国家試験のときに分類や病名を暗記した後はあまり勉強する機会のない感染症の仕組み。
臨床感染症については学びの場も増え、日本語で読める本も増えましたが、そもそも国や地域でどうやって予防や対策をとっていくのかということをじっくり学ぶ機会はありません。
このため、時事的な問題などから研修医や学生、多職種と勉強したり、そこから大元の資料にあたるようにするのがスムーズな勉強法のように思います。
制度を話し合っているのは専門家があつまる厚生労働省の会議で、最終的に法律や改正が必要な場合は国会等で検討されることになります。
エボラが話題になってあまり関心をもってもらえなくなっているかもしれないMERSですが、新しい病気が問題になるたびに「その位置づけは?」という検討が必要になります。
今年5月28日の第4回厚生科学審議会感染症部会議事録の一部をみてみましょう。
病原体の専門家だけでは、現場レベルでどうすればいいかということの検討が難しいので、臨床のことが分かる人の参加がとても重要です。この会議には、青木編集長も親しい味澤篤先生が参加されています。駒込病院の部長から豊島病院の副院長になられました。
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まず、感染症法に基づく感染症の類別ですが、8ページです。こちらで感染症法に基づく感染症の類別を表にしています。感染症法に基づく措置の対象となる感染症を、一類感染症から五類感染症と分別しております。五類感染症から一類感染症に向かうに従って、適用できる措置の内容が広がるような構造になっています。
例えば四類感染症については、1例1例について医師からの届出を出していただき、それについて積極的疫学調査の実施が可能となっています。
三類感染症になると、更に患者の就業制限、健康診断受診の勧告実施等ができるようになり、さらに二類感染症になりますと、これに加え疑似症患者への措置の適用、入院の勧告・措置といったものが取れるようになっております。
これを踏まえまして、3ページです。MERSに関して現在までに判明している知見として、まず、初発例の感染地域は、現時点ではアラビア半島地域に限定されています。また、基礎疾患のある方や高齢者の方では重症化しやすくなっていること。健康な方では感染しても無症状若しくは軽症で経過する場合も多いこと。また、限定的ではヒト-ヒト感染が確認されていること。先ほど御説明がありましたように、アメリカの事例では比較的軽度の接触で感染する場合があることも分かってきております。それから、特に4月以降、医療機関における二次感染の発生患者が多くを占めています。それからウイルス保有宿主動物としては、ヒトコブラクダが有力視されておりまして、はっきりした感染経路はまだ不明な点が多いですが、病気のラクダの世話をした、ラクダの未殺菌乳を飲んだといった履歴のある患者の報告が確認されております。
このような事実に鑑みまして、国内におけるMERSの国内発生の予防を図る上で、必要な措置の内容としては、今から申し上げる4点があるかと考えております。
1点目としては、日頃からの医療機関における標準予防策の徹底です。こちらは特に法的措置の必要はありませんが、日頃から徹底をお願いしているところです。次に、医師による迅速な届出による患者の把握。これは四類感染症以上に指定することで可能となります。3点目は、患者発生時の積極的疫学調査(接触者調査も含む)です。これも四類感染症以上に指定することで可能となります。最後に、患者に対する入院措置や公費による適切な医療の提供。これは二類感染症以上に指定することで可能となりますが、このMERSは限定的ではありますが、ヒト-ヒト感染がありますし、軽症の方から更に次の方に感染する事例が報告されていることを考えますと、この点は非常に重要になってくるかと思います。
今、申し上げたような措置を実施し、万全な対策を期すためには、MERSを二類感染症として感染症法上に位置付けることが適当ではないかと事務局としては考えておりますが、この点について御審議いただきたいと思います。
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事務局というのは厚生労働省の担当部門のことです。そこには事務方もいますが、医師免許をもった医系技官もいます。会議の準備をしたり、会議のメンバーを検討しているのもここです。
現行の法律とのかねあい、他の部門との整合性等細かい確認もしています。
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(中略)
○味澤委員 この中で、実際にMERSの患者を診そうなのは私ぐらいですが、二類に指定するのは基本的に問題はないです。先ほどからの話を聞いていると、比較的軽症例が多いということなのですが、重症になったときに、先ほど大石先生が言ったように、WHOのMERSコロナウイルスのスタディーグループの報告だと、大体161人いて80人以上がICUでの治療を必要としているわけです。よくなった例を見ても、4分の1ぐらいはICUに入っているわけです。そうすると、二類病床でICUを持っている所は1つもないので、そういう場合に弾力的に、感染に気をつけてICUでもよいとか、そういった施設を持っている所に送ってもいいのかということを。
二類というと、最近は非常に重症な二類が増えてきています。我々が今まで扱ってきた二類というのは、命に関わるということは滅多になかったものですから、その辺を丁寧に説明していただかないと。軽症な例では問題ないのですが、いざ重症になったときに、感染対策を取るのか患者の生命を救うのを取るのかというような問題になってしまう可能性がありますので、その辺をよろしくお願いします。
