自分や自分の子ども、家族が体調を崩し、入院しなくてはならない、あるいは外来受診をしなくてはならない・・・となったときに、病院は手当や治療をしてくれる「期待の場所」になるでしょう。
しかし、様々な医療行為が行われる場所は、まち中や家庭とはちがう別のリスクが存在します。そのひとつは院内感染です。
感染・発症・重症化には複数の因子がからんでいるために、100%それを防ぐことは難しいですが、ある程度コントロールできるものと、毎年のインフルエンザシーズンでの集団感染事例などにみられるように、感染対策が難しいものがあります。
専門家や関係者は、「予防できるものは予防したい」。切にそう願っているわけです。
予防接種などはその最たるものです。
「うちの子は麻疹になったけど、特に何もしなかったけど元気になったよ」
それは元気になった子の親だから言えること。
「今の高齢者は栄養不足、医療のない時代にも麻疹や水痘に負けないで生きてきた。」
その背後にはたくさんの人が死んでいるという事実を無視はだめです。
2012年に、この現状でいいのか。現場の先生が問いかけています。
記事の写真、病気でワクチンがうてない小さな子どもたちを守る現場から。
国内にもあるワクチンギャップ(その2) 年10回の病棟閉鎖、小児病院を脅かす感染症とは
堀越裕歩(東京都立小児総合医療センター感染症科)日経メディカルオンライン 2012. 2. 14
「東京都立小児総合医療センターでは、水痘の流行期は常に病棟閉鎖を余儀なくされる。開院は2010年3月だが、水痘・帯状疱疹ウイルスによる病棟閉鎖は2012年1月時点の2年弱で既に20回を数えた。年間に10回近くの病棟閉鎖を余儀なくされているわけで、重症患児が水痘に感染した場合のリスクの大きさに伴って、病床管理や免疫不全の曝露者対策にかかるコストも莫大なものになる。おそらく、直接の感染予防対策だけで、2年弱で1000万円程度はかかっている。手術や入院の延期まで計算すれば、コストはさらに膨らむこととなる。」
このお金は誰が払うかというと、都立病院ですから最終的には都民です。
入院時に確認を一生懸命しても、潜伏期間にすどおりされて、入院してから発症される場合もあります。
「感染患児の入院がひとたび確認されると、非常事態である。発疹が現れる48時間前から感染性があるので、そこまでさかのぼって病棟内の曝露者を確認し、水痘の免疫がない小児が曝露していたら、ワクチンを緊急接種する。ワクチンを接種できない小児にはアシクロビルを予防内服させ、重度免疫不全の小児には発症しないことを祈りながら、院内で抗体価が一番高いγグロブリンを投与する。」
親御さんや、しなくていいはずの追加の治療や検査までたくさんされ、命までおびやかされるお子さんのことを思うと胸が痛いです。
世の中には、ワクチンの存在を知らない(「何それ」)、接種を「忘れている」(うっかり)、「まだいいかな」(のんびり)、な保護者もいますが、「絶対にしない」と決めている人もいます。
その本人の話ではなく、子どもの健康や命であるところが自己決定論とは大きく異なってきます。
保護者に決定権があるとしたら何歳までなのでしょうか。
それはどのような状況においても、何よりも優先されるのでしょうか。
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第215回 予防接種拒否をめぐる倫理論争
李 啓充 医師/作家(在ボストン)
医学界新聞 第2965号 2012年2月13日
上記の事例のように、水痘が常時流行しているような国では、現実的な対策として医療機関では職員の予防接種や罹患歴調査、接種勧奨以外に、持ち込みを防ぐ必要があります。
予防接種をしない方針の家庭のお子さんが発熱や発疹など体調不良になって受診するときは、あらかじめ病院に電話をして、未接種であることを伝え、何時にどの入口から入るのか確認する必要があります。
そういった方針のかかりつけの医師やスタッフはそのことを伝えなくてはなりません。
面会制限は当然です。
