月の子が2011年5月に家庭医を受診(non-specific febrile illness)。
この児はインドのコルカタで正期の経膣分娩で産まれました。母子は3ー4日入院、その後子どもが4カ月のときに両親とこの子どもでアイルランドに移住。
それまで特に健康に問題はなく、アイルランド到着後、尿路感染疑いでエンピリカルにamoxicillin/clavulanic acidが処方されました(尿検査は無し!)
その6週間後、再び発熱をがあったため、家庭医を受診。尿中の白血球は1,700/mm3、1mlあたりのバクテリア数は105以上でした。

分離されたのはKlebsiella pneumoniae on VITEK 2 (bioMérieux, United States)。
メロペネム耐性(MIC >16 mg/L)でしたが、シプロフロキサシンには感受性がありました。

10日間のシプロでの治療により臨床症状は改善がみられましたが、尿検査を再び行ったところ、セフォタキシム、シプロ耐性かつエルタペネムとトリメトプリム感受性の Escherichia coli が分離されました。
このため、この児は5日間のトリメトプリムで治療を行い、腎臓の超音波検査も正常でした。

2週間後の直腸スワブでは複数の K. pneumoniaeが分離されました。カルバペネム耐性の株、そしてカルバメネム感受性しかしESBLの株が含まれていました。
国際的なプロトコールにもとづき、公衆衛生部門の調査が行われ、家族のNDM-1保菌スクリーニングが尿と直腸のサンプルで検査が行われました。
両親の直腸のスワブから、子どもの尿検体で得られた株と似た感受性パターンのE.Coliは検出されましたが、カルバペネマーゼ産生のK. pneumoniaeは検出されませんでした。

アイルランドでは初のカルバペネマーゼ産生のK.pneumoniaeの検出となりました。流行していない状況でも、リスク因子のある事例では遺伝子的な検討が重要であることが示唆されました。



もうひとつはチェコで報告されたNDM-1産生のACINETOBACTER BAUMANNII。

NDM-1 PRODUCING ACINETOBACTER BAUMANNII ISOLATED FROM A PATIENT REPATRIATED TO THE CZECH REPUBLIC FROM EGYPT, JULY 2011
Eurosurveillance, Volume 17, Issue 7, 16 February 2012

2011年7月にエジプトからチェコにきた患者からカルバペネマーゼ産生のアシネトバクターバウマニが検出され、同じ病棟内で広がりました。どちらの患者から分離された菌も、コリスチンのみに感受性がありました。

国境を越えて広がる耐性菌。
院内の情報だけでなく、global issueに目を向ける必要が感染管理でも重要になってきています。



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