(追記あり)
SARSのときにアジアの周辺国に拡大していかなかったことや、米国に1例もはいらなかったことは幸運という語りが学会でもされますが、
エボラについては直行便が流行地からとんでいるEUで、関係者がたくさん行き来しているなかで、いままでのところ、うたがい検査はすべて陰性、「血液・体液曝露でうつる感染症」はそもそもその濃厚接触がないところでは広がりにくいのだということが実感されているなかですが、うたがいの時点だけで犯罪者であるかのように扱うこのメディア、個人情報漏えいが公的機関からおこる国で、別の意味の恐怖が生じています。
各国のリスクアセスメントの専門家とは真逆のことを書く雑誌もあります。複数筋に取材をするという基本をやっていないのか、最初から書きたいことがあって都合のよい情報・コメント集めだけしたのかもしれませんね。
エボラ・パニック 日本上陸は目前「人類滅亡まで、あと100日」の最悪シナリオ徹底シミュレーション
よくある認知バイアスのひとつです。
タイトルのつけかたで、そのメディアの真剣さや問題の理解がわかるので面白いと言えば面白いですが、扇情的なタイトルに踊る人たちの騒音が続く間は、不安にならなくていい人まで不安になるという別の問題が生じます。
専門家でも米国CDC資料しか見ていない人も迷走しています。
専門家でもずれたことをしたり語るのは、比較的最近経験もしたので、big pictureで語れる人たちが問題の整理もしています。
Panic, Paranoia, and Public Health — The AIDS Epidemic's Lessons for Ebola
病気についての認知、社会の反応について学ぶのに最適な一冊はこちら。カラーで、当時の写真やポスターは、とう語られたか伝えられたかがわかり、たいへん興味深いです。 (医学部や看護学部で授業をするような人にはネタの宝庫です)
Disease―人類を襲った30の病魔医学書院
日本でも、外来に歩いてきている無症状のHIV陽性患者さんに、フルPPEだった時期を思い出します。
新型インフルのときは・・・書くと長くなるのでやめておきます。
エボラの疑いなら感染症対策や診療というまっとうなシンプルな対応があります。
未知のウイルスではなくて、1976年から情報があり、感染源や感染ルートも把握されています。
この国の医療なら対応できる感染症であることは、これまでの情報の中でも理解可能ですが、実際以上に感染リスクがあるように(自主判断で)報道して、関係者の人権をおびやかし、救急搬送を邪魔し、不安増幅されやすい人を恐怖に陥れ、自己申告をしにくくさせ、開業医さんたちが診療しにくくするモードをつくるという、感染対策の妨害をしているのメディアであることは誰が検証するのでしょうね。
昨日も誤報オンパレード(検査されていない時に検査中、入院していないときに搬送済みとか意味不明、自宅にいただけなのに逃走したかのような表現・・・・)でしたが、不確実な情報を検査もしていない段階で流す意図がわかりませんでした。
これまでの報道の中で、秀逸なのは下記の記事。
今村先生の あれどこFacebookの紹介で知りました。
「陰性」も残る課題 想定外の「報道」 指定医療機関ない県も、治療レベルに格差
こういった記者になら、じっくり話をしてもいいかもしれない、と思いますが、
都合のいい時だけきて、コメントだけとろうとうする人への対応は無駄と感じ、アポさえやめとこうと医療者が考えるのはしかたないですね。
コミュニケーションとしては残念な方向ですが。その課題はまた別の記事で。
こういったときに「誰かのせい」にするモードはよくない、というのはリスクコミュニケーションの基本ですが、
ただ遠くから石を投げるだけでなく、感染症対策について実証的に語り、提案をしている医療者もいます。
高山先生 Facebookの記事
こちらは岩田先生のブログ記事 エボラ疑いを速報したのは間違いで、太田国交相も間違っているという話
EARL先生 エボラ出血熱疑いへの対応(1)
皆が全くの同じ意見ではないわけですから、複数の意見を出していくというのは重要ですし、何も言わなければ消極的承認として、これでよかろうと専門家も思っているのだろうととられます。
それにしても、今回、学会や専門家が静かですね(ブログ編集部内が情報においついていないだけでしょうかー)
PPEなどでお困りの地域や病院が多いなか、感染〇〇の専門!とか、〇〇の専門性、というような人は何をしているんでしょうね(素朴な疑問)。
「感染症と人権」の人たちの意見もこれからでしょうか。特定のウイルスだけで主張しているわけではないでしょうし。肝炎とかエイズ関係の支援者は、今回のような人権侵害にもコメントを出していくのではないかと期待しています。
西アフリカの支援をしないと、ずっとこの先も各国は輸入症例へのリスク対応に追われるわけですので、人道的にも戦略的にも現地の支援を何らかの形で行うことが必要なわけですが。
