Vaccine Preventable Diseases(VPD)はワクチンで防ぎましょう、というのは感染症の1次予防では大事な原則なのですが、国によって予防接種のプログラムや方針が異なるように、全て同じ条件やニーズ、妥当性があるかというとそうとはいいにくいです。
すくなくとも、なぜそう考えるのかという根拠とプロセスが必要になります。
予防接種法改正の案として、HPV、HBV、成人肺炎球菌は2類になっており、「個人予防」的要素が強いから1類と分ける、という案に今のところなっています。
議事録をみれば、臨床や公衆衛生の専門家が納得するような議論が書かれているのかもしれませんが(最終会議のものはまだ見ていません)どのような経緯なのかよく知りません。
(そもそもロタはどうなった?)
自民党の三原議員はすべて定期・1類でいいではないかと言っています。ま、感染症屋としては「もっともだー」と思いがちでありますが、これには多少疑問が残ります。
例えば、今後も新しくワクチンが認可されていく可能性があるわけですが(外資の販売戦略はすごいですよ)、ワクチンはすべて定期化するのかという点が不明瞭です。
National Immunization Programに入れるかどうか審査のプロセスを何段階にするのか、誰が話し合うのか、新たに加えよう、という話もありますが、そのワクチンやめよう、という話し合いもあるわけです。
◆ニュージーランドは2008年に髄膜炎菌ワクチンの接種を終了。
◆米国バージニア州は、現在、州法で女子に対してmandateになっているHPVワクチンについて、廃止しようという動きがあります。議会の多数派が民主党から共和党に変わったためかなり現実的。
新しいワクチンについて公費化しない、あるいは保留になっているという国はけっこうあり、例えばHPVワクチンやロタウイルスのワクチンはとても高額なのと、先進国では疾病負荷Disease Burden、予算との兼ね合いでいかがなものか(他に優先度の高い予算案件がある)というような場合見送られています。
いっぽう、疾病負荷のとても大きな途上国(子宮頸がんの85-90%は途上国で起きているし、子どもが下痢で死亡をして問題なのも途上国)に「お金がないから提供できない」のでいいのか?という人道的なお話の側面と、市場拡大という二つの話の結果、メーカーがうんとやすい値段で提供しますよということになりました。
GAVIの「成果」であり、製薬会社的には単価は下がっても、中長期にわたるドナー付の契約ですから、初期投資コスト回収の後はとても良い話なのではないかと思います。
日本でHPVワクチンがどうして2類なのかはわかりませんが、理由を考えろといわれたら、もともと疾病負荷が大きくない、感染力がそれほどでもない、自然消失率も高い、他にも予防手段がある、何より検診が鍵であり日本は医療アクセスが悪くないということがあるかと思います。検診にかかるお金もかなりの額です。そういった負荷を減らせるという試算のエビデンスが本来必要。
HBVワクチンについては、あまり流行していないから、という説明があるのかもしれません(疫学データはプアですが)。
母子感染対策だけやればいい、医療者だけ接種すればいいと思っている保健医療関係者が一定数いる現在、そういった話の流れになりうることも想像します。
HPVとHBVが「性感染」だから個人の健康の自己責任という話だとしたら問題ですが。
成人肺炎球菌ワクチンについては、一般の人は「肺炎」予防だと思う人が多いようですが(意図的なCMのせいですね)、実際には侵襲性の高い肺炎球菌疾患感染症のためというところがあります。
個人レベルでの効果の期待はあるとsて、完全公費にして、重症化や死亡率といったアウトカムに影響するのか?現在の日本の高齢者のデータをふまえてそういった試算があるのか?が問われるのではないかと思います。
自治体の首長が、選挙公約に「あげてしまう」小児の医療費無料化(実際は無料じゃなくて税金でカバー)を考えると、予防接種に先に投資し、小児救急の負担を軽減して、病気の人も減らす方がリーズナブルではありますが、予防接種にかかったお金は税金控除でさえ認められないという冷たい仕組みの中で、政策として全部予防接種は自己負担なしが妥当なのかどうかということは課題なんだと思います。
【参考】
「予防で医療費は減るか? −さらに、ヒブワクチンのこと−」
中西準子先生 雑感507-2010.2.17
すくなくとも、なぜそう考えるのかという根拠とプロセスが必要になります。
予防接種法改正の案として、HPV、HBV、成人肺炎球菌は2類になっており、「個人予防」的要素が強いから1類と分ける、という案に今のところなっています。
議事録をみれば、臨床や公衆衛生の専門家が納得するような議論が書かれているのかもしれませんが(最終会議のものはまだ見ていません)どのような経緯なのかよく知りません。
(そもそもロタはどうなった?)
