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Channel: 感染症診療の原則
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どこまでEVDの治療は可能か。スペインのナースはなぜ感染したのか。

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医療機関が標準的な感染対策をしていればひろがらないはずのエボラウイルスに、看護スタッフが感染したことは大きなニュースになっています。

マドリッドでは、看護師をはじめ医療関係者が、その詳細をあきらかにするようにデモを行いました。

サニタリーテクニシャンという業務のこのナースが部屋に入ったのは2回。1回目はオムツ交換。2回目は死亡後の身の回りの片付け。PPEを着用していたとのことです。

PPEは何を使ったか、が問題になりますが、エボラとわかっていてですからフルPPEであったことは想像に難くありません。ひとつ懸念が残るのは終了後に脱いで捨てる時です。
日本でも着る訓練はアセアセしながら皆で盛り上がりながら着るのですが、脱ぐ時の注意は知らない人も多かったり、注意力が落ちて汚染することもあります。もちろん最後は手洗いで終わります。

患者は25日に死亡、このナースが体調不良となったのは30日です。6日に診断がつくまで3回エボラウイルスの検査が実施されています。

上記リンク先のワシントンポストには、スタッフからPPEが不適切であった指摘が掲載されています。

"Health workers at the Carlos III Hospital protested on Tuesday, and others have raised concerns that the protective suits used by workers treating Ebola patients at the facility are not adequate. According to the Spanish newspaper El Pais, hospital staff provided photos of protective suits that use latex gloves attached using tape. Hospital staff members told the paper that the protective equipment should have been completely impermeable, but that it was not. The workers also said that the suits did not allow for autonomous breathing."

蛍光塗料をつけた人形で訓練するとどれくらい汚染する可能性があるかを実感できます。

重症や末期の症例では、ウイルス量が多いことがわかっていますので、曝露リスクも高いわけです。

そのような中でケアにあたった看護師の感染/発症は、今後も患者の受け入れが続くであろうヨーロッッパの医療機関への注意喚起になっています。

More Cases Of Ebola In Europe Unavoidable: WHO


CDCのガイダンスでは、飛沫感染が起こるような処置は原則行わないとなっていますが、テキサスの事例はたへんcriticalな状況になっており、人工呼吸器がつき、透析が行われているそうです。

ZMAppがなくなってしまったため、呼吸器系の感染症に開発された抗ウイルス薬である brincidofovir(Chimerix社) が投与されており、この薬はネブラスカ州に入院となったフリーカメラマンにも投与されています。

日本の抗インフルエンザ薬もそうですが、ヒトでエボラウイルスに効果をもつのかわかりません。

どこまで治療が可能なのか、長時間のフライトは可能なのか、医学的、倫理的な議論が大きくなるなか、まだ流行はおさまりそうにありません。

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