出血熱や蚊の騒動があったのでHPV関連の情報のアップデートが遅れてしまいました・・・。
英国では9月から4価のHPVワクチン(ガーダシル)2回接種の新体制がすでにはじまっています。
(合理的判断でどんどん政策が動いて行くあたり、平安時代と安土桃山時代くらいの違いを感じます)
イングランド
スコットランド
ブラジルも2回にしたそうです。
尿検査の精度も悪くないという報告があり、ワクチンも検査も最新情報を元に、今までより良いプログラムへの改善の話がおこなわれています。。。。。という話。
で、どめすてぃっく<日本>の関連ニュースとその周辺をみてみます。
9月3日 薬事日報 「患者の副反応を追跡調査‐田村厚労相、HPVワクチンで新対策」
"田村憲久厚労相は8月29日、積極的な接種勧奨を差し控えている子宮頸癌予防ワクチンについて、各都道府県に協力医療機関を整備し、把握した副反応報告の追跡調査を実施していく方針を明らかにした。厚生労働省が新たに対策を講じることで、国民に正確な情報提供を行っていくことが必要と判断"
諸外国の精度の高い情報でかなり整理がついている案件ですし、これまで以上の追加情報はでてこないかも、と事情をよく知る人たちは眺めています。
因果関係が不明、発症の時期やパターン、症状もばらばら・・・なので"副作用"とひとくくりにもできませんが、対症療法をしていくことは必要です。
今回、厚労省はずいぶんがんばっています。いろいろなプレーヤーがいるなか、もっとも地道に丁寧なコミュニケーションをしているのは厚労省結核感染症課でしょう。
これまでの予防接種行政の歴史を知る人たちもびっくり(もっとも、担当者は2ー3年で異動してかわってしまうんですが)。
その分、別の主張をしているひとたちの大雑把さというか、根拠や概念の整理や説明、コミュニケ―ションとして疑問・・が目につきます。ないものもある、といったり、あるものを全否定したり。自己正当化のための発信に傾くなど。他のことまで信頼を失うコミュニケーションです。
学会の話が2つありました。どちらもメディカルトリビューン。
9月17日 メディカルトリビューン「「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」を提唱 日本線維筋痛症学会」
学会プログラム
「学会が提唱」だそうですので、「日本線維筋痛症学会」のホームページを見に行ってみましたが、関連コンテンツがさがせません。
余談ですが、学会HPのトップページに、かなり大きな製薬会社のアイコンが8社も並んでいるのにはおどろきました。(「あの」K学R法学会でさえ、トップページにそのようなものはありません・・・)
それはさておき、学会の代表、提唱の記者会見をされた西岡先生は患者に学ぶ医の心というブログにその理念や活動が紹介されていました。
"線維筋痛症 30代、40代の女性に多い。
中枢神経に問題があり、様々な原因で中枢神経が痛みを普通では感じない痛みを拾ってしまう。
気圧の変化で痛むとか、精神的なストレスがあっただけで痛むとか、痛みに対する感受性が非常に高まってしまっている。
1990年代アメリカで患者を見ていたが、日本ではないと言われていたが、日本でもあるといったら、全国から問い合わせがあって、行政面でも何とか作らなければいけないと、実態調査を行ったら、推定患者数200万人と言われて吃驚した。高齢者では骨粗鬆症、多発性筋肉リュウマチ(元気なおじいさんがかかるリュウマチ、ある日突然体中が痛んで寝たきりになってしまう)治療法は明確で1週間で直ぐに治るが線維筋痛症は原因が解らない。
痛みの受容体が脳下垂体で、それを標的として治療薬が開発してきて、痛みはかなり軽減できるようになってきた。
(中略)
線維筋痛症、すこしずつ光明が見えてきた。 心の痛みが結構この痛みをおこす。
子供の頃いじめられたとか、離婚、交通事故、様々なストレスがかかるようなことがあって、それからしばらくしてから起こる。心の痛みが身体の痛みを招き、身体の痛みが心の痛みを招く、両方からこの病気をコントロールしていかなくてはいけない。精神科の医師と心療内科の医師、神経内科の医師、リューマチの医師がチームでやらないと駄目。初診料、一人にかかっても、4人に掛かっても同じ料金になる。"
長く痛みに取り組んでこられた先生ですね。
群馬県保険医協会のホームページ掲載記事にはなぜか間違った内容(接種回数)が記載されていますが・・・。先生が誤解をされているのか掲載団体の編集者のミスかわかりません。
ちなみに群馬県保険医協会はワクチンの紹介じたいもしているので、特定の立場をとっているわけではないようです。
「HPVワクチン接種を広めよう」
「子宮頚がんとHPVワクチン」