その支援者は、ただ観光や別の用事で出かけた人とはことなるリスクを引き受けて仕事をするわけです。
帰国した人が不当な扱いや人権侵害にあうようでは誰もいかないです。
韓国も政府としての医療支援派遣のための先発隊を現地に派遣しました。
オーストラリアはevacuationのめどがたたないので保留中です。
日本はWHO枠で、あるいは国境なき医師団の活動として現地支援にあたっている専門家がいます。
連日の報道をみると、自民党などは現地にも派遣し、本国への緊急搬送も行い、そして国内の医療機関が困ったら国立国際医療研究センターから人を治療支援などのために派遣する専門チーム30名新設というような記事が並んでいますが。
誰がどこまで根拠をもっていっているのか記事だけではよくわかりません。
リスクアセスメントや管理ができる人がはいってはじめて動く案件が、専門的なトレーニングのない人たちの政治の道具にされないように、学会や専門家は意見をいっていかないといけないですね。
フェーズとしては、根拠がネットニュースなテキトーなことを言う医師免許保有者がイタイ時期でもあります。
インフルエンザくらいなら想像がつく話してればおわるでしょうが、エボラは実際の症例を診た・かかわった人は限られており、3次4次情報(しかも外国の一般記事)だとずれますよね・・・
専門ジャーナルの専門ページができていますが、手法がしっかりしている情報はタイムラグもあります。
またリソースが限られた国の話をそのまま先進国にあてはめるのもそもそも間違いです。
エボラウイルスを殺すマスク 一枚 7980円とか怪しげなものがでまわっています。(弱いウイルスですし、そもそもそんなことを実験できる施設は国内にないですけどね)
今まで手元にあるマスクで十分です。
もちろん、専門医療機関は購入したりしていませんので、一般の人が買う利点もないですが。
自然療法カルトな人たちは、次亜塩素酸を飲ませて加害者になっていたり。
Ebola Hoax: Drinking bleach does NOT make you immune people
みなさま、各地、各医療機関で情報整理をしていく時期です。
衝撃的な映像のショックやMSFの活動に圧倒される時期はすぎたようにおもいます。メディアの迷走にのらないよう、別の国の誰かがつくったマニュアルがすべての医療機関や現場にフィットしないのは自明であり、自分たちの課題に立ち返る時期であります。
SARSのときにアジアの周辺国に拡大していかなかったことや、米国に1例もはいらなかったことは幸運という語りが学会でもされますが、
エボラについては直行便が流行地からとんでいるEUで、関係者がたくさん行き来しているなかで、いままでのところ、うたがい検査はすべて陰性、「血液・体液曝露でうつる感染症」はそもそもその濃厚接触がないところでは広がりにくいのだということが実感されているなかですが、うたがいの時点だけで犯罪者であるかのように扱うこのメディア、個人情報漏えいが公的機関からおこる国で、別の意味の恐怖が生じています。
各国のリスクアセスメントの専門家とは真逆のことを書く雑誌もあります。複数筋に取材をするという基本をやっていないのか、最初から書きたいことがあって都合のよい情報・コメント集めだけしたのかもしれませんね。
エボラ・パニック 日本上陸は目前「人類滅亡まで、あと100日」の最悪シナリオ徹底シミュレーション
よくある認知バイアスのひとつです。
タイトルのつけかたで、そのメディアの真剣さや問題の理解がわかるので面白いと言えば面白いですが、扇情的なタイトルに踊る人たちの騒音が続く間は、不安にならなくていい人まで不安になるという別の問題が生じます。
専門家でも米国CDC資料しか見ていない人も迷走しています。
専門家でもずれたことをしたり語るのは、比較的最近経験もしたので、big pictureで語れる人たちが問題の整理もしています。
Panic, Paranoia, and Public Health — The AIDS Epidemic's Lessons for Ebola
病気についての認知、社会の反応について学ぶのに最適な一冊はこちら。カラーで、当時の写真やポスターは、とう語られたか伝えられたかがわかり、たいへん興味深いです。 (医学部や看護学部で授業をするような人にはネタの宝庫です)
Disease―人類を襲った30の病魔医学書院
日本でも、外来に歩いてきている無症状のHIV陽性患者さんに、フルPPEだった時期を思い出します。
新型インフルのときは・・・書くと長くなるのでやめておきます。
エボラの疑いなら感染症対策や診療というまっとうなシンプルな対応があります。
未知のウイルスではなくて、1976年から情報があり、感染源や感染ルートも把握されています。
