2014年度第1回 小児感染症診療の原則
講師 長野県立こども病院 小児集中治療科 副部長
笠井 正志 先生
日時 2014年8月27日(水)18:30〜20:00
Q1:小児の感染症でマクロライド耐性のマイコプラズマなど特殊なケースでやむを得ずキノロンが考慮される場面はありますか?もしとうよされる場合には、どういった身体所見に気をつけて経過をみておられるのでしょうか?
A1: キノロンによる関節症状が心配ですが、そのような副作用の経験はありません。むしろ下痢やアレルギー反応などのコモンな抗菌薬副反応に気をつけています。
Q2: 体重の大きいお子様が多くなってきています。抗菌剤量は、標準体重で計算するのか、上限を成人量として、現体重で計算するのがよいのでしょうか。もし投与量が多すぎた場合は、どのような注意が必要でしょうか。
A2: 一般的には標準体重(Ideal Body Weight:IBW)+0.3{実体重(Total Body Weight;TBW)−IBW}の量とします。成人量を超えないようにします。しかし脂肪への移行が良いクリンダマイシン、ST合剤などは実体重で計算することもあります。
(参考:2014 Nelson’s Pediatric Antimicrobial Therapy,20th ed)
Q3: 講演にあったように小児でもよくST合剤を使用すると思います。比較的安全と認識しておりますが、今回のスライドの小児に注意を要する薬剤にST合剤があります。月例・年齢や投与目的にもよると思いますが、症例によってはBilなどをフォローしながら投与するケースなどもあるのでしょうか?
A3: 幸いにもそのような経験はありませんが、ST合剤しかないケースであれば、ビリルビンなどを測定しながら投与します。
Q4: 呼吸数の数え方について教えてください。成人と同じく、15秒×4倍または30秒×2倍でよいのでしょうか?またコツなどありましたら教えてください。
A4: こどもの呼吸数の数え方は実は大変難しいです。特に乳児では正確には睡眠中でないと測定することが困難です。忙しい外来では、学童以降は成人同様で良いかと思います。乳幼児は「早すぎることはないか(概ね1秒に1回以上ではないか)、遅すぎることはないか」を確認することにとどめています。
Q5: PATでの呼吸状態の見方のポイントはどこになりますか。成人のように呼吸回数や陥没呼吸などでよいのでしょうか?
A5: ポイントは聴診器を用いないこと、見て聞いてわかる呼吸の異常を確認することです。姿勢(sniffing position、tripod position) 、陥没呼吸、鼻翼呼吸有無の確認も重要です。
Q6: 乳児で血液培養2セットを提案すると、なかなか受け入れられないこともあります。臨床現場で施行にあたってモチベーションを上げるような工夫や意見があれば教えてください。
また、免疫状態の評価で哺育が母乳か人工乳かを確認することが有用と伺ったことあります。
先生のプラクティスにもこの点を確認することはありますでしょうか?
A6: 小児において2セット採取が有用であるという臨床研究は残念ながらありません。ただし必要性はすべての小児科医も理解しつつも、血管確保困難な事実もあり、2セット採取は努力目標というのがリアルな臨床現場での事実です。敗血症・菌血症を疑う時の私の個人的なやり方としては、ルート確保時に採取するという方法です。これであれば、主治医のみならず患者さんへの負担も軽減できます。母乳か人工乳か確認することで微生物を想定できるのは、母子感染、特に経母乳感染が疑われるケースです。
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Q&A
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
監修 : 感染症コンサルタント 青木 眞 先生
長野県立こども病院 笠井 正志 先生
東京女子医科大学病院 相野田 祐介 先生
国立国際医療研究センター 堀 成美 先生
講師 長野県立こども病院 小児集中治療科 副部長
笠井 正志 先生
日時 2014年8月27日(水)18:30〜20:00
Q1:小児の感染症でマクロライド耐性のマイコプラズマなど特殊なケースでやむを得ずキノロンが考慮される場面はありますか?もしとうよされる場合には、どういった身体所見に気をつけて経過をみておられるのでしょうか?
A1: キノロンによる関節症状が心配ですが、そのような副作用の経験はありません。むしろ下痢やアレルギー反応などのコモンな抗菌薬副反応に気をつけています。
Q2: 体重の大きいお子様が多くなってきています。抗菌剤量は、標準体重で計算するのか、上限を成人量として、現体重で計算するのがよいのでしょうか。もし投与量が多すぎた場合は、どのような注意が必要でしょうか。
A2: 一般的には標準体重(Ideal Body Weight:IBW)+0.3{実体重(Total Body Weight;TBW)−IBW}の量とします。成人量を超えないようにします。しかし脂肪への移行が良いクリンダマイシン、ST合剤などは実体重で計算することもあります。
(参考:2014 Nelson’s Pediatric Antimicrobial Therapy,20th ed)
Q3: 講演にあったように小児でもよくST合剤を使用すると思います。比較的安全と認識しておりますが、今回のスライドの小児に注意を要する薬剤にST合剤があります。月例・年齢や投与目的にもよると思いますが、症例によってはBilなどをフォローしながら投与するケースなどもあるのでしょうか?
A3: 幸いにもそのような経験はありませんが、ST合剤しかないケースであれば、ビリルビンなどを測定しながら投与します。
Q4: 呼吸数の数え方について教えてください。成人と同じく、15秒×4倍または30秒×2倍でよいのでしょうか?またコツなどありましたら教えてください。
A4: こどもの呼吸数の数え方は実は大変難しいです。特に乳児では正確には睡眠中でないと測定することが困難です。忙しい外来では、学童以降は成人同様で良いかと思います。乳幼児は「早すぎることはないか(概ね1秒に1回以上ではないか)、遅すぎることはないか」を確認することにとどめています。
Q5: PATでの呼吸状態の見方のポイントはどこになりますか。成人のように呼吸回数や陥没呼吸などでよいのでしょうか?
A5: ポイントは聴診器を用いないこと、見て聞いてわかる呼吸の異常を確認することです。姿勢(sniffing position、tripod position) 、陥没呼吸、鼻翼呼吸有無の確認も重要です。
Q6: 乳児で血液培養2セットを提案すると、なかなか受け入れられないこともあります。臨床現場で施行にあたってモチベーションを上げるような工夫や意見があれば教えてください。
また、免疫状態の評価で哺育が母乳か人工乳かを確認することが有用と伺ったことあります。
先生のプラクティスにもこの点を確認することはありますでしょうか?
A6: 小児において2セット採取が有用であるという臨床研究は残念ながらありません。ただし必要性はすべての小児科医も理解しつつも、血管確保困難な事実もあり、2セット採取は努力目標というのがリアルな臨床現場での事実です。敗血症・菌血症を疑う時の私の個人的なやり方としては、ルート確保時に採取するという方法です。これであれば、主治医のみならず患者さんへの負担も軽減できます。母乳か人工乳か確認することで微生物を想定できるのは、母子感染、特に経母乳感染が疑われるケースです。
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Q&A
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
監修 : 感染症コンサルタント 青木 眞 先生
長野県立こども病院 笠井 正志 先生
東京女子医科大学病院 相野田 祐介 先生
国立国際医療研究センター 堀 成美 先生