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2014年10 月17日 第6回若手医師セミナー2014 QA

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■2014年10 月17日開催 第6回若手医師セミナー2014
インターネットシンポジウム

須藤先生からご回答頂きました。


①質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 体表面で浮腫を見る場所はどこが良いですか。立位の多い方や、1日中座っている高齢者では、下腿をみると夕方には皆さん浮腫が見られますので。

通常は下腿でよいと思います。ただし寝たきりの高齢者などでは,重力によって背部(たとえば仙骨部)に浮腫が出現します(secular edemaと呼ばれます)。
立位や体位のみによる浮腫は体重増加を伴わないことが多いと思います。私は体重増加があるかどうかで,有意な全身性浮腫かどうかの判断の参考にしています。


②質問者 : 看護師 40代
質問内容 : 低張尿を排泄、等張尿を排泄がわからない

等張尿の排泄・・とは,尿の浸透圧(厳密にはtonicity = 尿中Na+K濃度)が血清とほぼ同じであること指しています。つまり血清と同じtonicityの尿を喪失しても,体液の浸透圧が変わらないということです。これに対して低張尿の排泄とは,極端な場合を想定すると,真水と同じ成分を失ったときを考えてみてください。(40L入りのドラム缶から水が蒸発して失われたイメージです)。この場合は,体液の浸透圧は上昇します。この状態が高張性脱水です。


③質問者 : 薬剤師 20代
質問内容 : 貴重な御講演ありがとうございます。
アルブミンの浸透圧物質としての働きに関してですが、アルブミンの浸透圧物質としての影響は小さいとのことですが、ドナン効果も加味しても影響は小さいと考えてよろしいでしょうか?

すみません。ドナン効果って知りませんでした(遙か昔,学生の頃に勉強したのかもしれませんが忘却の彼方でした)。アルブミンの膠質浸透圧としての役割には関係するかもしれませんが,少なくとも体液全体の浸透圧物質としての影響は小さいと考えてよいと思います。


④質問者 : 医師 研修医2年目
質問内容 : 低Na血症の患者に対して、NaClの内服を処方していることが多いように思いますが、水の過剰が原因であることが多いのであれば、本来、食塩内服の適応になることは少ないのでしょうか。

おっしゃる通りです。低Na血症に対して食塩の内服が必要なことは,極めて稀だと思います。私自身はその目的でこれまで処方したことはほとんど記憶にありません。


⑤質問者 : 30代 理学療法士 がん
質問内容 : 血清Na濃度のlabデータは、タイムラグはありますか?
例えばAlbのlabデータは3週間ほど前のものを見ていると言われますが・・。

おそらくないと思います(すみません,そんなこと考えたこともありませんでした)。
意識障害と伴う著明な低Na血症(<120mEq/lなど)の治療では,ICUに入院させて2―3時間毎に検査をして治療する場合があります。もし大きなタイムラグがあったとしたら,そのような治療の前提が成り立たなくなると思います。


⑥質問者 : 薬剤師  20代
質問内容 : 大工さんの症例
NS4L入れて、先ほどおっしゃっていた高CL性アシドーシスにはならないですか?高CL性アシドーシスになるにはどのくらいNS入れるとなりますか?

この患者さんについては,アシドーシスの有無まではチェックしていませんでした。おそらくなかったと思います。教科書的には,大量出血などに対して急速に数L以上輸液したときに起こり得るとは書かれていますが,私自身は経験がありません。

⑦質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 見た目脱水ありそうな時、電解質を測定せずに治療することは、本来はよくないのでしょうか。また電解質が緊急測定できない場合の輸液の選択として注意することは、ありますでしょうか。

実際の臨床では,電解質を測定しないで輸液せざるを得ない状況はいくらでもあると思います(むしろ多いかも)。しかし,診察上著明な脱水があって患者さんがsickな状態の時には,私自身は測定できるのであれば電解質を確認したいと思います。もし至急で測定できない状況で「見た目脱水ありそう」な時には,まずは等張性脱水を念頭において等張液から始めると思います。等張性脱水でも低張性脱水でも,等張液を使用すれば大きな間違いはないからです。このような状況では「無難に見えそうな」1号液が使われることが多いかもしれません。しかし臨床的に明らかに「見た目脱水ありそう・・」というときこそ,低容量刺激によるADH分泌のためにfree waterを入れると低Na血症が悪化するかもしれないということは,常に考えておいたほうがいいと思います。


⑧質問者 : 医師 精神科 30代
質問内容 : 高張性脱水による高Na血症に対し、喪失したNa量を計算して生理食塩水、1号液をゆっくり投与したところ2日ほどでさらにNaが上がってしまい(休日をはさんでいたので…)、5%ブドウ糖のみに切り替えると無事治りました。変更の目安はどこで考えればよいでしょうか?