こういった注意喚起はどの病院でも必要な時代。実際に制限は必要ですし、啓発にもつながります。
(聖路加国際病院の総合受付のポスター)
しかし、様々な医療行為が行われる場所は、まち中や家庭とはちがう別のリスクが存在します。そのひとつは院内感染です。
感染・発症・重症化には複数の因子がからんでいるために、100%それを防ぐことは難しいですが、ある程度コントロールできるものと、毎年のインフルエンザシーズンでの集団感染事例などにみられるように、感染対策が難しいものがあります。
専門家や関係者は、「予防できるものは予防したい」。切にそう願っているわけです。
予防接種などはその最たるものです。
「うちの子は麻疹になったけど、特に何もしなかったけど元気になったよ」
それは元気になった子の親だから言えること。
「今の高齢者は栄養不足、医療のない時代にも麻疹や水痘に負けないで生きてきた。」
その背後にはたくさんの人が死んでいるという事実を無視はだめです。
2012年に、この現状でいいのか。現場の先生が問いかけています。
記事の写真、病気でワクチンがうてない小さな子どもたちを守る現場から。
国内にもあるワクチンギャップ(その2) 年10回の病棟閉鎖、小児病院を脅かす感染症とは
堀越裕歩(東京都立小児総合医療センター感染症科)日経メディカルオンライン 2012. 2. 14
「東京都立小児総合医療センターでは、水痘の流行期は常に病棟閉鎖を余儀なくされる。開院は2010年3月だが、水痘・帯状疱疹ウイルスによる病棟閉鎖は2012年1月時点の2年弱で既に20回を数えた。年間に10回近くの病棟閉鎖を余儀なくされているわけで、重症患児が水痘に感染した場合のリスクの大きさに伴って、病床管理や免疫不全の曝露者対策にかかるコストも莫大なものになる。おそらく、直接の感染予防対策だけで、2年弱で1000万円程度はかかっている。手術や入院の延期まで計算すれば、コストはさらに膨らむこととなる。」
このお金は誰が払うかというと、都立病院ですから最終的には都民です。
入院時に確認を一生懸命しても、潜伏期間にすどおりされて、入院してから発症される場合もあります。
「感染患児の入院がひとたび確認されると、非常事態である。発疹が現れる48時間前から感染性があるので、そこまでさかのぼって病棟内の曝露者を確認し、水痘の免疫がない小児が曝露していたら、ワクチンを緊急接種する。ワクチンを接種できない小児にはアシクロビルを予防内服させ、重度免疫不全の小児には発症しないことを祈りながら、院内で抗体価が一番高いγグロブリンを投与する。」
親御さんや、しなくていいはずの追加の治療や検査までたくさんされ、命までおびやかされるお子さんのことを思うと胸が痛いです。
世の中には、ワクチンの存在を知らない(「何それ」)、接種を「忘れている」(うっかり)、「まだいいかな」(のんびり)、な保護者もいますが、「絶対にしない」と決めている人もいます。
その本人の話ではなく、子どもの健康や命であるところが自己決定論とは大きく異なってきます。
保護者に決定権があるとしたら何歳までなのでしょうか。
それはどのような状況においても、何よりも優先されるのでしょうか。
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第215回 予防接種拒否をめぐる倫理論争
李 啓充 医師/作家(在ボストン)
医学界新聞 第2965号 2012年2月13日
上記の事例のように、水痘が常時流行しているような国では、現実的な対策として医療機関では職員の予防接種や罹患歴調査、接種勧奨以外に、持ち込みを防ぐ必要があります。
予防接種をしない方針の家庭のお子さんが発熱や発疹など体調不良になって受診するときは、あらかじめ病院に電話をして、未接種であることを伝え、何時にどの入口から入るのか確認する必要があります。
そういった方針のかかりつけの医師やスタッフはそのことを伝えなくてはなりません。
面会制限は当然です。
こういった注意喚起はどの病院でも必要な時代。実際に制限は必要ですし、啓発にもつながります。
(聖路加国際病院の総合受付のポスター)