○梅木結核感染症課長補佐 今、指定若しくは二類感染症に位置付けた場合は、基本的には第二種感染症指定医療機関若しくは第一種、特定といったところで、入院が可能となるということになります。二種には、確かに透析をできる所というのは要件としてはありませんが、第一種であれば人工透析ができる設備を有している病院が指定されているといった状況です。また、臨時、応急の場合は、都道府県知事による入院が可能となりますので、そういった場合には移送をしていただくことが検討されるであろうということになります。
○味澤委員 厚労省の方だから、第一種がどのような施設なのかよく分かっていないと思いますが、私は今は豊島病院にいるのですが、前にいた駒込病院の一種というのは、感染防御は厳密なのですが、いわゆるICUという、患者を何とか救おうという仕組みとはほど遠いのです。ですから、二種が駄目なら一種があるというようなのは飛躍しすぎで、その辺はもう少し検討していただきたいと思います。
○渡邉部会長 事務局のほうに宿題ということですかね、それとも答えられますか。
○結核感染症課長 具体的な受入体制は今後検討していきたいと思います。
○前田委員 今の味澤委員の話の関連です。全国衛生部長会として協議致しまして、この方向で賛成いたします。味澤先生からの重症例の場合の話もありますし、軽症の方についてもそうなのですが、二類に指定されるということは、必ずしも全てが勧告入院あるいは措置入院の対象になるということではなく、その方の病状に応じて適正に対応できるという意味での二類への指定だと考えています。病状によっては、現に使用されている医療機関で継続して治療を行うほうが、患者の治療にとって適切である場合もありますし、逆に余り院内感染対策が適切でない医療機関の場合については、直ちに勧告し法的に移送ができるという意味では、この二類は適当だと思っています。
ですので、今の味澤先生のご質問に、先生の病院の地元自治体である東京都としてお答えしますと、その患者の病状等によって、指定病床への入院勧告か、あるいは、先生御所属の豊島病院には感染症対応のICUもございますので、そういう所で対応していただくかも含めて判断しながら、法を適用していきたいと考えています。
○渡邉部会長 ほかにございますか。臨床の先生で、小森先生いかがですか。
○小森委員 私としては、基本的な議論の方向性は賛同するものでございます。ただ、今、味澤先生が言われたような、第一種感染症指定医療機関というのは全国的にも極めて限られた、法的には設置されていても、実際にどの程度機能するかというのは別の問題がありますので、事務局が整理されたように、そこは検討をしっかりしていただきたいと思います。
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現在のシステムを理解するために、ふる〜〜い資料も読んでいます。
過去の関係者の苦労と努力と、えええ? を学べます。
感染症部会の資料と議事録はこちらから
臨床感染症については学びの場も増え、日本語で読める本も増えましたが、そもそも国や地域でどうやって予防や対策をとっていくのかということをじっくり学ぶ機会はありません。
このため、時事的な問題などから研修医や学生、多職種と勉強したり、そこから大元の資料にあたるようにするのがスムーズな勉強法のように思います。
制度を話し合っているのは専門家があつまる厚生労働省の会議で、最終的に法律や改正が必要な場合は国会等で検討されることになります。
エボラが話題になってあまり関心をもってもらえなくなっているかもしれないMERSですが、新しい病気が問題になるたびに「その位置づけは?」という検討が必要になります。
今年5月28日の第4回厚生科学審議会感染症部会議事録の一部をみてみましょう。
病原体の専門家だけでは、現場レベルでどうすればいいかということの検討が難しいので、臨床のことが分かる人の参加がとても重要です。この会議には、青木編集長も親しい味澤篤先生が参加されています。駒込病院の部長から豊島病院の副院長になられました。
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まず、感染症法に基づく感染症の類別ですが、8ページです。こちらで感染症法に基づく感染症の類別を表にしています。感染症法に基づく措置の対象となる感染症を、一類感染症から五類感染症と分別しております。五類感染症から一類感染症に向かうに従って、適用できる措置の内容が広がるような構造になっています。
例えば四類感染症については、1例1例について医師からの届出を出していただき、それについて積極的疫学調査の実施が可能となっています。
三類感染症になると、更に患者の就業制限、健康診断受診の勧告実施等ができるようになり、さらに二類感染症になりますと、これに加え疑似症患者への措置の適用、入院の勧告・措置といったものが取れるようになっております。
これを踏まえまして、3ページです。MERSに関して現在までに判明している知見として、まず、初発例の感染地域は、現時点ではアラビア半島地域に限定されています。また、基礎疾患のある方や高齢者の方では重症化しやすくなっていること。健康な方では感染しても無症状若しくは軽症で経過する場合も多いこと。また、限定的ではヒト-ヒト感染が確認されていること。先ほど御説明がありましたように、アメリカの事例では比較的軽度の接触で感染する場合があることも分かってきております。それから、特に4月以降、医療機関における二次感染の発生患者が多くを占めています。それからウイルス保有宿主動物としては、ヒトコブラクダが有力視されておりまして、はっきりした感染経路はまだ不明な点が多いですが、病気のラクダの世話をした、ラクダの未殺菌乳を飲んだといった履歴のある患者の報告が確認されております。
