亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター 副センター長の吉田眞紀子先生によるサンド ベッドサイドで役立つ「感染症コンサルテーション力」Up講座 11月26日(水) のQ/Aができました。
以下、ご覧下さい。
Q1:診療所では、年間を通してインフルエンザ、溶連菌、VPDなどでラインリストを作っています。予防接種のタイミングや、診断予測に役立っているような気がします。今年、県内でノロウイルスとO157のアウトブレイクがありました。多くは、外来を通して診断されていました。アウトブレイクの際、多数の施設で行うデータ収集やまとめ方で良い方法やコツなどで、もし何かあればご教示ください。
A1:症例定義を作って、該当者をラインリスティングしていくプロセスを積極的疫学調査と呼びます。大規模、あるいは多施設になればなるほど、症例定義の曖昧さをなくすこと、集める情報の記入方法を決めておくこと、が大切になります。
症例定義は、例えば「発熱」の場合は、「38.5度以上の発熱」という風に、できるだけ、データを集める人によって結果が変わってくることを避けるように作成します。また、集める情報についても、「あり・なし」だけでよいのか、「下痢は1日何回か」まで集めるのか、など、最初に統一しておかないと、見ている集団がはっきりしなくなってきます。
Q2: 症例対照研究の対照群を引っ張ってくる際の、人数決定の考え方について、もう一度教えて
いただけないでしょうか。オッズ比のところでの”症例8人”に対して、“対照12人”の選択の仕方が、よくわかりませんでした。
A2: 症例対照研究では、一般的には症例:対照は1:1から1:4の割合で設定することが多いです。理論上は、対照が多いほど、結果の精度は上がるとされています。
実際の現場では、例えば1:2と決めて集めても、何らかの理由で情報がそろわず、正確に10人:10人とならないことがあります。今回ご紹介した事例(の元となった事例)では、1:2(症例:対照=8:16)を想定して対照を集めたのですが、結果的に12人分のデータしか集めることができませんでした。
Q3: ラインリストに人・時・場所以外の項目の選び方について、聞き取った情報を加えた後、再度定義を作り直し項目を変えて(例えば時の幅を変えるなど)、調整してもよいのでしょうか?
A3: 症例定義は、見たい集団を「時・人・場所」で設定するものです。アウトブレイク発生中の場合は、「○月△日以降」という設定はできても、「いつまで」という設定はできず、便宜上設定した日付が伸びていく、ということがあります。
項目(ラインリストの列)については、始める際に十分検討して決める必要がありますが、場合により、追加情報が必要になってくることはあり得ると思います。ただし、その場合は、すでに作成したラインリスト上の症例に対しても再度カルテ調査や聞き取り調査が発生しますので、人数が多くなると、作業が困難になる、(聞き取り調査の場合は)記憶が曖昧になり情報の正確性が損なわれる、可能性があります。
(タイトル写真:感染症疫学のProfessional:吉田先生と中島先生)
以下、ご覧下さい。
Q1:診療所では、年間を通してインフルエンザ、溶連菌、VPDなどでラインリストを作っています。予防接種のタイミングや、診断予測に役立っているような気がします。今年、県内でノロウイルスとO157のアウトブレイクがありました。多くは、外来を通して診断されていました。アウトブレイクの際、多数の施設で行うデータ収集やまとめ方で良い方法やコツなどで、もし何かあればご教示ください。
A1:症例定義を作って、該当者をラインリスティングしていくプロセスを積極的疫学調査と呼びます。大規模、あるいは多施設になればなるほど、症例定義の曖昧さをなくすこと、集める情報の記入方法を決めておくこと、が大切になります。
症例定義は、例えば「発熱」の場合は、「38.5度以上の発熱」という風に、できるだけ、データを集める人によって結果が変わってくることを避けるように作成します。また、集める情報についても、「あり・なし」だけでよいのか、「下痢は1日何回か」まで集めるのか、など、最初に統一しておかないと、見ている集団がはっきりしなくなってきます。
Q2: 症例対照研究の対照群を引っ張ってくる際の、人数決定の考え方について、もう一度教えて
いただけないでしょうか。オッズ比のところでの”症例8人”に対して、“対照12人”の選択の仕方が、よくわかりませんでした。
A2: 症例対照研究では、一般的には症例:対照は1:1から1:4の割合で設定することが多いです。理論上は、対照が多いほど、結果の精度は上がるとされています。
実際の現場では、例えば1:2と決めて集めても、何らかの理由で情報がそろわず、正確に10人:10人とならないことがあります。今回ご紹介した事例(の元となった事例)では、1:2(症例:対照=8:16)を想定して対照を集めたのですが、結果的に12人分のデータしか集めることができませんでした。
Q3: ラインリストに人・時・場所以外の項目の選び方について、聞き取った情報を加えた後、再度定義を作り直し項目を変えて(例えば時の幅を変えるなど)、調整してもよいのでしょうか?
A3: 症例定義は、見たい集団を「時・人・場所」で設定するものです。アウトブレイク発生中の場合は、「○月△日以降」という設定はできても、「いつまで」という設定はできず、便宜上設定した日付が伸びていく、ということがあります。
項目(ラインリストの列)については、始める際に十分検討して決める必要がありますが、場合により、追加情報が必要になってくることはあり得ると思います。ただし、その場合は、すでに作成したラインリスト上の症例に対しても再度カルテ調査や聞き取り調査が発生しますので、人数が多くなると、作業が困難になる、(聞き取り調査の場合は)記憶が曖昧になり情報の正確性が損なわれる、可能性があります。
(タイトル写真:感染症疫学のProfessional:吉田先生と中島先生)