もうひとつ。
8月末に開催された日本思春期学会での話題を紹介。思春期の健康を専門とする人たちの集まる学会で、産婦人科医、泌尿器科医だけでなく精神科医、保健師、学校の先生、NPOなど幅広い背景の人が参加する学会です。
9月22日に再度メディカルトリビューンが関連記事を掲載。
「HPVワクチン副反応報告,自然発症の紛れ込みを否定できず 厚労省発表データを解析」
"筑波大学産科婦人科学准教授の松本光司氏は今年(2014年)7月までの厚労省発表のデータを解析し「接種後の広範な疼痛や運動障害の報告例の中には複合性局所疼痛症候群(CRPS)や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの自然発症が紛れ込んでいる可能性がある。患者サポート体制の整備も進みつつあり,HPVワクチンの積極的接種勧奨を再開すべきではないか」と,第33回日本思春期学会総会・学術集会(8月30日〜31日,会長=筑波大学産業精神医学・宇宙医学教授・松崎一葉氏)で主張した"
"「接種後の発生」≠「接種が原因」" ということの解説もあり。
日本思春期学会のホームページのトップページには、子宮頸がん関係のホームページのバナーがあります。ここはMSDとジャパンワクチン/GSKがスポンサーになっています。
「HPVワクチンの普及に向けて」
この学会はHPVワクチンのプロジェクトチームがあり、ガイダンス的な資料も作っていましたが現在は公開をいったん中止しているそうです。
産婦人科系の団体のように、科学的知見を集めて発信、というような、積極的な問題解決には動いていないようですがなぜでしょうね(一番関係がありそうな学会ですが・・・)。
と、他の文献レビューもしようと思っていたらMRICに4つHPVワクチン関連の情報を検証する記事が掲載されました。
ネット情報の検証、というまとめなのですが、4つも読むのは大変だーとおもうかたは、このレビューを紹介する「うさうさメモ」の記事を読むことをおすすめします。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)に関するインターネット上の情報検証記事 MRIC by 医療ガバナンス学会
他のネット情報としては・・・HPVワクチンの副反応の誤情報/デマが流れていました。
Togetter 9月16日「これは子宮頸がんワクチンの副反応ではありません」
メディアが関心を失っているのかあまり検索でもひかからなくなっていますが・・・
国内では、9月17日には薬害オンブズパーソン会議が子宮頸がん征圧をめざす専門家会議に出していた質問状ヘの回答が紹介されており、
集英社インターナショナルが「子宮頸がんワクチン問題を追う」の連載を開始してます。まだ続くようなので関心ある方は読みましょう。
海外では、V503(9価HPVワクチン)の話が8月にシアトルで開催されたHPV関連疾患の会議でいろいろでてきましたが、9月8日のPLOS ONEにはアフリカでのコスト評価の論文がのっています
Costs and Cost-Effectiveness of 9-Valent Human Papillomavirus (HPV) Vaccination in Two East African Countries。
GAVIの最新情報によりますと、途上国へ提供する際は1接種あたり4.5ドルとさらに値下げ、そして先進国では100ドルするワクチンは、公的プログラムへ提供されるときは13ドルまで値下げが行われています。
日本は定期接種で一定の数を確保するときに値引き交渉を製薬会社としているのか(言い値で買わされてしまうのか)わかりませんが。
オーストラリアが男子に導入する時に大幅に値引かせていたように英国もそのような調整をするのかもしれません。
英国は「男子にも接種を」という専門家やアドボケイト系、患者団体と、「いや、女子の接種率が9割近いからそれで十分」というスタンスの政府のやりとりが行われています。
マラソンで一休み中に、先進国の背中は見えなくなり、途上国がおいぬいていく感はありますが。
コンディションを整えて万全の体制で再度走り始めるのがいいのではないでしょうか。
この国の予防接種制度は脆弱ですから。
その間に、将来「防げたはずのがん」「残せたはずの子宮」という話が発生することはしかたないですね。誰も責任をとれませんが。
"差し控え”が終わって元の状態にもどったら、差し控えられていた期間の接種該当者にも、希望があれば公費で接種できるようにしてあげてほしいです。
(もう一点追加すべき点は難病関係との情報整理です。ワクチンとからめていくと、これまでとりくんできたことがズレていくリスクがあります。これはまた別の機会に・・・)