高張性脱水による高Na血症に対して,「喪失したNa量を計算」というのが正直よくわかりません。高Na血症であれば喪失したfree waterの計算をするのではないでしょうか。たとえばNa濃度が165mEq/lから145mEq/lにまで低下させるのに必要な(=喪失した)free waterの量を計算して,それを24~48時間で輸液するということになります。もし推定のfree water喪失量が4Lであれば,それを48時間で補正しようとすればD5Wを80ml/hrで輸液することになります。ただし,低血圧,頻脈など有効循環血漿の低下を示す所見が明らかな場合には,循環動態の改善を優先して,等張液で治療を開始することになります。このような場合,治療開始後にNa濃度が上昇してしまうことはしばしば経験します。等張液(生理食塩液)で開始しても,D5Wに切り替える目安は,循環動態が安定したかどうかで判断します。循環動態にそれほど問題がなければ,最初から1号液とかD5Wで治療開始してもいいと思います。いずれにしても,状況に応じてNa濃度などを繰り返し確認することが必要です。


⑨質問者 : 研修医 2年目
質問内容 : SIADHへのフロセミド投与が、低Na血症を増悪させることがあると伺ったことがありますが、どのような機序でしょうか。

すみません,よくわかりません。SIADHは尿の浸透圧が高く(たとえば600 mOsm/Lとかに)固定されてしまって低張尿(すなわちfree water)が排泄できない状態なので,フロセミドを投与することによって,理論上は尿浸透圧が低下するため,もし同時に低張液輸液(free water) が投与されていないのであれば,低Na血症が増悪することはないのではないでしょうか。
SIADHに生理食塩液を輸液して,低Na血症が悪化することはあります。


⑩質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : フロセミドを使用した際、カリウム値についての注意はいかがでしょうか。心不全の場合には、不整脈のリスクがあることから、比較的高めに維持することが多いように思います。

フロセミドの使用時には,作用機序から考えても低K血症に注意する必要があるのはご指摘の通りです。また単に尿量が増加するだけでも低K血症の原因となります。そのような場合,K補充が必要なのはご存知の通りだと思います。


⑪質問者 : Dr 救急 20代
質問内容 : 今回の症例ではなかったですが、CSWSについてはどのような輸液がよいのでしょうか
Naを含んだ補ったり傾向的にNaClを補ったりしていますが、次第に入れているから尿が出すぎているのか、尿が出ているから補液しているのかわからなくなるときがあります

典型的なCSWS(central salt wasting syndrome)の経験がないので,詳しくお答えしかねますが,基本的には出てゆく分を最低限補うために,入れるというスタンスでよいのではないでしょうか。


⑫質問者 : 初期研修医 2年目
質問内容 : 慢性心不全の患者さんで低Na血症の方をみかけますが、これは、体内Naも過剰だが、それ以上に自由水も過剰ということでしょうか?
その場合の管理は、利尿薬(フロセミド)を使用して、飲水制限、禁止、自由水補液はしないほうがよいということでしょうか?

その通りです。慢性心不全の低Na血症は予後に関係するとされており,より重症の患者で低Na血症がみられるようです。原因は,心拍出量低下からの有効循環血漿量低下(すなわちhypovolemia)が刺激となったADH分泌と考えられます。いずれにせよ,free waterが排泄できない状態なので,水制限は必要になるでしょうし,低張液の輸液は低Na血症悪化の原因になると考えられます。この場合は,V2受容体拮抗薬がよい適応になるかもしれません。


⑬質問者 : 薬剤師 30代
質問内容 : 高浸透圧性の高血糖や高浸透圧時の高血圧について、さらに輸液を入れた場合は血圧などは問題ないのですか?

血圧上昇の原因となる可能性はあるかもしれませんが,血圧は他の沢山の因子が関係しているので,輸液だけが原因で著明な高血圧には通常ならないと思います。

⑭質問者 : 医師 30代
質問内容 : volume 調節系と浸透圧調節系の表で、volume調節系の評価項目にNa排泄とありましたが、24時間蓄尿Na排泄量の意味でしょうか。よく低Naのときに部分尿Na濃度がプレゼンされるのですが、それは浸透圧調節系の尿浸透圧に相当するデータとして解釈すべきでしょうか。

容量調節系の指標としての尿中Naは,より正確には24時間蓄尿Na排泄量かもしれませんが(1日単位という意味では),スポット尿の尿中Naでも,「その時の」Naバランスを表していると理解してよいと思います。

低Na血症で,尿中Na濃度をプレゼンされた場合は,二つの場合が考えられます。
1)容量調節系と浸透圧調節系をごっちゃにしてしまっている(つまりプレゼンした人がよくわかっていない)場合
2)非常に深く理解された上で述べている場合
つまり,尿中Naが低ければ(あるいはFENaが低値であれば)容量調節系において,有効循環血漿量低下であることを示している。そのために低容量刺激によるADH分泌が起こって低Na血症になっている・・・ということまで暗に含めている場合です。

まあ,1)である場合が多いような気がしますが・・・。

浸透圧調節系の尿浸透圧に相当するデータとして用いるのは尿中(Na+K),つまり尿のtonicityです。尿Naは容量調節系の指標なのでややこしいですね(ちょっと難しいですが説明しておきます)

尿(Na+K)<血清Naであれば,その時点でfree waterは排泄されている,すなわち腎臓は低Na血症に対して適切に反応していると言えます。今後,低Na血症は改善してゆくと予想されます。
逆に,尿(Na+K)>血清Naのとき,free waterは再吸収されている状態であり,低Na血症(低張状態)に対して,腎臓は低Na血症を補正する方向に適切に反応できていない状態であると言えます(つまり本来出てはいけないはずのADHが分泌されて尿の浸透圧が高くなっている状態というわけです)。

少し難しいですが,上記の説明はElectrolyte-free water clearanceという概念を非常に単純化して説明したものです。もし興味があれば教科書で調べてみて下さい。

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