この国の医療なら対応できる感染症であることは、これまでの情報の中でも理解可能ですが、実際以上に感染リスクがあるように(自主判断で)報道して、関係者の人権をおびやかし、救急搬送を邪魔し、不安増幅されやすい人を恐怖に陥れ、自己申告をしにくくさせ、開業医さんたちが診療しにくくするモードをつくるという、感染対策の妨害をしているのメディアであることは誰が検証するのでしょうね。
昨日も誤報オンパレード(検査されていない時に検査中、入院していないときに搬送済みとか意味不明、自宅にいただけなのに逃走したかのような表現・・・・)でしたが、不確実な情報を検査もしていない段階で流す意図がわかりませんでした。
これまでの報道の中で、秀逸なのは下記の記事。
今村先生の あれどこFacebookの紹介で知りました。
「陰性」も残る課題 想定外の「報道」 指定医療機関ない県も、治療レベルに格差
こういった記者になら、じっくり話をしてもいいかもしれない、と思いますが、
都合のいい時だけきて、コメントだけとろうとうする人への対応は無駄と感じ、アポさえやめとこうと医療者が考えるのはしかたないですね。
コミュニケーションとしては残念な方向ですが。その課題はまた別の記事で。
こういったときに「誰かのせい」にするモードはよくない、というのはリスクコミュニケーションの基本ですが、
ただ遠くから石を投げるだけでなく、感染症対策について実証的に語り、提案をしている医療者もいます。
高山先生 Facebookの記事
こちらは岩田先生のブログ記事 エボラ疑いを速報したのは間違いで、太田国交相も間違っているという話
EARL先生 エボラ出血熱疑いへの対応(1)
皆が全くの同じ意見ではないわけですから、複数の意見を出していくというのは重要ですし、何も言わなければ消極的承認として、これでよかろうと専門家も思っているのだろうととられます。
それにしても、今回、学会や専門家が静かですね(ブログ編集部内が情報においついていないだけでしょうかー)
PPEなどでお困りの地域や病院が多いなか、感染〇〇の専門!とか、〇〇の専門性、というような人は何をしているんでしょうね(素朴な疑問)。
「感染症と人権」の人たちの意見もこれからでしょうか。特定のウイルスだけで主張しているわけではないでしょうし。肝炎とかエイズ関係の支援者は、今回のような人権侵害にもコメントを出していくのではないかと期待しています。
西アフリカの支援をしないと、ずっとこの先も各国は輸入症例へのリスク対応に追われるわけですので、人道的にも戦略的にも現地の支援を何らかの形で行うことが必要なわけですが。
その支援者は、ただ観光や別の用事で出かけた人とはことなるリスクを引き受けて仕事をするわけです。
帰国した人が不当な扱いや人権侵害にあうようでは誰もいかないです。
韓国も政府としての医療支援派遣のための先発隊を現地に派遣しました。
オーストラリアはevacuationのめどがたたないので保留中です。
日本はWHO枠で、あるいは国境なき医師団の活動として現地支援にあたっている専門家がいます。
連日の報道をみると、自民党などは現地にも派遣し、本国への緊急搬送も行い、そして国内の医療機関が困ったら国立国際医療研究センターから人を治療支援などのために派遣する専門チーム30名新設というような記事が並んでいますが。
誰がどこまで根拠をもっていっているのか記事だけではよくわかりません。
リスクアセスメントや管理ができる人がはいってはじめて動く案件が、専門的なトレーニングのない人たちの政治の道具にされないように、学会や専門家は意見をいっていかないといけないですね。
フェーズとしては、根拠がネットニュースなテキトーなことを言う医師免許保有者がイタイ時期でもあります。
インフルエンザくらいなら想像がつく話してればおわるでしょうが、エボラは実際の症例を診た・かかわった人は限られており、3次4次情報(しかも外国の一般記事)だとずれますよね・・・
専門ジャーナルの専門ページができていますが、手法がしっかりしている情報はタイムラグもあります。
またリソースが限られた国の話をそのまま先進国にあてはめるのもそもそも間違いです。
エボラウイルスを殺すマスク 一枚 7980円とか怪しげなものがでまわっています。(弱いウイルスですし、そもそもそんなことを実験できる施設は国内にないですけどね)
今まで手元にあるマスクで十分です。
もちろん、専門医療機関は購入したりしていませんので、一般の人が買う利点もないですが。
自然療法カルトな人たちは、次亜塩素酸を飲ませて加害者になっていたり。
Ebola Hoax: Drinking bleach does NOT make you immune people
みなさま、各地、各医療機関で情報整理をしていく時期です。
衝撃的な映像のショックやMSFの活動に圧倒される時期はすぎたようにおもいます。メディアの迷走にのらないよう、別の国の誰かがつくったマニュアルがすべての医療機関や現場にフィットしないのは自明であり、自分たちの課題に立ち返る時期であります。