英国では9月から4価のHPVワクチン(ガーダシル)2回接種の新体制がすでにはじまっています。
(合理的判断でどんどん政策が動いて行くあたり、平安時代と安土桃山時代くらいの違いを感じます)
イングランド
スコットランド
ブラジルも2回にしたそうです。
尿検査の精度も悪くないという報告があり、ワクチンも検査も最新情報を元に、今までより良いプログラムへの改善の話がおこなわれています。。。。。という話。
で、どめすてぃっく<日本>の関連ニュースとその周辺をみてみます。
9月3日 薬事日報 「患者の副反応を追跡調査‐田村厚労相、HPVワクチンで新対策」
"田村憲久厚労相は8月29日、積極的な接種勧奨を差し控えている子宮頸癌予防ワクチンについて、各都道府県に協力医療機関を整備し、把握した副反応報告の追跡調査を実施していく方針を明らかにした。厚生労働省が新たに対策を講じることで、国民に正確な情報提供を行っていくことが必要と判断"
諸外国の精度の高い情報でかなり整理がついている案件ですし、これまで以上の追加情報はでてこないかも、と事情をよく知る人たちは眺めています。
因果関係が不明、発症の時期やパターン、症状もばらばら・・・なので"副作用"とひとくくりにもできませんが、対症療法をしていくことは必要です。
今回、厚労省はずいぶんがんばっています。いろいろなプレーヤーがいるなか、もっとも地道に丁寧なコミュニケーションをしているのは厚労省結核感染症課でしょう。
これまでの予防接種行政の歴史を知る人たちもびっくり(もっとも、担当者は2ー3年で異動してかわってしまうんですが)。
その分、別の主張をしているひとたちの大雑把さというか、根拠や概念の整理や説明、コミュニケ―ションとして疑問・・が目につきます。ないものもある、といったり、あるものを全否定したり。自己正当化のための発信に傾くなど。他のことまで信頼を失うコミュニケーションです。
学会の話が2つありました。どちらもメディカルトリビューン。
9月17日 メディカルトリビューン「「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」を提唱 日本線維筋痛症学会」
学会プログラム
「学会が提唱」だそうですので、「日本線維筋痛症学会」のホームページを見に行ってみましたが、関連コンテンツがさがせません。
余談ですが、学会HPのトップページに、かなり大きな製薬会社のアイコンが8社も並んでいるのにはおどろきました。(「あの」K学R法学会でさえ、トップページにそのようなものはありません・・・)
それはさておき、学会の代表、提唱の記者会見をされた西岡先生は患者に学ぶ医の心というブログにその理念や活動が紹介されていました。
"線維筋痛症 30代、40代の女性に多い。
中枢神経に問題があり、様々な原因で中枢神経が痛みを普通では感じない痛みを拾ってしまう。
気圧の変化で痛むとか、精神的なストレスがあっただけで痛むとか、痛みに対する感受性が非常に高まってしまっている。
1990年代アメリカで患者を見ていたが、日本ではないと言われていたが、日本でもあるといったら、全国から問い合わせがあって、行政面でも何とか作らなければいけないと、実態調査を行ったら、推定患者数200万人と言われて吃驚した。高齢者では骨粗鬆症、多発性筋肉リュウマチ(元気なおじいさんがかかるリュウマチ、ある日突然体中が痛んで寝たきりになってしまう)治療法は明確で1週間で直ぐに治るが線維筋痛症は原因が解らない。
痛みの受容体が脳下垂体で、それを標的として治療薬が開発してきて、痛みはかなり軽減できるようになってきた。
(中略)
線維筋痛症、すこしずつ光明が見えてきた。 心の痛みが結構この痛みをおこす。
子供の頃いじめられたとか、離婚、交通事故、様々なストレスがかかるようなことがあって、それからしばらくしてから起こる。心の痛みが身体の痛みを招き、身体の痛みが心の痛みを招く、両方からこの病気をコントロールしていかなくてはいけない。精神科の医師と心療内科の医師、神経内科の医師、リューマチの医師がチームでやらないと駄目。初診料、一人にかかっても、4人に掛かっても同じ料金になる。"
長く痛みに取り組んでこられた先生ですね。
群馬県保険医協会のホームページ掲載記事にはなぜか間違った内容(接種回数)が記載されていますが・・・。先生が誤解をされているのか掲載団体の編集者のミスかわかりません。
ちなみに群馬県保険医協会はワクチンの紹介じたいもしているので、特定の立場をとっているわけではないようです。
「HPVワクチン接種を広めよう」
「子宮頚がんとHPVワクチン」
もうひとつ。