自民党の三原議員はすべて定期・1類でいいではないかと言っています。ま、感染症屋としては「もっともだー」と思いがちでありますが、これには多少疑問が残ります。
例えば、今後も新しくワクチンが認可されていく可能性があるわけですが(外資の販売戦略はすごいですよ)、ワクチンはすべて定期化するのかという点が不明瞭です。
National Immunization Programに入れるかどうか審査のプロセスを何段階にするのか、誰が話し合うのか、新たに加えよう、という話もありますが、そのワクチンやめよう、という話し合いもあるわけです。
◆ニュージーランドは2008年に髄膜炎菌ワクチンの接種を終了。
◆米国バージニア州は、現在、州法で女子に対してmandateになっているHPVワクチンについて、廃止しようという動きがあります。議会の多数派が民主党から共和党に変わったためかなり現実的。
新しいワクチンについて公費化しない、あるいは保留になっているという国はけっこうあり、例えばHPVワクチンやロタウイルスのワクチンはとても高額なのと、先進国では疾病負荷Disease Burden、予算との兼ね合いでいかがなものか(他に優先度の高い予算案件がある)というような場合見送られています。
いっぽう、疾病負荷のとても大きな途上国(子宮頸がんの85-90%は途上国で起きているし、子どもが下痢で死亡をして問題なのも途上国)に「お金がないから提供できない」のでいいのか?という人道的なお話の側面と、市場拡大という二つの話の結果、メーカーがうんとやすい値段で提供しますよということになりました。
GAVIの「成果」であり、製薬会社的には単価は下がっても、中長期にわたるドナー付の契約ですから、初期投資コスト回収の後はとても良い話なのではないかと思います。
日本でHPVワクチンがどうして2類なのかはわかりませんが、理由を考えろといわれたら、もともと疾病負荷が大きくない、感染力がそれほどでもない、自然消失率も高い、他にも予防手段がある、何より検診が鍵であり日本は医療アクセスが悪くないということがあるかと思います。検診にかかるお金もかなりの額です。そういった負荷を減らせるという試算のエビデンスが本来必要。
HBVワクチンについては、あまり流行していないから、という説明があるのかもしれません(疫学データはプアですが)。
母子感染対策だけやればいい、医療者だけ接種すればいいと思っている保健医療関係者が一定数いる現在、そういった話の流れになりうることも想像します。
HPVとHBVが「性感染」だから個人の健康の自己責任という話だとしたら問題ですが。
成人肺炎球菌ワクチンについては、一般の人は「肺炎」予防だと思う人が多いようですが(意図的なCMのせいですね)、実際には侵襲性の高い肺炎球菌疾患感染症のためというところがあります。
個人レベルでの効果の期待はあるとsて、完全公費にして、重症化や死亡率といったアウトカムに影響するのか?現在の日本の高齢者のデータをふまえてそういった試算があるのか?が問われるのではないかと思います。
自治体の首長が、選挙公約に「あげてしまう」小児の医療費無料化(実際は無料じゃなくて税金でカバー)を考えると、予防接種に先に投資し、小児救急の負担を軽減して、病気の人も減らす方がリーズナブルではありますが、予防接種にかかったお金は税金控除でさえ認められないという冷たい仕組みの中で、政策として全部予防接種は自己負担なしが妥当なのかどうかということは課題なんだと思います。
【参考】
「予防で医療費は減るか? −さらに、ヒブワクチンのこと−」
中西準子先生 雑感507-2010.2.17