このような事実に鑑みまして、国内におけるMERSの国内発生の予防を図る上で、必要な措置の内容としては、今から申し上げる4点があるかと考えております。
1点目としては、日頃からの医療機関における標準予防策の徹底です。こちらは特に法的措置の必要はありませんが、日頃から徹底をお願いしているところです。次に、医師による迅速な届出による患者の把握。これは四類感染症以上に指定することで可能となります。3点目は、患者発生時の積極的疫学調査(接触者調査も含む)です。これも四類感染症以上に指定することで可能となります。最後に、患者に対する入院措置や公費による適切な医療の提供。これは二類感染症以上に指定することで可能となりますが、このMERSは限定的ではありますが、ヒト-ヒト感染がありますし、軽症の方から更に次の方に感染する事例が報告されていることを考えますと、この点は非常に重要になってくるかと思います。
今、申し上げたような措置を実施し、万全な対策を期すためには、MERSを二類感染症として感染症法上に位置付けることが適当ではないかと事務局としては考えておりますが、この点について御審議いただきたいと思います。
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事務局というのは厚生労働省の担当部門のことです。そこには事務方もいますが、医師免許をもった医系技官もいます。会議の準備をしたり、会議のメンバーを検討しているのもここです。
現行の法律とのかねあい、他の部門との整合性等細かい確認もしています。
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(中略)
○味澤委員 この中で、実際にMERSの患者を診そうなのは私ぐらいですが、二類に指定するのは基本的に問題はないです。先ほどからの話を聞いていると、比較的軽症例が多いということなのですが、重症になったときに、先ほど大石先生が言ったように、WHOのMERSコロナウイルスのスタディーグループの報告だと、大体161人いて80人以上がICUでの治療を必要としているわけです。よくなった例を見ても、4分の1ぐらいはICUに入っているわけです。そうすると、二類病床でICUを持っている所は1つもないので、そういう場合に弾力的に、感染に気をつけてICUでもよいとか、そういった施設を持っている所に送ってもいいのかということを。
二類というと、最近は非常に重症な二類が増えてきています。我々が今まで扱ってきた二類というのは、命に関わるということは滅多になかったものですから、その辺を丁寧に説明していただかないと。軽症な例では問題ないのですが、いざ重症になったときに、感染対策を取るのか患者の生命を救うのを取るのかというような問題になってしまう可能性がありますので、その辺をよろしくお願いします。
○梅木結核感染症課長補佐 今、指定若しくは二類感染症に位置付けた場合は、基本的には第二種感染症指定医療機関若しくは第一種、特定といったところで、入院が可能となるということになります。二種には、確かに透析をできる所というのは要件としてはありませんが、第一種であれば人工透析ができる設備を有している病院が指定されているといった状況です。また、臨時、応急の場合は、都道府県知事による入院が可能となりますので、そういった場合には移送をしていただくことが検討されるであろうということになります。
○味澤委員 厚労省の方だから、第一種がどのような施設なのかよく分かっていないと思いますが、私は今は豊島病院にいるのですが、前にいた駒込病院の一種というのは、感染防御は厳密なのですが、いわゆるICUという、患者を何とか救おうという仕組みとはほど遠いのです。ですから、二種が駄目なら一種があるというようなのは飛躍しすぎで、その辺はもう少し検討していただきたいと思います。
○渡邉部会長 事務局のほうに宿題ということですかね、それとも答えられますか。
○結核感染症課長 具体的な受入体制は今後検討していきたいと思います。
○前田委員 今の味澤委員の話の関連です。全国衛生部長会として協議致しまして、この方向で賛成いたします。味澤先生からの重症例の場合の話もありますし、軽症の方についてもそうなのですが、二類に指定されるということは、必ずしも全てが勧告入院あるいは措置入院の対象になるということではなく、その方の病状に応じて適正に対応できるという意味での二類への指定だと考えています。病状によっては、現に使用されている医療機関で継続して治療を行うほうが、患者の治療にとって適切である場合もありますし、逆に余り院内感染対策が適切でない医療機関の場合については、直ちに勧告し法的に移送ができるという意味では、この二類は適当だと思っています。
ですので、今の味澤先生のご質問に、先生の病院の地元自治体である東京都としてお答えしますと、その患者の病状等によって、指定病床への入院勧告か、あるいは、先生御所属の豊島病院には感染症対応のICUもございますので、そういう所で対応していただくかも含めて判断しながら、法を適用していきたいと考えています。
○渡邉部会長 ほかにございますか。臨床の先生で、小森先生いかがですか。
○小森委員 私としては、基本的な議論の方向性は賛同するものでございます。ただ、今、味澤先生が言われたような、第一種感染症指定医療機関というのは全国的にも極めて限られた、法的には設置されていても、実際にどの程度機能するかというのは別の問題がありますので、事務局が整理されたように、そこは検討をしっかりしていただきたいと思います。
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現在のシステムを理解するために、ふる〜〜い資料も読んでいます。
過去の関係者の苦労と努力と、えええ? を学べます。
感染症部会の資料と議事録はこちらから