8月末に開催された日本思春期学会での話題を紹介。思春期の健康を専門とする人たちの集まる学会で、産婦人科医、泌尿器科医だけでなく精神科医、保健師、学校の先生、NPOなど幅広い背景の人が参加する学会です。
9月22日に再度メディカルトリビューンが関連記事を掲載。
「HPVワクチン副反応報告,自然発症の紛れ込みを否定できず 厚労省発表データを解析」
"筑波大学産科婦人科学准教授の松本光司氏は今年(2014年)7月までの厚労省発表のデータを解析し「接種後の広範な疼痛や運動障害の報告例の中には複合性局所疼痛症候群(CRPS)や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの自然発症が紛れ込んでいる可能性がある。患者サポート体制の整備も進みつつあり,HPVワクチンの積極的接種勧奨を再開すべきではないか」と,第33回日本思春期学会総会・学術集会(8月30日〜31日,会長=筑波大学産業精神医学・宇宙医学教授・松崎一葉氏)で主張した"
"「接種後の発生」≠「接種が原因」" ということの解説もあり。
日本思春期学会のホームページのトップページには、子宮頸がん関係のホームページのバナーがあります。ここはMSDとジャパンワクチン/GSKがスポンサーになっています。
「HPVワクチンの普及に向けて」
この学会はHPVワクチンのプロジェクトチームがあり、ガイダンス的な資料も作っていましたが現在は公開をいったん中止しているそうです。
産婦人科系の団体のように、科学的知見を集めて発信、というような、積極的な問題解決には動いていないようですがなぜでしょうね(一番関係がありそうな学会ですが・・・)。
と、他の文献レビューもしようと思っていたらMRICに4つHPVワクチン関連の情報を検証する記事が掲載されました。
ネット情報の検証、というまとめなのですが、4つも読むのは大変だーとおもうかたは、このレビューを紹介する「うさうさメモ」の記事を読むことをおすすめします。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)に関するインターネット上の情報検証記事 MRIC by 医療ガバナンス学会
他のネット情報としては・・・HPVワクチンの副反応の誤情報/デマが流れていました。
Togetter 9月16日「これは子宮頸がんワクチンの副反応ではありません」
メディアが関心を失っているのかあまり検索でもひかからなくなっていますが・・・
国内では、9月17日には薬害オンブズパーソン会議が子宮頸がん征圧をめざす専門家会議に出していた質問状ヘの回答が紹介されており、
集英社インターナショナルが「子宮頸がんワクチン問題を追う」の連載を開始してます。まだ続くようなので関心ある方は読みましょう。
海外では、V503(9価HPVワクチン)の話が8月にシアトルで開催されたHPV関連疾患の会議でいろいろでてきましたが、9月8日のPLOS ONEにはアフリカでのコスト評価の論文がのっています
Costs and Cost-Effectiveness of 9-Valent Human Papillomavirus (HPV) Vaccination in Two East African Countries。
GAVIの最新情報によりますと、途上国へ提供する際は1接種あたり4.5ドルとさらに値下げ、そして先進国では100ドルするワクチンは、公的プログラムへ提供されるときは13ドルまで値下げが行われています。
日本は定期接種で一定の数を確保するときに値引き交渉を製薬会社としているのか(言い値で買わされてしまうのか)わかりませんが。
オーストラリアが男子に導入する時に大幅に値引かせていたように英国もそのような調整をするのかもしれません。
英国は「男子にも接種を」という専門家やアドボケイト系、患者団体と、「いや、女子の接種率が9割近いからそれで十分」というスタンスの政府のやりとりが行われています。
マラソンで一休み中に、先進国の背中は見えなくなり、途上国がおいぬいていく感はありますが。
コンディションを整えて万全の体制で再度走り始めるのがいいのではないでしょうか。
この国の予防接種制度は脆弱ですから。
その間に、将来「防げたはずのがん」「残せたはずの子宮」という話が発生することはしかたないですね。誰も責任をとれませんが。
"差し控え”が終わって元の状態にもどったら、差し控えられていた期間の接種該当者にも、希望があれば公費で接種できるようにしてあげてほしいです。
(もう一点追加すべき点は難病関係との情報整理です。ワクチンとからめていくと、これまでとりくんできたことがズレていくリスクがあります。これはまた別の機会に・・・)